配偶者などが借金をしていることが判明した時、いくらまで許せるのかという基準は、人それぞれです。
ここでは、借金がどのくらいまでなら安心できるのかという目安と、離婚のボーダーラインとなる借金の金額について解説をします。
分割払いは比較的安心できる
自動車ローンや住宅ローンを利用する人は多いですが、最初の段階で総返済額がわかっているので、ある程度の安心があります。
住宅ローンのケース
住宅ローンで2800万円を金利1.0%で借りて、返済期間を30年、ボーナス返済なしとした場合のシミュレーション結果は次のようになります。
年間返済額 1,080,708円
総利息 4,421,264円
借入する金額が2,800万円と高額であることと、返済期間が30年と長めに設定されていることで、金利が1.0%でも利息でおよそ442万円がかかってしまっています。
しかし、毎月の返済額は一定であり、月額家賃が9万円の賃貸マンションを借りているケースと負担はそう変わらないことから、リスクはそれほど高くはないと感じられるでしょう。
変動金利にしている場合には、将来金利が上昇するリスクもあることに注意をしておきましょう。
分割払いが安心できる理由
分割払いが安心できるのは、最初の段階で、
・完済までにかかる期間
・総利息
・毎月の返済額
がはっきりとわかっているからです。
返済負担率とは?
返済負担率とは、返済比率とも呼ばれ、次の計算式で計算できます。
年収が500万円の人で、住宅ローンの年間返済額が100万円、その他に借金がないのなら、
と計算されます。返済負担率は25%以下が理想という意見と、20%以下が理想という意見があります。
なるべく小さいほうが負担は少ないですが、25%以下ならば借金の返済で困る可能性は低いと言えるでしょう。
住宅ローンの審査では返済負担率が30%以上でも審査に通ることはあるようです。しかし、審査に通ることと、余裕を持って返済をしていけることとは別問題なので、注意をしておきましょう。
さすがに住宅ローンを配偶者に隠して借りていたということはないと思われますが、再婚をした場合などにはあり得るかもしれません。
分割払いで返済負担率25%以下の無理のない借入をしていたなら、許してあげても良いでしょう。
奨学金の返済も計算に入れること
学生時代に奨学金を借りていたという人は、奨学金についても計算に入れましょう。
返済負担率を計算する上で、銀行は奨学金の返済は考慮に入れないケースもあります。
そもそも、日本学生支援機構が個人信用情報機関に加盟したのは平成20年11月ですので、それ以前に奨学金を借りた人は、個人信用情報に奨学金の情報は記載されていません。
例外的に、平成20年11月より前に借りた人でも、「個人信用情報の取り扱いに関する同意書」を提出している人は、延滞をすると信用情報に影響します。
奨学金の負担
奨学金の負担は一般の人が思っているよりも大きいです。
月額の返済は1万5千円程度という人もいれば、4万円を超える人もいます。
返済負担率が25%と計算されても、奨学金の返済も計算に入れると30%を超えてしまうこともあります。
奨学金の存在を銀行側に知られていないのに、銀行の住宅ローン審査にギリギリ通ったというような人は、かなり危ないと言えるかもしれません。
リボ払いはリスクが高い
クレジットカードやキャッシングのほとんどは、リボ払いという返済方式が採用されています。
クレジットカードのショッピング枠でも、リボ払いに設定している人がいますが、リボ払いに設定していると借金と同じになるので、しっかりとシミュレーションをしておくべきです。
月々の返済額は少ないが・・・
10万円を借りたケースなら、月々の返済額は2,000円くらいに設定されているカードローンも存在します。
シミュレーションをしてみると・・
2017年1月19日に10万円を借りて、毎月20日に返済をしていったケースについて考えてみます。
2017年2月20日 2,000円を返済(元本500円、利息1,500円) 残高99,500円
2017年3月20日 2,000円を返済(元本508円 利息1,492円) 残高98,992円
2017年4月20日 2,000円を返済(元本516円 利息1,484円) 残高98,476円
~省略~
2024年11月 130円を返済
というようなシミュレーション結果となります。10万円を借りただけなのに、完済まで7年10ヶ月もかかってしまっており、総利息は86,130円となります。
余裕を持って返済できれば良いというわけでもない
このシミュレーション結果からわかるように、リボ払いとなっている場合には、余裕を持って返済ができれば良いというわけでもありません。
毎月の負担が2,000円なので、返済自体は余裕を持って行えるでしょう。
しかし、そのために86,130円もの利息を支払う結果になってしまっています。
100万円くらいを借りた場合なら、86,130円の利息を支払うことくらいは納得ができるでしょう。
しかし、10万円を借りるだけのために、86,130円の利息を支払うということは、多くの人が納得しないはずです。
余裕のある生活をすることと引き換えに、大きな損をすることにならないか、しっかりとシミュレーションをして確認おきましょう。
配偶者などが借金を隠していたことが判明した時、もしもその借金がカードローンやキャッシングであった場合には、気をつけておいたほうが良いでしょう。
いくらまでなら許せる?
配偶者などが借金を隠していたことが判明しても、それが生活に影響しない程度なら、許してあげるべきです。
日本では夫婦別財産制がとられていますので、基本的には借金をする場合でも配偶者の許可を得る必要はありません。借金はあくまで個人のものであり、夫の借金を妻が負担する義務はありません。
しかし、借金の返済に困って家庭に最低限のお金すら入れることができなくなってしまったら、大問題です。そうなると、離婚も考えなければならなくなってしまうでしょう。
収入と支出を計算してプラスになっていればなんとかなる?
単純なケースを例にあげて計算をしてみます。
住宅ローン -10万円
自動車ローン・ガソリン代 -7万円
食費 -6万円
携帯代・水道光熱費 -3万円
税金・保険料など -2万円
カードローンの返済 -2万円
このケースでは、給料の手取りが30万円、支出が合計30万円となっているので、ギリギリなんとかやりくりはしていけます。しかし、趣味や遊びに使えるお金はありません。
支出のうち、カードローンの返済が2万円ですが、リボ払いで2万円の負担というのは、かなり大きいと言えます。そのまま2万円ずつを返済していった場合にトータルでかかる利息についても計算をしてみましょう。
正社員として働いていて、ボーナスが夏と冬に2ヶ月分~3ヶ月分くらい出るというのであれば、それほど大きな問題でもないでしょう。
しかし、中小企業で働いている人は、ボーナスが出てもせいぜい1か月分という人も多いです。
このケースでは、冠婚葬祭などの予想外の出費が出た時に、一気に破綻してしまうリスクがあります。
離婚のボーダーライン
お金の問題が原因で離婚をしてしまう人は多いです。
・ギャンブルや投資
・浮気相手にお金を貢ぐ
・買い物依存
・事業に失敗
・ネット詐欺に遭った
などです。最近では、インターネットが普及しており、ネット詐欺に遭ったために多額の借金を抱えてしまう人もいるようです。
お互いの同意があればどのような理由でも離婚はできますが、どちらかが反対している場合、離婚はできません。
民法が定める離婚原因5つ
民法が定める離婚原因は次の5つです。
2.悪意の遺棄
3.配偶者の生死が三年以上明らかでない
4.配偶者が重度の精神病にかかり、回復の見込みがない
5.その他婚姻を継続し難い重大な事由
このうち、悪意の遺棄というのは、そのまま読むと配偶者を山に捨てていくような行為を想像するかもしれません。それだけに限らず、家庭に生活費を入れず、配偶者を生活困難な状態に陥らせている場合などにも悪意の遺棄が成立します。
配偶者が多額の借金を抱えていて、やむを得ずに生活ができないレベルになっている場合には、「悪意」という条件を満たさないので、悪意の遺棄ではありません。
ギャンブルや浪費、借金など金銭のトラブルについては、5番目の「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当する可能性があります。
裁判離婚のためのハードルは高い
その他婚姻を継続し難い重大な事由として代表的なものは、DVや虐待などになります。
ただ多額の借金を抱えているだけでは、裁判離婚は難しいです。それはなぜでしょうか?
夫婦には相互協力義務がある
夫婦には相互協力義務、相互扶助義務があります。借金を抱えて大変な目にあっていても、夫婦で協力をして、助け合って乗り越えていかなければなりません。
夫がたくさんの借金を抱えているが、なんとか乗り越えていこうという意思を持っている場合には、裁判で離婚を認められる可能性は低いでしょう。
債務整理という解決策がある
債務整理という解決策があることも、大きな理由です。
どれだけたくさんの借金を抱えていても、自己破産をしたらすべての借金を帳消しにできます。
夫が協力をして乗り越えていこうという意思を持っている場合には、自己破産をして、人生をやり直すという選択肢がとれます。
自己破産以外の選択肢
自己破産をすると借金はゼロになりますが、資産もすべて没収されます。20万円以下の中古車などは残せる可能性がありますが、マイホームは原則として没収されます。
個人再生ならば、マイホームを残したまま借金問題を解決できる可能性があります。
任意整理では、担保付きのローンを対象から外すことができるので、資産は没収されることはありません。
任意整理が一番
個人再生では資産が没収されることはありませんが、住宅ローン以外の借金はすべて整理されてしまいます。
銀行の自動車ローンの場合、基本的に無担保なので車は没収されませんが、ディーラーローンの場合には車は没収されてしまいます。
個人再生をすると奨学金も整理の対象になるので、連帯保証人になっている親に迷惑がかかります。
任意整理なら、担保付きローンや連帯保証人がついている借金は対象から外せるため、資産を没収されたり、連帯保証人に迷惑をかけるということを避けることができます。
過払い金があればデメリットなし!?
2006年の12月に「貸金業の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案」が出されて、施行されました。
その後、2007年にはアコムやプロミスなどの大手の消費者金融が相次いで金利の引き下げを行っています。2008年には、ほぼすべての貸金業者で金利が引き下げられています。
消費者金融だけでなく、クレジットカードのキャッシング枠で借りていた人も、過払い金請求ができる可能性があります。
過払い金請求をすることには、基本的にデメリットはありません。過払い金請求をするとキャッシングカードは解約されてしまいますが、信用情報には影響せず、他社では問題なく借りられます。
クレジットカードのキャッシング枠で借りていた人は、ショッピング枠についても利用ができなくなるという点については注意が必要です。ショッピング枠の借入残高はゼロにした状態で過払い金請求をしておけば安心です。
デメリットが発生することも
過払い金を引き直し計算した後、なお借金が残っていたら、その借金について任意整理をすることになるので、ブラックリストにのってしまいます。
クレジットカードのキャッシング枠について過払い金請求をする場合には、ショッピング枠の残高も合わせて計算されることに注意が必要です。
弁護士に相談をする
どの方法がベストなのかは、素人では判断が難しいので、まずは弁護士に相談をしましょう。
過払い金請求をする場合でも、弁護士や司法書士に相談をしておけば、知らずにブラックリストにのってしまうということがなくなり、安心できるでしょう。