市街化区域と市街化調整区域の違いは?どちらの土地が使いやすい?

無秩序な市街化、都市開発は生活環境の悪化を招くことは、近代以降の歴史を診ても明らかです。その為、現代国家は劣悪な都市環境を改善し、あるいは良好な都市環境を実現するための都市計画制度を整備して、秩序ある開発を目指しています。

都市計画とは簡単に言えば、各土地の所有者の完全に自由な開発をする権利は認めず、全体が良好な都市環境を手に入れるために、個人や法人にある程度の規制を化す仕組みのことです。

都市計画に関するルールをまとめた法律を都市計画法といい、その中でも特に重要なのが都市計画区域と言う制度です。都市計画区域には市街化区域と市街化調整区域があり、これらの区域に該当する土地の所有者は規制を受け入れた上で建物を作らなければなりません。

特に市街化調整区域は建築が厳しく制限されるなど、土地所有者にとって不都合な規制が多く、それ故に不動産価格が落ち込みやすいため、売却の際には注意が必要です。

都市計画区域は都道府県が定める市街地を含む区域

一定の条件に該当する市街地を含み、一体的に開発、整備、保全する必要がある区域を都市計画区域と言います。都市計画区域は都道府県が指定します。

都市計画区域の範囲は市区町村の線引きと一致するとは限らず、複数の市区町村が1つの都市計画としてまとめられることもあれば、1つの市区町村が複数の都市計画区域にわけられることもあります。また、同じ市区町村の中でも、都市計画区域に該当するところと該当しないところが両在することもありえます。

都市計画区域に指定されているのは日本の国土全体の約27%(約10万キロ平米)に過ぎませんが、日本国民の95%は都市計画区域内に住んでいます。

市街化区域と市街化調整区域の線引き

都市計画区域は通常、市街化区域と市街化調整区域に分けられます。市街化区域はすでに市街垢が進んでいる区域、もしくはおおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域です。

一方、市街調整区域化は行き過ぎた市街化を抑制するべき区域です。わかりやすい言い方をすれば、市街化区域は建物をどんどん建ててもかまわない区域、市街化調整区域は建物をあまり建ててはいけない区域です。

また、都市計画区域は必ず市街化区域と市街化調整区域に分けなければならないというルールはありません。都道府県が線引きをする必要が無いと判断した場合は、ただの都市計画区域(非線引き都市計画区域)となります。

市街化区域は都市計画区域の14%、つまり国土全体の27%×14%≒4%程度しかなく、面積的には小さいですが、市街化区域に住む人口は7割を超えています。日本国民の半数以上は市街化区域内に住んでいるのです。

都市計画区域外の区域

都市計画区域外には、準都市計画区域が指定されることがあります。都市計画区域外の中で今後市街化が進むと思われる地域、例えば郊外のインターチェンジの周辺や車通りの多い幹線道路の沿線などが準都市計画区域に指定されます。

市街化区域には用途地域が定められ、建設が規制される

市街化区域は原則として建物をどんどん立ててもかまわない区域ですが、そうは言っても一定の規制や制限をしなければ無秩序な開発を許すことになってしまいます。

例えば住宅街に突然巨大な工場が建設されたら地域の人は困ります。そうした無秩序な開発を抑制するために、市街化区域には必ず用途地域が定められます。

用途地域は住居、商業、工業の3つ

用途地域は全部で12が定められています。具体的には以下のとおりです。

  • 第1種低層住居専用地域
  • 第2種低層住居専用地域
  • 第1種中高層住居専用地域
  • 第2種中高層住居専用地域
  • 第1種住居地域
  • 第2種住居地域
  • 準住居地域
  • 近隣商業地域
  • 商業地域
  • 準工業地域
  • 工業地域
  • 工業専用地域

様々な用途地域がありますが、注意しなければいけないのは「専用」と名が付いていても必ずしもそれ以外の建物の建設が一切禁止されるわけではない、ということです。

たとえば第1種中高層住居専用地域は住居専用と付いていますが、小さな理髪店やクリーニング屋、学習塾などが建てられますし、小さい自動車車庫なども作れます。

診療所はどの用途地域に建てても良いが、大学病院は第1種低層住居専用地域や第2種低層住居専用地域に立ててはいけないなど、建物の用途によって規制はまちまちです。比較的規制が緩く、建てられる施設が多いのは準住居地域や近接商業地域です。

市街化調整区域では用途地域は原則定めない

市街化区域は市街化を調整するための地域であり、建物の建設自体に消極的ですから、用途地域は原則として定められません。

自治体などが都市基盤の整備を行わないことも多く、行う場合も積極的なものではありません。

市街化調整区域では建物の建設が制限される

土地区画の変更、造成などの開発行為を行う時は、原則として都道府県知事の許可を得なければなりません。市街化区域や非線引き都市計画区域、準都市計画区域では、一定の基準を満たせば許可されるのに対して、市街化調整区域では原則として許可が降りません。

また、市街化調整区域では、開発行為を伴わない建物の建築も厳しく制限されます。例えば、一般住宅を市街地調整区域に建設することは原則できません。絶対に建てられないというわけではありませんが、市街化区域に建てるよりは遥かに面倒であることは間違いありません。

市街化調整区域の土地は安くなる

市街化調整区域に建物を建築する際には、行政に許可を得る必要があります。これは面倒な上、確実に許可が降りるというわけでもなく、土地の価格を安くする原因になります。

利便性は他の土地とあまり変わらないにも関わらず、極端に安く売り出されている土地は、市街化調整区域内に存在するものである可能性が高いです。買う側にとっては安くていいかもしれませんが、売る側にとっては大きな不利益になってしまいます。

市街化調整区域の土地や建物を買う際の注意点

市街化調整区域の土地は安いですが、その分色々と不都合も多いので、購入前には必ずその土地の利便性をチェックしておく必要があります。

まず、市街化調整区域は違いかを抑制するための区域ですので、インフラが貧弱です。電気を自己負担で敷設させられたり、都市ガスが選べなかったりするケースも多く、土地が安くてもそれ以外の諸経費がかさんでしまう可能性があります。

また、市街化調整区域の土地は価値が低いので、住宅ローンを借りる際の担保価値も低くなるため、満足な額の住宅ローンが借りれなく鳴るケースが多いです。

金融機関としても、万が一の際に差し押さえられる土地が市街化調整区域内のものであるというケースは避けたいものなのです。その場合は頭金を多く用意するなどの対策が必要になります。

市街化調整区域の土地や建物を売る際の注意点

市街化調整区域は建物の流通量が少ない上、需要はさらに少ないため、多くの仲介業者は消極的な態度しか見せてくれません。仲介業者の仲介手数料は売買価格に比例するため、安くしか売れない市街化調整区域内の土地や建物の売買は更に敬遠されます。

ただ、中にはニッチな市場に目をつけた、市街化調整区域を専門にした仲介業者もあります。

市街化調整区域は建物を建てるのが非常に面倒ですが、すべての人が建物を建てるために土地を買うわけではありません。太陽光発電や駐車場、資材置き場などに利用することもあります。そうした人たちが見つけられれば、高く売れる可能性が高まります。

なお、市街化調整区域の土地を売買する場合は、必ず買主が開発許可を受けてから契約することになります。

線引き前に建てられた建物は比較的売れやすい

市街化調整区域になる前に建てられた建物は、その後に建てられた建物と比べると建築許可の条件がゆるくなっているため、比較的売れやすいです。ただし、線引き前に建てられた場合も、増改築などが行われている場合は線引き後の規制が適用されます。

まとめ

  • 都道府県は都市計画区域を定める
  • 都市計画区域は更に市街化区域と市街化調整区域に線引されることがある
  • 市街化調整区域は新しく建物を建設するハードルが高い
  • 市街化調整区域の土地や建物を売る場合は、専門の仲介業者に依頼したほうが良い

市街化調整区域の土地や建物は高く売るのが難しいものですが、市街化調整区域を専門とする業者に任せれば、それなりに高値で売ることも可能です。売却を考えている場合は、まずは相談から始めましょう。