マンション売却時にかかる費用の相場と流れを解説

マンションの売却にはいろいろな工程があり、最終的な手続きが済むまで半年から1年かかることも珍しくありません。その間、さまざまな名目でお金の支払いが必要になったり、逆に手元に入ってきたりします。

今回は、マンション売却の流れに従って必要になる費用と得られる利益を順番にご紹介しましょう。一般的な費用相場もお伝えするので、マンションの売却に伴って最終的にいくら位のお金がいつ必要になるのかわかるはずです。

マンション売却時のお金の流れ

マンション売却までの流れには、4つの大きな工程があります。売却の準備をする「売却前」、マンションの買い手を探す「売買開始時」、買い手が見つかって売却手続きを進める「売買契約時」、そして契約がまとまり代金をもらって建物を引き渡す「決済・引渡し時」の4つです。

それぞれの工程で、「出て行くお金=費用」と、「手元に入ってくるお金=利益」の2種類が発生します。まずはどのような費用が必要になるのか順番に見ていくことにしましょう。

売却前

売却前にかかる費用には、クリーニング代とリフォーム費用があります。

①クリーニング代

クリーニング代とは、売却するマンションの各個室や共用部分を清掃しきれいにするための費用です。

当たり前の話ですが、部屋や建物がきれいな方が内見時の印象もよく、買い手を見つけやすくなるでしょう。

クリーニング代を決定する要因は「部屋の広さ」です。一般的なクリーニング代の相場は1LDKの場合3~4万円、2LDKでは3~7万円というふうに、部屋が広いほど高くなっていきます。広い部屋ほど単純に清掃しなければならない面積が増えるため、負担が増えるのは当然です。

ちなみに、空室をクリーニングするよりも居住者がいる部屋をクリーニングするほうがより費用が高くなってしまいます。前述の費用は空室の場合のもので、居住者がいると費用は2~5割増しになると考えてください。

「家具など作業の邪魔になるものが増える」、「居住者がいないタイミングでしか作業ができない」など、居住者がいる部屋だと作業がやりづらい条件が増えてしまうためです。クリーニングを行いたい場合は、可能なら空室にしてから行った方がいいでしょう。

②リフォーム費用

リフォーム費用とは、古くなったマンションの部屋を改修し新しくするための費用です。ここではマンション全体の修繕ではなく、個々の部屋の内装リフォームをイメージしてください。

リフォームを行う目的も、基本的にはクリーニングと違いはありません。古びたデザインの内装よりも新しいデザインの内装にしたほうが、マンションの価値は高まります。

バスルームやキッチンなどの住居設備も新しい方が入居者の目を集めやすいため、買い手にとってもより魅力的な物件に映ることでしょう。

とはいえ、「これから手放す物件をリフォームする」という行為にはリスクも伴います。リフォーム費用を回収できるくらいマンションが高値で売れれば良いのですが、そうならなければ単にリフォーム費用が余計にかかっただけで終わってしまうからです。

買い手の中には「古いマンションを買い取って自分で好きなようにリフォームしたい」と考えている人も少なくありません。そういう人にとって「リフォーム済みのマンション」はただの割高な物件に見えてしまうでしょう。

リスクを取ってリフォームし物件価値を高めるか、それともリフォームせずにそのまま売却するか・・・、どちらが良いかは一概には言えません。

しかし、売却前に考えるべき重要なポイントであることは間違いないでしょう。

ちなみにリフォーム費用の相場は、リビングなどの場合50~100万円程度、キッチンやバスルームだと50~200万円前後になります。

売却開始時

売却開始時にかかる費用は「広告費」です。

①広告費

広告人は、物件の買い手を募集する広告を作るための費用です。通常、マンションを売却するときは不動産仲介業者を通して買い手を探すことになります。

その際、単に不動産売買サイトなどに登録するだけでは買い手が見つからない場合、別に広告を作って広く買い手を募ることも可能です。

広告を作れば露出が増えるわけですから、買い手が見つかる可能性は高くなるでしょう。一方、余計なコストがかかってしまうことになるため、出費を増やしたい方にはおすすめできません。

なかなか買い手が見つからない場合、広告を出すだけでなく別の不動産業者に変えるという方法もあります。

売買契約時

通常、売買契約時のタイミングで「必ず支払わなければならない費用」というものはありません。しかし、なかには「仲介手数料の半額」を支払わなければならないケースもあるので注意してください。

①仲介手数料の半額

仲介手数料とは、不動産仲介業者に対して売買の仲介を担った費用として支払う手数料のことです。宅地建物取引業法によって上限額が定められており、次の式で求められる金額以下にしなければならないと定められています。

不動産の売買価格 × 3% + 6万円 + 消費税

通常、仲介手数料の支払いが行われるのは「決済・引き渡し時」のタイミングです。

しかし、なかには「売買契約時」の段階で仲介手数料の半額を支払う仕組みになっている不動産仲介業者もあります。これは純粋に契約している不動産仲介業者によって異なるので事前に確認しておいてください。

決済・引き渡し時

決済・引渡し時の工程では、出て行くお金と入ってくるお金の両方が発生します。出ていくお金(費用)は、「仲介手数料(の残額)、登記費用、印紙税、引越費用、一括繰り上げ返済手数料」の5つです。

そして入ってくるお金(収入)は、「マンションの譲渡益、管理費・修繕積立金、(買い手からの)固定資産税・都市計画税、火災保険料・銀行保険料」です。

決済・引き渡し時に発生する費用

①仲介手数料(の残額)

すでに仲介手数料の半額を支払っている場合は残りの半額を、そうでない場合は全額をこのタイミングで支払います。手数料の金額は業者ごとに異なるので確認が必要です。

②登記費用

マンションの売却時には、持ち主が変わったことを示す「所有権移転登記」、住宅ローンの抵当に設定していたマンションの抵当権を外す「抵当権抹消登記」が必要です。

このうち、所有権移転登記については買主側の負担となるので、売主側が支払わなければいけないのは「抵当権抹消登記」の費用だけとなります。

マンションを売却すると売却費用で住宅ローンを返済できるので、マンションの抵当権を外すことが可能です。抵当権抹消登記は通常、司法書士に委託して行います。司法書士報酬が1万円程度、法務局に支払う登録免許税が2千円程度となるので、合計1万2千円が費用の相場です。

③印紙税

不動産売買で発生する利益には税金がかかります。この税金を支払うために、売買契約書に貼るのが印紙です。支払うべき税額は売買金額によって定められており、以下のようになります。

1千万円~5千万円以下:本則税率2万円 (軽減税率1万円)
5千万円~1億円以下:本則税率6万円 (軽減税率3万円)
1億円~5億円:本則税率10万円 (軽減税率6万円)

本来、不動産売買では「本則税率」と書かれている方の金額を支払わなければいけません。しかし、平成26~30年3月31日までの間は軽減税率が適用されているため、期間中に売買契約を済ませると支払う税額が少なくなります。

④引越費用

売却に伴い、マンションから別のマンションやアパート、一戸建て住宅などに引っ越す場合はそのための費用が必要です。例として4人家族が引っ越す場合の費用相場をご紹介すると次のようになります。

15km未満(同一市町村内程度):9万円
50km未満(同一都道府県内程度):11万円
200km未満(同一地方内程度):13万円

⑤一括繰り上げ返済手数料

「登記費用」の項目で説明したとおり、マンションを売却するときは売却費用で住宅ローン返済ができます(というより、返済して抵当権を外さないと売却することができません)。

この際、住宅ローンを組んだ金融機関に残債を一括で繰り上げ返済することになりますが、そのための手数料が発生します。手数料の金額は金融機関によって異なりますが、おおよそ5千円~2万円前後が相場となります。

決済・引き渡し時に発生する収入

①マンションの譲渡益

マンションを売却したことで購入者から受け取れる利益を指しています。自身が設定し購入者と合意した金額がそのまま利益となります。

②マンション管理費・修繕積立金

マンション管理費とはマンションのうち共用部分の管理のための費用、修繕積立金とは将来の大規模な修繕に備えて積み立てておく費用です。これらが「収入として受け取れる」というと意外に感じるかもしれません。

通常、管理費と修繕積立金は翌月分の支払いを行いますが、売買契約が成立すると売り手は家を出ていくことになるため支払いが買い手に引き継がれます。

この部分の費用を精算するため、すでに支払われている管理費、修繕積立金のうち、「契約日から日割り計算で月末まで」に相当する金額が買い手から売り手に支払われるわけです。

③固定資産税・都市計画税

固定資産税と都市計画税は、毎年マンションの持ち主が支払う税金ですがこちらも管理費などと同様に、売買契約から年末までの分が精算され、買い手から売り手に利益として支払われます。

④火災保険料・銀行保証料

加入していた火災保険料、銀行保険料も管理費などと同様に、残りの保険期間に相当する金額が保険会社・銀行から返金されます。

翌年の確定申告時

マンションの売買手続きは以上の工程で終了です。しかし、翌年の確定申告時にマンション売買で得られた利益に対して住民税と所得税がかかります。支払うべき金額の計算方法は以下のとおりです。

所有期間5年以内の場合:短期譲渡所得金額×39%(うち所得税30%、住民税9%)
所有期間5年超の場合:長期譲渡所得×20%(うち所得税15%、住民税5%)

マイホームを売却した場合、譲渡益が3000万以下であれば課税が免除される特別控除が受けられます。

まとめ

マンションの売却には「売却前、売却開始時、売買契約時、決済・引渡し時という4つの工程があります。

それぞれの工程で費用が発生しますが、クリーニング代やリフォーム費用といった任意の費用もあれば、印紙税や登記費用といった必ず支払わなければならない費用もあります。

売買が成立すると譲渡益に加えて、管理費や修繕費なども受け取ることが可能です。売買契約が済んだ後も、翌年の確定申告時に所得税・住民税の支払いが必要になるのを忘れないでください。