コンパクトシティはどんな政策?メリットと課題は?

近年、居住地域をコンパクトに纏め、行政やインフラの効率を改善するコンパクトシティという都市政策が注目されています。

コンパクトシティには理論上の様々なメリットがある一方、実施された政策は必ずしも理論通りに動いていない一面もあり、その効果については賛否が割れています。今回はコンパクトシティのメリットや課題などを、実例を交えて紹介します。

都市の拡大(郊外化)と中心市街地の空洞化はなぜ進んだか

コンパクトシティとは前述の通り、居住地域をコンパクトに纏めて行政やインフラの効率を改善する政策です。無秩序な郊外への開発拡大を抑制し、持続可能で秩序だった都市を創生することが目的です。

日本の都市は高度経済成長期以来拡大を続けていました。政府も郊外の住宅地開発を促進するなど、都市部から郊外に人を写す政策を実施していました。その結果、郊外に多くの人が移り住み、中心市街地が空洞化するドーナツ化現象が各都市で発生しました。

地方都市は車が移動の中心となり、広い土地を活かした巨大な複合商業施設や公共施設などが作られ、幹線道路にはファミレスやファストフードなどが展開するようになりました。そうした魅力的な施設は人を呼び、それが郊外化を更に進展させました。

一方、従来の中心市街地はそうした環境の変化に対応できず、道路は狭く渋滞を起こし、小規模な店舗は価格やサービスの競争において郊外の店舗に勝てず、シャッター通りが各地で広がるという現象が起こるようになりました。

郊外化は何が問題か

郊外家の問題点はいくつか有りますが、最も大きなものは、維持コストが膨大になるというものです。人々が狭い市街地を離れて広い郊外に済むようになると、例えば道路や上下水道などがよりたくさん必要になり、その分公共投資の効率が低下します。インフラの維持にかかるコストは財政負担にも悪影響を与えます。

また、郊外化は自動車中心の社会をもたらします。それは高齢者や障害者などの交通弱者にとっては不利益となります。運転免許の取得には多額の費用がかかりますが、その費用を捻出できない所得の低い層も交通弱者になりがちです。

コンパクトシティ政策の台頭と長所

このような行き過ぎた都市拡大を抑制し、持続可能な都市を作ろうというのがコンパクトシティのコンセプトですが、こうした構想自体は特に目新しいものではなく、1970年代頃から度々主張されてきたものです。

当時は今と比べれば好景気でインフラも真新しかったため維持あまり注目されていませんでしたが、インフラ老朽化や財政難など様々な問題が現実のものになった近年はより注目されるようになりました。

コンパクトシティ政策においては、公共交通を非常に重視します。また、従来の都市政策では余り注目されていなかった自転車を重要な移動手段と位置づけています。このようなコンパクトシティには以下のような長所が有ります。

移動時間が少なくなり、時間的余裕が生まれる

街全体が小さくなれば、移動にかかる時間も少なくなります。そもそも現代の郊外から市街地に通勤するという形態は無駄の塊です。通勤にかかる時間を生産活動や休息といった他のことに割り当てられるようになれば、生活にもハリが生まれますし、なにより精神的・肉体的な負担が軽減されます。

利便性が高まる

コンパクトシティでは公共施設や商業施設が市街地に集約されるため、生活の利便性が高まります。公的な手続きも買い物も1回の外出で済ませられるようになり、交通費を削減できます。場合によっては自動車自体が不必要になるかもしれません。

行政サービス水準の向上

コンパクトシティ化が進むと、中心市街地の地価が上がり固定資産税の増収が見込めます。また、住民が狭い地域に住むことになるため、行政が効率化され、行政サービスの向上が期待できます。

コンパクトシティの課題

このようにメリットも多いコンパクトシティですが、一方で課題もいくつか抱えています。

すでに拡大した郊外をどうするか

すでに拡大した郊外は、多くの人にとっては魅力的なものです。そうした郊外に住みたい人にとって、コンパクトシティはどうでもいいどころか余計なお世話にしかなりません。

そもそも本来どこに住むのかは個々人が自分の意志で決めるものであり、行政に居住地域を制限されるのはおかしいともいえます。

たとえ全体にとってコンパクトシティがメリットの大きいものであるとしても、それに賛同できる人ばかりではないでしょう。個人の都合と全体の都合が対立した時にどちらをゆうさんせせるのか、と言うのは非常に難しい問題です。

自動車依存をどう緩和するか

コンパクトシティは自動車への依存を減らし、代わりに公共交通機関を充実させることを基本としています。しかし、郊外の発達した地域では多くの住民が車を足と考えているため、たとえ行政側が公共交通を利用するように呼びかけてもうまくいかない可能性が非高いです。

公共交通に投資をして整備したものの、利用者が全く増えませんでした、では困ります。また、地域によっては公共交通に投資をする余裕が無いようなところもあります。

居住環境の悪化

コンパクトシティは市街地の人口密度を増やす政策です。人が増えるのは町に賑わいを取り戻すことにもつながりますが、一方で人が増えることにより居住環境が悪化する可能性もあります。

騒音、プライバシーの侵害、日照権問題など、現在でも市街地が抱える問題は少なくありませんが、これがより悪化する可能性もあります。

富山と青森のコンパクトシティ実例

コンパクトシティへの誘導を勧めている自治体はいくつか有りますが、その中でも特に有名なのが富山市と青森市です。どちらも意欲的な取り組みを進めたものの、その結果は成功しているとはいい難い一面もあります。

富山市の場合

富山市は富山県の県庁所在地ですが、自動車依存度が全国トップクラスに高く、郊外化の止めどない進展と低密度化が問題となっていました。

富山市は公共交通充実化のため、配線になる予定だったJRの路線を使った路面電車を拡張し、中心市街地に環状線を作りました。貸出自転車駅を併設し、富山駅を経由する路面電車網との接続も予定されています。

公共交通の利用者が増えたことにより自動車への依存度は低下、二酸化炭素排出量も大きく削減され、環境モデル都市として取り上げられるようになります。

それとともに住宅助成制度も設けられ、居住推進地区内で新たに住宅を取得する市民に、一戸あたり最大50万円の補助金を出されるようになりました。

こうした取り組みはある程度の成果を上げた一方で、郊外(居住推進築外)にあるショッピングモールは依然として活気があり、宅地の売れ行きも好調です。すでに形作られた郊外から人々を呼び戻すのは容易ではないということです。

青森市の場合

青森市は各都道府県の県庁所在地の中でも特に雪が多い地域であり、郊外化にともなう除雪費用の増大が問題となっていました。そのような問題を改善するため、青森市は除雪費用を含めた財政の改善と新青森駅-青森駅間の交通強化を目標として掲げました。

新青森駅は青森市の市街地である青森駅から約4km離れており、新幹線開通の恩恵を十分に受けられない状態にありました。

青森市は青森駅を中心に「インナー」「ミッド」「アウター」という3つの区域を定め、インナーを活性化させアウターは市街地を抑制、ミッドは住宅地として活用するという政策を掲げました。

また、駅前に公共施設と商業施設が入居する再開発ビル「アウガ」を官民合同で建設し、市街地への回帰を誘導しようとしました。

アウガは185億円をかけて開業され、当初は来館者数が年間600万人を超える活況を呈したものの、売上は予想の半分以下にとどまり、経営は初年度から一転して赤字。

賃料部曽於区で経営が悪化し、運営会社は危機に陥ります。2015年には事実上の経営破綻に陥り、責任を取って鹿内博市長は辞任。小野寺晃彦氏が新市長に就任した後、市は17億円の債権を放棄しました。

コンパクトシティの今後

都市拡大の抑制のために構想されたコンパクトシティですが、その取組は必ずしも十分に成果を上げているとはいえません。

一方で都市拡大にはリスクが有るのも確かであり、無秩序な拡大を放置すれば財政に悪影響が出るのも事実です。今後は郊外に住む場合は自らインフラコストを多く負担することも考えて置いたほうがいいのかもしれません。

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