民泊とは?制度と問題点について詳しく解説

一般的なサービスになりつつある「民泊」。旅館業法も最近の流れに合うよう改正され、今後さらに民泊は利用しやすいサービスになっていくでしょう。

ただ、民泊について聞いたことはあっても、どんな内容のサービスなのかまで知っている人は少ないように感じます。民宿と何が違うの?と思っている人もいるでしょう。

民泊を凄く簡単に説明すると、自宅の一室や別荘を他の旅行客に貸し出すシステムのことです。日常的に使っていない部屋を貸し出し、宿泊料をもらう形態になっており、参入障壁が低いために多くの人が民泊を運営するようになってきています。

最近は「Airbnb(エアービーアンドビー)」という民泊に特化したマッチングサービスも登場しており、さらに気軽に使えるようになってきました。

しかし、民泊には問題点もあります。それは現行の法律が最近の流れに追いついておらず、安易に民泊を営業しようとすると、法律違反になってしまう可能性があるのです。この点についてはページの後半で解説しますね。

まずは民泊とはどういったものか、その概要を知っていきましょう。

民泊についての基本知識

使っていない部屋に宿泊客を泊め、宿泊料をもらうサービスが民泊であると説明しました。ホテルや民宿とよく似ているように思えますが、異なるのは営業に許可をもらっているかどうかです。

ホテルや民宿は行政から許可を得て営業しています。宿泊客を泊める施設の設備、管理に関する法律として旅館業法というものがあり、この中で定められている条件をクリアしない限り営業の許可は下りません。

対して、今までの民泊では行政からの許可を得なくても営業することができました。とはいえ、宿泊サービスを提供している点ではホテルや旅館と同じなのだから、旅館業法による許可が必要なのでは?という指摘もありました。

ただ、旅館業法の条件を民泊に当てはめようとすると、クリアできる施設はごくわずかになってしまいます。もともとは普通の部屋の一室ですから、ホテルや旅館並みの設備を用意しろというのは無理があります。

加えて、近年は宿泊サービス利用者が急激に増えていることもあり、民泊については法律上のグレーゾーンながらも意図的に見逃されてきたと言えるかもしれません。

それでも、法律違反している現状をそのままにしておくわけにはいきませんし、何より衛生に関する問題があります。衛生環境が悪いところに宿泊し、感染症でも起きてしまったら大問題です。

そこで民泊についても対応できるよう、民泊新法の施行が2018年に予定されています。細かい部分についてはまだ国会で議論されている最中ですが、現在の旅館業法よりは条件が緩くなるでしょう。

基本的に、旅館業法による条件を無視して営業を行った場合、行政による取り締まりの対象になる可能性があります。ただ、取り締まりの対象になるのは基本的に営業者のみで、そこに宿泊した人は関係ありません。

さて、どうして民泊がここまで一般的になってきたのでしょうか?それには大きく分けて2つの要因があります。

宿泊所の需要の急激な増加

近年、外国人からの日本人気が高まっています。実際、訪日外国人の数は右肩上がりに増加しており、2016年には過去最高の2,400万人オーバーとなりました。

観光客は多くのお金を現地に落としていってくれるので、日本の景気面から見てもこれは大きな好材料です。

ただ、観光客が増えたぶん、それに対応する宿泊所も増やさなければいけません。とくに外国からの観光客が多く訪れる東京や大阪ではホテルや旅館が慢性的に足りていない状態です。

とはいえ、そんな簡単に宿泊所を増やすことはできません。ホテルや旅館を建設するためには年単位の時間がかかりますし、お金だってもちろんかかります。なにより、都市部周辺ではそのための土地も足りないのが現状です。

さらに、2020年には東京オリンピックが控えています。爆発的な訪日外国人の増加が予想されるなか、宿泊所の整備は遅々として進んでいません。このままでは日本の評判にも悪影響を与えてしまうでしょう。

そこで民泊に強い注目が集まりました。民泊なら新たにホテルを建設する必要はありませし、すぐに対応できます。また、国際交流を重視する風潮もその流れを後押ししました。

外国人を家に泊め、コミュニケーションを行うことに楽しみを見出す人が一定数いたので、ここまで民泊は一般的なサービスとなったのですね。

インターネットの発達

インターネットの発達も民泊の発展に大きく寄与しました。事前にネットを介して宿泊所の様子を見ることで安心して予約できますし、Airbnbといったマッチングサービスを使えばホストの評判をチェックすることができ、より安心感が生まれます。

また、SNSの存在も好影響を与えました。宿泊した人がその感想をSNSに発信することで、民泊は素晴らしいサービスであることが多くの人に認知され、それにより利用者の数が大きく伸びたのです。

民泊のメリットは、その地域、家族の個性を十分に垣間見れることです。観光にプラスして、現地の人と触れ合あえるというのが、民泊の最大の特徴であり、大きな利点なのですね。

民泊の問題点

民泊の普及により、宿泊所が足りない問題については解決の方向に向かっています。ただ、いいことばかりではありません。民泊にも大きな問題点が存在しており、それは現行の法律に違反しているという点です。

本来、繰り返し宿泊客を泊めるのであれば旅館業法に定められている条件をクリアし、行政からの許可を得なければなりません。

ただ、旅館業法が制定されたのはずいぶん昔ということもあり、民泊のような宿泊施設のことまでは考えられていません。

そのために、客室数は最低5部屋以上必要、トイレの数も一定数必要など、民泊施設では到底満たせない条件が多々ありました。

ちなみに、旅館業法が適用になるのは、繰り返し宿泊サービスを提供し、その料金を受け取った場合に限ります。

たとえば、ある1日だけ友人を泊め、その見返りとしてお金をもらったとしても、これは旅館業法には抵触しません。1日だけのサービス提供であり、繰り返し営業したわけではないためですね。

どこから「繰り返し」になるかは行政の判断なので、一概には言えません。これから民泊を始めようとする人は、市町村役場の窓口で担当者と入念に打ち合わせすることをおすすめします。

民泊新法が施行予定

少し話がそれたので戻しましょう。今までの旅館業法では民泊に対応できなかったので、多くの民泊は無許可で宿泊サービスを提供していました。当然ですがこの状況はよくありません。

旅館業の形態には「ホテル営業」、「旅館営業」、「簡易宿所営業」、「下宿営業」の4つがありますが、民泊は簡易宿所営業に当たるとされています。

簡易宿所営業はホテル営業や旅館営業と比べると条件はいくぶんか緩いですが、それでも民泊にとっては厳しい条件です。

そこで、民泊に関する新しい法案が提出され、2018年の施行を目途に議論が進められています。

民泊新法では行政からの許可は必要なく、届け出のみでOKとされています。客室の数や広さに関する条件もなく、一般的な住宅でも十分クリアできる条件となっているのが特徴です。

ただその代わり、営業日数が年間180日までと定められており、これを超えて営業することはできません。

これは民泊サービスを専業にして生活していこうとしている人にとっては、やや厳しい条件かもしれません。営業日数が減ればそれだけ収益も減りますし、なにより民泊は管理費がある程度かかるビジネスモデルです。

民泊用の住居を賃貸している場合は毎月家賃がかかります。それを少ない営業日数でペイできるかどうかが、民泊を専業にできるかどうかの分かれ目となってくるでしょう。

収益より管理費が上回るようなら、不動産取引を介して売却してしまったほうがいいかもしれませんね。

また、宿泊者の名簿管理や衛生管理に関する条件も民泊新法には盛り込まれています。今までのように気軽に観光客を泊める、というのは少し難しくなってくるでしょう。

民泊サービスの提供を禁止しているマンションやアパートもある

民泊に関する問題としてよく挙がるのが、周辺住民への影響です。マンションやアパートの一室を宿泊所として貸し出している人も多いですが、同じマンションに住む人にとってはあまりいい気分ではありません。

分化の違う、全く知らない外国の人が同じマンションに出入りしているのはやはり治安面で不安に感じるでしょうし、それが年に何度もあるのですからなおさらです。

また、マンションやアパートのオーナーからもあまりいい目で見られないようです。実質的に契約者とは違う人が住むことになるわけですから、これは当然のことかもしれません。

実際、民泊サービス目的の契約を拒否しているマンションもあります。このあたりの問題は民泊がさらに一般化していけば次第に解消されていくかもしれませんが、現時点では大きな問題点として取り上げられることが多いですね。

このように、民泊には多くの問題点があります。とはいえ、民泊が素晴らしい仕組みであることは間違いないので、これから大きなトラブルがなく、発展していくことを願いたいですね。

まとめ

民泊についての基本的な概念について解説してきました。現在、使う予定のない部屋や住居があるのなら、民泊として活用してみるのも一つの手です。

また、どんなサービスなのかを詳しく知るには、やはり体験してみるのが一番ですから、試しにどこかの民泊を利用してみるのも賢い方法でしょう。