行動経済学から考える!浪費家のお金の貯め方・増やし方

近年、行動経済学という新たな学問が注目を浴びています。これは従来の経済学にはなかった視点から経済の実体を解明しようとする学問で、より人間の非合理性や心理の動きにスポットを当てたものとなっています。

経済学と心理学の融合、と言ってもいいかもしれません。行動経済学の考え方に基づけば、これまで浪費してばかりでお金が貯められなかった人でも、苦痛なく効率的に出費を抑制し、お金が貯められるようになります。

行動経済学は人間の非合理性を織り込んだ学問

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従来の経済学では、人間は完璧な合理性を持つ生き物であると定義されていました。このような人間をホモ・エコノミクスと言います。

ホモ・エコノミクスは非常に計算高く、世の中に存在している財(商品)の品質や価格などを完璧に博しており、どれをどのように組み合わせて消費したときに効用(満足度)が高くなるかを瞬時に計算できるとされています。

また、ホモ・エコノミクスは自分の効用を最大限にすることのみを目的にしています。自分の効用を高めるためならば、他の人が幸せになろうが、あるいは不幸になろうが全く気にしません。

さらにホモ・エコノミクスは、財やお金に対しては非常に執着するものの、それ以外の欲、例えば性欲や名誉欲などに対しては非常に淡白で興味を持ちません。

こうした定義はどう考えても現実の人間を反映しているようには見えませんが、一体なぜ経済学ではこのような定義をしたのでしょうか。理由は簡単で、こう定義することによって数理モデルを構築できるからです。

人間が不完全で非合理的で利他性(他人の利益を自分の利益よりも優先する)と定義してしまうと、ある状況下で人間がどのような行動を取るのかの定義が極めて難しくなってしまいます。

例えば、いまある人の手元にりんごが1つあり、ある人はそこそこ空腹で、目の前にはそれよりもさらに空腹な他人がいるとします。

人間が非合理で利他性を持っていると定義してしまうと、ある人はりんごを他人に分け与えてしまうかもしれませんし、合理性や利己性が勝って自分でりんごを食べてしまうかもしれません。これでは何も分析できません。

しかし、人間がホモ・エコノミクスだと仮定してしまえば、ある人は必ず自分でりんごを食べます。行動が決定すれば、それに応じて分析も出来るようになります。ホモ・エコノミクスの仮定は、分析には欠かせない定義なのです。

一方で、このような本来の人間像から明らかに外れた定義は、経済学と実体経済の間に歪みをもたらすことにも繋がりました。

例えば、人間がホモ・エコノミクスであると仮定すれば、たとえ需要と供給に差が生まれても価格が早急に変化するため、いつかは均衡するはずですが、現実にはそうはならないケースが多々あります。

例えば、賃金が均衡価格で収まれば非自発的失業(自分の意志に基づかない失業)はなくなるはずですが、実際にはどの国にも非自発的失業者が少なからずいます。こうした非合理性を織り込んで考えるのが、行動経済学の特徴です。

将来の1万円は今の何円?

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今1万円をもらうのと、1年後に1万円をもらうのを選べるとしたら、あなたはどちらを選びますか?おそらく殆どの人は今1万円もらうことを選ぶでしょう。

では、今9000円もらうのと、1年後に1万円をもらうのではどちらを選ぶでしょうか。これならば、迷う人もいるかもしれません。

では、今100円もらうのと、1年後に1万円もらうのではどちらを選ぶでしょうか。これならばおそらく殆どの人は、1年後に1万円もらうことを選ぶのではないかと思います。

仮に今9000円もらうのと、1年後に1万円もらうのはどちらも同じくらい嬉しいことなので決められない、という人がいたとします。この人とって、現在の9000円は1年後の1万円と全く等しいということができます。

この人は、1年後の1万円の価値を割り引いて考えています。将来もらえるものの価値を割り引くことを、時間割引と言います。

ほぼすべての人間は時間割引の性向をもっています。将来のもらえるお金は現在もらえるお金よりも価値が小さいというわけです。

逆に言えば、いまお金がもらえない場合は、そこに我慢した分だけ金額の上乗せを請求する、とも言えます。この人は、1年間の我慢の対価として約11%の金額上乗せを求めているわけです。

時間割引の割合を時間割引率と言います。この人の場合、現在の金額が1年後の金額より10%低いので、時間割引率は10%になります。

一方、時間割引率が30%の人の場合はどうでしょう。この人にとって、今の7000円は将来の1万円と等価です。

この人は1年間の我慢の対価として約43%の上乗せを求めています。つまり、この人のほうが我慢にはたくさんの対価が必要と考えている、言いかえれば我慢ができない、せっかちな性質であるというわけです。

浪費家がなぜ必要以上に浪費をしてしまうのかというと、時間割引率が高く我慢ができないからです。

今の浪費を我慢すれば将来もっと大きな買い物が出来るとわかっていても、将来の買物の価値を大きく割り引いてしまうため、今の小さな買物にお金を費やしてしまうのです。

時間割引率は一定ではない

時間割引率は常に一定というわけではありません。多くの人はより直近の利益に対しては時間割引率が大きくなります。つまり、目の前に迫っている利益ほど我慢ができなくなってしまうわけです。

このような性質を双曲割引と言います。大阪大学が行った経済実験によれば、時間割引率は2週間頃まで最も高くなり、その後8週間になるまで徐々に下がっていき、その後は一定になることがわかっています。

時間割引率は人によって異なる

同大学の実験によれば、時間割引率の大小は属性によって差があることがわかっています。まず、男性と女性を比べた場合、男性の方が平均して時間割引率が高い(せっかち)であることがわかっています。

また、60歳以上と60歳未満では、60歳以上のほうが時間割引率が高いことがわかっています。

最終学歴が理系大卒の人は、そうでない人と比べて時間割引率が低い(せっかちでない、待てる)事がわかっています。

年収400万円以上の層とそれ以下の層では、年収400万円以上のほうが時間割引率が低いこともわかっています。

したがって、総合的に時間割引率が低いのは若くて高所得で理系大卒の女性、ということになります。これらの要素を多く持っている人ほど、時間割引率が低く、将来の利益のために我慢できるというわけです。

浪費家が浪費を辞めるには「背水の陣」が有効?

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人間が時間割引(特に双曲割引)の性質を持っている以上、浪費をしてしまうのはある意味当然のことといえます。今の小さな利益のほうが、将来の大きな利益よりも優先になってしまうのは人間の性です。

しかし、だからといって無制限に浪費を認めていたのではいつまでたってもお金がたまりません。浪費家が浪費を辞めるにはどうすればいいのでしょうか。

一つの方法として、周囲に浪費を辞めると宣言する、という方法が考えられます。人間は無意識のうちに損失を回避しようとする癖があります。浪費を辞めると宣言して実際には浪費をやめられなければ、恥をかきます。

恥をかくのは多くの人にとっては損失であるので、それを避けようと一生懸命になるはずです。こうした人間の考え方の癖を利用するのは、行動経済学上有効であるといえます。

損失は利得よりも大きく感じられる

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今度は違った方向からアプローチしてみましょう。あなたは競馬場にいます。1レース目、5000円で馬券を買って見事的中させ、1万円を手にしました。

2レース目、また5000円で馬券を買いましたが、今度は外してしまいました。さあ、この時点であなたは得したと感じますか、それとも損したと感じますか?

実際には1レース目で5000円利益を上げて、2レース目で5000円損失を出しているのですから、合計損益は0円となり、得も損もしていません。しかし、多くの人はこうした状況では損をしたと感じるようです。一体なぜでしょうか。

様々な研究から、人間は利得を得たときのプラスの効用よりも、損失を出したときのマイナスの効用のほうが大きくなることがわかっています。つまり、利益が上がってもそれほど嬉しくはないけれど、それと同じ額だけ損失が出たらとても悲しい、というわけです。

再び大阪大学が行った実験を見てみましょう。今ここに、50%の確率で100円がもらえて、50%の確率でX円を失うくじがあったとします。Xには5、40、60、80、100、110、120のいずれかが入ります。さて、あなたはどのくじを引きますか?

期待値だけ考えれば、5、40、60、80のくじはプラスになるので必ず引くべきですし、逆に110、120のくじはマイナスになるので引くべきではありません。100のくじを引くか引かないかは、その人のギャンブルに対する性向次第、と考えるのが妥当のように思えます。

しかし、実際の実験ではXが60のくじまでは引くと答える人が多かったものの、Xが80のくじに関しては引かないと考える人が多いという結果が出ました。期待値的には有利な80円のくじを引かない人のほうが多い、と言うのはちょっと不自然ですね。

この結果から、100円の利得によって得られる効用は、60円~80円の損失によって失う効用とほぼ釣り合うことがわかります。

危険回避と危険愛好

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リスクを追うことを嫌う性質を危険回避、リスクを負うことを好む性質を危険愛好と言います。危険回避的か、危険愛好的かは人によって異なりますが、一般的に人は利得局面では危険回避的に、損失局面では利得愛好的になることがわかっています。

例えば、いまここに50%の確率で1000円もらえて、50%の確率で何ももらえないくじがあります。一方、このくじを引く代わりに、確実に500円もらうこともできます。さて、あなたは1000円がもらえる可能性にかけてくじを引きますか、それとも確実に500円をもらいますか?

どちらの選択肢も期待値は同じですが、このような質問をした場合、多くの人が確実に500円もらうことを選びます。利得が確定している局面では、人はリスクを犯したがらないのです。

次に、今ここに50%の確率で1000円を失い、50%の確率で何も失わないくじがあります。一方、このくじを引く代わりに、500円失うという選択もできます。さて、あなたは何も失わない可能性にかけてくじを引きますか、それとも確実に500円失いますか?

この場合も期待値は代わりありませんが、今度は多くの人がくじを引くことを選びます。損失が確定している局面では、人はリスクを犯してでもその損失を減らそうとするのです。

人間は損失を回避する

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損失回避とは、損失を避けようとする傾向のことです。前述の通り、人間は利得によって得られる効用よりも、損失によって失う効用を大きく感じます。したがって、どちらかと言えば利得を得ることよりも、損失を出さないことに重点を置いて行動します。

人間は現状を維持したがる

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人間は大なり小なり、現状を変えずに維持したがる傾向があります。これを現状維持バイアスと言います。例えば、毎年インフルエンザワクチンの接種を受けていない人は、たとえインフルエンザが流行ってもなかなかワクチンを接種しようとしません。

逆に毎年インフルエンザワクチンの接種を受けている人は、たとえインフルエンザが流行らなくてもワクチン接種をします。

何かを始めるには大量のエネルギーが必要になるけれど、始めてしまえばそれが惰性で続き、今度早めるのに大量のエネルギーが必要になる、というわけです。

では、一体なぜ人間は現状を維持しようとするのでしょうか。

現状を変更すると、状況は良くなったり悪くなったりします。状況が良くなることを利得、状況が悪くなることを損失と考えると、予想される利得と損失が同程度ならば、利得によって得られる効用よりも損失によって失う効用のほうが大きくなります。

その為、多くの人はよほど利得が損失に対して大きくならない限りは行動しないのです。

行動経済学を使って預金を増やす

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以上の人間の性質を踏まえて、特におすすめしたいお金の溜め方は「所得のうち一定の割合を預金に回す定期積立預金」です。まず、前述の通り、人間には現状維持バイアスがあります。

一度始めてしまうと、容易には辞めないという性質です。定期積立預金は始めるまでが大変ですが、一度始めてしまえば今度は「毎月積み立てる」のが普通になるため、よほどのことがない限りは解約しようとしません。

また、所得のうち一定の割合を預金に回すと、所得が増えれば手取り収入と預金額の両方が増えることになります。例えば、所得のうち10%を預金に回す場合、所得が30万円ならば手取りは27万円、預金額は3万円になります。

仮に所得が40万円になった場合、手取りは36万円、預金額は4万円になります。所得が増えても手取りが減る、ということが絶対になくなるため、定期預金によって損をしている感がなくなります。

行動経済学を使って投資で稼ぐ

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定期預金よりもさらに高い利回りを求めて投資をする場合に気をつけるべきことは何でしょうか。何より大切なことは、最初に投資のルールを決めて、それを守らざるをえない仕組みを構築することです。

投資で多くの人が陥るのが利小損大です。利益がちょっとでも出たらすぐに確定させてしまい、損失が出たら確定させずにズルズルと引っ張ってしまい損失を拡大させる、と言うものです。

前述の通り、人は利得局面では危険回避的に、損失局面では危険愛好的になります。心の命ずるままに取引をしてしまったら、利小損大になるのは至極当然のことといえます。

これでは勝てるものも勝てなくなってしまいます。安易に行動せず、必ず冷静なときに作ったルールに従って行動しなければなりません。

では、一体どのようなルールを作れば勝ちやすくなるでしょうか。例えば、株価がX%上がったらどんなことが合っても必ず売り、逆に株価がY%下がったらどんなことが合っても必ず売る、というルールを事前に定めておくのは一つの手です。

このようなルールを事前に定めておけば、株価がX%上がらない限りは絶対に株を売ることにはならないので、利益が一定よりも小さくなる心配はなくなります。また、株価がY%以上下がったら絶対に株を売ることになるので、損失が一定よりも大きくなる心配もなくなります。つまり、自動的に利大損小我達成されるわけです。

ただし、このルールを厳粛に運用するのは簡単なことではありません。例えば事前に株価が10%上がるか、もしくは8%下がったら売る、ということを事前に定めていたとしましょう。

この場合、例えば株価が10%上がったので売ったら、その後も株価がずっと上昇し続けることもあるはずです。あるいは逆に株価が8%下がったので売ったら、そこから球に反転して上昇することもあるはずです。こうした事態になれば、人間は少なからずその判断を後悔します。

しかし、投資では1回の判断の正誤にはあまり意味がありません。大事なのはトータルで勝つことです。こうした自体になっても厳正にルールを運用できるだけの、強靭な精神が投資には求められるのです。

行動経済学を使って仕事で稼ぐ

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行動経済学は、日々の仕事にも役立ちます。具体的な活用法を幾つか紹介します。

「フレーミング効果」で印象を良くする

フレーミング効果とは、論理的には同じことであっても、その言い方・伝え方によって相手の受ける印象が異なる、というものです。

例えば、手術前に医者から「手術は90%の確率で成功します」と聞かされるのと、「手術は10%の確率で失敗します」と聞かされるのでは、おそらく受ける印象は大きく異なるはずです。

言い方を工夫すれば、相手を気持ちよくさせることができます。気持ちよくなればそれだけ相手の財布の紐は緩むはずで、それが売上増加に繋がります。例えば、化粧品会社がテレビCMでの宣伝や店舗の内装にお金をかける理由は、お客にいい印象をあたえるためです。

冷静に考えれば、テレビCMに美人の女優を起用しようが、店舗の内装がきれいだろうが、化粧品の効果には何の影響もありません。そんなことにお金をかけるくらいならば、開発費に回したほうがより良い商品が作れる可能性は上がるはずです。

しかし、お客の多くは「美人の女優さんがCMに出ていて、しかも店がこんなにきれいならば商品もきっといいものであるに違いない」と信じ込んでしまい、割高にも思える商品を買ってしまうのです。

利得は複数回、損失は1回でお得感を演出

人間は利得局面では危険回避的になり、損失局面では危険愛好的になります。見方を変えると、人間は利得が確定するのを好み、損失が確定するのを避ける傾向があります。

そのため、相手に利得を与えるときは、その利得をまとめて提示するのではなく、複数回に分けて提示するほうがお得感は大きくなります。逆に、相手に損失を与えるときは、その損失をまとめて提示したほうが、損した感を小さくできます。

この心のメカニズムはいろいろなところで利用されています。例えば、通販番組などでは、商品を一通り紹介した最後に「今ならさらにおまけでこれがついてきます!」と、別の商品が上乗せされることが少なくありません。

これは本商品とおまけの商品を分けて提示することによって、お得感を演出しているのです。

逆に、金額の提示は「全部まとめて●●円」と提示されるケースがほとんどです。まとめて提示したほうが損した感が少ないからです。町中でよく見かける税込表示も損した感を出さないための工夫といえます。

関係ない数字がお得感をもたらす

人間は本来全く関係のない数字や言葉に思考を引っ張られることがあります。これをアンカリングと言います。

A)8×7×6×5×4×3×2×1
B)1×2×3×4×5×6×7×8

上記の2つの掛け算は、順序が入れ替わっているだけなので、最終的な答えはどちらも同じになるはずです。しかし、高校生を2つのグループに分けてそれぞれの式を5秒以内で解かせたところ、Aの回答の平均値は2250、Bの回答の平均値は512になりました。

Aは最初に8、7,6という比較的大きな数字が並んでいるため答えも大きくなるはずだと推定してしまい、逆にBは最初に1,2,3という比較的小さな数字が並んでいるため答えも小さくなるはずだと推定してしまったのでしょう。

また、0~100が書かれたくじを引いてから、国連の加盟国のうち、アフリカの国の割合はどれくらいかを問う実験では、小さな数字が書かれたくじを引いた人ほど、回答も小さくなることがわかっています。

本来、くじに書かれた数字とアフリカの国の割合は全く無関係なのですが、それでも思考が引っ張られてしまうのです。

この仕組みを活用したのが、いわゆる二重価格です。3000円と表記するより、6000円→3000円と表記したほうが、お得感を出せるのです。

主観確率を利用して人を動かす

確率には客観確率と主観確率があります。客観確率とは簡単に言えば、計算から求められる正しい確率のことです。

例えば、コインを振って表が出る確率はいつでも1/2です。

しかし、例えばこのコインを5回振ったところ5回連続で表が出た場合、次も表がしそうな気がします。あるいは逆に、5回連続で裏が出たから今後は表が出るはず、と考える人もいるかもしれません。

このように、客観的な数字とは違う、人がそれぞれ思い描く主観的な確率を主観確率と言います。

主観確率は客観確率と必ずしも一致しません。主観確率が客観確率より高くなることもあれば、低くなることもあります。全体的な傾向として、客観確率が低いときは主観確率は大きくなり、客観確率が高いときは主観確率は低くなります(0%と100%は正確に見積もられます)。

つまり、客観的に見て滅多に起こらないことは数字以上に起こるように思えて、客観的に見てよく起こることは数字ほど起きていないと思ってしまうわけです。

この性質を利用したのが宝くじです。宝くじで高額当選する客観確率は非常に低いですが、それゆえに客観確率以上に高額当選が発生しているように思えてしまい、還元率の低い宝くじを買う人が後をたたないわけです。

スマホゲームのガチャにお金をつぎ込む人が多いのも、レアキャラの当選率が低く設定されている(だから確率が高く感じる)からかもしれませんね。

妬みと罪悪感は人に行動を促す

人間には不平等な状態を回避する性質があります。これを不平等回避と言います。例えば、仮にあなたが自分のお金を誰か個人に寄付する場合について考えましょう。この場合、寄付の対象はおそらく自分よりも貧しい人になるはずです。

また、不平等な状況では、標準よりも貧しい人は妬みを感じ、豊かな人は豊かなことによる罪悪感を感じる傾向があることがわかっています。これも不平等回避の一種と言えます。

しかし、貧しい人が全員妬みを感じるわけではありませんし、豊かな人が全員罪悪感を感じるわけでもありません。感性には個人差があります。

大阪大学が行ったアンケート調査によれば、日本人や中国人は妬みの方をより大きく感じる傾向があります。一方、インド人は罪悪感の方を大きく感じる傾向があります。アメリカ人はどちらも同程度です。

妬みを感じやすい人間を相手にする上で儲かるのはいわゆる「コンプレックス産業」です。コンプレックス産業とは、顧客の外見や内面などの問題を解決することを提示して、その引き換えに対価を受け取る産業のことです。

例えば美容整形やダイエットプログラムの提供などは典型的なコンプレックス産業です。倫理的な話は抜きにすれば、こうした産業が国内で需要があることは間違いありません。

国民が賢いと財政政策は失敗する?

ケインズは、不況時には政府が財政政策を行い、有効需要を喚起することが重要であると考えていました。財政政策とは非常に簡単に言えば公共事業の拡大、給付金、あるいは減税などのことです。

公共事業を拡大すれば、それだけ雇用が増えるので有効需要が増加し、景気が回復するはずです。あるいは、給付金の給付や減税を行えば人々の懐具合が暖かくなるので有効需要が増加し、やはり景気は回復するはずです。しかし、この考え方には一つ大きな落とし穴があります。

財政政策の財源は税金、もしくは国債発行です。どちらにしろ、お金の出処が国民であることは間違いありません。つまり、財政政策とは国民から集めた税金を、もう一度国民に還元する行為にすぎないのです。

高所得者ほど税金を払っている一方で、財政政策で恩恵を受けるのは主に低所得者ですから、高所得者が損をして低所得者が得をするのは確かなのですが、プラスマイナスしてしまえば結局0になります。

もし国民が非常に賢く、このからくりに完璧に気づいていたらどうなるでしょうか。おそらく、財政政策で一時的に懐が潤ったとしても、お金のもとの出処が自分たちのお金なのですから豊かになったとは感じません。

したがってばらまかれたお金は貯蓄に回され、有効需要は増えず、景気も回復しないでしょう。

逆に国民が賢くなければ豊かになったと感じ、ばらまかれたお金が消費に回されるので有効需要が増加し、景気が回復します。国民が賢ければ賢いほど財政政策の意味がなくなるというのは皮肉な話です。

そういった意味では、一定期間中に使うことを強制される「定額給付金」は、財政政策としてはそれなりに理にかなっています。

稼ぐチャンスはあちこちに転がっている

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このように、行動経済学は従来の経済学よりもさらに生活に根ざした理論が多くあります。これらの理論を上手に活用すれば、今よりももっと効率的に稼げるようになることは間違いありません。色々と学んで、稼ぐ術を身に着けましょう。