60坪の土地というと「持っている」という方も少なくないと思います。ちょうど、庭付き一戸建てを建てるにはちょうど良い敷地面積ですから、やや広々としたお宅に住んでいる方にとっては馴染みのある広さだと思います。
なかには、「かつて居住用に使っていたが、現在は使わずそのままにしている」という方もいるのではないでしょうか?今回はそうした方のために、60坪の広さにおすすめの土地活用の方法をご紹介したいと思います。
60坪を土地活用する際の注意点
施設と周辺空間を合わせて活用するイメージで
仮に60坪に居住用住宅を建てる場合、建物だけでなく庭や駐車場、物置などを併設するケースがほとんどでしょう。60坪にまるまる家を建ててしまうと、一般的な家族の人数からすると大きすぎる家になってしまうからです。
土地活用を考える際にも同じことがいえます。60坪の広さを最大限に活用するためには、単にその上に大きな施設を建てるというよりも、施設に加えて周囲に便利な設備、空間を用意するといいでしょう。
たとえば、賃貸住宅を建てるのであれば駐車場付きにする、といった例がわかりやすいかもしれません。
同じ広さの競合との差別化を忘れずに
60坪は、土地活用のサイズとしては比較的ありふれた広さです。したがって、自分が活用しようとしている土地のそばにも同じ広さで土地活用を行っている可能性があります。
もし、そうした近隣の土地と活用方法自体が違っているのなら問題ありませんが、同じ方法で活用しようとする場合は注意が必要です。似たような施設や店舗が近い場所に複数できてしまうので、お互いに利用者の需要を奪い合い、思ったような利益を上げられない恐れもあります。
「近隣の土地と同じような活用方法しか選択肢がない」というような場合は仕方ありませんが、それでも何か類似施設と差別化できる方法を考えておいた方が良いでしょう。
60坪におすすめの土地活用
それでは、ここからは60坪の広さに適した、おすすめの土地活用方法をご紹介します。
駐車場にする
駐車場・立体駐車場の経営は土地活用の方法としては一般的で、よく知られているものです。
オーナー自身が土地を整備し、不動産業者を通じて募集した利用者から1ヶ月単位で利用料金を徴収する「月極駐車場」と、駐車場運営業者に土地を貸し出して整備させ、時間貸し駐車場として運営の一切を任せる「コインパーキング」という2つの方式がよく知られています。
逆に、デメリットといえるのが収益性です。料金設定は土地がある地域によって異なるものの、駐車スペースひとつで得られる利益は1ヶ月あたり数千円~数万円の範囲に収まるでしょう。
「もっと積極的にリスクをかけてでも高い収益を上げたい」と考えている方にはあまりおすすめできません。また、固定資産税についても、建築物を建てるよりは軽減措置はありませんので節税効果は小さくなってしまいます。
しかし、高い収益を望んでいる方であっても、駐車場経営を行った方が良い場合もあります。それは、「ほかの適切な活用方法が見つかるまでのつなぎとして行う場合」です。
駐車場は建物を必要としないためほかの方法に転用しやすく、「一時的なつなぎ」として行っているオーナーも少なくありません。ですから「活用方法に悩んだらとりあえず駐車場にしておく」というのもひとつの選択肢です。
賃貸住宅(アパート)を建てて貸し出す
駐車場経営と並んでおなじみの土地活用法といえば、賃貸住宅経営が挙げられます。60坪の広さの場合、マンションとしてはやや手狭になってしまうので、賃貸マンション経営よりは賃貸アパート経営を目指す方が無理のない方法だといえます。
賃貸物件は土地が属する地域によって家賃相場が変わりますが、おおよその利益率は5~15%程度です。住宅建設が必要となるため、数千万円程度の初期費用が必要になるのを覚悟しておいてください。
経営方法については、オーナー自身がすべて自己管理する方法や、土地と建物を一括で不動産業者に貸し出す方法があります。どちらにせよ、経営に関わるすべての事務作業をオーナーの手で行うのは難しいので、入居者の募集や賃料の徴収、建物の管理などは業者に委託して行うのが一般的です。
賃貸経営をする際には、ひとつ注意しなければならないことがあります。それは競合の多い活用方法なので、入居者ニーズを満たし、ほかの住宅よりも優位に立てるポイントを考えておく必要があるということです。
「60坪で土地活用する際の注意点」で例に挙げたとおり、駐車場などの付帯設備を用意し、その付加価値で差別化を図るといった方法が考えられます。
もうひとつ有力なのが、「賃貸併用住宅」を建てるというものです。賃貸併用住宅とは、たとえば「1階部分をオーナーの自宅、2階以上の部分を賃貸アパートとする」というふうに、オーナーの居住スペースと賃貸スペースを一緒にした住宅のことです。
この方法最大のメリットは、オーナー自身も新しい住まいで暮らしながら、賃貸から得られる家賃収入をローンの返済に当てられるということです。「土地活用をして大きな利益を上げたい」という人よりも、「コストを抑えて新しい住まいを手に入れたい」と考えている方に向いている方法だといえるかもしれません。
トランクルームを建てて貸し出す
トランクルームとは、いわゆるコンテナ型の物置スペースのことです。同じ作りのコンテナを土地に並べ、それぞれの収納スペースについて利用者を募集するという方法が一般的ですが、なかには建物の一室を改装してトランクルームとして貸し出す方法もあります。
今回はゼロからの土地活用を想定した方法をご紹介するので、コンテナを設置するやり方の方をイメージしてください。
駐車場経営ほどではありませんが、トランクルーム経営も初期費用があまりかからない活用方法です。人が住むための施設を建てるわけではなく、コンテナを設置するだけで良いので数百万円前後で済みます。
初期費用があまりかからないというと「得られる利益もその分少ないのではないか?」と懸念される方もいるでしょう。
とはいえ、周辺にトランクルームの需要がどれくらいあるかを事前の見極めをうまく行わなければ、こうした安定収入、かつ高い利回りを上げるのは簡単ではないでしょう。賃貸住宅が密集している地域のそばなど、住宅は多いものの賃貸ばかりで収納の需要が高そうだと見込まれるような地域に土地を持っている方にとっては有力な選択肢です。
太陽光発電を設置する
60坪程度の土地があれば、太陽光発電システムを設置し、発電した電気を電力会社に売ることで利益をあげる方法もあります。太陽光発電の場合、基本的に「土地を貸し出して業者に運用を委託する」といった仕組みはなく、オーナー自身が太陽光発電設備を設置しなければいけません。
太陽光発電で得られる利益は「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」によって、一定期間、価格が保証されています。価格とそれが固定される期間を決定する要因は、発電設備の規模と目的(事業用か住宅用か)です。
土地活用で行う太陽光発電は「事業用」となり、60坪の広さがある場合、最低でも30kWの太陽光発電設備を設置できます。そして、これらの条件の場合、買取価格は40~30円程度(開始時期により異なる)、固定期間は20年となるので長期間に渡り高い利益を確保することが可能です。
固定価格買取制度で保証される買取単価は太陽光発電の普及に伴い年々下落する傾向にあるので、太陽光発電を行いたい場合はできるだけ早くスタートした方がより多くの利益を得ることができるでしょう。
太陽光発電はその名の通り、太陽光という自然界のエネルギーを利用した発電方法です。地球環境にも貢献できる上に安定していますが大前提として「1年中、一定上の日照が確保できる土地」というように、立地条件が良い敷地を持っていなければ別の方法を検討した方が良いでしょう。
その他の活用方法
主要な方法ではありませんが、もうひとつ珍しい土地活用方法をご紹介しておきましょう。
一箇所に同じモデルの家をまとめて作り、一斉に販売する分譲住宅。かつて、購入希望者へ内覧を行う際は建設した住宅のひとつをモデルルームとして使うケースが多かったですが、現在では販売する分譲住宅建設地のそばに事務所を併設したモデルルームを建設し、そこで内覧や打ち合わせを行うケースが増えてきています。
60坪は、この「分譲用モデルルーム」としてサイズがうってつけなので、用地を探している不動産会社と契約して土地活用を行うことも可能です。
ただし、モデルルームは分譲住宅を売るまでが役目なので、契約期間は2年程度と短期間になります。
ただ、利益率は通常の定期借地契約の2倍程度と高くなる場合が多いようです。契約期間が終われば不動産会社によって再び土地が更地にされて返却されるので、ほかの長期的な活用方法を選ぶまでのつなぎとして使うこともできます。
60坪を土地活用する際のポイント
今回ご紹介した方法を踏まえて、60坪を土地活用する際のポイントをまとめてみました。
初期投資の額から選択肢を絞る
60坪におすすめの土地活用法は、駐車場やトランクルーム経営のように初期投資の額が少ないものもあれば、賃貸住宅のように多くの初期費用を必要とするものもあります。
初期費用がまかなえないのであれば、その方法はそもそも選択することができません。その時点である程度候補となる選択肢を絞り込むことができます。
自分の土地に合った条件を満たす方法を選ぶ
太陽光発電や賃貸住宅がわかりやすい例ですが、自身が保有する土地に適した活用方法を選ばない限り成功は見込めません。その活用方法に求められる土地の条件は何なのか、自分の土地はその条件を満たしているのか確かめておいてください。
最適な活用方法が見つからなければ「つなぎ」の方法で凌ぐ
おすすめの方法の中でご紹介した駐車場やトランクルーム、分譲用モデルルームといった方法は、建物が後に残らないためほかの方法への転用が比較的容易です。
もし、現時点で適した活用方法が見つからなかったとしたら、とりあえずこれらの方法で運用しておきより適切な方法が見つかるまでの「つなぎ」にしておくのも良いでしょう。
60坪の土地活用は選択肢が広く、競合も多いため迷うことが多いはずです。今回ご紹介したようなポイントを踏まえながら、専門家にも相談しつつ、あなたの土地にぴったりな活用方法を見つけ出してください。