農地活用の方法にはどんなものがある?転用や売却時の注意点も紹介

自分では使わなくなった農地、ただ持っているだけではもったいないですよね。農地は優遇されているとはいえ、毎年ある程度の固定資産税はかかりますし、長期間に渡り放置すると土の質も悪くなり、農地としての価値が低下していってしまいます。

農地の活用方法としては、大きく分けて3つの選択肢があります。売却、転用、そして第三者への貸し出しです。いずれもいくらかの収入は見込め、さらに売却や貸し出しを行えば固定資産税を支払う必要もなくなります。

転用とは、土地を農地として利用するのではなく、他の用途に使うことを言います。更地にして駐車場にしたり、宅地用の土地として使うなどが一般的ですね。

ただ、農地の売却、転用は農地法という法律の中で厳しく制限されており、こちらの一存で勝手に行うことはできません。それどころか、場合によっては転用が認められないこともあるのです。

このページでは、農地の活用方法についてと、それに伴う注意点について解説していきます。現在、遊ばせているだけの農地があるなら、ぜひいずれかの方法を検討してみてくださいね。

農地を放置しておくことにメリットはない

近年、耕作放棄地がどんどん増えています。耕作放棄地とはその名の通り、耕作されずに放棄されている農地のことです。

耕作放棄地が増えている要因にはさまざまなものがありますが、代表的なものは農業従事者の高齢化、そして若者の農業離れによる後継者の不足でしょう。

主にこの2つの理由から営農を行う人が減り、その結果使われていない農地が増え、耕作放棄地となってしまっているのですね。

しかし、農地を放置し、耕作放棄地のまま所有することにメリットはほぼありません。農地は、面積単位あたりに期待できる収益性の低さから固定資産税が安く設定されていますが、農地ではなく耕作放棄地であると判定されると、そのメリットを享受できなくなります。

さらに平成29年度から、耕作放棄地の固定資産税を従来のおよそ2倍に引き上げる方針を国が打ち出しています。固定資産税の徴収は市町村が行うため、国の決定=即実行ではありませんが、近い将来、耕作放棄地の所有者には重税が課せられるかもしれません。

耕作放棄地をそのまま放置しておくと、農地としての質がどんどん悪くなっていきます。放置期間が短ければ復旧、再生は容易ですが、ある一定レベルにまでなると、もはや農地としては使用できなくなってしまう可能性があります。

こうなると、農地として売却することは難しくなりますし、貸し出すこともできなくなるでしょう。選択肢としては転用くらいになりますが、転用が認められるかできるかどうかは立地条件やその他の条件に左右されます。

もし転用が認められなかった場合、そのまま耕作放棄地として持ち続けるしかなくなるかもしれません。こんなことにならないように、なるべく早めに農地の活用方法を検討することをおすすめします。

主な農地活用方法3つ

ここからは一般的な農地活用方法を3つご紹介していきます。状況によっては、これら以外にも活用方法があるでしょうから、自分にはどれがベストなのかを吟味したうえで決定しましょう。

農地の売却

一番最初に思い浮かぶのがこれかもしれません。売却すればまとまったお金が入りますし、土地を手放すことによって固定資産税からも逃れることができます。

ただ、農地の売買は一般的な不動産取引とは少し勝手が違います。事前に、市町村が運営している農業委員会から許可を得る必要があるのですね。これは法律によって定められていることなので、無視することはできません。

また、農業者以外にに農地を売却することはできません。これも農地法の中で、農地を買い取れるのは50a以上の農業用地を持つ者だけであると定められているためです。

さらに、農地は不動産屋でなかなか扱ってもらえないという問題もあります。上述したように、農地の売買は手続きがやや複雑で、それに加えて取引価格がそれほど高くありません。

取引価格が高くないので、不動産屋の利益となる仲介手数料もそこまで高く設定することはできません。そのため、手続きは複雑なのに対して利益にならないということで、不動産屋にとってあまりメリットがないのです。

ですから、売却相手は基本的に自分で探すことになります。第一候補になるのは周辺の農家でしょう。遠く離れた土地で別の農地を持ちたいと考える人はあまりいないでしょうから、自然と取引候補は絞られてきます。

隣の農地の所有者がわかっているならぜひ相談してみましょう。分断された土地を所有するより、ひとつながりになった土地を持つほうがメリットが大きいので、買い取ってくれる可能性は十分にあるはずです。

取引の算段がついたら、申請書を作成してその地域の農業委員会に届出を行います。それと並行して登記手続きといった各種事務手続きを行い、無事、委員会から許可が出れば取引は成立です。

また、転用と組み合わせれば農地以外の用途の土地として販売することも可能です。これなら農家以外とも取引できますし、不動産屋で扱ってもらえる可能性も大きく上がるでしょう。詳しくは転用の項目で解説しますね。

農地の転用

農地が売却できない、または売却する気はないけれど他の使い道を探したいという場合は、転用を検討してみましょう。転用を行えば、駐車場やマンションやビル用の土地としての利用ができるようになります。

ただ、転用に関しても農業委員会の許可を得る必要があり、いくつかの条件をクリアする必要があります。その条件は立地条件と一般条件に分かれており、それぞれ満たす必要があるうえ、場合によっては絶対にクリアできない可能性があることを留意しておきましょう。

まず立地条件から解説していきますね。農地は、農業用地としての優秀さごとにいくつかの区分にグレード分けされており、一般的に都市部に近いほどグレードは低く、地方にある土地ほどグレードは高く設定されています。

各区分の名称は以下の通りです。覚える必要はないので、参考程度に見ておいてください。

・農用地区域内農地
・甲種農地
・第一種農地
・第二種農地
・第三種農地

上に行くほど優秀な農地であるということになります。自分の農地がどれに属しているの確認は、その地域の農業委員会に問い合わせることで確認できますよ。

そして、転用の許可が下りるのは第三種農地と第二種農地のみです。第一種農地でも転用許可が下りることはありますが、それは例外的なケースであると覚えておきましょう。

甲種農地と農用地区域内農地は原則的に転用の許可は下りません。農地区分はこちらの一存で決められるものではないので、現在、これらの区分に属しているなら転用の許可は期待できないということになってしまいます。

また、立地条件をクリアしたからといって必ず転用の許可が下りるわけではありません。さらに一般条件についても委員会の審査を通過しなければなりません。

一般条件とは、転用後の農地をどう使うのかについての審査です。駐車場にするのか、業者に貸すつもりなのか、そうであるならその打ち合わせはどこまで進んでいるのかなど、かなり細かい点まで詰めたうえで申請書を作り、提出する必要があります。

どうしてここまで審査が厳しいのかというと、現代の日本において農地はとても重要な存在になってきているためです。日本の食料自給率は年々低下しており、2015年にはついに40%を切ってしまいました。

農地は食糧を生産できる貴重な資源です。ですから、そう簡単に農地を減らすわけにはいかないのですね。優秀な農地を保護し、少しでも生産能力を維持するために、これらの厳しい条件があるというわけです。

審査を通過し、晴れて許可が下りれば、転用作業を開始できます。また、転用が完了し、農地以外になった土地については、以降の転用時に委員会の許可はありません。一度駐車場にでもしてしまえば、そのあとは住宅用地でもなんにでも使えるようになるというわけですね。

これを利用すれば、農家以外にも農地を売却することが可能です。売却する前に転用手続きを行い、農地以外の地目にしてから売却手続きを行うのです。

ただ、この方法を使うにはまず転用の審査を通過しなければなりません。前述したように、転用が認められない農地もあるので注意してくださいね。

農地の貸し出し

先祖代々受け継がれてきた土地を手放したくない、農地以外にしたくないという人もいるでしょう。そんなときは農地の貸し出しを検討してみるのも手かもしれません。

貸し出しであれば契約期間が終われば土地は手元に戻ってきますし、あらかじめ農地として使用することを義務づけておけば、農地以外の用途で使われる心配もないでしょう。

問題はどうやって貸し出し相手を見つけるかですが、それにうってつけの制度があります。国が運営している「農地中間管理機構」、通称「農地バンク」です。

農地バンクとは農地の貸し出し、集積化の斡旋事業のようなもので、農地を借りたい人と貸したい人のマッチングサービスだとイメージすればわかりやすいでしょうか。

農地の売却の項目のところでお話ししたように、基本的に農地の買い取りは農家しかできません。これでは新規参入者の流入は見込めず、農産業はますます衰退していってしまいます。

そこで、農地の貸し借りを容易にすることで参入障壁を下げ、多くの若者に農業に興味を持ってもらおうというのが農地バンクの狙いです。また、結果として耕作放棄地の減少にもつながるでしょう。

ただ、農地バンクを利用したからといって必ず貸し出し相手が見つかるわけではありません。借りたい人にも希望する条件がありますから、あまりに不便な土地を登録してもマッチングは難しいようです。

実際、農地バンクの利用者は貸し出し希望者のほうが圧倒的に多いとされ、成約率も伸び悩んでいます。

そもそも条件がいい土地なら農地バンクを利用しなくても貸し出し相手や売却相手が見つかるでしょうから、農地バンクに登録されている時点であまり良い土地ではないのでは?と推測されてしまいますね。

それでも、データ上は80%を超えるマッチング率になっていますから、農地の活用方法について悩んでいるなら一度検討してみるとよいでしょう。

まとめ

農地は売却、転用時にいくつかの審査をクリアしなければならず、また、不動産屋もなかなか協力してくれないので活用方法に悩みがちです。

しかし、土地を放置して耕作放棄地にしてしまうことにはデメリットが多く、おすすめできません。今回ご紹介した3つの活用方法をベースに、他に選択肢がないかも探ってみましょう。

土地は、大きな収益を期待できる貴重な資産ですから、ただ遊ばせておくのはとてももったいないですよ。