住宅ローンの金利には変動金利と固定金利があります。固定金利は金利が最後まで変わらないタイプで、変動金利は金利が変動するタイプです。
変動金利を利用する際に気になるのが、金利はどこまで上下するのかということ。もし突然金利が50%や100%になってしまったら、返済額が無限大近くまで膨らんでしまいますよね。
もちろん、実際にはそのようなことは起こりえません。変動金利にも色々とルールがあり、短期間で極端に高い金利にならないような仕組みになっているからです。
一方で変動金利にはある程度のリスクがあることも事実であり、考えずに利用すると返済で苦しむことになります。今回は変動金利の上限と、変動のルールを開設していきます。
変動金利は金利が情勢によって変化する
住宅ローンにおける変動金利とは、その名の通り金利が変動するタイプです。つまり、借り入れた時点では総返済額が確定しない金利です。
一方、固定金利は金利が変動しないため、借り入れた時点で総返済額が決定します。このような違いがあるため、世間ではどちらかと言うと固定金利のほうが人気があるようです。
一方、変動金利は固定金利よりも最初は低く設定されているため、金利が激しく上昇しなければ総返済額が固定金利よりも低くなる可能性は十分にあります。とはいえ、世の中に数多く存在する金利予測はどれも所詮単なる推測に過ぎず、確実に総支払額が少なくなる保証もありません。
変動金利は短期の貸し借り時の金利が基準になる
住宅ローンの変動金利は、年に2回見直しが行われます。変動金利は通常、短期プライムレートを基準に決められます。
短期プライムレートとは、銀行が企業に融資する際に用意する金利の中で、最も優遇された金利(プライムレート)のうち、1年間の短期間で貸し出す金利のことです。要するに業績が優秀な企業が短期資金を用意する際の金利と連動する、というわけですね。
そして、短期プライムレートは日本銀行が設定する政策金利に影響されます。政策金利が短期プライムレートを通じて変動金利を決める、ということになります。
政策金利とは、中央銀行が政策として決める金利のことで、日本の場合は「無担保コール翌日物金利」が採用されています。これは金融機関同士が超短期(1日)のお金の貸し借りをする際に採用される金利です。
金融機関同士でなぜお金の貸し借りなどをするのか、と思われるかもしれませんが、民間の金融機関は日銀に一定の金額を預金しておくことが義務付けられています。
決済で一時的に手持ちのお金が少なくなり、一定の金額が用意できなくなったときは、お金が余っている他の銀行から借りることによってそれを満たそうとします。
変動金利に関する基本的なルール
変動金利は前述の通り金利が上下しますが、だからといって無制限に上下するわけではなく、幾つかのルールの範囲内で動きます。
変動金利といえども、法律で制限された金利を超えることはない
当たり前の話ですが、金利が法律で制限された金利を超えることはありえません。日本では出資法、及び利息制限法という法律で金利が制限されています。
金利の上限は、元本の額が10万円未満の場合は年20%、10万円以上100万円未満の場合は18%、それ以上の場合は15%となっています。住宅ローンは大抵の場合元本が100万円以上ですから、実質的な最高金利は15%ということになります。
とはいえ、住宅ローンは元本が多いため、利息15%になってしまったら大変なことになります。たとえば元本が3000万円の場合、利息だけで450万円にもなってしまい、元本は減りませんし、そもそも手元にお金がなくなるので生活すらままならなくなってしまいます。
そのため、多くの住宅ローンは以下のようなルールを採用し、急速に負担が増えないようにしています。
毎月の返済額を増やさないためのルール
多くの住宅ローンは5年ルール、および125%ルールを採用しています。5年ルールとは、仮に金利が変動したとしても、5年間は毎月の返済額を変えないというルールです。前述の通り、金利は通常年に2回見直されますが、そこで金利が上がったからと言って即毎月の支払いが増えるというわけではないのです。
125%ルールは、1回の更新では返済額の上限を最大125%までとするルールです。これにより、毎月の返済額がいきなり急激に増えるのを抑えます。
5年ルールと125%ルールで総返済額が増える?
「5年間は毎月の返済額が変わらない」「1回の更新では最大で125%までしか返済額が増えない」というルールは、一見消費者にとって有利に見えますが、実は必ずしもそうとはいえません。
まず、5年ルールで金利が上がった場合について考えます。金利が上がったら当然利息は増えるはずですが、5年ルールがあるので毎月の支払額は増えません。
これはどういうことかというと、毎月の支払いに占める利息の割合が増え、元本の割合が減ることを意味しています。元本の割合が小さくなれば、元本がなかなか減っていかないため、支払総額が増えていってしまいます。
一方、125%ルールでは、例えば実際には1度の更新で140%まで返済額を上げる必要がある場合でも、125%までしか返済額はあげられません。では残りの15%はどうなるかというと、次回の更新時に繰り越されます。つまり、返済の先送りです。返済を先送りすれば、利息の支払いが優先されるため、元金がなかなか減っていきません。
この2つのルールは確かに毎月の負担額を増やさないという点では消費者保護にもなっているのですが、一方で総返済額を大きく増やしてしまうという一面もあります。
5年ルールと125%ルールを採用していないローンはあるの?
5年ルールや125%ルールは法律で定められているものではないため、ソニー銀行や新生銀行など、一部の銀行はこれらのルールを採用しない住宅ローンを提供しています。
これならば利息の割合が増えて困るということはありません。反面、この場合毎月の返済額が急増してしまう可能性もあるので注意が必要です。
まとめ
- 変動金利は半年に1度上下するが、毎月の返済額の変更は5年に1回(5年ルール)
- 1回の変更では最大で125%までしか毎月の返済額が増えない(125%ルール)
- 5年ルールと125%ルールで総返済額が増えることも
- 5年ルールと125%ルールがない住宅ローンもあるが、その場合は毎月の返済額が急増する可能性も
このように、変動金利には様々なリスクがあります。借入額が少額であるか、返済期間が短気である場合にはそれほど心配する必要はありませんが、高額かつ長期の住宅ローンを組む場合は、固定金利を優先したほうが良いかもしれません。