せっかく所有している土地をそのまま眠らせておくというのは非常にもったいない話です。土地は所有するだけでも毎年固定資産税がかかりますし、維持管理にも費用がかかります。眠らせておくくらいならば土地活用を考えるべきですし、活用が難しそうな場合は価格が下る前に早く売却すべきです。
しかし、いきなり土地活用をしなさいと言われても、どのように活用すればいいのかわからない、という方も少なくないかと思います。
そこで今回は、土地活用の王道である「駐車場経営」「アパート・マンション経営」「店舗」などのうち、あなたに最も向いている土地活用はどれなのかをお教えしたいと思います。土地の活用方法がわからないという方必見です。
目次
初期費用が少ないのは駐車場経営
土地活用は初めてなので、できるだけリスクを取らずに、少ない初期費用で始めたいと考えている方は少なくないことでしょう。そのような方には駐車場経営がおすすめです。
駐車場経営は大きく月極駐車場(1ヶ月単位で貸し出す)とコインパーキング(数十分~数日単位で貸し出す)に分けられます。月極駐車場の場合、必要な設備はほとんどなく、土地の舗装と整地、歩道の切り下げにお金がかかるくらいです。
土地の舗装にお金をかけたくない場合は砂利敷にすれば、さらに初期費用を削減できます(個人的にはお客さんが集まりやすいアスファルトやコンクリート舗装をおすすめしますが)。
コインパーキングの場合は精算機やロック板などの設備が必要になりますが、それでもアパート・マンション経営や店舗に比べればかかる費用は断然少なく、多額の借金を負う心配がありません。
土地の上に建物を建てるのにはお金がかかる
一方、アパート・マンション経営は建物を自分で建てなければならないため、どうしても建設費用がかさみます。比較的規模の小さいアパートならば2000万円ぐらいで建てられますが、それなりに大きいマンションだと費用が億単位になることが珍しくありません。
もちろんその分収益も多く上がるのですが、リスクを負いたくない初心者の方にはあまりおすすめできません。
店舗はどんな店舗を建てるかによって初期費用が大きく変わります。例えばコンビニの場合、建物の建設費用は建設協力金という名目で、店舗事業者(セブン-イレブン・ジャパンや株式会社ローソンなど)から無利子で貸してもらえることが多いです。
無利子なのでアパートローンよりは有利ですが、借金には変わりないためやはりそれなりのリスクがあります。
収益性が高いのは店舗
ここで言う収益性とは、面積に対する賃料の大きさのことだと思ってください。収益性を重視する場合は、店舗がおすすめです。
店舗はそれ自体が収益を生む施設です。そのため、多少高い賃料を要求しても問題なく払ってもらえることが多いです。物件の規模などにもよりますが、同規模の面積のアパートやマンションの1.5倍程度の賃料が実現することもよくあります。
一方、アパート・マンションはそれ自体が収益を生む施設ではないため、どうしても賃料は少なくなってしまいます。ただしその場合でも、規模を大きくすることによって居室部分が大きくなり、収益性を上げることは可能です。
駐車場もそれ自体が収益を生む施設ではなく、アパート・マンションよりもさらに面積に対する賃料は低くなると思っておいたほうがいいでしょう。
ここまで見てきた方はお気づきかもしれませんが、基本的にリスクと収益性は反比例する傾向にあります。初期費用が少ない駐車場経営は収益性も低く、初期費用が多い店舗は収益性も高い。アパート・マンションはその中間、と考えていただければ間違いありません。
転用性が高いのは駐車場経営
転用性とは、簡単に言えば更地にするための費用や時間がどれくらいかかるかということです。更地にしやすい=転用性が高いということです。転用性が高ければそれだけ事業から撤退しやすく、失敗時の傷口を最小限に留めることができますし、他の活用方法が見つかったときに取り組みやすくなります。
転用性が高いのはダントツで駐車場経営です。上に建物が乗っかっているわけではありませんので撤去・解体に時間や費用がほとんどかかりませんし、時間的にも短くて済みます。
一方、アパート・マンションや店舗はどうしても撤去や解体に時間がかかってしまいます。小規模な2階建て木造アパートならば100万程度で済むこともありますが、5階建て程度の鉄骨や鉄筋コンクリートなどのマンションだと、1000万円を超えてしまうことも珍しくありません。
アパート・マンション経営や店舗は、一度始めるとやめづらいものなのです。その分、慎重な検討が要求されるわけです。
相続税対策になるのはアパート・マンション
相続税対策として最も有利なのは、アパートやマンション経営です。
相続税額は、相続税評価額と税率によって決まります。相続税評価額が高くなるほど、相続税も高くなります。そして、相続するものを現金から物にすれば、相続税評価額を下げることが出来ます。
例えば、1億円の現金や預貯金をそのまま相続しようとすると相続税評価額は1億円になりますが、土地や建物にすると7000万円ぐらいになります。アパート・マンションが相続税の節約になるとよく言われるのはそのためです。
また、土地の上にアパートやマンションなどの建物を建てると、その土地は「貸家貸付地」となります。貸家貸付地となった土地は、通常の土地と比べて相続税評価額が50~80%下がるため、更に相続税を減額することが出来ます。
一方、店舗を建てた場合、あるいは建物を建てずに駐車場として活用する場合は、貸家貸付地にはならないので、相続税額の減額はありません。相続税を下げたいならば、アパート・マンション経営がおすすめです。
旗竿地でも比較的成功しやすいのはアパート・マンション
旗竿地とは、旗のような形状をしている土地のことです。竿の部分だけが全面道路と接しており、より奥に入ったところに布の部分の袋地があります。基本的に土地は道路に大きく接していたほうが何かと都合がいいため、旗竿地は借り手には敬遠される傾向があります。
しかし、アパート・マンションならば旗竿地でも比較的成功しやすいです。建物の目の前が道路ではないので騒音が少ない、どろぼうが入りにくい、子供の安全が確保できる、などのメリットがあり、一定の需要が見込めるからです。
むろん旗竿地であることによるマイナスも大きいのですが、それを穴埋めするだけの魅力を物件に持たせることができれば成功できる可能性は十分あります。
一方、店舗や駐車場は目立つところになければそもそも気づいてもらえず、したがって入ってももらえないのでは旗竿地には全く適していません。特に出入り口が狭いというのは駐車場にとっては致命的なので、避けた方がいいでしょう。
狭小地比較的成功しやすいのは駐車場
狭小地とは非常に小さい土地のことです。明確な定義があるわけではありませんが、一般的には20坪(約64m2)以下の土地を狭小地と呼ぶことが多いです。狭小地は文字通り狭くて小さいため、活用するのは容易ではありません。
狭小地や変形地でも比較的成功させやすいのは駐車場です。ただし、その土地が道路に広く接していれば、という条件があります。土地が広く道路に接していて、道路から直接駐車スペースに止めるような形になっていれば、車路がほとんど必要なくなるため、敷地面積に対する貸出面積の割合が大きくなり、その分賃料も高く設定しやすいからです。
一方、アパートやマンション、店舗などの建物は境界線から一定以上の距離を取らなければならないという決まりがあるため、建物も小さくなってしまいがちです。
建物が小さくなってしまうと共用部分が大きくなるうえ住戸数が少なくなり、土地の活用効率は下がってしまいます。また、土地によってはそもそも上に建物が建てられないようなケースもあります。
狭小地を有効に活用したいならば、駐車場がおすすめです。
広い土地はなんでも成功しやすい
今度は狭小地とは逆に、非常に広い土地について考えていきたいと思います。広い土地ははっきり言ってしまえば、駐車場、アパート・マンション、店舗のいずれの場合でも成功しやすいです。土地が広いということは、それだけで大きなメリットなのです。
駐車場の場合は立体駐車場がおすすめ
立体駐車場とは、敷地を平面ではなく立体的に使う駐車場のことです。運転者が自分で車を走らせて各階層の駐車スペースに駐車する自走式と、機械を使って車を駐車スペースまで移動させる機械式があります。どちらも平面駐車場と比べて土地面積に対する駐車台数が増えるため、収益性は高いです。
しかし、立体駐車場は建物や機械が必要になるため、建設費用がかかります。よく見られる自走式駐車場の建設費用の目安は以下のようになります。
駐車場タイプ | 1000㎡~2000㎡ | 2000㎡~3000㎡ | 3000㎡~4000㎡ |
---|---|---|---|
1層2段 | 延べ面積×6万0000円 | 延べ面積×5万7000円 | 延べ面積×5万5000円 |
2層3段 | 延べ面積×5万5000円 | 延べ面積×5万3000円 | 延べ面積×51万000円 |
3層4段 | 延べ面積×5万1000円 | 延べ面積×5万0000円 | |
4層5段 | 延べ面積×5万0000円 | ||
5層6段 | 延べ面積×5万1000円 | ||
6層7段 | 延べ面積×5万3000円 |
例えば、2層3段、2500m2の場合、建設費用は2500×5万3000円=1億3250万円となります。これだけの建設費用をどのように捻出するかがポイントとなります。
アパート・マンションは大規模なほど土地の活用効率が上がる
アパート・マンションには共用部分と住戸部分があります。この内お金を生むのは住戸部分なので、その割合が大きくなるほど土地の活用効率が上がります。
アパート・マンションの規模が大きくなると、それだけ共用部分の割合が小さくなるため、住戸部分の割合が大きくなり、土地の活用効率は上がります。
店舗の場合は複合商業施設なども視野に
広い土地に店舗を誘致する場合は、複合商業施設がおすすめです。かなり広い面積が必要になりますが、その分多くの店舗を入れるので集客力がアップします。郊外で他に競合する施設が少なければ、その周辺地域の住民の需要をほぼ独占することも難しくないでしょう。
駅から近い土地はなんでも成功しやすい
公共交通機関が発達している日本では、駅から近いというのは非常に強力なアドバンテージです。自分の住む家を探すときに駅からの距離を気にされる方は多いでしょうし、商業施設だって駅から歩いていけるに越したことはありません。駅から近ければ、それだけ成功する確率は高まります。
駐車場経営はコインパーキングがおすすめ
駐車場には月極駐車場とコインパーキングがありますが、駅から近い土地の場合はコインパーキングをおすすめします。駅から近い土地には商業施設が密集しており、その施設を利用する人の需要が見込めるからです。
もちろん現時点での需要と供給のバランスなどもあるので一概には言えませんが、大きな駅の周辺だと需要超過に陥っていることも少なくありません。そうした需要をすくい取ることができれば、安定した収益を得られることでしょう。
駅から遠い土地は地域の特性による
駅から遠い土地と一口に言っても、大都市の駅から遠い土地と、地方都市の駅から遠い土地ではその需要が異なります。
大都市の駅から遠いというのは大きなハンデですが、地方都市の駅から遠いというのはあまりハンデにはなりません。地方都市は車社会であるため、電車を使って日常的に移動するという感覚があまりないからです。
大都市の駅から遠い場合は月極駐車場がおすすめ
大都市の駅から遠い土地というのは、なかなか活用方法に悩まされるものです。そんな中でも比較的おすすめなのは、月極駐車場経営です。
大都市の中でも駅から遠ければ、必然的に車を使う人が増えます。一方で大都市の内部ならば、それなりの賃料が確保できます。この2つのバランスが成り立つのが月極駐車場経営です。近くに大きな商業施設がないことが多いため、コインパーキングはおすすめできません。
地方都市の駅から遠い場合はサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)がおすすめ
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)とは、その名の通りサービスが付いた高齢者向けの住宅です。サ高住ではオーナーと入居者(高齢者)が賃貸契約を結び、それとは別にサービス(安否確認や生活相談サービスなど)事業者と入居者が契約を結びます。健康な高齢者のための賃貸住宅と考えていただければだいたい間違いないでしょう。
サ高住は入居者がほとんど遠出しないため、駅から遠いことがほとんどデメリットになりません。むしろ駅から遠く喧騒が少ないぶん住環境がよく、好まれる傾向すらあります。
一度入った入居者はなくなるか重度の要介護度になるまで長く住んでくれることが多いというのも魅力の一つです。
住宅街で成功しやすいのは月極駐車場とアパート・マンション経営
住宅街にある土地の場合、比較的収益が安定しやすいのは月極駐車場とアパート・マンション経営です。
月極駐車場は新興住宅地や大規模マンションなどの近くなどがとくにおすすめ
住宅地と一口に言っても、その特徴は地域ごとに異なります。月極駐車場を特に経営しやすい住宅地は、新興住宅地や大規模マンションの近くなどの、十分な需要が見込める地域です。
特に大規模マンションの近くはマンション内の駐車場が狭い・高いなどの理由で嫌われることも多いため、そちらからあぶれた人の需要をうまくすくい上げれば安定して収益が得られます。ただし、一つもしくは少数のマンションに需要の大半を預けてしまうと、将来そのマンションが取り壊しになったときに困るので注意が必要です。
アパート・マンション経営は地域の特性を考えて物件のグレードを決める
住宅地でアパート・マンション経営を行う際に大切なのが、地域の特性に合わせることです。例えば、高級住宅地に単身者向けのワンルームアパートを建設するというのはあまりいい考えとはいえません。
その地域にはなじまないという理由で、地域からの抵抗にあうことが多く、地価に合わせて賃料が高くなるため単身者が入りづらいからです。
高級住宅街の場合はグレードの高いマンションを建てる、新興住宅地の場合はファミリーで暮らせるような広めの間取りにするなどの工夫が必要になります。
ロードサイドで成功しやすいのは店舗
ロードサイドとは、大きな幹線道路沿いの土地のことです。このような土地は車通りが多く騒音がうるさい、横断が危ないなどの理由があるため、アパート・マンション経営は不向きです。車で入ることを前提としたような店舗がいいでしょう。
ロードサイド店と言ってもショッピングセンターやホームセンター、ドラッグストア、コンビニ、レンタルビデオ店などその種類は様々であり、地域のニーズに合わせる必要があります。
収益が比較的安定しやすいのはコンビニ
ロードサイド店の中でも比較的収益が安定しやすいのはコンビニです。コンビニの売上が月によって極端に上下することは余りありません。幹線道路沿いならば常に需要が見込めます。
田舎の場合は太陽光発電が数少ない選択肢
すべての土地の中で最も活用が難しいのは、おそらく田舎の土地でしょう。田舎とはなんぞや、と思われるかもしれませんが、近隣が山や畑ばかりであり、駅から非常に遠いもしくは駅からは近いものの電車が数時間に一本しか来ない、高齢者の割合が多いような土地を想像していただければだいたい間違いありません。
このような土地の活用は非常に難しいです。まず住みたいというニーズが少ないのですから、アパート・マンション経営には向きません。
車社会ではありますが、各家庭が駐車場を確保しやすいため、駐車場経営も難しいでしょう。人が少なく経済の規模も非常に小さいため、店舗経営もまず無理です。
このような土地を有効に活用する手段として注目されているのが、太陽光発電です。広い土地に太陽電池(ソーラーパネル)をずらっと並べて発電し、その電気を電力会社に買い取ってもらいます。
太陽光発電は周りに人がいてもいなくても同じなので、田舎でも成功しやすいです。むしろ太陽光を遮るような邪魔な高い建物がないぶん、田舎のほうが成功しやすいとすらいえます。
活用が難しい場合は売却も視野に
土地活用が難しい場合は、無理にそれを活かそうとするのではなく、売却した方がいい場合もあります。活用が難しい土地なので高値で売れることは期待できませんが、所有し続けていればそれだけ固定資産税や維持管理費ようもかかります。安値でも打ってしまえば手元に現金が残りますし、それを別の土地や金融資産に当てることも可能です。
土地を売却したい場合は専門業者に任せるのがおすすめ
土地を売却したい場合は、自分で買い手を探すよりも専門業者に任せてしまったほうがいいでしょう。手数料を払う必要がありますが、より高値で買い取ってくれる買い手を探してくれるため、実質的にはこちらのほうがお得になることが多いです。手間もかからないので、忙しい人でも安心して任せられます。
土地は何もせずにただ眠らせておくのが一番もったいないです。そのような土地をお持ちの方は、今すぐ活用や売却を考えてたほうがいいでしょう。