空き家や土地の維持費は年間20万円以上?その内訳と対処法

建物や土地などの固定資産は、所有しているだけでも毎年多額の費用がかかります。一般的なレベルの空き家でも、年間20万円以上の維持費がかかることは珍しくありません。使わなくなった空き家や土地を放置するのは、何も生まない金食い虫を放置するのと全く一緒です。

使っていない空き家や土地はよほど特殊な事情がない限りは、すぐに売却するか活用するかすべきです!

……というのは簡単ですが、そうは言っても空き家や土地などを処分するのには手間も時間もかかりますし、なかなかやる気が起きないという気持ちもよくわかります。そこで今回は、空き家や土地をこのまま維持するためには毎年どれくらいの費用がかかるかをお教えいたします。その額の多さに驚いたら、すぐに売却価活用を考えてください。

固定資産税・都市計画税

建物や土地は固定資産であり、固定資産には固定資産税がかかります。また、地域によっては都市計画税がかかることもあります。

空き家や土地の規模にもよりますが、場合によっては毎年の支払額が50万円を超えることもあるので注意が必要です。

固定資産税・都市計画税の計算方法

固定資産税・都市計画税の計算方法は以下のとおりです。

  • 固定資産税=固定資産税評価額×1.4%
  • 都市計画税=固定資産税評価額×0.0%~0.3%

固定資産税評価額とは?

固定資産税評価額とは、固定資産税・都市計画税を計算する際に必要となる、市区町村が定める固定資産の評価額のことです。あくまでも評価額であり、固定資産税評価額通りにその固定資産が売却できる保証は全くありません。固定資産税評価額は実際の取引価格の70%ぐらいになることが多いです。

固定資産税評価額は総務大臣が定めた固定資産評価基準に基づき、市町村が個別の土地・不動産に対して策定します。自治体の担当者がその土地や建物の評価額はいくらになるかを確認、計算しているのです。

土地の固定資産税額の計算方法

土地の固定資産税評価額は、以下のように計算していきます。

地目の分類

土地の固定資産税評価額を計算する上では、まずは地目を決定する必要があります。地目とは土地の現状や使用目的などに応じて決まる分類で、宅地・山林・原野・農地・鉄道用地・学校用地・溜池・畑などがあります。

空き家が建っている家は宅地、特に何もない空き地は原野となるのが基本です。

同じ面積であっても、地目によって大きく評価は変わります。立地が好条件で使いやすい土地ならば固定資産税評価額は高く、そうでない場合は低くなります。

原則として、宅地の固定資産税評価額が最も高くなります。利便性が劣る山林や農地は固定資産税評価額が低くなります。今回は宅地を例に話を進めます。

面積調査

土地の地目を決定したら、面積を計算します。その土地が登記簿(登記所に備えられている公的な帳簿)に登記されている場合は、そこに書いてある「地積」の数字をそのまま利用します。

登記簿に登記されていない土地については、現況の地積を計算します。古い土地などは登記されていない可能性がありますので、気になる方は登記所で確認してみましょう。

地域確認

地目と面積がわかったら、次にその土地がどこにあるかを確認します。土地が市街地的形態を形成する地域≒市街化区域に該当するときは、「市街地宅地評価法」という計算方法を使います。そうでない地域の場合は、「その他の宅地評価法」という計算方法を使います。

市街地宅地評価法に基づく計算方法

市街化宅地評価法による土地の価格の計算式は以下の通りです。

固定資産税評価額=固定資産税路線価 x 土地面積 x 評点

固定資産税路線価とは、道路に設定された価格のことで、10万円/m2のように、1m2当たりの価格で表されます。

10万円/m2の道路に接している100m2の土地がある場合は、その土地の固定資産税評価額は基本的に10万円/m2×100m2=1000万円となります。

固定資産税路線価は市区町村役場で確認できるほか、自治体によってはウェブサイトで公開していることもあります。

評点とは固定資産税評価額を補正するための係数のことです。例えば、同じ道路に接する同じ面積の土地でも、正方形で使いやすい土地と、三角形で使いづらいでは実質的な資産価値は異なります。

この場合は後者のような土地に1未満の評点をかけることによって、固定資産税評価額を調整します。

評点は土地の接道状況や奥行きの長さ、間口の広さ、土地の形状などによって決定しますが、中でも評点に大きな影響を与えるのは土地の形状です。

土地が三角形だったり、三角形に近い台形だったり、十角形だったりすると、評点は大きく下がり、それに応じて固定資産税評価額も低くなります。

その他の宅地評価法に基づく計算方法

その他の宅地は、標準宅地の価格との比較で決まります。標準宅地とは市区町村が定める、その地区内での標準的な宅地のことです。標準宅地と対象となる宅地を比較し、資産価値の大小に応じて固定資産税評価額を決定します。

通常、標準宅地は幹線道路に接しており、なおかつ正方形もしくはそれに近い長方形の土地、つまり比較的資産価値が高い土地の中から選ばれます。一方、対象となる宅地が以下のような特徴を保つ場合は補正がかかります。

  • 旗竿地→ ×0.7
  • 不整形(長方形ではない)→× 0.8
  • 幹線道路に接していない→× 0.9

例えば、標準宅地が10万円/m2で、対象となる宅地が旗竿地かつ幹線道路に接していない土地だった場合、その宅地の固定資産税評価額は10万円/m2×0.7×0.9=6.3万円/m2となります。

具体的に計算してみよう

例1

  • 土地:土地が市街地的形態を形成する地域
  • 固定資産税路線価:20万円/m2
  • 土地面積:120m2
  • 評点:0.92
  • 固定資産税評価額=20万円/m2×120m2×0.92=2208万円
  • 固定資産税=2208万円×1.4%=30.912万円
  • 都市計画税=2208万円×0.0~0.3%=0~6.624万円

例2

  • 土地:そうでない地域
  • 標準宅地:8万円/m2
  • 土地面積:200m2
  • 土地の特徴:旗竿地、不整形
  • 固定資産税評価額=8万円/m2×200m2×0.7×0.8=896万円
  • 固定資産税=896万円×1.4%=12.54万円
  • 都市計画税=896万円×0.0~0.3%=0~2.68万円

土地の固定資産税評価額の減免措置

宅地に関しては、固定資産税が低くなる減免措置制度が採用されています。まず、小規模住宅用地(住宅1戸当たりにおける面積が200m2以下の部分)については、固定資産税が6分の1に減免されます。

また、一般住宅用地(小規模住宅用地に該当せず、なおかつその上に立っている家屋の延床面積の10倍以下の部分)については、固定資産税が3分の1に減額されます。

ちょっとわかりづらいので、具体的な例を使って計算してみましょう。

例1

  • 固定資産税額:30万円
  • 敷地面積:100m2
  • 家屋面積:60m2

この場合、すべての土地が小規模住宅用地に該当します。そのため、固定資産税は30万円×1/6=5万円となります。

例2

  • 固定資産税額:60万円
  • 敷地面積:500m2
  • 家屋面積:70m2

この場合、200m2の部分が小規模住宅用地に、残りの300m2の部分が一般住宅用地に該当します。そのため、固定資産税額は60万円×2/5×1/6+60万円×3/5×1/3=16万円となります。

建物部分の固定資産税額の計算方法

空き家が上に立っている場合は、そちらにも固定資産税・都市計画税がかかります。土地の固定資産税評価額は年によって上がったり下がったりするのが一般的ですが、建物は経年劣化するため、固定資産税評価額は年々下がっていくのが一般的です。

また、同じ築年数であっても、長持ちする鉄筋コンクリート造や鉄骨造の建物は、木造の建物と比べて評価が高くなります。

か多くの固定資産税評価額は通常、再建築費を基準として評価する再建築価格方式によって計算されます。これは、評価の時点においてその建物と同一のものをその場所に建築するものとした場合に必要とされる建築費を計算し、そこに経年劣化に応じた原価を考慮して価格を求めるものです。

建物が古くなればなるほど固定資産税評価額は低くなりますが、再建築価格の2割以下にはならないという決まりもあります。再建築価格の2割まで下がったあとは、固定資産税額はほぼ変わらなくなります。

再建築価格の2割に到達するまでの時間は木造なら25年程度、鉄骨造なら30年~40年程度、鉄筋コンクリート造なら60年程度です。

建物の固定資産税評価額は公的機関で調べる

再建築価格を素人が計算することはほぼ不可能です。建物の固定資産税額を知りたい場合は、市区町村に問い合わせるのが最も簡単です。

ちょうど今の時期(5月下旬)は、固定資産税納税通知書と課税明細書が地元の市区町村役場から送付されてくるので、それで確認してみてください。これらの通知書は再発行していないので、紛失してしまった場合などは固定資産税公課証明書を市区町村役場で請求してみてください。

火災保険・地震保険

空き家は人がいない以上火災が発生することはめったにないのだから火災保険は不要と思われるかもしれませんが、総務省の調査によれば、出火原因で最も多いのは実は放火(放火の疑い含む)です。

空き家は人が入っておらず人の目もないので放火の対象になりやすいことを考えれば、火災保険に入っておくに越したことはありません。

しかし、空き家は人が住んでいる住宅と比べて火災保険の契約条件が厳しくなっており、また加入できたとしても保険料は高くなることが多いです。

建物の用途は

  • 住宅物件
  • 一般物件
  • 工場物件
  • 倉庫物件

に分けることができます。人が住んでいる家は最も保険料が安い住宅物件とみなされますが、空き家は場合によってはそれよりも保険料が高い一般物件とみなされることがあります。

実際には個々の事情(空き家に家財道具が置いてあるか否か、空き家歴が何年あるのかなど)も考慮されますが、とにかく人が住んでいないと加入も保険料も厳しくなることだけ覚えておいてください。

地震保険は住宅物件ならば加入可能、一般物件ならば不可能になっています。

火災保険料・地震保険料は地域や建物の規模・構造によって大きく異なるのでなんとも言えませんが、火災保険のみの場合の保険料は年間1万円~4万円程度、地震保険付きの場合の保険料は年間3万円~8万円程度になることが多いです。

また、家財保証などをつけると保険料はさらに高くなります。

水道料金

空家の場合、水道を通したままにしておくならば水道代金がかかります。空き家といえども何年も放置する訳にはいきませんし、たまに来たときにトイレも掃除もできないと困るので、できるだけ通したままにしておいたほうがいいでしょう。

水道代金は自治体によって多少異なりますが、どこでも基本料金と従量料金の2段階になっています。基本料金は給水管の口径、従量料金は消費した水の体積で決まります。

例えば東京23区の場合、上水道の基本料金は月1170円、従量料金は1ヶ月あたりの消費量が5m3以下ならば無料です。一方、下水道の基本料金は月560円、従量料金は1ヶ月あたりの消費量が8m3以下ならば無料です。財政事情が苦しい地方の自治体などだと、もっと高くなります。

空き家で1ヶ月に多くの水を消費することはあまりないでしょうから、基本料金のみがかかると考えていただいて結構です。従って、年間上水道料金は1170円×12ヶ月=1万4040円、年間下水道料金は560円×12ヶ月=6720円となります。

なお、基本料金は水道の口径が小さいと安くなりますが、口径を小さくするためには工事が必要です。工事費用を回収するためには数百年以上の期間が必要になるため、そのままにしておいたほうがいいでしょう。

電気料金

空家の場合、電気を通したままにしておくならば電気料金がかかります。空き家といえども何年も放置する訳にはいきませんし、たまに来たときに通電できないと困るので、できるだけ通したままにしておいたほうがいいでしょう。

電気代も水道代と同じく、基本料金と従量料金から成り立っています。基本料金は契約アンペア、従量料金は使用した電力量によって決まります。電力会社によって多少異なりますが、どこでもだいたい同じ価格です。

例えば東京電力の場合、30Aの基本料金は842.40円、40Aの基本料金は1123.20円、50Aの基本料金は1404.00円となっています。一方、従量料金は最初の120kWhまでは1kWhにつき20.68円となっています。また、1ヶ月の電力使用量が0だった場合、基本料金は半額となります。例えば30Aで電力使用量が0だった場合、842.40÷2=421.20円となります。

仮に1年間全く電力を使用しなかった場合、年間電気料金は421.40円×12ヶ月=5056.8円となります。仮に半年に1回訪れて多少電気を使ったとしても、年間電気料金が1万円を超えることはないでしょう。

管理サービス費用

空き家が遠隔地に会って管理が大変な場合は、住宅会社などが提供している空き家の管理サービスを利用するといいでしょう。空き家の管理サービスとは、外部確認や清掃、巡回報告書などがパッケージになったサービスです。

例えば大東建託パートナーズ株式会社の場合、一戸建ての内部巡回サービス(月額1万円、月1回巡回)、外部巡回サービス(月額5000円、月1回巡回)、マンション巡回サービス(月額8000円、月1回巡回)のサービスを提供しています。

通気や換気、清掃、郵便物管理、建物状況の確認、通水などをすべて任せることができるので大変便利ですが、費用もそれなりにかかります。業者によってはもっと安くなる場合もありますが、その場合はサービスも乏しくなるので注意が必要です。

空き家や土地の管理費は年間20万円以上になることも

空き家や土地の管理に様々な費用がかかることは皆さんにご理解いただけたかと思います。空き家の場合、ほとんどのケースで固定資産税額が6分の1になりますが、その分上下水道料金や電気料金、管理サービスなどが必要になるため、結果として年間の出費が20万円~30万円になることもままあります。

土地は固定資産税の減免制度がないため、更に高くなります。毎年物件価格の数%もの費用を使わなくなった空き家に費やすのは無駄以外の何物でもないため、よほど特殊な事情がない限りはすぐに物件を処分すべきなのです。

たしかに手間はかかりますが、毎年20万円以上のお金を余計に稼ぐ手間と比べれば小さなものです。

空き家や土地はどうやって処分する?

不要な空き家や土地を処分する最も基本的な方法は売却です。たとえ価格が二束三文になったとしても、利益を生まない金食い虫を所有し続けるよりはずっといいでしょう。

といっても、自分で買い手を見つけるのは非常に難しいので、基本的には不動産会社に客探しを任せることになります。

それでも全く売れない場合、不動産は所有権放棄ができないので、寄付も検討した方がいいでしょう。もちろん、寄付といえども誰かが受け取ってくれる保証があるわけではありませんが、個人、特に隣地の所有者は寄付ならば受け取ってもらえる可能性が高いです。

また、学校やNPOなどの公益法人に寄付する場合は税制上の優遇措置があり、譲渡所得税が発生しないためうまくいきやすいです。

空き家や土地を相続する場合の注意点

相続というのは基本的に「すべての財産を相続する」か「すべての財産を相続放棄する」の2択しかありません。

「現金や預金は相続するが、空き家や土地だけを相続放棄する」というのは不可能です。空き家や土地だけを相続放棄したい場合は、他の財産を生前贈与で移し替えて、最後に残った空き家や土地だけを相続放棄することになります。

まとめ

  • 空き家や土地などは、所有しているだけでも費用がかかる
  • 費用の中で最も高額なのは固定資産税・都市計画税で、数十万円になることも
  • 建物付きの土地は固定資産税が減額されるが、上下水道料金や電気料金がかかる
  • 買い手がどうしても見つからない場合は、寄付も選択肢に入る

空き家や土地は放置すればするほど余計な費用がかかり、また資産価値も下がってしまいます。なるべく早めに適切な形で処分しましょう。