家の売却でかかるコストについては、正しく理解をしている人は少ないようです。
高額な税金がかかるというイメージがありますが、実は譲渡所得についてはかからないケースのほうが多くなっています。
譲渡所得税が最も高額なコストだが、かからないことも多い
家の売却でかかるコストのうち、最も高額になりやすいのが譲渡所得税です。
譲渡所得税の税率は次のようになっています。
長期譲渡所得(所有期間が5年超)・・・所得税15.315%、住民税5%
本来の所得税は30%、15%ですが、平成49年12月31日までは復興特別所得税が追加されるので、30.63%、15.315%という半端な数値になっています。
前の所有者の保有期間もプラスできる
親から相続をした場合や、親族から譲渡を受けた場合などには、前の所有者の保有期間もプラスできます。
例えば、親から相続をしてから2年後にマイホームを売却したケースですと、所有期間は2年ですので短期譲渡所得の約39%の税金がかかると考えることは正確ではありません。
この場合、親が保有していた期間もプラスできるので、多くの場合に長期譲渡所得の約20%の税金ですみます。
短期譲渡所得がかかることはめったにない?
不動産を購入してから5年以内に売却をすると短期譲渡所得となってしまい、合計約39%という高額な税金がかかってしまいます。
しかし、短期譲渡所得がかかることはめったにありません。
不動産は購入時よりも安く売れる
不動産は購入時よりも安く売れるケースがほとんどです。
昔は「近くに駅ができた」「利便性が大きく向上した」といった理由で価値が上がることもありましたが、現在では都市が十分に発展しているため、よほどのことがない限りは購入時よりも安く売れてしまいます。
土地の価格は変わりにくいですが、建物は経年劣化をするため年々価値は落ちていきます。
マイホームの場合には特例が適用できる
マイホームの場合には、後で説明する「3,000万円控除の特例」などを適用することができます。
購入時よりも高く売れるということがあっても、譲渡所得が3,000万円を超えるということはほとんどありません。
よって、短期譲渡所得の39%がかかることは、マイホームの場合にはめったにないのです。
親から相続をしたマイホームなどは注意
親から相続をしたり、譲渡を受けたマイホームなどの場合には注意が必要です。
譲渡所得を計算する時、取得費がわからないケースでは「売却価格の5%を取得費とする」というルールがあります。
かなり昔に親が購入した家で、取得費がわからない場合には譲渡所得は発生してしまいます。
その場合でも、マイホームの3,000万円控除の特例を適用すれば税金をゼロにできる可能性が高いので、忘れないように確定申告をするようにしておきましょう。
マイホーム売却で適用できる特例
マイホーム売却では、5つの特例を利用することができます。
10年超所有軽減税率の特例
特定居住用財産の買換え特例
居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除
特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除
の5つです。
3,000万円控除の特例
3,000万円控除の特例とは、住居用の不動産を売却して譲渡所得が発生した場合に、3,000万円を限度にして控除ができる特例です。
この特例を利用するためには、実際にその家に住んでいたという事実が必要になります。住居用の不動産であっても、一度もその家に住んだことがないケースなどには適用されません。
過去にマイホームとして利用をしていて、その家に住まなくなってから3年目の年末までに売却をした場合にも、この特例が利用できます。
この特例を受けるためだけに住んでいた場合や、別荘などを一時的に仮住まいとしたケースなどにも、特例の適用は認められません。
「3,000万円控除の特例」と住宅ローン減税は併用ができないということには注意をしておきましょう。「3,000万円控除の特例」を利用せず、住宅ローン減税を受けたほうが特になるケースもあります。
10年超所有軽減税率の特例
「10年超所有軽減税率の特例」とは、住居用の不動産を売却した場合で、所有期間が10年を超えていた場合には所得税・住民税が安くなるという特例です。
6,000万円超の部分・・・所得税15.315%、住民税5%
として計算されます。
3,000万円控除の特例と同じで、住居用の不動産であり、実際にその家に住んでいたということが条件となります。
「3,000万円控除の特例」と「10年超所有軽減税率の特例」は併用をすることが可能です。
家の売却でかかるその他のコスト
家の売却でかかる譲渡所得税以外のコストのうち、最も大きくなりやすいのは不動産会社に支払う仲介手数料でしょう。
仲介手数料は法律で上限が決まっている
宅地建物取引業法という法律によって、仲介手数料の上限が定められています。
取引額200万円超400万円以下・・・取引額の4%が上限
取引額400万円超・・・取引額の3%が上限
一般的には、「取引額×3%+6万円+消費税」という計算式で求められます。
これは上限なので、必ずしもこの金額を支払う必要はありません。
しかし、多くの不動産会社では上限の金額が設定されているようです。
仲介手数料支払いのタイミング
仲介手数料は成功報酬なので、不動産の売却が決まった後に支払います。
売買契約の締結時に50%、引き渡し完了時に残りの50%を支払うことになっているケースが多いです。
不動産会社によっては売買契約の締結時に100%の仲介手数料を支払うようになっていることもあるので、注意をしておきましょう。この場合、買主からお金が振り込まれる前に仲介手数料を支払うことになるので、自分であらかじめ用意しておく必要があります。
仲介手数料が安い不動産会社もある
大手では上限いっぱいの仲介手数料が設定されていることがほとんどですが、中小規模の不動産会社では仲介手数料が安くなっていることもあります。
仲介手数料を安くしてもらうように交渉をすることも可能ですが、不動産会社にとって唯一の利益である仲介手数料を値引き交渉すると、販売活動にコストをかけてもらえなくなる可能性もあるので、やめておいたほうが良いという意見もあります。
不動産会社との媒介契約の種類
不動産会社との媒介契約には、「専属専任媒介」「専任媒介」「一般媒介」の3種類があります。
専属専任媒介
専属専任媒介契約では、不動産会社1社としか契約ができません。また、友人からの紹介や親族など、自分で発見した買主に対して売ることも制限されています。
自分で友人から紹介された人に対して売ってしまうと違約金が発生します。
依頼を受けた仲介業者は1週間に1回以上の報告義務があります。
契約期間は原則として3ヶ月になります。
専任媒介
多くの部分で専属専任媒介契約と共通していますが、専任媒介では友人から紹介された人や親族などと売買契約を結ぶことも認められています。自分で買主を見つけられる可能性がある場合にはこちらの契約のほうが良いでしょう。
依頼を受けた仲介業者は2週間に1回以上の報告義務があります。
一般媒介
一般媒介契約では複数の不動産会社と契約を結ぶことができます。どこの不動産会社と契約を結んでいるかについては明示しなければなりません。
仲介手数料などの費用については契約が成立した不動産会社にだけ支払えば良いので、利用者にとっては最もメリットが大きいです。
契約期間の制限はありませんが、3ヶ月の契約を結ぶのが一般的です。
一般媒介は不動産会社にデメリットがある
一般媒介は単純に考えれば複数の不動産会社と契約ができるので、利用者にとってはメリットがあります。
しかし、不動産会社にとってはあまり歓迎できない契約形態となっています。
例えば、A社、B社、C社の不動産会社と契約を結んで、C社で成約したとします。
この場合、仲介手数料などはC社にのみ支払えば良いです。
A社とB社も宣伝活動をしてくれていますが、そのためのコストは基本的に支払う必要がありません。
A社はコストを抑えて活動をしていたが、B社は多大なコストをかけて宣伝活動を行っていた場合には、大きな赤字となっていしまいます。
そのため、一般媒介契約を結んだ場合には不動産会社のほうがコストを抑えて宣伝活動をしてしまうので、結果的には売主にとってもデメリットとなります。
おすすめの媒介契約は?
3つの契約形態のうち、専任媒介がおすすめされることが多いようです。
専任媒介では親族や知人から紹介された人など、自分で買主を見つけてきても違約金はかかりません。
不動産会社にとっても、報告義務が「2週間に1回以上」となっているので負担が小さいというメリットがあります。
自分で買主を見つけてくるという可能性はそれほど高くはないため、不動産業者はコストを抑えずにしっかりと販売・宣伝活動をしてくれる可能性が高いでしょう。
住宅ローンが残っている場合
住宅ローンが残っている場合には、繰上げ返済手数料がかかることを忘れてはいけません。
繰り上げ返済手数料はいくら?
繰り上げ返済手数料は金融機関によって異なります。
一般的には1万円~3万円程度がかかることが多いです。
一部繰上げ返済と一括繰上げ返済とでは金額が変わってくることもあるので注意をしておきましょう。
金融機関によっては、店舗窓口で手続きをした場合には2万円がかかるが、インターネットバンキングで返済をした場合には手数料がゼロになることもあります。
保証料が戻ってくる
住宅ローンの保証料を前払いしていた場合には保証料が戻ってきます。
戻ってくる保証料の金額は住宅ローンの残高と短縮した返済期間によって計算されます。
ネット銀行の住宅ローンでは保証料ゼロとなっているところが多いですが、保証料を支払っていなかった場合には繰り上げ返済をして返済期間を短縮しても保証料は戻ってきません。
住宅ローンが完済できない場合
不動産査定を受けてみた結果、家を売却しても住宅ローンを完済できないことが判明したとします。
例えば、住宅ローン残高が2,000万円、不動産査定の結果が1,800万円だったケースなどです。
この場合、差額の200万円をなんとかしなければ家を売ることができません。カードローンなどを利用して200万円を用意できるなら、問題は解決します。
カードローンで借りると金利が高くなるので、親や親戚などから借りることができればより理想的でしょう。
もしかしたら不動産査定の結果が正しくないかもしれないので、なるべく複数の不動産会社で無料査定を受けてみましょう。実力がある不動産会社なら2,000万円以上で家を売ってくれるかもしれません。
どうしても住宅ローンを完済できない場合には、
・そのまま返済を続けてオーバーローンの状態が解消されるのを待つ
・任意売却をする
・住み替えローンを利用する
といった方法をとることになるでしょう。任意売却にはブラックリストにのってしまうというデメリットが、住み替えローンには審査がとても厳しいというデメリットがありますので、まずは住宅ローンを完済する方法を考えてみるべきでしょう。