土地売買時の実勢価格の予想には公示地価と路線価が目安になる!

土地や家、マンションを購入する際に、判断基準の一つになるのが土地の価格ですよね。どれだけ希望にあった土地であっても、手持ちの予算を大きくオーバーしていては購入できません。

ただ、一つ知っておいてほしいのは、その提示されている価格はあくまで売り主の希望価格であって、実際の取引価格ではないということです。

売り主としては当然少しでも高く売りたいわけですから、適切だと思われる価格より高めの価格を設定するでしょう。その価格で売れるとは限りませんが、もし売れれば儲けものです。

逆に、買い主としては少しでも安く買いたいと考えます。ですから、高いなぁと感じた土地であっても買い主にとって魅力的な土地であれば、なんとか予算内で購入できるように価格交渉をするかもしれません。

このようにして、実際の土地の取引価格はお互いが妥協できる価格帯に収まります。つまり、高くて手が出ないと思っている土地でも交渉次第で十分チャンスがあるということです。

売り主と買い主の希望を反映した実際の取引価格を「実勢価格」といいます。この実勢価格は交渉の中で決まっていくわけですが、あらかじめざっくりとした範囲で予想することができます。

また、土地ごとに適切な価格というのはある程度決まっています。それを知っていれば価格交渉の際により有利になり、こちらの希望する価格に近づけやすくなるかもしれません。

では、実勢価格やその土地の適切な価格を予想するために必要な要素はなんなのでしょうか?以下で見ていきましょう。

土地の価格は公示地価が大きな目安になる

土地の価格を決定するには基準となる価格や相場が必要です。基準がないと、自分が持っている土地はいったいいくらくらいで売ればいいのかわからなくなってしまいますね。

また、土地を購入するほうも販売されている土地が高いのか安いのかを判断できず、購入に迷いが生じてしまいます。

そこで、国が土地ごとに基準となる価格を設定しています。もちろんこれは実際の販売価格、つまり実勢価格ではなくて、この土地にはこれくらいの価値があるからこのくらいの価格が妥当だろうという一つの目安です。

この活動は国土交通省が主体で、毎年1月1日に土地を評価し、3月頃にその結果を公表しています。そして、この公表された価格を「公示地価」と呼びます。

公示地価は国が公平に土地を評価した価格ですから、その土地が持つ価値を適切に反映しており、土地の販売価格を決定するときの大きな基準や指標になります。

そこで、実勢価格を予想する際は、その土地の公示地価を目安にすればよいというわけですね。公示地価より高い価格で販売されていれば、それは土地に見合った価格ではないということになりますから、価格交渉をしてもよいですし、すっぱり諦めるのも手です。

逆に、公示地価よりも安く販売されていれば、お買い得な土地ということになります。

公示地価は全ての土地を評価するわけではない

土地の価格決定の基準として大いに役立つ公示地価ですが、ある問題点があります。それは、公示地価は国内全ての土地に対して発表されるわけではない、という点です。

土地の評価、査定を行うのは資格を持った不動産鑑定士であり、機械ではありません。そのため、国内にある土地全てを評価するのは不可能です。

そこで、評価する土地をいくつかに絞り、公示地価を算出することとしています。この評価される土地を「標準地」と呼び、現在は20000地点程度を目処に判定を行っています。

ただ、全国にある無数の土地の中からたった20000地点ですから、これはあまりに少ない数と言えるでしょう。

また、公示地価とよく似たもので「基準地価」というものがあります。これも公示地価と同じく土地を評価し適切な価格を算出したものですが、こちらも評価地点は20000程度です。

公示地価と基準地価を合わせても40000地点ほどですから、国内全ての土地を評価するには到底足りません。

では、評価されなかった土地ではどうやって価格設定をするのか、ということですが、最寄りの土地の公示地価やよく似た環境の土地の公示地価を基準に設定するのです。

ただ、同じ形の土地や周辺環境が全く同じ土地はそうはありませんから、評価されなかった土地を最寄りの土地の公示地価どおりに評価するのは無理があります。

こんなときに役立つのが「路線価」です。以下で詳しく解説していきますね。

路線価を活用すれば標準地以外の土地でも価格の基準設定ができる

路線価とは道路に対して価値判定をし、それに従ってその道路に接した土地を評価したものです。

たとえば、道路Aの価値を1と評価したとすると、道路Aに接した土地はその評価を基準に価格設定されます。

もちろん、1本の道路の端から端までを同じ価値にすることはありません。道路の途中で周囲の環境が変われば、それに見合った評価がなされることになるため、一定の区間ごとに価値判定されています。

多くの土地は道路に接しているため、路線価を使えばほとんどの土地を評価できます。また、路線価は公示地価を基準に判定されているため、信頼度も十分です。

ですから、公示地価が発表されていない土地の価値判定には路線価を使うことで、実勢価格を予想できるのですね。

ただ、路線価から実勢価格を予想するには少し計算が必要になります。それについては以下で解説しますね。

路線価から実勢価格を予想するには?

ここまで一言で路線価と言ってきましたが、実は路線価には2種類あります。それぞれ「相続税路線価」と「固定資産税路線価」と呼ばれており、名前のとおり相続税と固定資産税の計算時に使われます。また、贈与税もこれらから算出されます。

どちらも公示地価を基準に算出されたものですが、算出する際の計算方法が異なっており、相続税路線価は公示地価の8割程度、固定資産税路線価は公示地価の7割程度の評価額となっています。

路線価は公示地価より少なく見積もられるため、そのまま実勢価格の予想に使うわけにはいきません。路線価=実勢価格としてしまうと、公示地価の8割程度の価格となってしまい、大きなズレが生じてしまいます。

路線価から実勢価格を予想するには、まず路線価を公示地価の水準になおす必要があります。そこで、相続税路線価の評価額なら0.8、固定資産税路線価の評価額なら0,7で割ります。こうすることで路線価の評価額は公示地価の水準に近いものになりますね。

ただ、これは理論上のもので、100%正確なものではないことに注意です。あくまで目安であると考えておきましょう。

これにより、公示地価によって評価されていない土地、つまり標準地以外の土地であっても公示地価を基準にした価値判定ができることになり、適切な価格設定が可能になります。

基準がわかれば実勢価格を予想することができますから、土地購入の際の大きな助けになるでしょう。

公示地価や路線価を実勢価格の目安にする際の注意点

公示地価や路線価を活用すれば、実勢価格をある程度予想することができ、とても便利です。ただ、これらは万能ではありません。実勢価格の目安として使う場合には注意すべきポイントがいくつかあります。

まず、公示地価や路線価は1年に一度しか評価されないという点です(固定資産税路線価は3年に一度)。公示地価は毎年3月ごろ、相続税路線価は毎年7月ごろに公表されます。

しかし、土地の価値は日夜とは言わないまでも短期間で変動します。たとえば、ある土地の近くに大きなデパートができることが知られれば、その土地の価値は一気に高まるでしょう。

もし、その出来事が8月ごろだったとしたら、その土地の評価の高まりが公示地価や路線価に反映されるのは早くても半年です。その半年後までは価格の基準となるものがなくなってしまいますね。

つまり、公示地価や路線価は短期間での土地価格の変化に対応できないのです。そして、これが公示地価や路線価による査定額はあくまで実勢地価の目安にしかならないと言われる理由の一つです。

ですから、これらを鵜呑みにして実勢価格を予想するのはあまり意味がありませんし、大きな損につながってしまう可能性もあります。

もう一つの注意すべきポイントとしては、実勢価格には少なからず売り主や買い主の主観が入ることです。

公示価格や路線価は公平な立場から評価したものであるために信頼性は十分です。ただ、土地取引は必ずしも公平な立場から行われるわけではありません。

売り主が早く売ってしまいたいと考えていれば価格は抑えめになり、買い主が有利な立場で取引を進めることができるでしょう。

対して、売りたい土地がとても人気で、購入希望者が殺到するようなケースなら、売り主は強気の価格設定をしてくるはずです。

このように、実勢価格は個人の主観や思惑が入ってくるために、公示地価や路線価のとおりにならないことが多々あります。

そのため、実勢価格を完璧に予想することは不可能で、基準はあくまで基準であると捉えておくようにしましょう。

まとめ

実勢価格のピタリ予想するのは不可能ですが、ある程度予想して取引に臨むことはとても大切です。

その土地の価格は適切なものなのかを判断できるようになれば、不動産売買で大損してしまうリスクを大きく下げられるでしょう。

価格交渉をする際にも公示地価や路線価は大きな交渉材料になりえます。希望の土地が見つかったなら、まずはこれらについて調べてみるとよいでしょう。

また、同じ土地、物件であっても扱う不動産会社ごとに価格が違うこともあります。そのため、できるだけ多くの不動産屋を訪ね、価格調査を行ったうえで購入、売却決定することが理想的です。

不動産取引は知識勝負です。カモにされないためにも多くの知識をつけ、つねに有利な売買ができるようになりましょう。