「300坪の広さ」と言われて、とっさにどのくらいかイメージできる方はそう多くないと思います。300坪は昔使われていた広さの単位である「1反(たん)」とほぼ同じ広さ。身近なものでいうと、ちょうど学校の体育館くらいの広さだと思っておくと良いでしょう。
この300坪の土地を活用して収益性を考えた時、果たしてどのような方法を選んだら良いのでしょうか?
今回は、300坪の土地活用で頭を悩ませている方のために、その広さにおすすめの土地活用方法をご紹介していきたいと思います。また、300坪で土地活用を行う際の注意点、うまくいくためのポイントについても合わせてご紹介していきましょう!
300坪を土地活用する際の注意点
300坪の土地活用を考える際、どのようなことに気をつけたらいいのでしょうか?具体的な活用方法の前に注意すべき点をいくつかご紹介しておきたいと思います。
「300坪」は、土地活用におけるひとつの分岐点
最初にお伝えしておきたい重要な注意点は、300坪は土地活用において、ある種の「目安」となる広さであるということです。なぜなら土地活用では300坪以上か、それ未満かによって、建てられる施設の種類が大きく異なってくるからです。
言い換えると、保有している土地の広さが300坪より狭いか、それ以上かによって、利用できる活用方法の種類に違いが表れてくることになります。
300坪に適した土地活用方法は後で紹介するので良いとして、300坪を超えるとどういった活用方法が不向きになっていくのかを先にご紹介しておきましょう。
まず、その目的で使用するには土地が広すぎるため、太陽光発電やトランクルーム、駐車場経営などはやりにくくなってしまいます。
そのほかにも賃貸アパート経営・賃貸マンション経営などの賃貸住宅経営や、商業系施設経営に関しては、コンビニ経営などにはあまり適さないと考えておいてください。
賃貸経営で言えば、土地活用の中でもオーソドックスな方法ではありますが、300坪もの土地を資産として持っていると出ていくお金も大きくなります。大きな建築物が建つことになりますから、初期費用が莫大なものになります。
また、入居者ニーズは満たしているのか、初期費用に対して賃料はどれくらい望めるのか、空室などを管理するという面においてもリスクはどうしても大きくなってしまうので、慎重に検討する必要がありそうです。
「400坪あればできること」はできない
「300坪から土地活用でできることが大きく変わる」とお伝えしましたが、もうひとつ基準となる土地の広さがあります。それは300坪からもう100坪増えた「400坪」の広さです。
土地活用の方法は、400坪を超えると300坪のときよりもさらにできることが広がります。しかし、300坪の土地では400坪になればできることは、少し広さが足りないため、今度は先ほどとは真逆の「狭い」という理由からできないことが生じてしまうわけです。
たとえば、ホテルや病院として使うには、400坪あれば十分な広さが確保できますが、300坪では少し手狭だといえるでしょう。
広すぎず狭すぎない、適切な方法で活用する
以上のようなことから、300坪という広さはとてもむずかしい立ち居位置に置かれているということがおわかりいただけたかと思います。
300坪に満たない土地に適した方法では、広さが持つポテンシャルを十分に発揮できませんし、400坪の土地に適した方法ではほかの競合する施設と比べて「狭い」という印象を利用者に与えてしまうでしょう。
ですから、300坪の土地活用では、まさしくその広さにぴったりな、最適な方法の中から選択肢を選ぶことが重要になってくるのです。
300坪におすすめの土地活用
次は、いよいよ300坪の広さにあったおすすめの土地活用方法を具体的にご紹介していきましょう。
スーパーマーケット
土地活用の方法として有名なものと言えば、やはり商業施設は外せません。その中でも、300坪の広さに適した方法は、ずばりスーパーマーケットの運営です。
すでに周辺に十分な住宅が建っており、人は多いものの商業施設が少ない土地を持っている方に向いている活用方法です。利益率は10~20%といわれており、ほかの活用方法と比べても高い利回りだといえるでしょう。
ホームセンター
商業施設として300坪と並んでおすすめなのが、ホームセンターを建てる方法です。平日は高齢者や業者が農業や事務用品の買い入れに、休日は一般消費者が日用品やDIYの材料などを買うための需要が期待できます。
住宅地で、かつスーパーマーケットなど食料品を売る施設が充実しているような場合に、差別化のために建てるのが有効でしょう。
さらに店舗の独自性を強く打ち出したいのであれば、たとえば郊外であれば売り場面積を広くしたり、逆に駐車場面積を多くとったりするなど、立地条件に合わせた施設の作り方が重要です。
病院/クリニックモール
300坪の広さがあると、商業系施設経営だけでなく医療系施設経営・介護系施設経営にも適しています。このジャンルでまずご紹介したいのは病院です。
近隣に医療機関が不足している地域の場合、病院を建てれば周囲の需要を独占できるばかりでなく、社会貢献にもなります。周囲から感謝されそのうえ利益も上がる、まさに一挙両得な方法だといえるでしょう。
病院と似た活用方法として、「クリニックモールを建てる」という方法もあります。クリニックモールとは、複数の医院、歯科医院、調剤薬局などが同時に入居している施設のことです。
病院とは異なり、さまざまな分野に特化したクリニックが集まるため、利用者にとっては「好きなクリニックを選んで治療を受けられる」というメリットがあります。
単純に病院を建てるだけでは差別化につながらない、と考えられるようなケースでは、むしろこうしたクリニックモールのように独自性を発揮しやすい活用方法を選んだ方が良い場合もあるでしょう。
介護施設(老人ホーム、グループホーム、高サ住)
続いて、300坪に適した介護施設とはどのようなものかご説明します。「介護施設」といっても、実際には公的施設から民間まで種類が幅広く、どんな施設を作ったら良いのかわかりにくいという方もいるでしょう。
300坪に介護施設を作る場合、以下の4種類がおすすめです。
①デイサービス
日本語では「通所介護」とも呼ばれるもので、高齢者は施設に通うことで入浴や食事など日常生活の支援を受けられます。
介護が必要な高齢者を抱えた家庭にとっては、家族の負担が軽減されるのがメリットです。施設に通う高齢者自身にとっても、適切なケアが日常的に受けられるため、心身の健康を保ちやすいとされています。
ただし、デイサービス施設に必要な建物の延床面積は70坪以上とされているので、300坪でデイサービス施設を経営するのは少し「広すぎる」ということになってしまうかもしれません。
②ショートステイ
ショートステイとは、「短期入所生活介護(短期生活療養介護)」とも呼ばれるサービスです。要介護と判断された高齢者が、数日から1週間程度過ごし、その間施設で介護サービスの提供を受けられます。
家族にとっては、介護の負担から解放される期間ができるため、旅行など家を離れなければならないタイミングで短期間だけ利用されるケースが多いようです。
デイサービスと同様、ショートステイにも利用する高齢者の家族が介護負担から一時的に解放されるメリットがあります。
ショートステイには、特別養護老人ホームなど公的介護施設に併設されるタイプと、単独でショートステイ専用の施設を建てるタイプがありますが、300坪の土地活用を行う場合は民間施設となるので建てるのは必然的に後者です。
通常、ショートステイ専門の施設を建てるためには200坪以上の土地が必要ですが、300坪の土地を持っていれば広さは十分に確保できるため、ゆとりを持った施設を建てることができるでしょう。
③小規模多機能型居宅介護
小規模多機能型居宅介護とは、先にご説明したデイサービス、ショートステイに訪問介護を組み合わせたサービスを、利用者の要望に合わせて織り交ぜながら実施する施設です。
たとえば、1ヶ月の間に訪問介護を5日、デイサービスを5日、ショートステイを20日というふうに、それぞれのサービスを利用者と家族に合わせて組み合わせた介護サービスを提供します。
ちなみに、利用対象者は要介護(1~5)の認定を受けた人。かつ、施設と同一地域に住んでいないとサービスを受けることができません。
ほかの介護施設と同様、利用者の生活の質向上、家族の介護負担軽減が図れるほか、「施設に頼るだけではなく、ある程度の時間を自宅で過ごせる」というメリットがあります。
「介護は必要だけど自宅で過ごしたい。でも家族に大きな負担はかけられない」という要望を持つ高齢者に選ばれている施設です。
小規模多機能型居宅介護の施設を建てる際の必要建物床面積は150坪。従って、300坪の土地があれば土地活用の選択肢に入ります。サービス内容に訪問介護が含まれ、地域密着型のサービスとなるので高齢者が多く介護の需要が高い地域に向いているといえるでしょう。
④グループホーム
グループホームとは、「認知症対応型生活介護」とも呼ばれる施設です。認知症を患った高齢者が5~9人程度の少人数で、介護スタッフによるサポートを受けながら共同生活を送ります。
家族の介護負担を軽減するほか、少人数とはいえ決まったメンバーとともに暮らすことで認知症の症状を緩和、改善することが目的ですが、医療サービスの提供は基本的に行いません。
グループホームも複数の高齢者が暮らす設備が必要となることから、最低でも150坪の建物床面積が必要です。300坪の土地であれば十分建設可能なので介護施設運営の選択肢に入ってくるでしょう。
介護施設の運営は、全体として8~15%程度の利回りが期待できるとされています。商業施設などに比べればやや劣る形になってしまいますが、その分競合が少ない土地であれば安定した需要が見込まれるなどのメリットもあるので、どちらが良い選択肢かは一概にはいえません。あくまで、自身が保有する土地と周辺の需要に合っているかが重要なのです。
土地の形がいびつな場合は「200坪におすすめの土地活用」が有効な場合も
300坪の土地といっても、実際には皆整った形をしているとは限りません。なかには折れ曲がったり、複雑な形をしたりというふうに、土地活用しづらい形状をしている土地もあるでしょう。
そのような場合は、あえて300坪の土地におすすめの土地活用方法にこだわらず、もう一回り小さな土地である「200坪の土地におすすめの土地活用方法」を選んだ法が適切な場合もあります。気になる方は以下の記事を参考にしてください。
周辺環境が良く競合が少ない場合は「400坪におすすめの土地活用」も選択肢に
逆に、もっと広い土地である「400坪」におすすめの土地活用方法が適している、という場合もあります。
このように、状況によっては300坪よりも400坪におすすめの土地活用方法が適している場合もあります。気になる方は、以下の記事を参考にしてください。
300坪を土地活用する際のポイント
300坪の土地活用を行う場合の注意点と、おすすめの土地活用方法をご紹介してきました。最後に、今回のポイントをまとめて振り返っておきましょう。
活用したい土地の特性を見極める
特に「注意点」の項目でご説明したように、土地活用において300坪の広さは利用できる活用方法が変わる広さです。同時に、土地の形状や周囲の需要によっては、あえて300坪に適した活用方法ではなく、200坪や400坪に適した方法を選んだ方が良い場合もあります。
土地の特性と周辺需要にマッチした活用方法を選ぶ
したがって、最初に活用したい土地の形状や周辺の需要を調べ、「その土地を何坪の土地として扱ったらいいのか」を考えてみましょう。
もし、300坪の土地として扱うにはいびつな形をしているのなら200坪に適した活用方法を選ぶほうが良いでしょうし、逆に周辺に有力な競合がいない、強い需要が見込まれる活用方法があるなら、400坪におすすめの土地活用方法であってもあえて選択していくべきです。
リスクとリターンから、活用方法の詳細を決めていく
仮に商業施設を始めるにしても、スーパーマーケットにするかホームセンターにするかという選択肢はありますし、介護施設であればさらに細かく候補となる施設の種類は分かれます。
自身の土地にあった土地活用方法の目星がついたら、具体的にどんな施設を作りたいのか、詳細を検討していかなければいけません。
このステップでは、土地活用の大まかな方針を決めたときよりもさらに詳細に周辺の需要を分析する必要があるでしょう。300坪という土地はかなりの広さです。建築する施設も大きくなり、初期投資にかかる費用も高くなるため、失敗しないためには入念な準備が必要不可欠なのです。