安定した立場が魅力の公務員。しかし、公務員は国民への奉仕が仕事であるため、民間人とは違い様々な点で制約が課せられています。副業禁止規定もその一つであり、過去には副業に手を出して懲戒処分を受けた公務員がたくさんいます。
しかし、すべての副業が一切禁止されているのかというとそういうわけでもなく、条件を満たせば公務員でも副業が行えます。今回は公務員でもできる副業をまとめましたので、なかなか給料が上がらずに困っているという方は参考にしてみて下さい。
目次
公務員の副業は法律で禁止されている
一般企業でも副業が禁止されていることがありますが、あれは単なる就業規則です。会社が就業規則で社員の副業を一切禁止することは、本来認められないことです。
雇用者と被雇用者はあくまでも勤務時間内に仕事をするだけの契約をしただけの関係であり、勤務時間外については何の取り決めも交わしていないからです。被雇用者が勤務時間外に家族と過ごそうが、勉強をしようが、遊ぼうが、あるいは副業をしようが本人の自由です。
副業と本業が競合関係になったり、副業の内容が本業の信頼を失墜させるようなものである場合は個別で解雇が認められることもありますが、法律でそうなっているわけではありません。
一方、公務員の場合は国家公務員、地方公務員ともに副業が法律で明確に禁止されています。国家公務員法103条と104条、及び地方公務員法38条を見てみましょう。
国家公務員法第103条:私企業からの隔離
職員は、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業(以下営利企業という。)を営むことを目的とする会社その他の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、又は自ら営利企業を営んではならない。
国家公務員法第104条:他の事業又は事務の関与制限
職員が報酬を得て、営利企業以外の事業の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、その他いかなる事業に従事し、若しくは事務を行うにも、内閣総理大臣及びその職員の所轄庁の長の許可を要する。
地方公務員法38条:営利企業等の従事制限
職員は、任命権者の許可を受けなければ、営利を目的とする私企業を営むことを目的とする会社その他の団体の役員その他人事委員会規則(人事委員会を置かない地方公共団体においては、地方公共団体の規則)で定める地位を兼ね、若しくは自ら営利を目的とする私企業を営み、又は報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも従事してはならない。
副業が禁止されている理由は信頼を失わないため
法律特有のややこしい書き方で若干理解しづらいかもしれませんが、ようするに公務員は原則として報酬を得て事業を行ったり、会社の職員に鳴ったりしてはいけない、ということです。
なぜこのようなルールがあるのかというと、公務員は国民、もしくは地域住民全体に奉仕する立場の職であり、本業で知り得た秘密を外部に漏らしたり、信頼を失うようなことをしたりしないためです。
一方、国家公務員法、地方公務員法のどちらにも「許可」という言葉が入っています。つまり、許可を取れば一定の範囲内で副業をしてもいいよ、ということです。また、一定以下の事業に関しては、許可を得ないでもいいとされています。
もちろん、どんな副業であっても必ず許可が降りるということはなく、信頼を失わず、外部に情報も漏らさないとはっきり認められた場合に限ります。どうしても副業が必要という場合は、職場の上司に相談するところから始めるべきです。
許可を得ずに副業をすると職場に伝わる
仮に副業を周りに言わずに禁止されている副業を始めたらどうなるのでしょうかあ。ケースバイケースなのでなんともいえませんが、収入がそれなりに大きくなると基本的にはバレます。収入が増えればそれだけ税金が高くなり、そのことに経理担当者が気がついてしまうからです。
許可を得ず副業を行っていることがバレた場合、何らかの懲戒処分が下ります。処分の大きさはその副業によってまちまちですが、概ね以下の5通りに分けることができます。
- 免職:公務員としての職を失う、要するにクビ。
- 停職:公務員としての職は失わないが、一定期間中仕事ができず、給料も支払われない。
- 減給:一定の期間中、給料が減る。
- 戒告:口頭での注意に加え、将来の昇給、昇進の査定に影響が出る。
- 厳重注意:口頭注意のみ。記録などには特に残らない。
例えば、2008年には千葉県の職員が夜中にビルの清掃の仕事をしていたことが発覚し、減給処分を受けています。一方、2013年には大阪市の職員がパチンコ店の清掃員のバイトをしていた発覚し、定職3ヶ月の処分を受けています。
似たような副業をしていたにも関わらず、処分の重さには差がついています。このあたりは個々の判断が加わってくるため、こういう副業がバレたらこういう処分が下る、と一概に言うことはできないようです。
安全に行える「ホワイト」な副業は4つ!
公務員ができる問題なく副業は原則として以下の4つです。
- 家業の手伝い
- 不動産賃貸業
- 株式やFXなどの投資
- 本業で必要になった仕事
ただし、この4つならばどれも無制限に認められるわけではなく、それぞれ制限がかかっています。
家業の手伝い
公務員は上記の通り事業者になることはできませんが、実家の親や配偶者、あるいは子供などが何か家業をしている場合は、就業時間外であれば手伝いをして報酬を得ることは認められる場合が多いです。
もちろん、本業、つまり公務員としての仕事が疎かになってしまうほど疲れるまで働いたりすると、職場で問題視される可能性が高まります。
また、めったにないことかと思いますが、もしか行が法律に違反している場合は当然それに加担するようなことをしてはいけません。
不動産賃貸業
不動産賃貸業は不動産投資とは非常に似ていますが、少し違います。不動産投資は毎月得られる家賃(インカムゲイン)と、売却益(キャピタルゲイン)の両方を狙う投資ですが、不動産賃貸業把握はあくまでもインカムゲインだけを狙う投資です。売却益を狙った投資は認められない、というわけですね。
そして不動産賃貸業は、規模が一定以下の場合は副業とはみなされません。具体的には、独立家屋(一軒家)の場合は5棟以下、もしくは賃貸マンションやアパートの場合は合計室数が10室以下の場合は、副業とみなされないので、許可を得る必要もありません。
ただし、その場合でも賃貸収入が年間で500万円を超えているか、もしくは自身で管理をしている場合は副業とみなされてしまいます。管理は管理会社に任せたほうがいいでしょう。
一定の規模を超えた場合は、職場に許可を得る必要があります。その場合は所有している物件の概要、家賃票、管理を委託していることが証明できる書面などを予め用意しておく手続きがスムーズにおこなえます。
株式やFXなどの投資
株式投資、FXなどの投資、あるいは資産運用は公務員でも問題なくできます。ただし、当然ですが、本業で知ったまだ一般には公開されていない情報を使って投資を行うとインサイダー取引とみなされてしまうので、絶対に避けなければなりません。
また、投資で何らかの利益を得た場合、必ず確定申告を行わなければなりません。投資で本業に影響が出るようなことも合ってはいけません。あくまでも余裕資金で行うことが大切です。
本業で必要になった仕事
これは例外的なもので、例えば警察官の場合は一般人としてお店で働いて他人に近づく、という行為が必要になることもあります。本人に副業という感覚はないかも知れませんが、これも一応副業の範疇に含まれます。
微妙な立場の「グレー」な副業4つ
先ほど紹介した副業はいずれも「ホワイト」な副業であり、行っても咎められることはありません。実は、これ以外にも、ホワイトとはいい難いがブラックともいい難い、グレーな副業が幾つか存在しています。
これから紹介する副業はいずれもホワイトではない以上お薦めはできませんが、こういう副業もあるにはある、とおぼえておいて下さい。
ネットオークション・転売
たとえば、ヤフオクなどのネットオークションで不必要なものを1回や2回売ったからと行って、それが即副業禁止規定に引っかかって懲戒処分を受ける、ということは現実的にはまずありえないでしょう。中古買取点に本やCDなどを売りに行った場合も同様です。
しかし、ネットオークションや転売で大きな利益を上げるようになると、問題視されることがあります。
どのくらいの利益をあげると問題視されるとは断言できませんが、基本的に副業による年間収入が20万円を超えると別途確定申告が必要になり、周囲にバレてしまう可能性が高くなります。面倒を起こしたくないのならば、20万円以下に抑えておいたが方がいいでしょう。
アフィリエイト・クラウドソーシング
アフィリエイトとは、簡単に言えば自身の運営するウェブサイトなどに広告を貼って、その広告がクリックされるたびに、あるいは広告を通じた成果(資料請求や購入など)が発生するたびに広告主から報酬がもらえる仕組みのことです。
報酬額は広告の種類などによって異なりますが、トップのアフィリエイターともなれば月数千万円、あるいはそれ以上の金額を稼いでいます。一方で、90%近くの人が月5000円すら稼げていないという一面もあります。
クラウドソーシングとは、ウェブサイトなどを通じて企業の仕事を外部に委託する仕組みです。ランサーズやクラウドワークスなどのクラウドソーシングサイトには多数の仕事が掲載されているので、その中から自分にあったものを選び、申込み、契約を結び、仕事をして報酬をもらいます。
アフィリエイトやクラウドソーシングも、月数千円程度の副業ならば特には問題にならないことがほとんどですが、やはり年間収入が20万円を超えると確定申告が必要になります。
その他の副業も基本的には20万円の壁の中で行うべきでしょう。
この中でもおすすめの副業は不動産賃貸業
以上、ホワイト・グレーな副業を集めてみましたが、この中でも公務員に最もオススメなのは不動産賃貸業です。公務員という肩書は、様々な点で会社員や自営業者と比べて不動産賃貸業に向いているからです。
公務員は融資が受けやすい
不動産賃貸業を始める上で最も大きな障壁は物件の購入費用をどうやって用意するのか、ということです。もちろん、全部現金で用意できればいいのですが、実際問題なかなかそうも行きません。
現金だけで変える区分所有の物件では、利益にも限界があります。副業としてそれなりの収入を目指すのならば、やはり一棟買いを目指すべきです。
となると、各金融機関から融資を受ける必要がありますが、融資には審査があります。審査に合格するためには、金融機関が予め用意した審査基準を満たさなければなりません。審査は様々な基準をもとに行われますが、とくに重視されるのが勤務先、年収の高さと安定性です。
公務員の勤務先は基本的に国家公務員なら国、地方公務員なら地方自治体です。これらの勤務先は、一企業よりもはるかに信頼があります(世界的な大企業と比べると話は変わるかもしれませんが)。
そして、年収も額は一般的な会社員とそれほど変わりありませんが、安定性は会社員よりも優れているため、審査で高く評価されやすいのです。
審査で高く評価されれば、それだけ多額の融資を低い金利で借りることができます。融資額が増えて金利が低くなれば、収益の上がりやすい物件を買いやすく鳴ります。
もちろん、公務員なら必ず審査に受かるようなものでもありませんが、物件資料や資産資料、キャッシュフロー表などを作れば審査に通る可能性は高いです。(参考:不動産投資の基本的な仕組みと、借金をした方がいい理由)
不動産賃貸業は最初だけ忙しく、あとは楽
不動産賃貸業は常に物件に気を配っていなければならないため、平日の昼間はずっと働いている公務員には難しいと思われるかもありませんが、そんなことはありません。
確かに最初の物件を見つけるまでは非常に大変です。いい物件に巡り合うまでは、少なくとも紙面上でいいと思えた実物を100件の物件を見るべきとされています。
土日にそれぞれ2件ずつ見に行ったとしても1週間で見られる物件は4件、100件見るには25週間(ほぼ半年)かかります。しかし、そこを乗り切ってしまえば、後は基本的に楽です。
物件の管理を自分で全部やろうとすると大変な手間がかかりますが、不動産管理会社にお金を払って委託すれば、彼らが面倒なことは全てやってくれます。
もちろん、不動産管理会社はビジネスとして管理をするので、彼らには報酬を支払わなければなりません。しかし、自分で管理をするのにも、それはそれで時間がかかります。
不慣れな素人が管理をするよりは不動産管理会社に任せてしまったほうが家賃回収率も入居者の満足度も上がるでしょうし、どのみち一定以上の規模になった際には不動産管理会社に委託しなければならないので、最初から彼らに任せてしまったほうがいいでしょう。
不動産管理会社はどこでも同じではない
ただし、不動産管理会社と一口に言ってもそのサービスの質や種類は千差万別です。安いところに任せていたらクレームにうまく対応できず入居者が離れていってしまった、というのでは本末転倒です。
不動産管理会社の基本的な仕事は家賃回収、入居者募集の2つです。この2つだけを管理会社に委託する場合、委託料は賃料収入のの3~5%ぐらいです。仮に年間収入が300万円だとすれば、賃料は9万円~15万円程度、ということになります。色々と業者を比較しながら、評判が良いところを見つけましょう。
一方、サブリースという制度を利用すれば、空室や賃料未払いのリスクを無くすことができます。サブリースとは物件所有者がサブリース会社に物件を貸す契約を結び、サブリース会社から一定の賃料をもらうという仕組みです。
物件の空室率がいくらになろうが、賃料未払いが発生しようがサブリース会社から毎月一定の賃料が払われる反面、その金額は満室想定時よりはかなり低めに設定されています。
多くのサブリース会社では家賃保証率が80~90%となっているので、実質的には10~20%の手数料を支払うことになります。また、敷金や礼金も受け取れません。
サブリースの契約期間は2年~5年程度で、契約更改する場合は賃料が改定されます。物件需要が高い地域ならば、サブリースを利用せずとも十分満室に近づけますが、そうでない場合は利用を検討したほうがいいかもしれません。
投資信託は不動産投資が怖い人にオススメ
いくら不動産投資が公務員にとって有利であると言われても、そんな大きな賭けはできないという方も少なくないでしょう。
そうした方には投資信託がおすすめです。投資信託は原則として毎月一定の金額を拠出し、そのお金でファンドと呼ばれる株式や債券がパッケージ化された金融商品を買っていくという投資です。
毎月一定の金額を拠出するので、高いときには少しだけ買い、安いときにはたくさん買うようになり、平均取得単価が下げられるというメリットがあります。
そして、投資信託は最初に購入する商品を決めれば、後の運用は全部ファンドマネージャーと呼ばれるプロの投資家が行ってくれるので、手間もかかりません。本業に集中しなければならない公務員には、比較的向いているといえます。(参考:投資信託で安全にお金を運用する方法)
FXは公務員には向かない
一方、FXは公務員には余り向いていません。FXは基本的にゼロサムゲームですから、株式や債券、投資信託のように、長期間保有するだけで経済成長の恩恵をうけることができません。
市場に参加しない限りは、絶対に利益が出ないのです。そして、為替レートは24時間変動しています。FXを始めるとどうしても為替が気になってしまい、本業に集中できなくなってしまう可能性が高いです。厳しい服務規程がある公務員には、不適であると言わざるを得ません。
公務員にだけ認められた共済制度
公務員は共済組合に加入していますが、その共済組合は貯金事業を行っています。これは預かった貯金を運用することによって預金者である公務員に還元する、要するに一般的な貯金です。ですが、一般的な貯金と比べると、金利はかなり高めに設定されています。
金利は都道府県によって違いますが、例えば神奈川県の場合は年利1.7%です。貯金方法は積立貯金でためやすいのもポイントです。今時民間の銀行に預けても長期の定期ですら0.30%程度にしかならないこのご時世に1.7%というのはかなり魅力的です。
副業の規模が大きくなりそうな時は、民間企業への転職も視野に
副業の規模が大きくなり、本業の稼ぎを超えそうだという時は、場合によっては公務員をやめて民間企業に転職する、もしくは副業を本業とすることを考えたほうがいいかもしれません。
公務員という地位は非常に魅力的であり、いつまで稼げるかわからない副業に身を投じるのは怖いという方も少なくないかもしれません。
しかし、公務員という地位も現代においては必ずも安泰とはいえなくなっています。むしろ副業のほうが遥かに安定的に稼げる時代がやってくる可能性もあります。
民間企業に転職すれば原則として勤務時間外の副業は自由ですし(それが就業規則で禁止されている企業には最初から入らないようにしましょう)、事業の拡大も心置きなくできます。
もちろん独立には責任がつきまといますので、深く考えずにやるべきではありませんが、場合によってはそういう選択肢も選べる、ということは頭に入れておいて下さい。