日本には固定資産税という税金があり、土地や建物などを所有していると、その評価額に応じて毎年税金が取られてしまいます。
税金を払うのがもったいないからと土地を売却してしまうのももちろん悪くはないのですが、せっかく所有している土地なのですから、有効活用する方法も考えたいものです。一見土地の需要などなさそうな地域でも、使い方次第では十分な利益を上げることも可能です。
ただ、土地の活用方法ごとにリスクや収益性、実現性などには差があります例えば比較的収益性が高いとされているマンション経営は融資を引き出しにくく実現性が低かったり、トランクルームは初期費用が少なく始めやすいものの収益性はイマイチなど、投資の種類によってメリット・デメリットは異なります。
自身の取れるリスク、土地の特性などに応じて、最もあった活用方法を考えていくことが大切です。
目次
アパート経営は収益性があり、リスクを分散させやすい
近年は人口減少により住宅の需要も減ってきていますが、そんななかでも例外的ワンルームのアパート需要は依然として旺盛です。1世帯あたりの構成人数も減少しているからです。家賃は必ずしも部屋の広さに一次関数的に比例するわけではないため、1戸あたりの間取りを小さく抑えて、戸数を増やすというのは非常に有効な戦術です。
戸数を増やせば空室リスクは相対的に小さくなり、また1度入居した人はライフスタイルが変化するか、その物件がよっぽどひどいものでない限りはなかなか出ていかないので、安定した収入が望めます。固定資産税や都市計画税も下がり、税金対策にもなります。
一方、デメリットは建築に程度まとまった費用がかかることです。後述するマンション経営ほどではありませんが、初期投資額は場合によっては1000万円も超えることもあります。土地が自己所有である分リスクは少ないですが、取り組む前にかならず利回りを予想しておきましょう。
マンション経営は収益性が高いが、リスクも高い
アパート経営と並ぶ土地活用術の代表といえるのがマンション経営です。マンションは基本的に鉄骨造もしくは鉄筋コンクリート造で建設するため、建物の耐久性が高く、長期間に渡り取り組めます。
耐久性があるため毎年の家賃下落幅も小さく、物件選びばうまく行けばかなり高い利回りを安定して叩き出すことができるでしょう。アパート経営の場合と同様に固定資産税や都市計画税も下がるので、税金対策にもなります。
デメリットは建築の際にアパートよりも更にまとまった費用が必要になることです。どのくらいの規模のマンションを建てるかにもよりますが、建築費が数千万を超えることも珍しくありません。
それだけの費用を自前で用意することは当然不可能なので、銀行などから融資を受けることになります。
しかし、そもそも与信が低いと銀行から融資を引き出せませんし、引き出せた場合も多額の借金を背負うことになります。必然的にハイリスクハイリターンの経営になりがちなので、取り組む際には注意が必要です。
戸建賃貸経営は一度入居者が見つかれば楽
アパートやマンション経営などと比べると若干マイナーですが、以外な長所もあるのがこの戸建賃貸経営です。アパートは主に独身、マンションは独身と家族連れの両方を対象とするのに対して、戸建賃貸経営は原則として家族連れのみを対象にします。
戸建賃貸経営のメリットは、入居者を見つけやすいことです。賃貸アパートや賃貸マンションと違って、賃貸の戸建住宅は非常に数が少ないです。一方で賃貸でもいいので一戸建てに住みたいという家族連れはたくさんいます。常に需要が供給を上回っているため入居者が見つかりやすく、しかも家賃を高めに設定できるわけです。
家族連れはマイカーを移動手段とすることが多いため、駅から遠い土地であっても家賃は余り下がりません。誰も入居しなかった場合は奥の手として自分用に使うなど、柔軟性もあります。アパート経営やマンション経営の場合と同様に、固定資産税や都市計画税も安くなります。
デメリットは戸数が少なくなため、空室になったときのリスクが大きくなることです。需要のほうが供給より高いとは言え、必ず入居者が見つかる保証はどこにもありません。
また、1戸当たりのコストもアパートやマンションと比べると大きくなります。ただし、家賃もそれに見合った高さに設定できるため、利回りが極端に低くなるわけではありません。
賃貸併用住宅は住宅ローンが使えるのが魅力
賃貸併用住宅とは、自宅の一部を賃貸物件にした住宅のことです。例えば元々6人家族で住んでいた家の子供達が独立して3人家族になった場合、3人分のスペースが余ります。そのスペースを賃貸物件として貸し出すというのが、賃貸併用住宅の基本的な考え方です。
もちろん、最初から賃貸併用住宅として建物を建築しそれを貸し出すということも十分に考えられます。
賃貸併用住宅の一番のメリットは、住宅ローンが利用できることです。一般的に住宅ローンは不動産投資ローンほど審査が厳しくない上、金利は不動産投資ローンよりやや低いため、余計な利息を支払わずに投資を始めることができます。
また、通常自宅を住宅ローンで立てたあとはそれを自分の給料から返済していかなければなりませんが、賃貸併用住宅では毎月家賃収入が得られるので、住宅ローンを軽減することが可能です。
仮に住宅ローンと毎月の賃料収入を同水準にできれば、毎月の支払いは大きく減り、少ない負担で自分の家が持てます。
一方、デメリットとしては、入居者と同じ建物で暮らさなければならないことが挙げられます。生活音やあったときの挨拶などで適切な距離感を保つのは意外と骨が折れます。入居者とオーナーでエントランスを変えるなどの工夫が必要になります。
また、住宅ローンを使うためには、自宅部分が全面積の半分以上になっていなければならないというルールがあります。
つまり、あくまでも自分の家が主体で、賃貸部分はおまけ、という主従関係にしなければならないわけです。必然的に賃貸部分は狭くなるため、多くの賃料は望めず、利回りは低下します。
かと言って賃料収入を増やすために賃貸部分を増やすと住宅ローンが利用できなくなり、不動産投資ローンを使うしかなくなります。バランスが優れている一方で、どっちつかずになりやすいのが賃貸併用住宅のデメリとっと言えます。
店舗・事務所賃貸経営は利回りが高め
住宅ではなく、店舗や事務所などの施設として建物を貸し出す経営です。店舗を貸し出すのに向いているのは、駅近くの好立地や郊外のロードサイドの立地等です。コンビニなどの場合は住宅街でもOKですが、いずれにせよ進出できる地域は限れていると考えたほうがいいでしょう。
店舗や事務所を運営するメリットは、内装や設備などはテナントが用意してくれるので、こちらは建物、箱だけを用意すればいいということです。その為初期費用はアパートやマンション経営と比べて少なくて済みます。
一方で店舗や事務所はそれ自体が収益を生む分高い賃料を請求しやすく、収入が比較的大きな金額になりやすく、利回りも高くなります。
具体的は、東京23区では店舗や事務所の表面利回りは7.1%となっており、一棟マンションの6.8%、区分マンションの6.1%を上回っています(ノムコム・プロ調べ)。
デメリットは空室リスクが高いことです。個人や家庭は多少景気が悪くなったからと言ってすぐに安い物件に引っ越すことはあまりありませんが、企業は景気動向には敏感なので、少し景気が落ち込んだらすぐにもっと安い物件に写っていってしまいます。
退室を抑えるためには賃料を下げるのが手っ取り早いですが、賃料の変動率が高いのは経営する側にとってはデメリットになりえます。
また、集客のノウハウがないとそもそもテナントを集めにくいのも欠点と言えます。店舗や事務所と一口に言ってもその用途や求められるスペックは様々で、それを理解しないまま募集してもそっぽを向かれてしまいます。
ある業種のテナントに合わせて建物を作ってしまうと、他の業種のテナントを招きにくい(転用が難しい)というのもデメリットと言えます。
なお、店舗や事務所には、住宅を併設したタイプのものもあります。例えば1階がコンビニで、2階と3階はアパートと言った感じです。店舗や事務所で高い収益を得つつ、アパートの部分で収益の安定性も確保します。住宅部分があるため地震保険にも入ることができ(店舗や事務所専業だと入れません)、リスクを分散することができます。
駐車場経営はコストが掛からず、土地が大きいほど効率良く稼げる
駐車場経営は運用会社に任せる方法と、自分で運用する方法があります。前者の場合、駐車場を運用会社に預け、売上から運用会社の取り分を差し引いたものが収入になります。
後者の場合は自分で管理や清掃などを行います。手間がかかりますが、運用会社に報酬を払わないで良いため、収益率が上がります。
駐車場経営のメリットはアパートやマンション経営などと違い、土地の上に建物を立てる必要が無いので、少ない初期費用で始めることができます。
建物の維持修繕も必要ないので、ランニングコストも余りかかりません。駐車場は設備が不要な月極駐車場と、設備が必要なコインパーキングが有りますが、後者でもアパートを建てるよりはやるかに安いです。
駐車場を利用する人は自動車を使っていますから、住宅街や商業地など、人が多い場所なら駅から遠くてもある程度の収益を見込めます。
一方、デメリットは土地が小さいと経営効率が悪くなることです。駐車場は比較的面積が狭くても始めやすいとされていますが、土地が狭いと全面積に対する車道の割合が大きくなってしまいます。かと言って駐車場を広くしていつも空きができているというのも非効率的です。
また、駐車場経営には固定資産税などの優遇がなく、経費もかからないため所得税がかさむという欠点もあります。
トランクルーム経営は都市部では高利回りが期待できる
トランクルームとは収納スペースを貸し出す事業です。トランクルームというビジネス自体は30年以上前から存在していますが、ここ数年で急激に伸びを見せています。日本では200世帯に1世帯程度しか利用していませんが、米国では10世帯に1世帯が利用しているメジャーなサービスです。
家が狭い日本では、普段は使わないけど捨てるには惜しい、もしくは事情があって捨てられないものを預けってほしいという潜在的なニーズは多いと考えられます。ビジネスは成長期が最も利回りが大きくなるので、この波にのるのは難しくありません。
トランクルームの一番のメリットは、利回りが高いことです。トランクルームはアパートやマンションとくらべて初期投資額が抑えられる一方、坪単価は高いので利回りが高くなります。
さらに人が住む場所ではないため原状回復やリフォームも原則不必要であり、築年数もほとんど関係ありません。お金がかからない一方で収入が増えるので、利回りは必然的に高くなります。
また、トランクルームは物を置くためのスペースであるため、必ずしも正方形やそれに近い長方形である必要はなく、したがって非整形な土地でも簡単に活用できます。
一方、デメリットは集客が難しく、満室に近い状態になるまで時間がかかることです。
トランクルームというサービスの認知度自体が低い日本では、トランクルームを設置してもなかなかそのことが知ってもらえない、もしくは知ってもらえても怪しまれて借りてもらえないケースが往々にして有ります。
集客の手段はいろいろありますが、自分でサイトを作ったり、もしくは作成業者に依頼したり、あるいはチラシや看板を使うというのが主流です。トランクルーム専用のホームページにサービスを登録するという手もあります。何れにせよ時間はかかるので、ある程度の忍耐力は必要になります。
太陽光発電は田舎に適した投資
太陽光発電は、地面にソーラーパネルを設置し、作成した電力を電力会社に買い取ってもらう仕組みです。
土地を活かした投資というのは基本的には基本的には人が多い場所でなければ成立しませんが、太陽光発電は人がいようがいまいが関係ないため、田舎でもできます。むしろ土地の価格が安く、周囲に太陽光を遮る高い建物がない田舎のほうが適しているともいえます。
また、太陽光発電で生産した電力は、現時点では固定価格買取制度という制度に基づき、大手電力会社に一定の価格で買い取ってもらうことができます。
例えば現時点では10kW以上の太陽光発電の場合、27円/kWで買い取ってもらうことが可能です。ただし、この価格は今後下落してく可能性もあると見込まれています。また、電力会社が今後買取を制限する可能性も否定できません。
また、太陽光発電は自然を相手にするビジネスなので、うまくいかないことも当然考えられます。例えば雨ばかり降っていれば初めてに見込んでいたよりも少ない量しか発電できなくなってしまいます。雨や雪が多い地域は避けた方がいいでしょう。
サービス付き高齢者向け住宅は満室が維持しやすく立地も問われにくい
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)とは、その名の通りサービスが付いた高齢者向けの住宅です。サービスとは生活相談員の相談や入居者の安否確認、高齢者のための設備などです。
有料老人ホームと違い、健康状態に問題がない高齢者でも住むことができます。サービスがついているという以外は通常の賃貸物件とそこまで大きな差はなく、自由度の高い生活を維持したい高齢者からの人気を集めています。
サ高住のいいところは、少子高齢化により安定した需要が見込めることです。この先長生きする高齢者がますます増えていくであろうことを考えると、非常に時代にマッチした投資であるといえます。
また、高齢者は頻繁に引っ越しをしないので、一度入居すると重度の介護状態になるか死亡するまで継続的に入居してもらえる可能性が高いです。
高齢者は健康な人でもそれほど頻繁に外出しないため、駅から遠くても問題がなく、また一定の条件を満たせば補助金が受け取れるなど、様々なメリットが有ります。
デメリットは通常のアパートやマンションと比べてサービス施設の割合が増えるため居住スペースが少なくなり、賃貸部分からの収入が少なくなることです。
また、介護などのサービス事業者と契約しなければならず、そのサービスの質に経営が左右されやすいというデメリットもあります。
経営効率を良くするためにはある程度建物の規模を大きくする必要がありますが、規模を大きくすればそれだけ初期投資費用が高くなります。補助金もいつまで続くかわかりませんし、建物や設備の維持費用もかかります。
また、入居者が高齢者ばかりというのもリスクになります。建物内で死亡したり、痴呆症になったりされるのは経営者としては困りものですが、そうしたリスクと無縁で居るのは不可能です。
貸し別荘は観光地ならば利益が上がりやすい
有名なレジャー施設やリゾート施設などが均衡にある場合は、別荘を立てて旅行者に貸し出すのもいいでしょう。レジャー施設やリゾート施設は郊外にある場合が多く、そうした地域ならば高い収益が望めます。空いている期間は自分で使うこともできます。
デメリットは旅館業の適用を受けなければならないため手間と時間がかかることです。また、宣伝や広告が難しく、いかにして他人に知ってもらうかが重要になります。
借地は借り主との権利関係がポイント
土地の上に建物や設備を建てず、そのまま貸し出して借りてに自由に使わせ、収入を得るという方法もあります。貸し出した土地は店舗になったり、駐車場になったり、太陽光発電設備になったりします。
借地のメリットは、自身で費用をほとんど追わなくてもいいところです。上に載せる建物の費用はもちろん借り主持ちですし、整地費用も借り主が負担するケースが有ります。リスクをとにかく負いたくないという人には、この方法が最も適しているかもしれません。
一方、借地のデメリットは、借り主との権利関係が複雑になることです。土地を借りている借り主が所有する権利を借地権といいます。
借地権は借り主に強力な権利を認めていて、貸主が他の土地の活用方法を思いついても容易に立ち退かせることはできません。将来的に売却を考えていたり、あるいは土地を将来何かに使う予定がある場合は、他の方法を考えたほうがいいでしょう。
売却は他の投資をしたいならば選択肢に入る
特にこれと言った活用術がない場合は、売却してしまッた方がいいでしょう。使わない土地を持っていても毎年の固定資産税や都市計画税、あるいは土地の維持費用などがかかるだけで何の得もありません。
土地を売却すれば現金が手に入るので、他の投資を始めることもできます。現金をまた別の不動産に変えて投資するという方法もあります。
土地を売却する際には一般的に、仲介業者に依頼することになります。しかし、土地は将来商品として市場に流通するわけですから、売り主もある程度その商品の性質を知っておく必要があります。何も考えずに仲介業者に丸投げしてしまうと、せっかくの土地が安く買われてしまうかもしれません。
仲介業者は知名度の高い業者が顧客も多くノウハウも豊富なので安心感が有りますが、一方で顧客の囲い込みも起きやすいというデメリットもあります。
囲い込みとは両手取引(売り手と買い手を両方同じ仲介業者が見つけること)のために他者からの問い合わせを遮断する行為で、これをされると売り主の意向は無視されてしまいます。
どの方法にもメリットとデメリットがある
土地の活用法はこのようにたくさんありますが、どの方法にもそれぞれメリットとデメリットが有ります。ローリスクハイリターンな投資方法があればいいのですが、残念ながらそのような方法はありません。
資産運用にリスクはつきものであり、大きく成功した投資家は皆それなりにリスクも負っているのです。自身の負えるリスクと目指したいリターンを考え、それに最も近い条件の投資をしましょう。