農地バンクのメリット・デメリットは?有効利用できるのはどんな人?

「農地バンク」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?また、農地バンクは通称なので、「農地集積バンク」、「農地中間管理機構」という名前で聞いたことがあるかもしれません。

バンクは「Bank」、つまり銀行という意味です。農地バンクはその名の通り、農地を国が借り上げ、農地を必要としている人に貸し出す仕組みです。

農地バンクは安倍政権が掲げる「農業改革」を促進、実現するための一つの手段であり、システムの稼働のために大きな予算が使われてきました。

しかし、どうして農地をわざわざ国が借り上げて、貸し出すような仕組みが必要なのでしょうか?また、農地バンクにはどんなメリット・デメリットがあるのでしょうか?

そして、農地バンクを有効利用できるのはどんな人なのでしょうか?この記事ではこれらについて解説していきます。現在、農地を持っていて、その管理に困っている人にはぜひ参考にしてもらえたらと思います。

農地バンクとは?

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まず、農地バンクとはどういった仕組みなのかについて解説していきますね。

先述したとおり、農地バンクは農地の貸し借りをより潤滑に行うための事業です。農地貸し借りの管理、運営は各都道府県に設置された「農地中間管理機構」が行います。

農地を貸し出したいと考えている人は、この機構に自分の持っている農地を登録しておきます。対して、土地を借りたいと考えている人は、機構に登録されている土地に希望に叶った土地があるかをチェックします。

そして、賃貸料や借り上げ期間などでお互いの希望がマッチすれば、機構が正式に貸し借りの手配、手続きを行います。つまり、農地バンクは農地の貸し借りのマッチングサイトのようなものであるといえるでしょう。

どうして農地バンクという仕組みができた?

農地バンクができた理由は、日本の農業が衰退傾向にあるためです。農業は国民が生活していくうえで欠かせない事業です。どれだけ他の産業が発達しようとも、食べ物がなければ生きていくことはできませんよね。

日本の食料自給率が年々低下していっているのは有名な話です。昔は70%超という十分な数字を誇っていたのですが、現在では39%程度にまで落ち込んでいます(カロリーベースによる計算)。

また、現在のままでは若者の農業離れはますます進んでいくでしょうから、さらに自給率は低下していくと見られています。

そこで自給率を上げるために、そして日本の農業をより活発化させるための手段として期待されているのが農地バンクなのです。

では、農地バンクによってどうして農業は活発になるのでしょうか?以下で解説していきますね。

現在の日本が抱える2つの農業問題とは?

現在、日本の農業が衰退しているのは大きく分けて2つの問題によるものです。一つは農業を行う担い手の低下、もう一つは農業の生産効率の問題です。

農業や林業などは一次産業と呼ばれ、とても重要な事業ですが、働き手は減少傾向にあります。さらに、担い手の高齢化が進んでいるため、ますます働き手は減っていくだろうと予想されています。

若者が農業に従事しない理由には、二次産業や三次産業が活発になり、そちらのほうがより魅力的に見えるということもありますが、それ以上に参入障壁が高すぎることが大きな問題です。

新しく農家になるには、まずは農業用の土地を取得、準備する必要があります。農地がないのに農家は名乗れませんし、仕事もできませんね。

農地を新しく取得するためには地域の「農業委員会」という組織の許可が必要なのですが、いろいろ複雑な理由があり、現在この許可を得られるのは農家、もしくは農業従事者だけなのです。

つまり、農家になるのは農地がいるけれども、農地を取得できるのは農家だけという、なんともあべこべなことになっているのですね。

ですから、まず農家になるためには他の農家で働き、農業従事者としての経験を積む必要があるのです。料理人の修行期間と言えばイメージしやすいでしょうか。

これが、若者の農業への新規参入を難しくしている要因です。また、企業など組織での農業が難しい理由でもあります。さらに、農業経営には初期投資が思った以上にかかってしまうというのも新規参入が難しい理由ですね。

次に、もう一つの問題である生産効率性についてです。近年、日本で行われている農業の生産効率性の低さが問題視されています。

日本の農業の特徴として、一つの農家が広大な農地を持つのではなく、数人が小さな土地を分割して所有するというものがあります。これは日本の領土が狭いことや、戦後の風習が現在でも残っているためです。

対して、他国ではその領土の広さを活かして、一つの農家が広く集約化された土地を耕作し、そして効率化をなによりも重視し、大量生産を行うという手法がメジャーです。

この2つの方法のうち、どちらのほうが生産効率が良いのかは言うまでもないでしょう。そして、食料品の輸入、輸出が当たり前になってきている現代では、競争相手は同じ国の生産者だけでなく、他国の生産者も含まれるようになってきています。

競争に敗れれば十分な収入を得ることはできず、廃業に追い込まれてしまいます。つまり、他国に比べて生産性が劣っている現状ではどんどん農家が廃業してしまい、ますます国内の農業は衰退してしまうのです。

農地バンクはこの2つの問題を解決できる可能性がある

上述した2つの問題は日本の農業においてとても大きな問題です。しかし、農地バンクはこれらの問題を解決できると期待されています。

まず、若者や法人の新規参入が難しいという点ですが、それは新しい農地の取得ができないという問題によるものでした。農地の売買には厳しい規制があるため、新参者はこの規制をクリアできないのですね。

ただ、農地バンクを使えば、農家、または農業従事者でなくても農地を借りることができます。これなら若者や企業の新規参入が望めますし、さらにある程度耕された農地を最初から使えるので、初期投資があまりかからないというメリットもあります。

生産効率性の問題についても農地バンクで解消が期待できるとされています。農地バンクによって一つの農家が大きな土地を所有することができるようになるためです。

農地を持っている農家でも、跡継ぎがいない、採算が取れないといった理由ですでに廃業しているところもあるでしょう。その利用していない農地を農地バンクを通して貸し出すことにより、積極的に農業を行っている人がその農地を利用できるようになります。

これにより、一つの農家が広くてまとまった農地を利用できるようになり、生産効率性が上がると見込まれているのですね。

ここまで農地バンクが解決する2つの農業問題について主に解説してきましたが、農地バンクには他にもさまざまなメリットがあります。それらをいくつか見ていきましょう。

農地バンクのメリット

農地バンクのメリットは貸し手、受け手によって異なります。受け手のメリットについては上述したので、ここからは貸し手のメリットについて解説していきますね。

使っていない農地を有効利用できる

農地は持っているけれども、実質的に農家としては廃業状態の場合、その使っていない土地を他人に貸し出すことで賃貸料を得ることができます。

賃貸料は農地の場所、面積、受け手の意向によって左右されますが、ただ土地を遊ばせておくよりははるかに良いでしょう。

また、こちらから受け手を探さなくてもよいのもメリットの一つです。今までは農地を貸し出そうとすれば、自力で貸し出し相手を探す必要がありました。

自力で貸し出し相手を探すのは中々の手間ですし、そもそも見つけることすら難しいという問題があります。同じ農家のつてがあれば簡単に見つけることも可能ですが、農家の知り合いがいなければ貸し出し相手を見つけるのは至難でしょう。

他にも、農地を貸し出すことによって、農地としての価値が下がらないという点も見過ごせません。農地は定期的に手入れをしないとどんどん価値が下がっていきます。

放っておけば害虫も増えていきますし、土に含まれる栄養も徐々に減少していきます。そしていずれは、二度と農地として利用できないような荒れ果てた土地になってしまうかもしれません。

他の人が農地として利用してくれれば、農地としての価値は下がりにくいですし、貸し出し期間が終わった後に自分で再度農地として利用することもできます。

賃料や協力金がもらえるうえに、土地も管理してもらえる、こんな願ったり叶ったりなことはないですよね。

税金対策になる

土地の所有者には毎年固定資産税がかかります。これは農地でも同様で、持っている土地の価値から算出された評価額に応じて税額が決まります。

土地を持っている人にとっては常識かもしれませんが、固定資産税の税額はその土地の地目、つまり利用用途によって大きく変化します。

そして、農地は圧倒的に優遇されており、数ある地目の中でも最も税率の低い地目となっています。

これにより、農地はそこまで大きな固定資産税はかかりません。そのため、その土地から何の収益が上がらなくても、要はただ持っているだけでもそこまで負担になることはありませんでした。

このように地目上では農地であっても、実質農地として扱われていない土地を「耕作放棄地」と呼びます。

耕作放棄地は近年どんどん増えています。農家を廃業しても、土地は所有したままの人が多いためですね。

しかし、耕作放棄地の存在は国から見ると喜ばしいものではありません。手入れされていない農地はどんどん農地としての価値が下がっていきますし、さらに農地の分割化が進み、生産効率性が低下してしまうためです。

そこで平成29年度からは、農地であっても耕作放棄地には特別な税率を適用し、増税することが決まりました。これは、耕作放棄地の減少だけでなく、農地バンクの利用者を増やすことが狙いです。

農地バンクを利用すれば、他の誰かが農地として使ってくれるので耕作放棄地になることはありません。つまり、増税を免れることができるのです。

新しい税金対策の手段として農地バンクを利用する人が増えれば農業は活発化し、日本の農業は再起するだろうという政府の目論見ですね。

数十年後には土地が返ってくる

農地バンクは土地の売買ではなく貸し借りですから、貸付期間が終われば当然土地は貸し手のもとに返還されます。

もちろん、その後も再度貸し付けを行えますし、土地の売買も自由です(現行の制度や法律では農地の売買は厳しく規制されていますが)。

土地を売ることに抵抗感を覚える人は多いです。とくに農地は先祖代々受け継がれてきた土地ということもあり、罪悪感から土地を手放せない人もいるでしょう。しかし、これでは価値ある農地が有効利用されず、消耗していくのを見ているだけになってしまいます。

貸し借りならこういった抵抗感や罪悪感は薄まりますから、結果として土地の流動性が増し、より多くの人が農業に従事できるようになると期待されています。

農地バンクのデメリット

バツプレートを持つ女性

農地バンクにはメリットだけでなく、いくつかデメリットも存在します。それらを知らずに利用してしまうと、後々の大きな後悔に繋がりかねません。必ずデメリットをしっかり把握してから農地バンクを利用しましょう。

必ず希望の条件で貸し借りができるわけではない

農地バンクで土地を貸し出せば、機構から賃貸料や協力料を受け取ることができます。貸し出す側としては少しでも高い賃貸料で貸すことを希望するでしょう。

しかし、その希望通りの金額で貸し出せるのは極めて稀です。とくに、価値が低いと判断された土地ではタダ同然に近い金額での貸し出しになってしまうこともあります。

というのも、農地バンクはどちらかというと受け手のために運営されている事業だからです。先述したように、農地バンクの運営の背景には農業への新規参入の容易化という目的があります。

ですから、基本的には受け手に有利な条件で貸し出しを行い、より多くの若者や企業に参入してもらおうというのが狙いなのですね。

少額でも賃貸料を貰えるぶん、ただ土地を遊ばせておくよりかは有益かもしれませんが、そこまで大きな金額は期待できないことを理解しておきましょう。

必ず受け手が見つかるわけではない

農地バンクに土地の貸し出しを申請しても、必ず貸し出し相手が見つかるわけではありません。

というのも、受け手に土地が自動的に割り振られるわけではないためです。受け手の希望者は土地のある場所や実際の状況など、さまざまな要素を加味して希望の土地を探します。

魅力のある土地は争奪戦になり、賃貸料も高いものになるでしょうが、逆に魅力のない土地にはいつまで経っても受け手が見つからないこともあります。

また、すでに耕作放棄地となっていて、あまりに農地として適していないと機構側に判断された場合、土地貸し出しの申請を却下されることもあります。

一度貸し出すと最低でも10年以上は返ってこない

農地バンクは原則として、最低10年からの賃借契約になります。最終的に土地が返ってくるのは大きなメリットであるとお話ししましたが、逆に言えば短くても10年は土地の管理権を失うということです。

もしかしたら、その10年の間にもっと有利な売買や貸し出しができるかもしれません。こういった機会を逃してしまう可能性があるのは大きなデメリットだと言えるでしょう。

農地バンクはどんな人に向いている?

農地バンクの利用が最もオススメできるのは、現在農地を所有していて、その扱いに困っている人でしょう。

農地を放っておくのはこれからどんどんデメリットが大きくなると考えられます。平成29年度の増税もそうですし、現在の政府は農業の活発化を一大政策として推進しているので、耕作放棄地にはさらに不利な条件が付け加えられていくかもしれません。

ただ、上述したように農地バンクにはデメリットもあります。さらに、農地バンクの利用実績は当初の目標と比べると大きく下回っています。

これは、まだまだ農地バンクへの抵抗感があり、利用が進んでいないということが原因として挙げられます。しかし、もしこのまま実績が上がらなければ途中で打ち切りになってしまう可能性もないとは言えません。

農地バンクの利用はある意味、長期的な投資とも言えますから、よく吟味したうえで利用するようにしましょう。

まとめ

農地の再利用、集積化に関する事業は今までにいくつかありましたが、それらは全て売買によるものでした。

農地バンクは初めての賃借事業ということもあり、注目を集めています。しかし、その目標達成度の低さから非難されることも多いです。

まだまだこれからどうなるかわからない農地バンクですが、土地利用の選択肢の一つとして覚えておいてもいいかもしれませんね。

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