お金の増やし方と将来への備え方。貯金と保険の組み合わせ方

お金を増やす、あるいは将来に備える方法はいくつかありますが、その中でも低リスクとされているのが貯金と保険です。

どちらも利回りが予め決まっていてリスクがない、そのかわり利回りはあまり多くないなど似たような特徴も多いですが、一方で相違点も少なくありません。

今回は貯金と保険を様々な観点から比較しながら、両者をどのように組み合わせていくのが一番いいかを考えていきたいと思います。

貯蓄と保険は二者択一ではない

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貯金と保険はどちらが優秀か、という問いに答えるのは簡単ではありません。将来いつ、どんな病気や怪我を負うか、あるいは何歳まで生きるかは誰にもわからないからです。

だからこそ両者を組み合わせて、様々なリスクに広く備える必要があるのです。

貯金の最大のメリットは「いつでも下ろせること」

貯金の最大のメリットは、いつでも現金化できることです。ある資産の現金化のしやすさを「流動性」と言います。

流動性が高い資産とは現金化しやすい資産のことで、前述の貯金が代表的な存在です。一方、保険は貯金と比べると流動性が低く、現金化には向いていません。

急な出費が続いてお金がなくても、流動性の高い貯金があれば安心ですが、流動性の低い資産しかない場合は手間をかけてそれを現金に変えるか、もしくはキャッシングやカードローンなどで現金を用意するしかなくなります。

いつでも下ろせることがデメリットになることも

貯金の最大のメリットは前述の通り「いつでも下ろせること」ですが、実はこのメリットがデメリットになることもあります。

いつでも下ろせるということは、考え方を変えればいつでもお金を使ってしまう可能性がある、ということでもあります。無駄遣いをしてしまうかもしれないわけですね。

保険料として積み立てたお金は保険会社が運用しているので、つい誘惑に負けて使ってしまうということがありません。

自分の忍耐力に自信がない、でも資産を形成したいという場合は保険を利用した方がいい場合もあります。

利回りは貯金・保険ごとにまちまちでなんとも言えない

貯金も保険も、それぞれ利息がつきます。利息の割合を利回りと言い、その大きさは商品によって異なります。

例えば、貯金でも普通預金と定期預金では利回りは異なりますし、同じ普通預金でも金融機関によって利回りは異なります。一方、保険にも終身保険、養老保険、年金保険などがあり、やはり商品ごとに、あるいは金融機関ごとに利回りは違います。

ただ、現時点においては保険のほうが貯金よりも利回りが高い傾向があります。貯金と保険に限らず、流動性の高い資産と流動性の低い資産を比べた場合、通常は後者のほうが利回りが高くなります。

流動性が低く現金に変えにくいぶん、その不都合を補うための利回りが上積みされるからです。このような法則を流動性プレミアムと言います。

貯金の中で利回りが高いのは定期預金

多くの金融機関が提供している貯金は、普通預金と定期預金の2つです。普通預金はカードや通帳があれば金融機関でいつでも自由にお金が下ろせるタイプの貯金です。

金融機関を自分の貯金箱にして、そこにお金を安全に預かってもらうというイメージですね。

一方、定期預金は一定の期間(幾つか金融機関が提示します)の中から1つを選び、その期間中預けるというものです。原則として、一定の期間がすぎるまでは引き出しができません。流動性が劣るぶん、利回りは高く設定されています。

どうしても途中で解約したい場合は手続きを経た上で解約することもできますが、その場合は利回りが大きく下がってしまうので注意しましょう。

普通預金と定期預金では、定期預金のほうが利回りが高く設定されています。普通預金の金利は0.01%にすら満たないものが多く、実質ほぼ無利息と考えたほうがいいでしょう。

一方、定期預金の場合は商品によっては利回りが0.2%を超えるものもあり、普通預金よりは遥かにお得です。ただし、前述の通りそれと引き換えに流動性を失うことになります。

保険は目的ごとに分けられており、利回りも様々

保険の方は一口に保険と言ってもいろいろなものがあり、その中でも貯蓄性が高いものを貯蓄性保険と言います。貯蓄性保険には終身保険、年金保険、学資保険などがあり、それぞれ利回りに差があります。

終身保険は終身で入れる保険で、貯蓄性があり、また被保険者が死亡した場合は遺族が保険金を受け取ることができるという金融商品です。言わば保証と貯蓄を兼ね備えた商品ですね。

貯金には当然死亡保障がないので、この点で保険は有利であるといえます。満期がないので、自身の意志で解約するまでお金は受け取れません。このタイミングをどう選ぶかが重要になります。

個人年金保険は将来、高齢者になった時に年金をもらうための保険です。国民年金や厚生年金などの公的年金とは違う私的年金であり、年金を上積みする上で非常に便利です。

終身保険と違って通常は定期であり、一定の年齢に達すると強制的に解約させられ、保険金を受け取ることに鳴ります。

学資保険は将来の子供の教育費を用意するための保険です。被保険者が死亡した、もしくは後遺障害を負った場合は保険料の支払いが免除され、満期には満額学資金を受けとれるという仕組みになっていることが多いです。こちらも通常は定期です。

払い込んだ額に対する受け取れる額の割合を返戻率といいます。例えば、200万円払って220万円受け取る場合、返戻率は110%となります。

終身保険と学資保険の返戻率は110%程度、個人年金保険の返戻率は120%程度になることが多いですが、加入した時期や契約によって上下します。

例えば、明治安田生命の「年金ひとすじ」の場合、20歳で加入、60歳で満了し、年金受取期間は10年、月額保険料は2万円とすると、払込総額は960万円、年金総額は1173万円、返戻率は122.2%となります。

これは40年間、ずっと平均利回り0.5%で運用したのとほぼ同じことになります。こうしてみると利回りは思ったほど高くないですが、リスクがないのはうれしいところです。

貯蓄性保険は解約すると元本割れを起こすことも

貯蓄性保険は満期まで解約すれば基本的に元本割れすることはありませんが、中途解約してしまった場合は話が別です。

貯蓄性保険は掛け捨て型保険と比べて毎月の保険料が高いです。毎月の保険料が払えずに解約をしたら元本割れしてしまった、となってしまっては話になりません。貯蓄性保険は無理のない範囲で保険料を収めていくことが大切です。

貯蓄性保険の保険料はどれくらい?

さて、先程貯蓄性保険の保険料は高いという話が出てきましたが、具体的にいくらぐらいかかるのか見てみましょう。

今回はオリックス生命保険の販売している終身保険「RISE」を例にしますが、どの保険も似たようなものです。

仮に死亡保障を1000万円、60歳払済とした場合の月額保険料、保険料総額、解約返戻金額、返戻率は以下のように鳴ります。

契約者 月額保険料 保険料総額 解約返戻金額 返戻率
男性20歳 1万5,450円 741万6,000円 790万8,000円 106.6%
女性20歳 1万4,720円 706万5,600円 769万円 108.8%
男性30歳 2万1,540円 775万4,400円 790万8,000円 102.0%
女性30歳 2万0,570円 740万5,200円 769万円 103.8%
男性40歳 3万4,180円 820万3,200円 790万8,000円 96.4%
女性40歳 3万2,580円 781万9,200円 769万円 98.3%

仮に30歳で入った場合、男性なら毎月の保険料は1万8380円、女性なrあ1万6890円です。結構な負担ですよね。この額を60歳まで毎月払い続けるというのは簡単なことではありません。

一方、オリックス生命保険が提供している掛け捨て型の死亡保険・ファインセーブの保険料は、60歳満了、1000万円、男性・30歳の場合で2810円、女性は1990円です。

無理して貯蓄型生命保険には入らず、掛け捨てで死亡保障を確保して差額は定期積金や投資信託に回すというのも一つの手です。

貯金も貯蓄性保険もインフレには総じて弱い

貯金も貯蓄性保険も、予め利回りが決められた商品です。利回りが決められているというのは額面上は損をしないということですが、インフレが進んだ場合実質的に損をすることがあります。インフレとは簡単に言えば、物価及び賃金が上がることです。

インフレ率が利回りを上回ってしまった場合、実質的には損をすることになります。例えば、インフレ率が5%、利回りが2%だった場合、実質3%の損になります。

もちろん、利回りが0%の投資(タンス預金)をしていた場合は実質5%の村になっていたわけで、それと比べればまだましという見方もできるのですが、何にせよ実質的に損をしてしまったことには代わりありません。

利回りが予め決められている貯金や貯蓄性保険は、後から高い利回りを目指すということができないので注意が必要です。

インフレリスクに備えたい場合は、株式、債券、不動産、あるいはそれらをミックスした投資信託などの投資のほうが有利です。もちろん、これらの投資はその分リスクも高いですが。

インフレリスクに強い「変動型」の貯蓄性保険

まだ数は多くありませんが、最近はインフレにもある程度備えられる貯蓄性保険も登場して行きています。このような保険商品を変動型ということがあります。

それに対して、ここまで紹介してきたような予め返戻率(利回り)が決められている保険を固定型と言います。

変動型の保険では、一定の期間毎に返戻率(利回り)の見直しを行います。見直しの時期は保険会社によって異なり、毎月見直すようなところもあれば、数年に1回しか見直さないようなところもあります。

見直しは市中金利を参考に行われます。市中金利とは、市中、つまり市場の中で企業や個人がお金を貸したり借りたりする際の金利のことです。

好景気になると市場で投資が活発になり、資金需要が増すため貸し手市場となり、市中金利は上がります。

一方、不景気の場合は資金需要が減るため借り手市場となり、市中金利は下がります。市中金利は景気に連動する、と覚えておいて下さい。そして、金利は経済成長率とも比例する関係があります。

固定型の保険は市中金利がいくらになろうと返戻率は変わりませんが、変動型の場合は市中金利が返戻率に影響を与えます。

好景気になれば市中金利につられて返戻率も高まり、固定型よりも保険金が増える可能性があります。

逆に不景気の場合は返戻率が高まらないので固定型よりも保険金は減ってしまいます。但し、変動型でも最低保証利率は設定されているため、満期まで待てれば額面上の金額は増えます。

市中金利は今後上がるのか?

となると、問題は今後市中金利が上がるかどうかということですが、これは誰にも予測できないのでなんとも言えません。

上がるかもしれないし、変わらないかもしれないし、下がるかもしれない。上がるとしたらどれだけ上がるのかもわかりません。現時点ですでに低金利であるから今後は金利が高くなると考える人もいれば、この低金利傾向が暫く続くという人もいます。

貯蓄型保険は控除が受けられるが、受給時に税金がかかることも

貯蓄型保険に保険料を収めた場合、一定の額が控除されます。控除とは課税所得を差し引く仕組みで、所得税および住民税を少なくすることができます。反面、貯蓄型保険の保険金を受け取る場合は所得が増えるので、それにともなって所得税や住民税が増えることもあります。

どちらも結局は一長一短なので、検討して決めるべき

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月並みな結論ですが、どちらが優れていると断言できない以上は、個々の事情を考慮した上でどちらにお金を投下するかを決めなければなりません。それぞれのメリット、デメリットを良く比べて、自分のライプスタイルにあった物を選びましょう。