田舎の土地は都会の土地と比べると需要が少ないというイメージがあります。確かにその通りな部分があるのは否めないのですが、だからといって深く考えずに二束三文で売り払ってしまうのは考えものです。
田舎であっても土地は大切な商品であり、工夫次第でそれなりに高く売ることは可能だからです。今回は田舎の土地を高く売るためのポイントを、全部で11つ紹介していきます。
目次
価格相場を知ろう
田舎の土地を売る上で最も大切なのが、その土地がだいたいいくらで売れるのかの相場を把握することです。これをしない限り、土地売却は先に進みません。土地の相場を調べる方法はいくつかありますが、まずは不動産情報サイトを確認するのが一番いいでしょう。不動産情報サイトとは「goo住宅・不動産」や「不動産ジャパン」などの情報サイトのことです。
不動産情報サイトには現在売りに出されている土地の希望販売価格が掲載されています。自分が売りたい土地の近くにある土地の価格を幾つか集めると、だいたいの坪単価がわかるはずです。もちろんこれは希望販売価格であり、そのとおりに売れる保証は全くありませんが、参考にはなるはずです。
もう少し詳しく知りたい場合は、国土交通省の「土地総合情報システム」を使いましょう。ここには過去の実際の取引事例がまとめられているため、「実際にいくらで売れたのか」を確認できます。時期は必ず直近を選びましょう。
複数の不動産屋に相談しよう
相場がわかったら、次に不動産屋を探します。都会の土地を売る際にも当然複数の不動産会社に相談すべきなのですが、田舎の場合はさらに相談件数を増やしたほうがいいでしょう。
不動産屋の中には田舎の土地売却に対して不熱心なところが多いため(販売価格が低く、その分仲介手数料も安くなるからです)、最初から余り数を絞ってしまうと最終的に不当に安く買い叩かれてしまう可能性が高まるため避けましょう。
複数の不動産屋に相談するのは大変そうに思われるかもしれませんが、一括査定サービスを使えば1回の入力で複数社から査定がもらえます。一括査定サービスも複数ありますが、おすすめはHOME4Uです。
東急リバブルや阪急不動産と言った大手企業から、特定の地域で有名な地域密着型の中小企業まで、550社の中から6社を選分ことが可能です。入力は1分で完了、利用も完全無料、売却査定数20万件の実績があります。
査定を受ける際のポイントは、大手企業と地域密着型企業の両方から査定をもらうことです。大手企業と地域密着型企業ではそれぞれ持っている強みが違うためです。
大手企業は全国広域にネットワークを持っているため、あなたが売ろうとしている土地から遠く離れたところに住んでいる田舎暮らしを希望している人を見つけてくれるかもしれません。
一方、地域密着型企業はその地域の特性に詳しく、規模は小さくてもきめ細やかなネットワークでお客さんを見つけてきてくれるかもしれません。どちらも逃さないために、必ず両方に見積もりを依頼しましょう。
土地をきれいにしよう
良さそうな業者を見つけたらすぐにでも詳細な訪問査定を受けたいところですが、その前に土地をきれいにしましょう。
同じ立地、同じ面積、同じ形状であっても、草がボーボーに伸び放題になっていると、それだけで買い主の印象は悪くなってしまいます。特に田舎は虫が湧きやすいので注意が必要です。
逆に土地がきれいに整理されていれば、それだけで最終的な売却価格は上がるはずです。買い主の心象を悪くする雑草やゴミなどはしっかりと処分しておきましょう。
自分できれいにするのが面倒な場合は業者に任せてしまっても構いません。おそらく業者に賭けた費用よりも、土地をきれいにしたことによって得られる売却益増加額のほうが大きくなるはずです。
詳細査定を受けよう
土地をきれいにしたら、いよいよ詳細査定を受けます。詳細査定とは現地に不動産会社の担当者を招くタイプの査定です。
一括査定と違って実際に土地を見た上で査定を行うため、正確性が高いです。ただし、担当者によって不動産査定の方法や評価軸が微妙に異なるため、同じ土地でも査定価格にブレが出ることはままあります。
また、詳細査定にあたっては、査定を行うための資料が必要になります。登記簿謄本や購入時の契約書などは事前に用意しておきましょう。
査定を受け取ったらその内容を確認します。大切なのは、査定価格が高いからと行って必ずしも高く売れるというわけではないことです。査定価格はあくまでも不動産会社が勝手につけた「このくらいの価格で売れるだろう」という価格だからです。大切なのは、その査定額が適正なのかどうかを見極めることです。
簡易査定や相場との金額差があまりにも大きすぎたり、他の業者と比べて極端に査定価格が高かったり低かったりする不動産会社は避けたほうがいいでしょう。
不動産会社と媒介契約を結ぼう
媒介契約とは、不動産会社に売り出しを依頼するための契約です。媒介契約を結んだ不動産会社は、あなたの土地を売るために色々と営業活動を行ってくれます。媒介契約には
- 専属専任媒介契約
- 専任媒介契約
- 一般媒介契約
の3つがあり、それぞれ特長が違います。媒介契約は売れるまで続くものではなく、3ヶ月ごとに更新します。更新したくない場合は打ち切ってももちろん構いません。
田舎の土地の場合は専属専任媒介契約、もしくは専任媒介契約がおすすめです。
専属専任媒介契約
専属専任媒介契約とは、特定の1社のみと結ぶ契約で、なおかつ買い主と売り主の直接契約が禁止されるタイプの契約です。もし売り主が直接買い主を見つけた場合でも、必ず不動産会社を介して契約しなければなりません。一見不動産会社にとって有利に見えますが、
- 対象物件がレインズ(不動産流通標準システム)に情報が登録される
- 週に1回以上の業務報告が受けられる
- 不動産会社は他者に客を取られる可能性がないため、腰を据えて高値で買ってくれる買い主を見つけやすい
などのメリットがあります。
専任媒介契約
専任媒介契約とは、特定の1社のみと結ぶ契約です。専属専任媒介契約と違い、直接契約は禁止されてていません。
- 対象物件がレインズ(不動産流通標準システム)に情報が登録される
- 2週間に1回以上の業務報告が受けられる
- 不動産会社は他社に客を取られる可能性がないため、腰を据えて高値で買ってくれる買い主を見つけやすい
などのメリットがあります。
一般媒介契約
一般媒介契約は、複数社と結ぶ契約です。直接契約も禁止されません。競争が生まれるので一見売り手にとって有利に見えますが、
- 対象物件がレインズ(不動産流通標準システム)に情報が登録されるとは限らない(不動産会社次第)
- 業務報告が受けられるとは限らない(不動産会社次第)
- 不動産会社が他社に客を取られる可能性を考慮し、熱心に販促活動を行わない可能性がある
などのデメリットがあります。
売り出し価格を決めよう
不動産会社と媒介契約を結んだら、売り出し価格を決めます。売り出し価格とは不動産情報サイトなどに記載する、売り手の希望価格のことです。
といっても、この価格通りに売れることはまずないでしょう。実際の土地売買の現場では値下げ交渉が必ずと行っていいほど行われるからです。そのことを見越して、査定価格を基準に若干高めに価格をつけるのがポイントです。
本当は2000万円で売りたい土地の売り出し価格を2100万円に設定し、買い主との交渉で2000万円まで下げれば、買い主は100万値下げが出来て満足ですし、売り主は希望通りの価格で売れて満足です。双方が気持ちよく契約を終えるためにも、高めの価格設定は欠かせません。
ただし、あまりにも価格を高くしすぎると、今度は買い主がなかなか見つからない可能性があります。特に田舎の土地はもともと需要が少ないので注意が必要です。不動産会社の担当者とよく話し合い、適切な売り出し価格を見つけましょう。
営業活動を見守ろう
売り出し価格が決まったら、不動産会社による営業活動が始まります。一般媒介契約、専属媒介契約の場合は自分でも営業活動をしますが、専属責任媒介契約の場合は特に何もせず任せているだけでOKです。
もちろん自分で探した上で不動産会社を通して契約してもいいのですが、そうするつもりなら専属媒介契約を結んだほうがいいでしょう。
営業活動がうまく行った場合、内見が発生しますが、土地の場合は売り主が立ち会う必要性は薄いです。質問には不動産会社の担当者が答えてくれるはずです。
自力での営業活動について
不動産会社が受け取る仲介手数料は、最終的な売却価格に比例します。田舎の土地は売却価格が低いため仲介手数料も安くなりがちで、それゆえに熱心に営業活動を行わない不動産会社も少なくありません。
特に一般媒介契約を結んだ場合はその傾向が強いため、自分でも営業活動を行ったほうがいいでしょう。専属媒介契約や一般媒介契約の場合、直接取引となると仲介手数料がもらえなくなるため、不動産会社が営業活動を熱心にしてくれる可能性も高まります。
交渉しよう
購入希望者が見つかったら、いよいよ交渉を進めていきましょう。ほとんどのケースでは売却価格と希望購入価格の間に差があり、それを交渉で埋めていくことになります。原則的に、売り主は値下げの提示もしくは現状維持の提示しか出来ません。
購入希望者が複数現れた場合は別ですが、田舎の土地でそのようなことが起こる可能性はほぼないでしょう。購入希望者の購入希望価格が低すぎると思った場合は交渉を断り、次の買い主が現れるのも待ちます。
交渉時にどこまで譲歩するかは、売り手の事情次第です。別に今売れなくても困らないという場合は、値下げ交渉には余り応じず、こちらの都合をぶつけてしまってもいいでしょう。逆に今すぐ売りたいと考えている場合は、ある程度の値下げに応じてしまっても構いません。
ただ、ほとんどの購入希望社は予算の限度額より低めに価格を提示してくるはずです。それで買えればラッキー、無理ならば上乗せすればいい、と考えているからです。いきなり大幅な値下げをするのは避けたほうがいいでしょう。
売買契約を結ぼう
交渉を経て売買価格で合意が得られれば、いよいよ契約を締結します。本来、契約というのは当事者の合意があれば成り立つものですが、あとで言った言わないで揉めるのを防ぐために、契約書を取り交わすことが大半です。
通常、売買契約は不動産会社の店舗内で行います。契約書を始め、必要な書類の多くは不動産会社が用意してくれますが、売り主が自分で用意しなければならない書類もあります。具体的には
- 登記済権利書
- 身分証明書
- 印紙代
- 固定資産税評価証明書・固定資産税納税通知書
などを用意しなければなりません。詳しくは不動産会社の担当者までお尋ねください。
契約を交わした以上はお互いに法律的な義務が発生するため、何も考えずに印鑑を押してはいけません。「重要事項説明書」「売買契約書」には売買金額や瑕疵担保期間など、非常に重要な事項が記載されていますので、時間を書けて目を通しましょう。
瑕疵担保期間について考えよう
瑕疵とは、ある不動産について回る欠陥のことです。瑕疵の中でも、買い主が契約の段階で知り得なかった瑕疵を隠れた瑕疵と言います。
隠れた瑕疵が判明した場合、買い主は売り主に対して補修や損害賠償を求められます。これを瑕疵担保と言い、その際に売り主が追うべき責任を瑕疵担保責任と言います。
土地は建物と比べると瑕疵担保責任の範囲は狭いですが、地盤が弱かったり、土壌汚染があったり、境界線がはっきりしなかったりする場合、売り主は買い主に対して責任を追わなければならない可能性が出ています。
瑕疵担保期間を設けるか否か、設ける場合は何年間にするのかなどは原則として売り主が決められます(不動産会社が売り主の場合は2年以上の瑕疵担保期間が必ず設けられます)。
ただし、物件の隠れた瑕疵をめぐるトラブルは少なくないため、売り主は契約前に物件の瑕疵をできる限り明らかにしなけれればなりません。
手付金を受け取ろう
ほとんどのケースにおいて、売買契約が成立すると買い主から売り主に手付金が支払われます。手付金とは契約時に一旦買い主が売り主に支払い、契約が正常に履行されたら買い主の手元に戻るお金です(実際には手付金が売買価格の一部に充当されることがほとんどです)。
買い主の都合で解約をした場合、手付金は売り主のものとなります。売り主の都合で解約した場合、売り主は買い主に手付金を倍額で返します。
手付金の金額は契約内容によって異なりますが、田舎の土地を売買する場合は売買価格の10%前後が適切なものと思われます。
田舎の土地でも広ければそれなりの売買価格になり、その分手付金も高くなります。買い主によっては即金で用意できずにローンを利用することもあり、その場合は買い主が審査に通過するまで待たなければなりません。
売買契約から手付金が支払われるまでに数ヶ月程度かかることもあるため、手元のお金の量には気をつける必要があります。
仲介手数料を支払おう
不動産会社は売買契約が成立した時点で、売り主に対して仲介手数料を請求することが出来ます。ただし、実際に請求を行うタイミングは不動産会社によってまちまちです。
一般的には契約締結時に全体の50%を支払い、物件引き渡し完了後に残りの50%を支払うことが多いのですが、決まっているわけではないので、双方の同意があれば物件引き渡し完了後に全額支払っても構いません。
仲介手数料の価格の上限は以下のとおりです。あくまでも上限ですが、殆どの不動産会社は上限まで仲介手数料を取っているようです。
売買価格 | 計算方法 |
---|---|
400万円を超える | 取引価格 ×3% +6万円 |
200万円を超え400万円以下 | 取引価格 ×4% +2万円 |
200万円以下 | 取引価格 ×5% |
例えば売買価格が1000万円だった場合、仲介手数料は1000万円×3%+6万円=36万円となります。契約締結ごと物件引き渡し後に50%ずつ支払うことになる場合、それぞれの場面で18万円ずつ支払うことになります。
通常は手付金の金額のほうが仲介手数料の半額よりも大きくなるため手持ちの現金がなくても心配は不要ですが、手付金の支払いが遅れそうな場合は自分で現金を用意しなければなりません。
決済と登記を行おう
通常、決済は口座振込で行われるため、現金をやり取りする必要はありません。また、決済と同時に登記(所有権の移転手続き)も行う必要があります。どちらかを先に済ませてしまうと、代金の持ち逃げや未払いなどが発生しかねないからです。
登記を素人が行うのは事実上不可能なため、司法書士を雇います。司法書士費用は買い主負担になることが多いですが、契約次第です。
決済は売り主と買い主、双方の不動産会社の担当者、決済を行う銀行の銀行員、そして司法書士が同席した上で行います。登記は司法書士が進めてくれるので、こちらで何かする必要はありません。
諸費用を精算しよう
売買代金の決済が終わったら、諸費用の生産を行います。土地の売買においては、諸費用=固定資産税の支払いとなることがほとんどです。
固定資産税はその都市の1月1日時点での所有権者に支払い義務が発生します。契約で固定資産税の負担を買い主にも求めることになっている場合、売り主は所有権の移転日に応じて固定資産税額を買い主から受け取ります。
例えばある土地の固定資産税額が8万円で、9月31日に契約をした場合、1月~9月までの9ヶ月分(6万円)は売り主が、残りの3ヶ月分(2万円)は買い主が負担するのが公平です。この場合、売り主は買い主から2万円を受け取ります。
この手続が面倒だという場合は、最初から売買金額に固定資産税額を上乗せしておいてもいいでしょう。
土地の引き渡しを行おう
決済と登記が行われたら、いよいよ土地の引き渡しを行います。引き渡し日は契約で決めることが出来ますが、通常は決済と同日に行われます。土地の場合はその場所に売り主(前所有権者)の持ち物がないかなどを簡単に確認するだけでOKです。
まとめ
- 田舎の土地は高く売れづらいが、工夫すればそれなりの価格にはなる
- 田舎の土地の売却に不熱心な不動産会社は少なくないため、なるべく多くの不動産会社から査定をもらう
- 査定価格は高ければ高いほどいいというものではなく、適切なものか見極める必要がある
- 営業活動は基本的に不動産会社が行ってくれるが、自分で買い主を探しても問題ない
- 手付金は売買価格の1割が相場
- 仲介手数料は契約直後と土地引渡し時にそれぞれ50%支払うのが基本
田舎の土地だからといって、二束三文で売り払ってしまうのはもったいない話です。できる範囲で様々な工夫をして、高く売りましょう。