今の世の中で安全・快適に生活をおくるためには、ある程度のお金が欠かせません。そして、お金を得るための手段は労働だけではありません。投資も立派なお金を得るための手段です。労働で得られるお金=給料が伸び悩む日本では、投資は生き残りに必須なスキルと言えます。
投資と聞くと難しそう、というイメージを持たれるかもしれません。確かに、投資にはリスクがあります。働いていれば必ずもらえる給料と違い、投資は時間をかけてもお金が得られる保証はありません。時間がかかった挙句お金まで失う可能性があるとなっては、尻込みしてしまうのもわかります。
しかし、実際のところ、投資はそれまで危険なものではありません。より正確に言えば、事前に各投資が持つリスクや特徴などを十分把握しておけば、そうそう大損することはない、といったほうが正しいでしょうか。
投資で大損する人はだいたい、明らかに自分の資金力を超える無茶な投資を行っていたり、ハイリスクハイリターンな商品に資金を投入していたりします。そうした彼らの投資術を反面教師とするのも大切です。
今回の記事では、投資を
- 国内株式
- 国外株式
- 国内債券
- 国外債券
- 不動産投資
- コモディティ投資
- 各種年金
- 先物取引
- FX
- 信用取引
- 仮想通貨
- 投資信託
の12種類にカテゴリ分けし、それぞれが持つ特徴、メリット、デメリット、向いている人などをまとめて紹介していきます。なお、記事は3つに分割されています。気になる解説対象が含まれている記事名をお選びください。
記事名 | 解説対象 |
お金を増やす投資術は一つではない!国内株式・国内債券・国外株式・国外債券編 | 国内株式、国外株式、国内債券、国外債券 |
お金を増やす投資術は一つではない!不動産投資・コモディティ投資・各種年金・先物取引編(本記事) | 不動産投資、コモディティ投資、各種年金、先物取引 |
お金を増やす投資術は一つではない!FX・信用取引・仮想通貨・投資信託編 | FX、信用取引、仮想通貨、投資信託 |
12種類の投資の特徴がわかる一覧表
まずは上記の12種類の投資の特徴について、分かり易く表にまとめてみました。まだ投資する対象が決まってないという方は、この表を参考に自分に向いてそうなものを選んでください。メリットは青字、デメリットは赤字で記載しています。
(注意)ここで紹介している特徴はあくまでも一般的なものであり、必ず当てはまるというわけではありません。
例えば「国内株式」の「必要な初期費用」は「多い」となっていますが、株式積立という方法を使えば初期費用を少なくすることも可能です。ただし、株式積立という手法自体が現状あまり有名ではないので、ここでは「多い」としています。
種類 | 必要な初期費用 | リスク(不確実性) | リターン(平均的な利回り) | 手間(投資に取られる時間) |
---|---|---|---|---|
国内株式 | 多い | 大きい | 大きい | やや少ない |
国外株式 | 多い | 非常に大きい | 非常に大きい | やや多い |
国内債券 | やや少ない | 小さい | 小さい | やや少ない |
国外債券 | やや少ない | やや小さい | やや小さい | やや多い |
不動産投資 | 非常に多い | やや大きい | やや大きい | 管理方法による |
コモディティ投資 | 多い | 非常に大きい | 非常に大きい | やや多い |
各種年金 | 少ない | 小さい | 小さい | 少ない |
先物取引 | 多い | やや大きい | やや大きい | 少ない |
FX | 多い | 大きい | 大きい | やや多い |
信用取引 | 多い | 非常に大きい | 非常に大きい | やや少ない |
仮想通貨 | 商品による | 非常に大きい | 非常に大きい | やや多い |
投資信託 | 少ない | 小さい | 小さい | 少ない |
この票をご覧になっていただくとわかるかと思いますが、概ねリスクとリターンは反比例する傾向にあります。
リスクが大きいものほどリターン、つまり平均利回りも大きくなります。その代わり、平均利回りを大きく下回ってしまう可能性も高くなります。投資対象を決める際には、自身のリスク選好も考慮する必要があります。
不動産投資
- 初期費用:10万円~数億円
- 向いている人:土地を所有している人、借金を負っても精神の安定を保てる人
不動産投資とは、賃貸マンションや賃貸アパート、商業施設、あるいは土地などを購入し、それを貸したり売ったりして利益を上げることを目的とした投資です。
家賃収入をインカムゲイン、売却益をキャピタルゲインと言い、一般的な不動産投資ではインカムゲインをメインに狙います。
不動産投資は一般的に多額の借り入れをするために非常にハイリスクなイメージがありますが、実際にはミドルリスク・ミドルリターンで、株式投資と比べるとリスクもリターンも少なめです。不動産投資は株式とは違って物自体に実質的な価値があるためです。
例えば株式の場合、発行元の株式会社が倒産してしまえば株式は紙くずになりますが、不動産は建設会社や施工会社、管理会社などが倒産してしまっても不動産自体は残ります(倒産による不利益がまったくないわけではありませんが)。
不動産投資の投資対象
不動産投資の投資対象は非常にバラエティに富んでいます。主な投資対象は以下のとおりです。
- 新築マンション・アパート:新築のマンションやアパートを建てて貸し出す。初期費用はかかるが入居者を集めやすい。
- 中古マンション・アパート:中古のマンションやアパートを買って貸し出す。初期費用が抑えやすいが、入居付に工夫が必要。
- 商業施設:雑居ビルや複合商業施設などを建てて、テナントに貸し出す。賃料を高く設定しやすいが、立地が悪いとテナントが集まりづらい。
- 医療・介護施設:病院や老人ホームなどを建てて、事業者に貸し出す。少子高齢化社会との相性が良い。
- サービス付き高齢者向け住宅:高齢者向けの住宅を建てて貸し出す。少子高齢化社会との相性が良い。
- 駐車場:コインパーキングや月極駐車場などを作って貸し出す。初期費用が余りかからず、事業撤退や土地の転用が容易。
- 定期借地:土地をそのまま事業者に貸し出す。最もローリスクだが、得られる賃料も少なめ。
建物が必要になるタイプの不動産投資では、土地と建物の両方を貸し出す得られる賃料が多くなりますが、反面初期費用がかかり、最初に数千万円クラスの借金を背負うことも珍しくありません。それだけの借金を負っても大丈夫という精神の強さが求められます。
一方、駐車場や定期借地などは建物を必要としないため初期費用が余りかからずローリスクですが、得られる賃料も少なめです。
不動産の管理方法について
現代では、不動産の管理は管理会社に任せるのが一般的です。彼らに任せれば、面倒な入居者募集、建物管理、賃料回収などはすべて代行してもらえます。忙しいサラリーマン大家にとっては必須のパートナーと言えるでしょう。
なお、不動産管理の方法は大きく「サブリース(一括借上げ)」と「管理業務代行」に分けられます。
サブリースとは、投資家が不動産管理会社に建物を貸し出し、不動産管理会社がさらに入居者に各住戸を貸し出すシステムです。要するに「物件の又貸し」をするわけです。この場合、投資家は不動産管理会社から毎月の賃料を得ることになります。
得られる賃料が安定し、未払いのリスクなどもなくなるのが大きなメリットですが、満室時の想定家賃よりも10~20%ほど得られる賃料は少なくなります。また、想定家賃は2年に1回程度のペースで見直されます。
一方、管理業務代行とは、投資家が入居者に各住戸を貸し出し、それによって発生する業務を不動産管理会社に任せるシステムです。この場合、投資家は入居者から毎月の賃料を得て、その一部(5%程度)を管理報酬として不動産会社に支払います。
入居率が得られる賃料にダイレクトに反映されるためリスクはやや高くなりますが、満室に近くなればサブリースよりも手取り収入が多くなります。
不動産投資の平均利回りは?
不動産投資の利回りには表面利回りと実質利回りがあります。表面利回りは満室時の年間賃料を物件価格で割ったごく単純なもの、実質利回りは物件購入時の諸経費や年間維持費用なども含めた実質的な利回りです。具体的に計算してみましょう。
- 物件価格:3000万円
- 物件購入時の諸経費:300万円
- 満室時の年間賃料:300万円
- 年間維持費用:30万円
- 表面利回り=300万円÷3000万円=0.10=10%
- 実質利回り={300万円-30万円)÷(3000万円+300万円)≒0.08181……≒8.2%
より重要な指標は実質利回りですが、多くの不動産投資サイトでは表面利回りのみが紹介されています。表面利回りのほうが計算しやすく、また数値も大きくて見栄えが良いからです。
東京23区や政令指定都市などの都市部で賃貸マンションや賃貸アパートを経営した場合、表面利回りは10%を切ることが大半です。
割安な中古マンションなどならば10%を超えることはあるかもしれませんが、12%を超えるのは非常にまれです。反面、人が多いので入居者募集で困ることは余りありません。
地方の場合は15~20%、あるいはそれ以上の高利回りが期待できますが、人が少ないのでなかなか満室になりづらい一面もあります。
不動産投資の6つのリスク
不動産投資の主なリスクは以下の6つです。
- 値下がりリスク:不動産価格が下がるリスク
- 家賃下落リスク:経年劣化するに従って、家賃が下がるリスク
- 借金リスク:最初に借金をするリスク
- 流動性リスク:現金化に時間がかかるリスク
- 空室リスク:入居者が集まらないリスク
- 災害リスク:地震や火災などの災害によって建物の価値が失われるリスク
不動産投資のリスクで最も注目されやすいのは借金リスクですが、前述の通り不動産投資ではそれ自体に価値がある不動産が手元に残るため、それ自体はあまり大きなリスクではありません。むしろ長期経営が前提の場合、値下がりリスクや家賃下落リスクのほうが大きな問題になりやすいです。
土地と建物の内、土地の部分は劣化しないため、価格は景気などに左右されます。一方、建物は劣化するため、原則として時がたつに連れて値下がりしていきます。そのため、土地の価格が一定だった場合、土地+建物の価格は下がっていきます。
購入時より景気が良くなり、不動産に対する需要が大幅に増加すれば値上がりする可能性もありますが、人口減少社会でそれを期待するのは少し難しいでしょう。
価格が下がれば当然、家賃も下げざるを得ません。一般論から言えば、鉄筋コンクリート造のほうが木造よりも劣化しづらいため、家賃は下落しづらいですが、それでも下がることには変わりありません。
作ったマンションを永久に経営し続ける事はどう考えても不可能であり、出口戦略(いつ建物を解体するor売却するか決める)ことが大切です。
コモディティ投資
- 初期費用:10万円~300万円
- 向いている人:短期的に利益を狙いたい人
コモディティとは、一般的には「商品」を意味する英単語です。投資の世界においては、原油や石油などのエネルギー、金やプラチナなどの貴金属、とうもろこしや大豆などの穀物が該当します。
金やプラチナなどはともかく、原油や石油、あるいは穀物などを直接買ってそれを値上がりするまで待ってから売るというのは個人には不可能なため、通常は投資信託で投資します。後述する投資信託と一緒にしても良かったのですが、投資先が特殊なため独立させました。
コモディティファンドの特徴は、短期的な価格変動が大きいことです。コモディティは短期的に需給バランスが変化しやすいためです。その需給の変化を呼んで行動することができれば、短期的に大きな利益を得られるでしょう。
また、株式や債券価格とは独立した動きをすることが多く、分散投資すればリスクヘッジにつながる一面もあります。
一方、コモディティは長期的に保有しても配当や利息などのインカムゲインが生じず、購入手数料も高いなど、デメリットも少なくありません。初心者には余り向かない一面もあるため、慎重な運用が求められます。
コモディティ投資の平均利回りは?
コモディティ投資全体の平均利回りに関するデータはありませんが、個別のファンドに関するデータはいくつかあります。
例えば、損保ジャパンコモディティファンドの直近5年の平均利回りは-11%、PB・コモディティファンドは-7%、ダイワ/ロジャーズ国際コモディティ・Fは-4%です。全体としてここ数年は下落傾向にあるようです。
コモディティ投資のリスク
コモディティ投資の主なリスクは以下の3つです。
- 値下がりリスク:ファンド価格が下がるリスク
- 流動性リスク:現金化に時間がかかるリスク
- 投機筋リスク:投機筋が価格を大きく変動出せるリスク
投機筋とは、投資家の中でも特に短期的な売買によって大きな利益を狙う、ハイリスク・ハイリターンな投資をメインに行う人たちの総称です。投資の対象期間は数分~1ヶ月程度で、利益が見込めれば即座に決済します。買うだけでなく売ることも好み、自らマーケットを動かそうとすることもあります。
株式市場や債券市場は市場自体が大きいため、投機筋が動いても急激にマーケットが動くことは余りありません。しかし、コモティディ投資市場は市場自体が小さいため、投機筋の動向がそのままマーケットに反映されがちです。投機筋もそのことについてはよく理解しているので、コモディティ投資市場には積極的に参入してきます。
各種年金
- 初期費用:ほとんどなし
- 向いている人:老後に向けて資産形成をしたい人
各種年金とは、私的年金の総称です。保険会社が用意している個人年金保険のほか、確定拠出年金も含まれます。
保険会社の個人年金保険の特徴
個人年金保険とは、各種保険会社が用意する、公的年金(国民年金、厚生年金など)とは別物の年金制度です。契約時から年金受取年齢(通常は60歳か65歳)まで一定額の年金保険料を支払い、その後は年金の受取期間(5年、10年、終身の3タイプが多い)中、ずっと年金が受け取れる、という仕組みになっています。
年金の受け取り開始時期が来る前に亡くなってしまった場合、払込済みの保険料に相当する金額が遺族に支払われるため、死亡保険としての役割もあります。
年金保険料の積立・方法には定額と変額があります。定額とは予め利率が決められた方式のことで、契約加入時に将来の受取額が確定します。一見リスクの少ない方法に見えますが、予め決められた利率は非常に低く、インフレが起きた場合に実質的な受取額が大きく減ってしまう可能性もあるため一概に安心とも言えません。リスクを負わないことがリスクにつながる、とも言えます。
一方、変額とは、利率が予め決められておらず、実績に応じて将来の受取額が変動する方式です。インフレが起きた場合はこちらのほうが有利になりますが、一方で元本割れのリスクもあります。
また、日本円ではなく外貨で運用するタイプの個人年金保険もあります。この場合、円安になると利益が増え、円高になると利益が減ります。
確定拠出年金
確定拠出年金は、国民年金や厚生年金の保管のために作られた私的年金制度です。当初は自営業者・経営者のためのものでしたが、その後会社員や公務員も加入できるようになりました。いつでも加入でき、原則として60歳が受取開始年齢となります。
確定拠出年金の最大の特徴は、運用する商品を自分で決められることです。個人年金保険は保険会社が預かった年金保険料を運用しますが、確定拠出年金では自ら運用しなければならないのです。
投資の方法は基本的には投資信託で、どのファンドを買い、あるいは売るのかを自由に決められます。自由な反面リスクも大きいですが、インフレリスクにも対応できます。
また、毎月支払う年金保険料は全額控除の対象となるため、所得税や住民税を大きく減らせます。
各種年金の平均利回りは?
個人年金保険の場合は、利回りではなく返戻率が収益性の基準となります。返戻率とは支払った年金保険料全額に対する受取額の割合のことで、例えば月額保険料が2万円、払込期間が40年、受取年金額が130万円/年、受け取り期間が10年の場合は以下のようになります。
- 総支払額=2万円×40年×12ヶ月=960万円
- 受取総額120万円/年×10年=1300万円
- 返戻率=1200万円÷960万円=1.25=125%
40年間でおよそ25%の利回りなので、1年当たりの利回りは0.55%(複利)です。なお、終身の場合は亡くなる時期によって受取額が変動するため、あらかじめ定められた返戻率は存在しません。また、変額の場合は受け取り開始になるまで受取総額が決定しないため、あらかじめ決められた返戻率は存在しません。
確定拠出年金は運用する人によって利回りが変動しますが、企業年金連合会が行った調査によれば、制度発足から2014年度までの累積平均利回りは3.9%でした。
個人年金のリスク
個人年金の主なリスクは以下の4つです。
- 利率変動リスク:将来受け取れる年金が減るリスク(定額タイプは除く)
- 流動性リスク:現金化に時間がかかるリスク
- インフレリスク:急激なインフレに対応できないリスク(変額タイプは除く)
- 倒産リスク:保険会社が倒産するリスク
インフレリスクとは、インフレが発生した場合に実質的な受取額が目減りしてしまうリスクのことです。例えば、定額、年利0.5%で運用している場合、物価上昇率が2%ならば、実質的な購買力は1.5%ほど落ちてしまうことになります。特に契約期間が長いとインフレが起こる可能性も高まるため、若い人は変額タイプを契約したほうがい以下もしれません。
また、保険会社が倒産した場合、すべての生命保険会社が加入する「生命保険契約者保護機構」が一旦契約を引き継ぎます。その後生命保険契約者保護機構は保険契約を引き継いでくれる救済保険会社を探します。救済保険会社が名乗り出た場合、生命保険契約者保護機構はその会社に対して資金援助を行います。
どこも名乗り出なかった場合は、生命保険契約者保護機構の子会社である承認保険会社、もしくは生命保険契約者保護機構自らが契約を引き継ぎます。
そのため、保険会社が倒産したら今まで払ってきた年金保険料が全てパァになるということはありません。ただし、生命保険契約者保護機構によって保証される責任準備金(生命保険会社が保険料支払いに備えて積み立てているお金)の下限は、破綻時点でのそれの90%と定められています。つまり、最大で責任準備金が10%減らされる可能性があるわけです。
また、保険契約の移転の際に、予定利率などが下げられることもあります。なんにせよ、保険会社の倒産は加入者に何らかのデメリットをもたらすことになるでしょう。
先物取引
- 初期費用:10万円~数億円
- 向いている人:リスクを負ってでもリターンを大きくしたい人
先物取引とは、将来売買を行うことを現時点で約束する取引のことです。現時点では買うものの価格や数量などを約束だけをしておいて、約束した日(決済期日)が来たら実際に売買を行います。決済期日の価格は、取引とは全く無関係な事象となります。取引の対象はコモディティや債券などがメインです。取引は取引所を通じて行います。
実際の取引の現場では現物をやり取りすることは少なく、差金決済で決済されることが大半です。差金決済とは、購入時点と決済時点での差額、つまり売買によって発生した差額だけを決済する方法です。
例えば、1ヶ月後に商品を9万円で買取る約束をしたとします。そして1ヶ月後、その商品の価格が10万円になっていたとします。
この場合、1度相手から商品を受け取って9万円を払い、すぐに相手に商品を返して10万円を受け取るというのは非常に非効率です。そこで、9万円と10万円の差額である1万円を相手から受け取るのが差金決済です。もしも1ヶ月後の価格が8万円だった場合は、こちらが相手に1万円を払わなければなりません。
また、先物取引では、先に売って後で買い戻すことも可能です。例えば1ヶ月後に9万円で商品を売ることを約束して、1ヶ月後に商品の価格が8万円になっていれば、差金決済で1万円の利益を得られます。もしも1ヶ月後の価格が10万円になっていれば、1万円の損失です。
先物取引の証拠金制度
先物取引では、株式投資や債券投資などと違い、証拠金制度を導入しています。証拠金制度とは、取引所に証拠金と呼ばれるお金を預け入れると、その何倍もの金額の(通常は最大50倍程度)取引ができる制度です。
少ない証拠金で多額の取引ができる仕組みは「レバレッジ」と呼ばれます。もちろん、レバレッジを利用せず、証拠金の1倍で取引しても全く問題ありません。
取引を行う上で最低限用意しなければならない証拠金を取引証拠金といいます。取引証拠金と同じ額しか証拠金を用意しないと、少し価格が下がっただけでも証拠金が取引証拠金の金額を下回ってしまうため、証拠金は余裕を持って入金する必要があります。
レバレッジの仕組み
レバレッジを効かせる(証拠金に対する取引金額を増やす)と、当然利益は大きくなりますが、損失も大きくなります。単純に考えれば、レバレッジが10倍に慣れば、利益は10倍、損失も10倍です。仮に損失が大きくなった場合、証拠金が取引証拠金を下回ってしまいます。
例えば、以下のような条件で取引を行ったとします。
- 取引証拠金:10万円
- 証拠金:12万円
- レバレッジ:10倍
- 購入金額:120万円
この商品が決済期日の前に118万円まで値下がりしてしまった場合、証拠金は10万円になってしまいます。つまり、証拠金と取引証拠金が一致してしまうわけです。ここから少しでも下がった場合、証拠金不足となります。その場合は不足した部分を新たに入金して穴埋めするか、その時点で損失を確定させるかする必要があります。
この仕組があるため、通常、証拠金の一部を失うことはあっても、証拠金が0になることはありません。ただし、値動きがあまりにも急だった場合はこのシステムが正常に動作しないことがあり、その場合は証拠金が0になったり、借金を背負ったりすることになります。
先物取引の平均利回りは?
先物取引は通常、ゼロサムゲームとして扱われます。ゼロサムゲームとは、それぞれの投資家の損失の合計と利益の合計が一致するゲームです。例えば身近なところで言えば麻雀などがゼロサムゲームに該当します。
先物取引は一方が1万円儲かればもう一方が1万円損する仕組みになっているので、原則的にはゼロサムゲームなのです。ゼロサムゲームの平均利回りは0%です。
一方、株式市場は市場平均が高くなれば損失の合計<利益の合計となりますし、市場平均が低くなれば損失の合計>利益の合計となります。前者をプラスサムゲーム、後者をマイナスサムゲームと言います。
長期的には株式市場の市場平均は高くなるので、株式市場はプラスサムゲームと言えます。株式市場の成長率がそのまま平均利回りになります。
以上のことを考えれば、先物取引にはメリットがないようにも思えます。しかし、先物取引は株式投資と違って売りから入れるというメリットがあります。
株式市場の市場平均は長期的には高くなりますが、短期的にはそうとも限りません。例えば、2007年8月頃には1万7000円ほどだった日経平均は、2009年1月ごろには8000円程度にまで下がってしまっています。
このように市場全体が下がっているときには、株式投資ではなかなか利益を挙げられません。下がる中で個別に上がる株を見つけるのは非常に困難です。しかし、先物取引ならば、今後さらに価格が下がる確信があれば売りから入れば利益を挙げられます。
もちろん、これは短期的な話であり、長期的な投資術としてはおすすめできません。前述の通り、株式市場は長期的には成長しているからです。
先物取引のリスク
先物取引の主なリスクは以下の3点です。
- 証拠金不足リスク:証拠金が取引証拠金を下回るリスク
- レバレッジリスク:レバレッジが大きいと、損失が増えるリスク
- 決済期日が決まっているリスク:決済日を超えて保有ができないリスク
レバレッジを小さくすれば、上の二つのリスクを小さくすることができます。ただし、理論上はそうなっていても、実際にそれを実行できるとは限りません。レバレッジを大きくすれば少ない証拠金で取引ができるというのは、多くの資金がない投資家にとって魅力的なものだからです。先物取引は、通常の取引と比べてさらに高い理性、自制心が問われることになるでしょう。
また、決済日が決まっているため、それを越えて保有することができないというのも見逃せないリスクです。例えば株式の場合は価格が下がっていても「再び上がるまで待つ」という選択肢がとれますが、先物取引の場合は強制的に決済されてしまいます。
ただし、再び上がるまで待っていたら倒産してしまった、ということもあり得るため、強制的に決済されることが一概に悪いとも言えません。