借金の返し方には、正しい順番というものがあります。複数のローン会社から借り入れをしている場合、適切に優先順位を決めて返していけば、総支払額を少なく抑えることができます。
今回の記事では借金が複数ある場合の、適切な借金の返し方をお教えします。
目次
一番優先的に返す必要があるのは税金などの非免責債権
まず、税金などの非免責債権がある場合は、必ずそちらを優先的に返済します。非免責債権とは、自己破産をしてもなくならない債権(自己破産者から見れば債務)です。
自己破産はすべての借金をチャラにする制度というイメージがありますが、実は自己破産をしても残る借金があります。そうした債権をまとめて非免責債権と呼びます。
非免責債権をなくしておけば、その後万が一自己破産をすることになっても借金がすべてチャラになるので、第二の人生が始めやすくなります。
一方、非免責債権を残してほかの借金を返した場合、自己破産をしても非免責債権が残ってしまいます。自己破産のリスクが少しでもある場合、つまりありとあらゆる場合において、非免責債権はその他の債権よりも優先的に返済したほうが良いのです。
主な非免責債権
- 租税などの請求権(税金)
- 一部の損害賠償請求権
- 雇用人の請求権(給料)
- 夫婦間の協力及び扶助の義務など
よくわからない言葉が出てきて困惑されたかもしれませんが、基本的に「租税などの請求権」以外の3つは普通の会社員や公務員にはあまり縁がないものなので気にする必要はありません。
税金の未払いがある場合は、ほかのすべての債務に優先してこちらを返していくべきである、ということだけご理解いただければOKです。
将来住宅ローンを組む予定がある場合は、借入件数を減らしておく
非免責債権がなく、なおかつ将来住宅ローンを組もうと考えている場合は、借入件数を減らすことを優先させるのが最もいいでしょう。
住宅ローンの審査では、現時点での借入状況もチェックされることになりますが、その際には借入額よりも借入件数のほうが重視されます。借入額が多くても評価にはそれほど影響が出ませんが、借入件数が多いと評価が低くなることが多いです。
例えば、借入額が100万円で借入件数が1件というケースと、借入総額が80万円で借入件数が4社というケースでは、大抵の場合前者のほうが評価が高く、後者のほうが低くなります。
借入額が多く借入件数が少ないということは、1社あたりの借入額が多いということです。借入額が多いということは金融機関から信頼されているということなので、借入額が多くても問題になることは少ないのです。
一方、借入件数が多いということは1社あたりの借入額が少ないということであり、金融機関から信頼されていないということです。数十万ずつ複数社から借りているようでは、お金に相当困っていると判断されてしまっても仕方ありません。
したがって、住宅ローン審査時の評価を上げるためには、借入件数を減らしていくのが最もいいということになります。残高の少ないローンを優先的に返していけば、すぐに借入件数は減らせます。
フリーローンは目的別ローンよりも早く返済する
複数のローンを借りており、なおかつローン残高が同じくらいという場合は、ローンの目的で返済順位を決めましょう。ローンには教育ローンや自動車ローンなどの、特定の用途にしか使えない目的別ローンと、特に用途が定められていないフリーローンがあります。
このうち、金融機関がより低く評価するのはフリーローンです。フリーローンは用途が限定されていないため、ギャンブルや投機、借金返済など望ましくないことに使われている可能性もあるからです。
実際にはそうした用途に使っていなくても、金融機関は信じてくれません。フリーローンは優先的に返していきましょう。
住宅ローンを組む予定がない場合は、金利が高いローンから優先的に返していく
住宅ローンを組む予定もなく、とにかく支払総額を減らしたいという場合は、原則として金利が高いローンから優先的に返済していくのがベストです。金利が高いローンほど元本に対する利息の割合が大きくなるため、繰上返済が大きな意味を持つことになるからです。
例えば、金利3%、残高300万円の目的別ローンと、金利18%、残高30万円のカードローンという2つのローンを抱えていて、手元に繰上返済に使える余剰資金30万円がある場合について考えてみましょう。返済期間は目的別ローンが60ヶ月、カードローンが24ヶ月とします。
どちらも繰上返済を行わなかった場合、目的別ローンの返済総額は323万4333円(利息支払いは23万4333円)、カードローンの利息は35万9441円(利息支払いは35万9441円)となります。
この状況で余剰金の30万円を目的別ローンの返済に当てた場合、返済総額は4万5255円減ります。一方、カードローンの返済に当てた場合、返済総額は5万9441円減ります。返済総額が大きく減るのはカードローンなので、こちらを先に変えした方がいい、ということになります。
ただし、これはあくまでも原則であり、必ず金利が高い方から返せば総支払額が少なくなるというわけではありません。金利が低い方のローンの残高が非常に大きいか、もしくは金利が高い方のローンの残高が非常に少ない場合は、金利が低い方から優先して返済した方がお得になることもあります。
このあたりはシミュレーションしながら判断していくしかありません。繰上返済でいくら返済総額が減るのかは、繰り上げローン返済シミュレータで計算できます。
住宅ローンは原則として最後に支払ったほうが良い
額が大きいローンは金利が低くても早めに返済した方がいいケースもありますが、住宅ローンは原則として後回しにしても構いません。
まず、住宅ローンは繰り上げ手数料が数万円かかります(フラット35の場合は無料ですが、最低返済額が100万円とかなり厳しい条件になっているので、繰上返済をしたくてもなかなかできないのが実情です)。
繰り上げ返済できる額が少ない場合はそのお金の多くが手数料として取られてしまうので、まとまったお金がない限りは繰上返済をすべきではありません。
また、住宅ローンは一定の条件を満たしている場合、入居から10年間の間、減税措置を受けられます。住宅ローン控除、あるいは住宅ローン減税などと呼ばれている制度であり、年末時点での住宅ローン残高の1%から直接減税されます。
そのため、繰上返済をして将来の利息の支払いを減らしても、その分税金の支払いが増えてしまうので、両者が打ち消し合ってメリットが小さくなってしまうのです。
もちろん基本的には「繰上返済による利息の支払い減少額>税金の増加額」となるため、繰上返済で損をするということはまず無いですが、他に何かローンがある場合はそちらを優先的に返していったほうがお得になるケースが大半です。
繰上返済のしすぎよる資金ショートに注意
どのようなローンでも、繰上返済を行うと基本的に返済総額が少なくなります。しかし、だからといって繰上返済をしすぎるのは考えものです。
繰上返済をすると返済総額が少なくなる代わりに、手元の資金が減ってしまいます。手元に十分な資金がないと、入院や冠婚葬祭などの急な入用の際にその場を凌ぐ資金が用意できません。
そのために金利が高いキャッシングやカードローンを利用してしまっては、繰上返済をした意味がなくなってしまいます。繰上返済はあくまでも余剰資金で行わなければなりません。
繰上返済は期間短縮と返済額軽減どちらが有利?
繰上返済には、返済期間を減らす期間短縮型と、毎月の返済額を減らす返済額軽減型があります。一般的には、利息の軽減効果が大きい期間短縮型が有利と言われていますが、だからといって期間短縮型を選べば間違いないかというとそうとも限りません。
返済額軽減型は総支払額はあまり大きく減りませんが、精神的な負担はかなり小さくなります。毎月の返済額が減るので、毎日の生活に余裕ができます。
期間短縮型は繰上返済後も以前と同じ額を返していかなければならないため、繰上返済をしたという実感が余りわきません。それを実感できるのは、返済が終わった時点でしょう。
また、借金というのは基本的に時間が経つほどインフレによって実質的に目減りするので、余り焦って早く返しても意味がありません。
例えば賃金も物価も10倍になってしまえば、実質的な借金の負担額は10分の1になるので、期間短縮型を選んでいても返済額軽減型を選んでいても実質的な負担感はどちらもほぼ同じになります。もちろんそんな急なインフレはまず起こり得ないでしょうが、ある程度のインフレを予想して組み込んでおくのは悪いことではありません。
無論、期間短縮型のほうが利息の減少額が大きいのも事実です。どちらが得であると最初から決めつけずに、家計や経済の状況を鑑みて意思決定しましょう。
まとめ
- 非免責債権≒税金は自己破産してもなくならないので、最優先で返済する
- それ以外の借金は基本的に金利が高いものから返していく
- 住宅ローンは後回しにして構わない
- 期間短縮型と返済額軽減型、どちらがお得かはケースにより異なる
借金はただがむしゃらに返していけばいいというたぐいのものではありません。どう返済していくのが自分にとって最も有益であるかを考えながら、お得に返していきましょう。返済その物が難しいという場合は、任意整理や自己破産などの債務整理も視野に入れて下さい。