ビジネスに失敗!倒産で会社の借金はどうなる?倒産しない方法は?

会社員というのは、実は非常においしい立場です。経営者や株主と違い、資本金を出資するというリスクを追わなくてもお金が稼げるからです。

普段会社員として働いていると経営者や株主が楽をしているようにみえるかもしれませんが、彼らは労働者の何倍ものリスクを背負っています。だからこそ成功したときには会社員の何倍もの利益を得ることができ、その一部の人達だけが目立つのでやっかみを受けるわけです。

特に経営者は大変で、もし事業に失敗してしまったら会社は多額の借金を背負うことになります。仮に立ち上げた会社が倒産してしまった場合、事業で作った借金はどうなるのでしょうか。

会社は出資者のものである

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会社には合名会社、合同会社、合資会社、株式会社の4つの種類があります。そして、会社の種類によって、経営者や出資者が負うべき責任の範囲は異なってきます。

なお、会社に出資して事業に参加する人のことを法律上は社員と言います。この「社員」は従業員という意味での社員とは異なります。混同を避けるため、ここでは「出資者」という言葉を使います。

企業は出資者のものです。株式会社の場合は株主が出資者です。この仕組みにおいては、会社が沢山儲かった場合、全てそれは出資者に還元されます。逆に会社が損失を出した場合、その責任は出資者が取ることになります。

よく会社は従業員のものであるという言説を耳にしますが、これは間違いです。従業員は経営者に自身の労働力を売って賃金を得ているだけの存在であり、それ以上のものではありません。

事業にどれだけ成功しても多額の賃金が得られるわけではない代わりに、事業にどれだけ失敗をしても責任を負わさせる(借金を負う)こともありません。

出資者が取るべき責任の範囲は会社の形態によって異なる

会社が合名会社、合資会社の一部の場合、出資者は会社と連帯して最後まで責任を負う必要があります。責任を負うとは、簡単に言えば会社の借金を返すことです。

これらの会社が借金を抱えて倒産した場合、出資者は出資した金額にかかわらず、借金に対して責任を負う事になります。場合によっては、私的な財産を換金してでも借金を返済しなければなりません。このような仕組みを無限責任と言います。

無限責任は、経営者から見た場合は非常に不利な制度です。経営者自身も事業を始める上では出資者になるので自身が無限責任を負う上、出資者も集めづらいからです。そのため、現在は合名会社や合資会社を立ち上げる人は殆どいません。

一方、株式会社、合同会社、合資会社の一部の場合、出資者は自身の拠出した金額に応じて責任を持ちます。例えば経営者が500万円の資本金を用意してその後1億円の負債を抱えて倒産したとしても、最初に出資した資本金500万円を失うだけで済みます。

経営者以外で出資した人、例えば株主も出資額以上の責任を負わされることはありません。このような仕組みを有限責任と言います。これは経営者や出資者にとっては望ましい仕組みであり、日本の会社の99%は有限責任の会社になっています。

現実的には株式会社や合同会社の経営者も無限責任を負うことが多い

さて、前述の通り株式会社や合同会社の経営者は有限責任を負うことになります。しかし、会社が倒産しても借金を背負う可能性はないのかというと、そうともいえません。むしろ、現実的には殆どの場合で借金を背負うことに鳴るでしょう。

多くの会社は、金融機関から借り入れを起こしています。そして、借り入れを行う際には担保や保証人を設定しています。大きな会社の場合は会社の資産である不動産などを担保に当てることが多いですが、中小企業の場合は経営者自らが保証人になったり、経営者の不動産を担保にしたりすることが珍しくありません。

このような場合、会社が倒産したらその時点での借金は経営者個人が背負うことになります。多くの中小企業の社長は表面上は有限責任ですが、実質的には無限責任を負っているといえるのです。

当然、経営者に会社の借金を返す能力はないので、会社の破産と同時に自己破産も申し立てることになります。

自己破産をしてしまえば個人としての借金が0になりますが、当然それなりにデメリットを被ることになります。(参考:自己破産大全!メリットデメリットからチャラになる借金の統計まで)。

善管注意義務と忠実義務

会社の取締役には、善管注意義務と忠実義務という2つの義務が商法で課せられています。善管注意義務とは会社と委任関係にある取締役は、良識ある管理者として注意深く職務をしなければならない、という決まりです。

忠実義務とは、取締役は株主総会会議を遵守して責務をきちんと果たす必要がある、という決まりです。これらの義務に違反した場合,その取締役は,会社に対して損害賠償責任を負うことになります。

経営に失敗しだだけでこれらの義務に違反したとみなされることはないでしょうが、会社のお金を私的に流用したり、明らかに無謀な投資を行ったりした場合はそうともいえなくなります。

倒産した場合、会社はどう処理される?

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倒産手続きは大きく、清算型と再建型に分けることができます。清算型は残った資産を適切に処分し、会社を債務とともに消滅させる手続きのことです。いわゆる倒産はこっちのイメージが強いですね。

一方、再建型は会社を消滅させず、再建させるための倒産のことです。

清算型の倒産の方法

清算型の倒産は、原則として個人の自己破産と余り変わりありません。手続き時点で債務者が所有している資産を換価処分し、それを債権者に分配する、と言った感じです。清算型の倒産はさらに破産手続きと特別清算手続きに分類できます。

破産手続は、財産を換価処分してそれを債権者に分配するという一連の手続きを裁判を通じて行います。手続き終了後は会社の資産も、借金も、会社自体もなくなります。

この手続は会社の形態にかかわらず利用できますが、債務者が債務超過に陥っている必要があります。債務超過とは簡単に言えば、現時点での債務が資産の額を超えている、資産を全額換価処分しても借金が返済しきれない状態のことです。

このような環境下では、貸借対照表の純資産部分はマイナスになっているはずです。

破産手続を行う際には株主総会の特別決議等によって清算人が選任されます。

一方、特別清算も基本的には破産手続と同じですが、こちらは裁判所によって当該株式会社の代表者等会社関係者が特別清算人が選任されるため、債権者の意向がより反映されやすくなっています。

手続きが破産手続と比べると厳格でなく、柔軟性も高いうえ倒産費用も少なくてすむためよく利用されていたのですが、最近は破産手続が使いやすくなったため以前と比べると任期は下がっています。

それでもメリットがないわけではなく、債権者の協力が得られそうな場合にはこちらを選ぶ価値はあります。

再生型の倒産の方法

再生型の倒産の手続きの最大の特徴は、会社が存続して債務の弁済を継続していくことです。会社自体がなくなるわけではありません。再生型の倒産はさらに民事再生手続と会社更生手続に分けることができます。

民事再生手続は、裁判所や監督委員の監督を受けながら、債務者自身が手続きに関与し、会社の債権を図るものです。監督委員は裁判所から選任されます。

債務者は業務と財産の管理を続けながら、経済的更生が図れるように債務を圧縮する再生計画案を提出し、それが債権者に承認されると弁済を行っていくことになります。議決権行使者の過半数の同意と、議決権総額の過半数の同意で承認されます。

民事再生低続は、株式会社以外の会社でも利用できます。また、経営陣の交代なども必須となっておらず、より債務者に大きな裁量が認められた形式となっています。反面、要件は厳格で、手続自体も複雑なものになっています。

ちなみに、民事再生は個人でも行うことができます。個人の民事再生は特に個人再生と言います。

一方、会社更生手続きも基本的にはこれと似たようなものですが、株式会社以外は選択できず、また経営陣の退陣も必須であるなど、債務者に対する制約が強くなっています。

また、手続自体も複雑な上高額であり、裁判所に支払う予納金が数千万円に達することも珍しくありません。そのため、大企業以外が会社更生低続きを選ぶことはまれです。

私的整理で解決することも可能

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ここまで小記してきた清算型・再建型の倒産手続きは全て裁判所を通す法的整理です。しかし、場合によっては裁判所を通さず、債権者と債務者(倒産する企業)の私的な話し合いで解決できることもあります。これを私的整理と言います。

私的整理は裁判所を通さない私的な整理ですから、決まった型のようなものはありません。双方の合意さえあれば、どのような形で解決を図っても問題ありません。しかし、極端に債権者にとって有利な条件は債務者が容認できませんし、逆もまたしかりです。

私的整理は裁判所を通さないため、強制力はありません。どちらも合意しなければできないのです。債権者が複数いる場合は、全債権者からの承認を得る必要があります。

また、私的整理は話し合い故に透明性が低いというデメリットもあります。そのため、多くの私的整理は一定のルールに従って行われます。このような私的整理を準則型私的整理といい、

  • 整理回収機構の企業再生スキーム
  • 中小企業再生支援協議会による再生支援事業
  • ガイドライン協会による私的整理に関するガイドライン(私的整理ガイドライン)

などが該当します。

準則の内容は?

ここでは中小企業がよく利用する「中小企業再生支援協議会による再生支援事業」を見てみましょう。

中小企業再生支援協議会とは,商工会議所・商工会連合会・政府系金融機関・地域の金融機関・中小企業支援センター及び自治体等から構成される認定支援機関で、再生支援事業には第一次対応と第二次対応があります。

第一次対応は協議会が倒産したい企業から相談を受け、事業再生に対するアドバイスをしたり、関連機関などを紹介することが盛り込まれています。

第二次対応は中小企業の債権者である金融機関や投資家などに対して協力依頼をし、事業再生計画を立案することが盛り込まれています。

個人事業主の場合はどうなる?

ここまでは会社、つまり法人の倒産について考えてきましたが、個人事業主が倒産する場合はどうなるのでしょうか。

前述の通り、株式会社や合同会社の有限責任社員の場合、連帯保証人になっていたり、担保を設定したりしていなければ、巨額の債務を抱えて倒産しても出資した金額を失うだけで済みます。

しかし、個人事業主の場合は事業用資産と個人資産の区別がそもそもなされていないため、事業で失敗して債務を背負ったら、それは個人の財産を取り崩してでも返済しなければなりません。それができない場合は、自己破産などの債務整理をすることになります。

このようなことを考えると、大きな融資が必要な事業を始める場合は、早く法人成りしてしまったほうがいいということになります。

起業の94%は失敗する

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会社の10年生存率(起業してから10年後も事業が続いている確率)は、法務局のデータによればおよそ6%です。つまり、94%は起業してから10年以内に倒産、解散しているのです。夢を持って、勉強して起業しても、10年以内にその会社がなくなってしまう可能性は極めて高いのです。

20年生存率は0.4%、30年生存率は0.021%です。30年以上存続している企業は極めてまれな、奇跡のような存在と言っても過言ではないでしょう。

倒産理由は販売不振による資金ショートが多数

経済産業省のまとめたデータによれば、過去5年間で倒産した企業の倒産原因の中で一番多かったのは販売不振で、実に全体の71%を占めています。販売不振とはすなわち売上の低下です。

企業の収益は売上から経費を差し引いたものですから、売上が減れば当然収益が減り、あるいは損失が増えてしまいます。販売不振に陥る原因は一つではなく、こうしていれば販売不振は絶対に避けられると言うことはできませんが、自社製品、市場の動向、競合先などを見据えて動くことが大切です。

販売不振に陥ると、資金ショートが発生しやすくなります。資金ショートとは、手元の資金が足りなくなることです。企業は日常の様々な取引で支払いを行ったり受けたりしますが、手元の資金がなくなると決済ができなくなってしまいます。

すると取引先の企業からの信頼を失い、場合によっては社員に給料が払えなくなって倒産してしまうのです。

さて、資金ショートは黒字であっても発生します。例えば、売上げが合っても、その売掛金が回収できるのが3ヶ月後という場合、その間に手持ちの現金がなくなってしまえば資金ショートが起き、倒産せざるを得ません。

これがいわゆる黒字倒産です。収益の増加ももちろん大切ですが、会社の運転資金を豊富に用意しておくことも忘れてはいけません。

倒産はどうやって避ける?

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ここまで倒産したらどのようなことが起こるかを中心に考えてきましたが、もちろん倒産は防げるなら防ぐに越したことはありません。では、具体的にどうすれば倒産を防ぐことができるのでしょうか。

倒産を防ぐための方法はたくさんあり、とてもここには書ききれませんが、倒産の最大の要因は前述の通り資金ショート、つまり手持ちのお金が不足することです。つまり、販売不振と資金ショートを起こさないことが、倒産を避ける最大のポイントであるといえます。

もちろん、販売が好調で手元に資金がたくさんあっても債務が多かったり、赤字が続いたりしていればやはり企業は倒産します。資金繰り、債務を減らす(自己資本比率を増やす)、黒字にする、の3つが倒産を避ける三本柱と言えるでしょう。

資金繰り改善方法

資金繰りを改善する一番確実な方法は、金融機関とのパイプを作っておくことです。金融機関との信頼関係があれば、一時的に資金繰りが悪化したとしても、健全な自己資本比率と黒字を保っていれば当座を凌ぐ資金が借りられるでしょう。

また、売掛金と買掛金の支払時期にも気をつける必要があります。売掛金の回収は早く、買掛金の支払いは遅く、が基本戦略です。

ただし、それは相手の企業にとっても同じことですから、ある程度の妥協は必要になります。あまりに早い回収や遅い支払いに固執すると、取引相手を逃してしまうことになるかもしれません。

それから、意外と多いのが売上増加による資金繰りの悪化です。売上が増えれば当然手元のお金は増えるように思われるかもしれませんが、実はそうでもありません。

売上が伸びると、それに対応するために設備投資や人員の補強、あるいは割高な仕入れをすることがあります。

もちろん、それも適切な範囲ならばいいのですが、やりすぎてしまうと後で問題となります。好調な時期が終わった後に過剰な設備と人員をどうするのか……公開しても後の祭りです。

季節要因、一時的な流行による売上の増加に浮かれすぎないことが大切です。

それから、会社のお金と経営者個人のお金は分けて考えましょう。もちろん、経営者もある程度の経費は使うこともあるでしょうが、あくまでも会社のお金は会社のお金、経営者のお金は経営者のお金です。

逆に、資金繰りが悪化したからといって、経営者が個人でお金を出すのもあまりいいことではありません。

自己資本比率増加の方法

自己資本比率とは、会社の全資産に対する自己資本(誰にも返さなくて良いお金)の割合です。自己資本が多ければ債務超過に陥るリスクは確実に減らせます。全資産が自己資本の場合は無借金経営となります。

資金繰りの兼ね合いもあるのである程度は借金をしておくことも大切ですが、債務の割合を増やしすぎる(自己資本を減らしすぎる)のには注意が必要です。

自己資本比率を増やす最も確実な方法は増資です。増資とは簡単に言えば株式を買ってもらうことです。ただ、中小企業の場合、誰かに株を買ってもらうのは簡単なことではありません。その場合は、経営者やその親族などに出資してもらうことも可能です。

ただし、株式を買ってもらうことにはデメリットもあります。株式を外部の人間に買わせるということは、会社が株主のものになるということです。経営の方針を株主に左右されたくなければ、身内だけで株主を固めるのもありでしょう。

また、不要な資産がある場合は処分してしまいましょう。例えば資産150、負債100、自己資本50の場合自己資本比率は50÷150=33.3%になりますが、資産100、負債50、自己資本50ならば自己資本比率は50にまでアップします。

いらない資産は現金化して、負債の返済に当てましょう。もちろん、事業に必要な資産は手放してはいけません。

そして、これらの方法よりも更に効果が高いのが黒字です。1年の事業の純利益(税金の支払いまで済ませた後の純粋な利益)を積み立てた利益剰余金は自己資本に組み入れられるので、自己資本比率が改善します。

黒字達成の方法

黒字の達成方法についてはあまりにも方法論が多すぎるのでとてもここには書ききれません。明確な根拠に基づいた目標設定、リスク管理、事業ごとの収益性の把握、事業の合理化など、やるべきこと、やらなければいけないことはあまりにも多岐にわたっています。

まとめ

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  • 経営者・出資者は会社の形態によって無限責任、もしくは有限責任を負う
  • 株式会社、合同会社、合資会社の一部の出資者は無限責任しか負わないで良い
  • ただし、経営者が自らの資産を担保にしていたり、連帯保証人になったりしている場合は事実上無限責任を負う
  • 倒産には会社をなくす清算型と、会社を存続させる再建型がある
  • 裁判所を通さない私的整理も可能だが、債権者全員の同意が必要
  • 企業の94%は10年以内に倒産し、その最も大きな理由は販売不振による資金ショート
  • 資金繰り、自己資本比率向上、黒字化の3つが倒産を避けるポイント

ビジネスは熱意だけで成功するような甘い世界ではありません。企業の形態、倒産時の手続き、倒産しない方法は、ぜひとも頭に入れておいて下さい。