売れない土地を「売れないから」という理由で放置し続けると余計な税金を支払わされたり、周辺住民からクレームを受けたりする恐れがあります。不要な土地は今すぐ売ってしまうべきですし、売れない場合はその他の処分方法を考えるべきです。
今回は土地が売れない理由と、売れない土地をどうにかして売る、あるいはその他の方法で処分する方法を考えていきたいと思います。
売れない土地を放置してはいけない理由
売れない土地ならば無理に売ろうとする必要はないのでは、と思われるかもしれませんが、土地を放置するのは土地の所有者や、その土地の近隣住民に不利益をもたらすことになります。
使わない土地は税金や管理費を食いつぶす無駄飯食い
土地は所有しているだけでもコストがかかります。一番大きなコストは都市計画税・固定資産税です。この2つの税金は土地、建物などの固定資産と呼ばれる資産に対してかかる税金です。
都市計画税は地域によってはかからないこともありますが、固定資産税は地域にかかわらず必ずかかります。どちらも固定資産税評価額(時価の70%程度)に税率をかけることによって税額を計算します。
税率は都市計画税は最大で0.3%、固定資産税は1.4%です。都市計画税が上限の0.3%まで設定されている場合、毎年固定資産税評価額の1.7%に相当する金額を税金として収める必要があります。土地の上に住宅が建っている場合、固定資産税は減免されますが、更地の場合はそのような措置はありません。
仮に固定資産税評価額が200万円の土地を保有している場合、500万円×1.7%=8.5万円が毎年税金として取られるわけです。単年で見た場合はそれほど高い額ではありませんが、これが10年、20年と続くと結構な金額となります。
住んだり投資に使ったりしている土地ならばともかく、全く使わない土地のためにこれだけ税金を払うのはもったいない話です。
土地を放置すると不法投棄や不法侵入などに巻き込まれることも
土地を放置すると不法投棄、不法侵入、放火、景観悪化などの問題が起こります。たとえば仮に不法投棄をされてしまった場合、その犯人を見つけるのは非常に難しく、最終的なゴミの処分は土地の所有者が行うことになります。
このような事態を防ぐためには土地を適切に管理する必要があります。例えば適時草刈りをしたり、不法投棄が行われていないか見回ったり、といった感じです。
しかし、全く使わない土地のために時間を掛けるのはもったいないですし、だからといって業者に代行を依頼するとお金がかかります。いらない土地を維持するためにお金を使うくらいならば、安く買い叩かれたとしても手放したほうがよほどマシでしょう。
土地が売れない「3つの理由」
土地が売れない理由は前述の通り、
- 売り出し価格
- 不動産仲介業者の仕事
- 土地そのものの条件
の3つにわけられます。
売り出し価格
土地の価格は最終的には売主と買主(あるいは彼らが雇った仲介業者)の交渉で決めます。しかし、最初に設定されている売り出し価格があまりにも高すぎると、そもそも交渉にたどり着けません。
例えばあなたが2000万円で土地を買いたいと考えていて、売主Aは売り出し価格を2200万円に、売主Bは4000万円に設定していたら、どちらに交渉を申し込むでしょうか。殆どの方は交渉の余地が大きそうなAを選ぶのではないかと思います。
売り出し価格があまりにも高すぎるといつまで経っても土地が売れずに余計な税金や管理費用などを払わされたり、不動産仲介業者の方から何度も値下げを提案されたりすることになります。
売り出し価格が高くなりすぎてしまう原因のほとんどは、最初に受ける不動産仲介業者の査定にあります。売り出し価格は査定価格をもとに決めますから、査定額が高いとそれに引っ張られて売り出し価格も高くなります。
そして、不動産仲介業者の中には、自分のところで土地を売ってもらうために、市場価格から大きくずれている査定額を付けるところもあります。査定額はあくまでも不動産仲介業者が独自に付けた「多分これぐらいので売れると思う」予想額であり、実際にその通りの価格で売れる保証は全くありません。
不動産仲介業者が適切な査定額を付けているか確認するためには、複数の見積もりをもらうのが一番です。査定額が他の業者とくらべて極端に高い業者は避けた法が良いでしょう。もしそのような業者と契約を結んでしまっている場合は、契約満了を待って別の適切な査定額を付けていそうな業者と契約し直しましょう。
不動産仲介業者の仕事
希望売却価格が適切であっても売れない場合、不動産仲介業者の仕事に問題がある可能性があります。不動産仲介業者がうまく働いてくれない原因は色々ありますが、一般媒介契約を結んでいるとうまく働いてくれないことが多いです。
不動産仲介業者との契約方法には「専属専任媒介契約」「専任媒介契約」「一般媒介契約」があります。このうち、専属専任媒介契約と専任媒介契約は1社のみと契約するもので、一般媒介契約は複数社と契約するものです(参考:専属専任媒介契約ってなに?不動産屋との契約方法を知っておこう)。
一見、複数社に仲介を任せられる一般媒介契約のほうが有利に見えますが、実際には一般媒介契約はなかなか売れません。
不動産仲介業者の立場から見た場合、一般媒介契約だと他社に顧客を取られる可能性があります。せっかく売却活動を行い、契約の寸前までこぎつけても、そこで他社が制約させてしまうと、そこまで掛けた時間、お金、労力などが全てパーになってしまいます。
不動産仲介業者はそのようなリスクを負いたくないので、熱心に売却活動を行わないのです。そんなことに力を入れるよりも、他社にお客さんを取られる心配がない専属専任・専任媒介契約のお客さんのために働いほうが確実ですからね。
また、専属専任・専任媒介契約の場合は不動産会社にレインズ(不動産会社がアクセスできる物件データベース)への登録や売却活動の進行度合いの報告が義務付けられていますが、一般媒介契約の場合はその義務がありません。情報が拡散されないので、更に売れづらくなります。
これについては不動産仲介業者の怠慢というよりも、契約内容に問題があります。もちろん専属専任・専任媒介契約特有のリスクもあるのですが、そのリスクはどのみち高く売れなそうな土地を手放す際にはほとんど問題になりません。
とにかく手放したい土地は、極力専属専任・専任媒介契約で売却することをおすすめします。
土地そのものの条件
土地のそのものの条件が悪いと、売主や不動産仲介業者が適切に努力してもなかなか売れないことが大半です。土地そのものの条件とは例えば立地、土地の形状、面積、境界線、周辺環境などのことです。
特に売れづらいのは市街化調整区域の土地です。市街化調整区域とは都市計画区域内において、行き過ぎた市街化を抑制するために定められる区域のことです。これに対して、市街化がすでに進んでいる区域、あるいはこれから市街化を薦めるべき区域を市街化区域と言います。
市街化調整区域ではなんと、その土地に原則として新しく建物を建てることができません。例外的に許可が降りる場合もあるのですが、面倒な手続きをしなくても最初から建物が建てられる市街化区域の土地を買ったほうがいいので、殆どの場合なかなか売れません。
もう一つ大きなリスクとなるのが境界線です。将来隣人と揉めそうな、境界線が曖昧な土地を欲しがる人はなかなかいません。
境界線を定めるためには土地家屋調査士に正しい境界線を確定して貰う必要がありますが、隣人がそれに協力してくれない可能性もあります。そんな危なそうな土地を買うよりも最初から境界線がわかっている土地を買ったほうがいいので、殆どの場合はなかなか売れません。
広さと形状も大切です。意外に思われるかもしれませんが、広すぎる土地は個人相手には売れないことが多いです。建物がそんなに広くないのに、庭ばかり大きくなっても評価額が無駄に高くなるだけでメリットが無いからです。もちろん、狭すぎる土地もまた売れづらいです。
面積が適切でも、形状が極端に細長かったり(いわゆるウナギの寝床)、旗竿地だったりするとやはり売れづらいです。
周辺環境も重要な要素です。駅から比較的近く、広さや形状などに問題がなくても、近くに工場や葬儀場、墓地などがあるとそれだけで極端に売れづらくなります。こうした施設を建てるときに近隣から反対運動が起きるのは、地価の下落を嫌っているためです。
売れない土地をどうにかして売る方法
使わない土地は売ったほうがいいことはここまででご理解いただけたかと思いますが、いくら売主が売りたいと願っていても、買い主がつかなければ売りようがありません。売れない土地を誰かに買い取ってもらうためには、どうすればいいのでしょうか。基本的には土地が売れない主な理由、すなわち前述の
- 売り出し価格
- 不動産仲介業者の仕事
- 土地そのものの条件
を改善してやれば売れる可能性が高まります。
売り出し価格は相場の2割減が目安
価格を下げるだけでも売れる可能性は高まります。せっかくの土地なのだから高く売りたいという気持ちはわかりますが、売主にとっては唯一の土地であっても、買い主にとっては数ある購入候補の一つでしかありません。
長い間売りに出していても売れないという場合は、まずは売り出し価格が高すぎる可能性を考えたほうがいいでしょう。相場の2割ほど下げれば、土地に限らず大抵の不動産には買い手がつくという話もあります。
そして、繰り返しになりますが、売れる売り出し価格を付けるためには適切な査定が必要不可欠です。査定は必ず複数の業者から受けて、適切な相場を把握しましょう。
不動産仲介業者とはなるべく専属専任・専任媒介契約を結ぶ
不動産仲介業者は基本的に、他社にお客さんを取られる心配がない専属専任・専任媒介契約のお客さんの物件を優先的に売ります。そちらのほうが確実な利益が見込めるからです。現時点で一般媒介契約を結んでいる場合は、切り替えを考えたほうがいいでしょう。
ただし、注意点もあります。専属専任・専任媒介契約にはレインズへの登録と売却活動の報告義務がありますが、これらの義務を満たしていない不動産仲介業者も少なくありません。レインズへの登録を行った場合は登録証明書が発行されるので、不安な場合は見せてもらいましょう。
土地の条件もある程度は改善可能
土地そのものの条件については売主にはどうしようもない部分も多いのですが、改善できる部分もあります。例えば、境界線が明確になっていない場合は、売る前に境界線を予め明確にしておくことによって売れる可能性が格段に高まります。
費用は数十万円程度かかることが多いですが、その費用をかけるだけの価値があります。境界確認済みの文字があるのとないのでは、買い主に与える安心感が全く違います。
また、土地が広すぎる場合は、分筆することによって売りやすくなります。分筆とは登記簿上1つの土地ということになっている土地を、幾つかに分割することです。広すぎる土地も分筆すれば適切な広さの土地になるため、買い主が見つかる可能性は高まります。
ただし、分筆する上で気をつけなければならないこともあります。建築基準法で、建物がある土地の敷地は幅4m以上の土地に2m以上接していなければならないと定められています。これを接道義務と言います。
分筆して片方の土地が道路に接さなくなってしまった場合、その土地には建物が全く建てられなくなり、買い主にとっては無意味なものになってしまいます。土地を分筆する場合は、必ず両方の土地が接道義務を満たすように分けましょう。
それでも売れない土地を処分する方法
価格や不動産仲介業者との契約の変更などを行ってもなお売れない場合は、売却以外の方法も考えたほうがいいでしょう。売却以外の方法とは要するに無償譲渡、つまり寄付のことです。使っていない土地を持ち続けると毎年出費が生まれますが、寄付してしまえばそれはなくなります。マイナスが0になるだけでも儲けものです。
寄付する相手は隣人がベスト
土地の寄付を受け入れてくれる可能性が最も高いのは、その土地の隣人です。地続きの土地を受け取ることによって、土地の接道長さが増えたり、土地の形が良くなったり(細長い土地が正方形に近くなったり)して、自らの土地の資産価値が高まるからです。
もちろん固定資産税が増えるのが嫌なので新しい土地なんていらないよという隣人も多いでしょうが、全くの赤の他人よりは受け取ってもらえる可能性が高いです。場合によっては寄付ではなく買取をしてもらえる可能性もあります(そのあたりは個々の交渉次第です)。
なお、土地の寄付を受けた相手方には贈与税が課税されます。贈与税の基礎控除額は110万円であり、土地の路線価(市場価格の70~80%)が110万円を超えない場合は非課税、超える場合は課税となります。
寄付で受け取ってもらうような土地の路線価は低いはずですから(高い土地ならば寄付などしなくても買い手がつくはずです)、贈与税が高くなる心配はあまりありません。
なお、隣人が個人でなく法人の場合は、寄付を受けてもらえる可能性が低くなります。法人の殆どは営利目的で設立されたものであり、営利につながらない土地を受け取ってもらえる可能性は低いです。学校やNPOなどの公益法人、あるいは地方自治体などへの寄付も手続きが煩雑でうまくいく可能性は低いです。
売れなそうな土地を将来相続する予定がある場合の対処法
現時点では売れない土地を持っていないけれど、将来相続する予定がある場合はどうすればいいのでしょうか。相続放棄すればいいと考えている方は少なくないかと思いますが、実は相続放棄をしても所有権を手放すことは出来ません。
土地を相続しても管理義務は残る
不要な土地は相続放棄することも可能ですが、相続放棄をしてもその土地の所有権=管理義務は残ります。都市計画税や固定資産税の支払いは免れても、土地の管理はしなければなりません。管理を怠ってトラブルが発生した場合、損害賠償や刑事責任を問われることもあります。
土地の所有権事態を放棄するためには、相続財産管理人を選定した上で、家庭裁判所で手続きを行う必要があります。
相続財産管理人とは相続財産の管理や調査を行う人で、一般的には弁護士の中から専任します。彼らに支払う報酬やその他コストは安くても数十万円、高くても100万円程度になることが多く、土地を保有し続けた場合の固定資産税と比べて割高です。
制度上は可能ではありますが、実際に所有権を放棄する人は殆どいません。売却、もしくは譲渡が現実的な手段となるでしょう。
相続放棄するとその他の資産を相続する権利もなくなる
相続放棄は相続全部の財産について相続することになります。そのため、例えば預金や現金は相続するけれど、土地は相続しないといったような「いいとこ取り」の相続をすることは不可能です。売れなそうな土地も含めて全部を相続するか、全部を相続放棄するかの二者択一です。
例外的に被相続人(財産を相続させる人)に負債と資産の両方があった場合、負債と資産を相殺して残った純資産の部分だけ相続するということも出来ますが(これを限定承認と言います)、相続人全員が共同して行う必要がある、手続きが面倒などの理由から選ばれることは少ないです。
まとめ
- 土地は放置しているだけでも税金や管理費用がかかる金食い虫
- 使っておらず、使う予定もない土地は早めに売却すべき
- 土地が売れない理由はおおむね「売り出し価格」「不動産仲介業者との契約内容」「土地の条件」の3つに分けられ、これらを改善することによって売れる可能性が高まる
- それでもなお売れない場合は、寄付も視野に入れたほうが良い
使わない土地をずっと持ち続けても、いいことは何もありません。早めに売却してしまいましょう。