いらなくなった土地の寄付はできる?寄付先の候補は?

使い道がない土地というのは厄介なものです。土地があるだけでは収入には繋がりませんし、それどころか固定資産税により毎年高額な税金が徴収されてしまいます。

また、立地によっては売却することも難しいでしょう。利用価値のない土地を所有することにメリットはほとんどありませんから、買い手がなかなか見つからないはずです。

そんな場合に有効な手段となりえるのが寄付です。お金を出してまではいらない土地であっても、無料でもらえるなら欲しがる人がいるかもしれません。

とはいえ、貰い手を自力で探すのは大変ですから、できれば国や自治体といって公的な機関に受け取ってもらいたいところです。

しかし残念ながら、国や自治体は土地の寄付を基本的に受け付けていません。理由については後述しますね。

幸い、寄付先の候補にはまだいくつかあります。自分の土地の状況や価値などを考慮して探してみましょう。どんな候補があるのかはページの後半で解説していきますね。

国や自治体に土地の寄付は基本的にできない

国や自治体に土地を貰ってもらい、公共事業に役立ててもらえればこんな素晴らしいことはありません。使い道のなかった土地が多くの人に役立つのですから、寄付したほうにとっても嬉しいことです。

しかし、国や市町村の自治体は基本的に土地の寄付を受け付けていません。その理由は大きく分けて2つあります。

まず一つ目に、固定資産税による税収が減ってしまうことが挙げられます。固定資産税は土地、または物件を所有している人に課税される税金です。その税収は馬鹿にならず、市町村税収の4割程度を占めています。

固定資産税は土地が存在する限り発生するものですから、これほど安定しているものはありません。

もし、行政が土地の寄付を受け付けてしまえば、その土地の所有者は国、もしくは市町村となり、固定資産税を徴収することができなくなってしまいます。それどころか、土地の管理費がかかり、結果として大きな収入源、支出増になってしまうでしょう。

そしてもう一つの理由として、使い道のない土地はやはり国や自治体にとっても使いづらいものなのです。あまりに僻地にある土地や、崖のような厳しい自然環境にある土地に使い道を見出すことは難しいでしょう。

じゃあ立地がいい土地なら可能なのかと思うかもしれませんが、そもそもそういった土地なら寄付を検討する必要がなく、不動産屋に任せておけばすぐに買い取り手が見つかるはずです。

こういった2つの理由から、国や市町村は土地の寄付を基本的に受け付けていないのですね。

他の候補は何がある?

行政への寄付ができないからといって、諦めるのはまだ早いです。寄付先の候補は国や自治体以外にも多くありますから、身近なところで探してみましょう。以下からどんな候補があるのかご紹介していきますね。

隣の土地を所有している個人

使い道のなさそうな土地であっても、その隣の土地を所有している人ならある程度上手く使えるかもしれません。

分断された土地よりも、一か所に固まった土地のほうが扱いやすいものです。隣の土地を所有している人がわかっているなら、一度相談してみましょう。

公益法人への寄付

個人ではなく、法人へ寄付するという手もあります。法人は、利益を追及する営利法人と、不特定多数の利益を追求する公益法人の2つがありますが、寄付を受け付けてくれる可能性が高いのは公益法人のほうです。

営利法人は利益を重視しますから、使い道のない土地を受け取ることに意義を見出さないでしょう。土地を所有すれば固定資産税もかかりますし、必要のない土地を無理に所有する可能性は低いです。

対して、公益法人は自団体の利益よりも公共の利益を優先するので、収益が上がらなさそうな土地であっても何らかの使い道を見出してくれるかもしれません。

もちろん、公益法人だから無条件で寄付を受け付けてくれる、なんてことはありませんが、選択肢の一つとして考えておくとよいでしょう。

寄付をする際の注意点

土地の寄付はモノの寄付のように、直接渡してはい終わり、というわけにはいきません。登記手続きを行う必要がありますし、場合によっては税金が発生することもあります。

無料で寄付したのに税金を取られるの?と不思議に思うかもしれませんが、土地の寄付に際しては譲渡所得が発生したと見なされ、それに応じた住民税や所得税がかかるのです。これをみなし譲渡所得と言います。

寄付したうえになぜかお金まで取られるという納得がいかない制度ですが、これについてはそういうものだと思って諦めるしかありません。

ただ、寄付する相手や条件によっては税金を控除してもらえます。まず、個人相手への寄付であれば無課税となり、税金が徴収されることはありません。

みなし譲渡所得が発生しうるのは、法人に土地を寄付した場合です。法人には営利法人と公益法人があるとお話ししましたが、営利法人に寄付した場合は必ず課税対象となります。

対して、公益法人に寄付した場合は、寄付後に税務署で所定の手続きを行うことで非課税扱いになります。土地の時価によっては譲渡所得もそれなりの金額になるので、必ず手続きを行うようにしましょう。

ちなみにみなし譲渡所得の計算方法は、現在の時価からその土地を取得するのにかかった費用を引いたものになります。

取得するのにかかった費用には、土地の購入代金はもちろん、登記費用やその他の代金も含めてよいので忘れないようにしましょう。加えて、寄付するために発生した費用も現在の時価総額から引くことができます。

また、取得するのにかかった費用がわからない場合もあるでしょう。その場合には時価の5%を取得費として、みなし譲渡所得を計算します。たとえば、現在の時価が200万円なら、取得費は10万円となり、みなし譲渡所得は190万円となります。

受け取る側には贈与税がかかる

土地を寄付する相手が個人だった場合、受け取る側にも税が発生する可能性があります。対象となる税の名目は贈与税ですが、この税には110万円の基礎控除が存在しているので、寄付する土地、空き家の時価総額が110万円未満なら課税対象にはなりません。

逆に110万円を超えているなら受け取る側に贈与税がかかってしまうので、その旨をあらかじめ相手に伝え、了承してもらっておきましょう。

何も言わずに手続きをしてしまうと、後々トラブルに発展してしまうかもしれませんから、忘れないようにしてくださいね。

相続放棄をするのも一つの手

両親が空き家や土地を所有している、もしくは両親が亡くなった後、その住居が空き家になる予定で、買い手や引き取り手が見つからなさそうな不動産であった場合、相続放棄をしてしまうのも一つの手です。

先述した通り、不動産は所有しているだけで固定資産税がかかりますから、使い道のない土地や空き家を意味もなく持ち続けるのは損をしているとも言えます。

相続放棄をすれば、その土地や住居の所有権は他の親族、または国や自治体になるので、以降は税金を支払う必要はありません。

ただ、相続放棄を行うと、相続予定の財産全ての相続権を失うことになります。土地や空き家の相続権だけを放棄する、ということはできないのですね。

ですから、これらの不動産以外にも大きな価値のある財産があった場合、大きな損をしてしまうかもしれません。相続対象となる財産について必ずチェックしたうえで、相続放棄の手続きを行うかどうかを決定しましょう。

相続放棄を行うと、その人からは相続権が失われ、家系的に次に近しい人に権利が移動します。つまり、相続権を完全に消滅させるためには、相続権が発生しうる人物全員がそれぞれ相続放棄の手続きをする必要があることに注意です。

遺産の相続はプラスの財産だけでなく、借金といったマイナスの財産まで相続対象になってしまうので、いらない不動産に加えてマイナスの財産が多くあるなら、相続放棄は十分現実的な選択肢に入ってくると言えるでしょう。

まとめ

寄付と聞くと簡単に行えて、相手に喜ばれるイメージがありますが、土地や空き家に関しては一概にそうとは言えません。

使い道のない不動産は、無駄に税金を徴収されるだけのただのお荷物となってしまうので、寄付を断られるケースが多いのですね。

ただ、よく探せば引き取り手や買い手が見つかる可能性はゼロではありません。とくに一つの不動産屋に断れたからといってすぐに諦めてしまうのはとてももったいないですよ。

いくつかの不動産屋に相談しすれば、取り扱ってくれる会社があるかもしれません。多少時間はかかるかもしれませんが、地道に営業活動を続けていくことが大切です。