任意整理vs個人再生!借金を減らすならどちらがお得?

借金を減らす、もしくはなくす手続きには「任意整理」「特定調停」「個人再生」「自己破産」の4つがあります。このうち、特定調停は任意整理と比べたときに何かと劣る点が多いため、あまり使われません。

また、自己破産は借金を原則チャラにするものの、家や車などの高額な財産が没収されるため、家庭のある人には選びづらい選択肢です。これらを避けるとなると残るは任意整理個人再生の2つです。

任意整理と個人再生はどちらも一長一短で、一概にどちらを選ぶべきということはできません。借金の減額幅は個人再生のほうが大きいのですが、任意整理ではデメリットが少なく手続きも簡単なのでよく使用されます。一方、個人再生は債務の総額がかなり大きい人向けです。

今回は任意整理と個人再生の概要や共通点、相違点などをお話させていただきますので、どちらを選べばいいのか判断がつかないという時の参考にしていただけばと思います。

任意整理は債権者と話し合って債務を減らす方法

任意整理とは、債権者と債務者(実際には債務者が雇った司法書士・弁護士)が話し合い、お互いが合意した上で借金を減らす仕組みです。あくまでも民間の個人・法人による話し合いであり、手続きに裁判所が関与することはありません。

そんな債権者にとって一方的な条件に債権者が賛同してくれるのか、と思われるかもしれませんが、実際には多くの場合で賛同してくれます。

もし債権者が任意整理を突っぱねた場合、債務者はそれ以外の解決方法、すなわち個人再生や自己破産を選択することになります。これらの解決方法は、いずれも任意整理と比べて借金の減額幅が大きい制度です。

つまり、債権者が回収できる金額が少なくなってしまうのです。損得計算ができる債権者は、「そんな事態になるくらいならば任意整理に応じておいた方が多く回収できる」ということを理解しているため、任意整理に応じてくれるのです。

任意整理では通常利息をカットする

任意整理では通常、元金ではなく将来の利息をカットします。元本が減らないと対して返済は楽にならないのではないか、と思われるかもしれませんが、実際にはかなり楽になります

例えば、100万円を金利15%で借り、毎月3万円ずつ返済する場合、合計返済額は約130.2万円となります。しかし、利息をカットすれば、合計返済額は100万円になります。利息をカットするだけで、借金が30万円以上少なくなるのです。

利息をカットしないと、毎月の返済金額の一部が利息の返済に当てられます。するとなかなか元金が減らず、返済期間が長くなり、利息の支払いが膨らみます。

しかし、任意整理をして利息をカットすれば、毎月の返済金額が全部元金の返済に当てられるため、返済期間は短くなりますし、利息に悩まされることもありません。特に消費者金融のカードローンなど、金利が高いところから借りている場合は効果が実感しやすいです。

遅延損害金をカットすることも可能

任意整理では、利息だけではなく遅延損害金もカットできます。遅延損害金とは、返済が遅れたときに発生するペナルティのことで、通常借入の金利よりも高く設定されています。

専門家が任意整理に携わってからは遅延損害金は発生しませんが、その前からすでに遅延を起こしていた場合は遅延損害金を請求されます。返済遅れが生じている場合は、任意整理の威力も上がります。

債務の一部だけを整理することも可能

任意整理では、複数抱えている債務の一部だけを整理することも可能です。例えば、A銀行からの債務は整理するが、B銀行からの債務は整理せずに今後も支払う、といったようなことができます。

例えば、カードローンの債務は整理したいけれど、住宅ローンの債務は整理したくない場合(整理すると抵当権があるため住宅を失うことになります)は、任意整理を利用して一部の債務だけを整理するといいでしょう。

ただし、住宅ローンの債務を残せば、当然住宅ローンの支払いはいつもどおり続きます。全債務における住宅ローンの割合が大きすぎる場合、それ以外の債務だけを整理しても焼け石に水、ということも有りえます。そのような場合は仕方ありませんので、住宅ローンも整理しましょう。

任意整理は必ず成功するとは限らない

前述の通り、任意整理は個人・法人による話し合いです。話し合いですから、当然決裂することもあります。決裂する理由はいくつか有りますが、一番大きな理由は収入です。

任意整理後は利息をカットし、元本を返済していきます。そのため、元本を返済できるほどの支払い能力がある、元本が返済できる程度に収入があることが絶対条件となります。

また、借金の金額が多すぎる場合も、任意整理が失敗します。任意整理ができる上限の目安は、3~5年間の分割払いで支払える額となります。

例えば、毎月3万円ずつ分割払いできる人の場合、任意整理ができる上限は3万円×60ヶ月(5年)=180万円となります。5万円ずつ払える場合は180万円です。従って、500万や1000万といった多額の借金がある人も、任意整理は出来ません。

個人再生は原則借金を5分の1にする手続き

個人再生とは、原則として借金を5分の1にする手続きです。任意整理と違い、こちらは裁判所を通します。任意整理が利息をカットする手続きであるのと比べ、こちらは元本を直接減らす効果があります。どれだけ減額されるかは、残債によって異なります。具体的には以下のとおりです。

減額前の残債減額後の残債
100万円未満減額なし
100万円~500万円100万円
500万円~1500万円減額前の5分の1
1500万円~3000万円300万円
3000万円~5000万円減額前の10分の1

例えば、残債が800万円の場合、減額後の残債は800万円×5分の1=160万円となります。残債が多いほど、減額幅は大きくなります。逆に残債が100万円以下の場合は減額なしとなるので、意味はなくなります。

なお、住宅ローンを除く借金が5000万円以上ある場合、個人再生を選ぶことは出来ません。ただ、住宅ローンを除く借金が5000万円以上できることはめったにないため(殆どの人はそんなに借りられません)、あまり気にする必要はないでしょう。

財産がある場合は清算価値保障原則に基づき財産が換価されることも

個人再生では上記の通り債務が大幅に圧縮されますが、何らかの資産を保有している場合は清算価値保障原則にもとづいて財産が換価(現金化)されることがあります。

この原則は、再生計画における弁済率が破産の配当率以上にならなければいけないとする原則です。

自己破産をした場合、高額な財産はオークションに掛けられて換価(現金化)され、その現金が債権の割合に応じて債権者に配当されます。例えば債務1000万円の債務者が自己破産し、300万円の財産を換価して債権者に配当した場合、配当率は30%となります。

一方、この債務者が個人再生をした場合、債務は1000万円なので、上の表より返済額(弁済率)は5分の1、つまり20%になります。この場合、再生計画における弁済率(20%)が破産の配当率(30%)を下回っています。

この状態は認められないため、債務者は弁済率を最低でも30%にしなければなりません。お金が用意できない場合は、300万円の財産を売却して用意しなければなりません。

このルールは多くの財産を有している債務者がそれを処分しないまま債務の大幅な減額をすることを防ぐために作られたものです。

ただし、財産が何でも換価されてしまうわけではなく、生活に必要な費用などはきちんと残されます。

個人再生も必ず成功するとは限らない

個人再生も任意整理と同様、必ず成功するとは限りません。個人再生後は残債が5分の1になりますが、返済が続くことには変わりないため、収入がなければ出来ません。

任意整理と個人再生の主な共通点

任意整理と個人再生はどちらも同じ借金を減額する手段ですので、多くの共通点があります。主な共通点は以下の6つです。

  • 借金の返済が楽になる
  • 一定の期間借金ができなくなる
  • 手続きに一定の収入が必要
  • 借金の理由を問われることはない
  • 資格の制限がない
  • 闇金から連絡が来る可能性がある

借金の返済が楽になる

わざわざ言うまでもないことかもしれませんが、任意整理や個人再生をすると借金の返済が楽になります(もちろん、特定調停や自己破産についても同じことがいえます)。借金の問題からいつまでも逃げ回ることは出来ません。

返済が苦しくなってきている場合は、素直にそのことを認め、債務整理を検討した方がいいでしょう。早めに行動すればそれだけ将来の見通しが立てやすくなります。

一定の期間借金ができなくなる

任意整理や個人再生などの債務整理を行ったという事実は、信用情報機関に登録されます。信用情報機関とは、本人の属性やクレジットカード情報、返済状況などを管理・収集する民間の団体です。普段我々がしている借金の情報は、信用情報機関に集められています。現在、日本には3つの信用情報機関があります。

信用情報機関は会員会社(銀行や消費者金融、クレジットカード会社など)を通じて消費者から情報を集めることに対する同意を必ず得ています(利用規約に書いてあるはずです)、そんなことに同意した覚えはない、と言うのは通用しません。

信用情報機関は金融機関の要精に応じて情報を開示します。金融機関はその情報をもとに審査を行います。つまり、過去の借金履歴や債務整理経験の有無などはすべて金融機関に筒抜けになるのです。

当然、金融機関は過去に債務整理を起こしている人間は審査で落とします。債務整理をすると、借金ができなくなると思ってくださって間違いありません。

ただし、信用情報機関の情報は一定期間後に削除されますので、その後はまた借金ができるようになります。「一定期間」は任意整理なら5年、個人再生なら10年が目安となります。

一定期間借金ができなくなるのはデメリットにもなりますが、メリットにもなります。借金癖がある人にとってはその癖を抜く冷却期間になるでしょう。

手続きに一定の収入が必要

任意整理も個人再生も残債が0になる手続きではないので、手続き後も借金を返していくことになります。

返済能力がまったくない無職の人は、原則として任意整理も個人再生もできません。このような場合は、借金を原則0にする自己破産が第一の選択肢となります。自己破産にはデメリットも少なからず存在するのですが、その点は受け入れるしかありません。

借金の理由を問われることはない

任意整理や個人再生では、借金の理由を問われることはありません。事業の失敗でも、浪費でも、ギャンブルでも手続きができます。

一方、自己破産では借金の理由や債務者の行動が問われます。一定の条件に当てはまる場合は手続きを行えなくなってしまいます。自己破産が認められることを「免責」、免責ができなくなる事由を「免責不許可事由」と言います。免責不許可事由には

  • 浪費や賭博、射幸行為などで著しく財産を減少させたか、課題な債務を負担した
  • 財産を隠匿した
  • 財産の上京が記録された帳簿や書類、物件などを隠滅、偽造、変造した
  • 虚偽の債権者名簿を提出した
  • 裁判所に対する調査に協力しない、もしくは虚偽の説明を行った

などがあります。このルールに基づけば、浪費や賭博で借金ができた場合は、自己破産が認められないということになります。

ただし、このルールを厳格に適用すると、自己破産も出来ず、かといって個人再生では残債が残ってしまいにっちもさっちも行かなくなってしまう人が現れるため、実際には免責不許可事由に該当しても裁判所の裁量で免責が認められることがほとんどです。これを裁量免責と言います。

自己破産の現場では、浪費や賭博で借金を作っていても、90%以上のケースで裁量免責が認められます。よっぽど無反省だったり、裁判所の調査を邪魔したりしない限りはまず認められると思っていいでしょう。

資格の制限がない

自己破産を行うと、資格が制限されます。制限される資格は

  • 弁護士
  • 司法書士
  • 行政書士
  • 税理士
  • 中小企業診断士
  • 人事院の人事間
  • 国家公安委員会医院
  • 国際委員会医院
  • 教育委員会委員
  • 金融商品取引業
  • 信託会社
  • 信用金庫等の役員
  • 日本銀行の役員
  • 質屋
  • 一般労働者派遣事業者とその役員
  • 特定労働者派遣事業者とその役員
  • 旅行業者
  • 警備員
  • 警備業者
  • 不動産鑑定業者
  • 一般建設業、特定建設業
  • 卸売業者
  • 国際観光レストラン

などです。これらの資格は自己破産の手続き中は制限されるため、これらの資格が必要な職業はできなくなってしまいます。手続きが終われば資格が回復します。一覧の中には特殊な仕事が多く、多くの人にとっては関係ない話かと思いますが、一応注意は必要です。

一方、任意整理や個人再生にはこのような資格の制限は一切ありません。手続き中でも弁護士や司法書士として働けます。

闇金から連絡が来る可能性がある

前述の通り、任意整理や個人再生などをすると、借金ができなくなります。すると、それをどこからか嗅ぎつけたのか、闇金から大量のダイレクトメールが送られてくることがあります。

正規の金融機関から借金ができなくなってしまった人の中には、誘惑に負けて闇金から借りてしまう人が少なくありません。闇金からの連絡が来た場合は無視するか、あまりにもしつこい場合は債務整理で世話になった弁護士に相談するといいでしょう。

任意整理と個人再生の主な相違点

任意整理と個人再生には上記のように多数の共通点が有りますが、一方で相違点も少なからず存在します。代表的な相違点は以下のとおりです。

  • 借金の圧縮額が違う
  • 裁判所の関与の有無が違う
  • 手続きの複雑さが違う
  • 周囲へのバレにくさが違う
  • 官報への掲載の有無が違う
  • 整理できる債務の範囲が違う

表にまとめるとこんな感じになります。

相違点 任意整理 個人再生
借金の圧縮額 小さい 大きい
裁判所の関与 ない ある
手続きの複雑さ 簡単 複雑
周囲へのバレにくさ バレにくい バレやすい
官報への掲載の有無 ない ある
整理できる債務の範囲 選べる 選べない
財産処分の有無 ない 場合によってはある

借金の圧縮額が違う

繰り返しになってしまいますが、任意整理と個人再生では借金の圧縮幅が大きく異なります。任意整理では将来発生する利息をカットするのに対して、個人再生では原則として借金が5分の1になります。

個人再生は自己破産以外の債務整理では最も借金の圧縮幅が大きいので、自己破産だけはなんとしても避けたいけれど債務の圧縮幅を極力大きくしたいという人にとっては第一の選択肢となります。

一方、任意整理は将来の利息のみをカットするため、借金の圧縮幅は小さいです。総支払額が3割もカットできれば上出来で、5割カットすることはほぼ不可能と考えてください。現在の支払いは少し厳しい、という方には早めの任意整理をおすすめします。

裁判所の関与の有無が違う

任意整理は裁判所を通さない、民間人と民間企業が任意で行う手続きです。任意で行う手続きですから、双方の合意がなければ履行されません。

いくら債務者が任意整理をしたいと言っても、債権者である金融機関が認められないと言えば認められません。

ではどうやって同意を得ればいいのかというと、細かいことを考えずに弁護士に任せてしまうのが一番簡単です。個人が金融機関に対して付け焼き刃で得た知識で交渉しても、うまくいかない、もしくは不利な形での同意しか得られないことは目に見えています。

そんな手間をかけるよりも、お金を払って弁護士にお願いしたほうがよっぽど効果的です。弁護士報酬はかかりますが、それを差し引いても弁護士に任せたほうがお得です。

一方、個人再生は裁判所を通した手続きです。裁判所が出した結論には強制力がありますから、債権者と言えども裁判所の決定を拒むことは出来ません。

ただし、債権者は債務者に対して何も言えないというわけではなく、手続きの中で債務者が作成した再生計画案(債務整理後の新しい返済計画)に対して意見を述べることができ、場合によってはそれを否決することも出来ます。

個人再生の中でも圧倒的によく使われる小規模個人再生の場合、再生計画案は債権者の決議に付されます。そこで不同意を述べた債権者の数が全債権者の半数以上で、なおかつその債権者が有する債権の金額が全債権者の全債権の2分の1を超えた場合は、再生計画案は否決されます。

再生計画案が否決された場合、小規模個人再生の手続きは認可されずに終了となります。裁判所を通す手続きだからといって、債務者のわがままが何でも通るわけではないのです

一方、もう一つの個人再生である給与所得者再生の場合、債権者の同意を得る必要はなく、債務者の都合だけで手続きができます(債権者の意見聴衆はありますが、意見を聞くだけです)。

ただし、給与所得者再生は債務の圧縮額が小規模個人再生よりも小さいため、最初から選ばれることはあまりありません。まず小規模個人再生を申し立て、再生計画案が否決された場合は給与所得者再生に移るというのが一般的な流れです。

手続きの複雑さが違う

任意整理は民間人と民間企業同士の話し合いですので、手続きの流れがそこまで厳格に決められているわけではありません。手続自体もあまり難しいものではありませんし、手続きにかかる期間も3ヶ月程度と短めです。

一方、個人再生は裁判所を通した手続きですので、その仕様が減額に定められています。特に大変なのが再生計画案の作成です。

再生計画案は裁判所側が作成してくれるものではなく、自分側(弁護士含む)で作成しなければなりません。再生計画立案には複雑な計算が伴いますので、自然と弁護士報酬も高くなります。

債務の圧縮幅が多い分、裁判所も慎重に判断しますので時間がかかります。手続き終了までに半年程度の期間がかかることを覚悟しておきましょう。

周囲へのバレにくさが違う

周囲にバレないように行うことを前提とした場合、任意整理が周囲にバレることはほぼありません。任意整理は裁判所が絡まない手続きなので、裁判所から突然何らかの書面が送られてくることはありません。

また、借金の督促状や金融機関からの書面などはすべて弁護士側に送ってもらえます。

弁護士はあなたの要望に応じて、弁護士事務所名ではなく個人名で郵便を送ってくれるので、弁護士事務所から突然郵便が来たと不自然に思われることもありません。それでも心配という場合は、郵便局留に対応してくれることも多いです。

実際の交渉はすべて弁護士が行ってくれるため、休日の不自然な外出でバレることもまずないでしょう。

一方、個人再生は周囲に隠し通すのが非常に難しいです。既婚者で共働きの場合、配偶者の給与明細や源泉徴収票が必要になります。

こっそり持ち出すという方法も考えられなくはないのですが、そもそも配偶者がそれを保管していないケースも多く、その場合は正直に話さなければなりません。

個人再生は裁判所を介した手続きなので裁判所からも連絡が来ますが、これに関しては弁護士側に送ってほしいと弁護士に事前に伝えておけば問題ありません。

なお、家族が保証人になっている場合、あなたが個人再生をすると、その認可が降りても保証人に請求が行くため、必ずバレる上に家族にも個人再生をさせることになります。将来借金をする可能性がある人は、家族を保証人にするのは避けましょう。

また、会社や組合などからお金を借りている場合は、勤務先にも絶対にバレます。勤務先も債権者の一種であり、その債務だけを個人再生の対象から外すことは出来ないからです。

借りていない場合でも、退職金見込み証明書(いま仕事をやめた場合に退職金がいくら貰えるかを試算した書類)が必要になるため、そこからバレる可能性も考えられます。

退職金見込み証明書は住宅ローンや教育ローンなどを組む際に要求されることもあるため、これらを言い訳にするといいでしょう。どうしても用意できない場合は自分で計算してもいいのですが、手間がかかることは覚悟しておきましょう。

官報への掲載の有無が違う

官報とは、日本国が発行している機関誌です。霞が関の政府刊行物発行センターや、各都道府県の官報販売所などで売っている他、図書館にも置いてあります。

法令の公布や法令のあらまし、公報的事項、公告紙的事項など幾つかの項目がありますが、自己破産及び個人再生をした場合、公告紙的事項に名前と住所が掲載されます(自己破産の場合は計2回、個人再生の場合は計3回載ります)。官報はインターネットからも閲覧可能です。

官報という存在自体が非常にマイナーなものであるため、名前を掲載されることをそこまで極端に恐れる必要はないのですが、信用情報機関や役所の税担当者は仕事のために官報を見るため、知り合いにこれらの仕事をしている人がいる場合は少し考えたほうがいいかもしれません。

また、闇金業者は官報の情報から新たな借金ができない人を探し出し、DMを送ることもあるようです。誘惑に負けないように用心しましょう。

整理できる債務の範囲が違う

任意整理では前述の通り、債務の一部だけを選んで整理することが可能です。それに対して、個人再生では通常すべての債務を整理しなければなりません。

ただし、個人再生には例外的に住宅資金特別条項という制度があり、この制度を利用すると住宅ローンを残したまま、それ以外のすべての債務を整理することができます。住宅資金特別条項の対象となる債券は住宅ローンの他、リフォームローンなども含まれます。

ただし、住宅資金特別条項は、住宅ローンを組んでいれば必ず利用できるたぐいのものではなく、一定の条件を満たす必要があります。満たさなければならない主な条件は以下の4つです。

  • 住宅資金貸付債権であること
  • 住宅資金貸付債権が法定代位により取得されたものでないこと
  • 住宅ローン関係の抵当権以外の担保が設定されていないこと
  • 対象となる住宅以外の不動産にも住宅ローン関係の抵当権が設定されている場合には,その住宅以外の不動産に後順位抵当権者がいないこと

住宅資金貸付債権であること

住宅資金貸付債権とは、住宅ローンやリフォームローンなどの、住宅の購入、建築、改良に必要な資金の債権で、なおかつ住宅に抵当権が設定されるものです。この条件に該当しない場合、住宅資金特別条項は利用できません。

住宅資金貸付債権が法定代位により取得されたものでないこと

住宅資金貸付債権は債権の一種であり、債権者は他者にその権利を譲渡することが出来ます。この債権を買い取ることを法定代位による取得と言います。

典型的な例は、住宅ローンの滞納が発生し、住宅ローン保証会社が銀行などに対してお金を支払い、その見返りに銀行などから債権を受け取るというものです。この場合、住宅資金特別要項は利用できません。

住宅ローン関係の抵当権以外の担保が設定されていないこと

対象となる住宅に住宅ローン関係の抵当権以外の担保が設定されている場合、住宅資金特別条項は利用できません。例えば住宅を住宅ローン以外の何らかの債務の担保にしている場合などは利用できません。

対象となる住宅以外の不動産にも住宅ローン関係の抵当権が設定されている場合には,その住宅以外の不動産に後順位抵当権者がいないこと

自宅以外にも不動産を持っていて、なおかつその不動産にも住宅ローンの担保として共同抵当権が設定されていることがあります。

この場合、その不動産に後順位抵当権者がいると、住宅資金特別条項は利用できなくなります。後順位抵当権者とは、後に抵当権を取得した個人や法人です。

財産処分の有無が違う

任意整理の場合、財産の処分は一切発生しません。自動車も、住宅も、高価な絵画なども手元に残せます。

一方、個人再生の場合も原則として財産の処分は発生しませんが、高額な財産が手元にある場合は前述の清算価値保障原則によって換価・弁済に当てられることがあります。

個人再生後の残債よりも手元にある財産の合計額のほうが大きい場合は、財産を換価して返済に当てることになるでしょう。

住宅の場合は前述の通り住宅資金特別条項を利用すれば守ることが出来ますが、それ以外の高額な財産については手放すことを覚悟した方がいいでしょう。

まとめ

  • 任意整理は将来の利息をなくす債務整理
  • 個人再生は借金を原則5分の1にする債務整理
  • 個人再生のほうが借金の圧縮幅は大きいが、任意整理は手続きが簡単でデメリットが少ない
  • 任意整理は交渉が決裂することがある
  • 任意整理は借金を選んで整理できる
  • 個人再生は周囲の人にバレる可能性が高い

任意整理と個人再生はどちらも一長一短で、その人のおかれた状況によって選ぶべき選択肢は異なります。両者の長所と短所をよく比較して選びましょう。