太陽光発電にかかる費用はどれくらい?メリットとデメリットは?

近年、遊休地の活用方法として急速に注目が集まっている太陽光発電というビジネス。田舎の土地でも始めやすい一方で、天候に左右されやすい、初期費用がかかるなどのデメリットも見逃せません。

今回は土地を太陽光発電に使うメリットやデメリット、費用や利回りなどを紹介したいと思います。

太陽光発電は太陽の光を電気に変えるシステム

太陽光発電とは、地球に降り注ぐ太陽の光(赤外線、可視光線、紫外線など)を「太陽電池」と呼ばれる装置で電気に変えるシステムです。太陽電池はシリコンなどの半導体で作られており、日射を受けると発電します。

太陽電池の構成単位の中で最も小さいのがセル、セルを複数枚配列したのがモジュール、モジュールを複数枚並べて接続したのがアレイです。アレイ=ソーラーパネル、という認識でだいたい間違いありません。

仮に太陽から地球に降り注ぐ光エネルギーをすべて人間が使用可能な変換できたら、1年間に世界で消費されるすべてのエネルギーをわずか1時間で賄うことが出来ます。

石油や石炭などと違って今後数十億年は途絶える心配がありませんし、外国からの燃料の輸入に頼らなくても済みます。温室効果ガスも生まれないなど、様々なメリットがあります。

土地活用の観点から見た太陽光発電のメリット


太陽光発電はエネルギー問題を解決する救世主になるかもしれない一方で、土地所有者の新たな土地活用法としても注目を浴びています。

土地に太陽電池を大量に設置して、発電した電力を東京電力や関西電力などの電力会社に買い取ってもらうというビジネスがいま活況を呈しているのです。

土地活用といえばアパート・マンション経営や駐車場経営などが一般的ですが、太陽光発電には以下のようなメリットがあります。

田舎の土地が活用しやすい

アパート・マンションや駐車場、あるいは店舗などはすべて、周辺に人がいなければ成り立たないビジネスです。そのため、田舎では基本的に成り立ちません。

まれに田舎であっても居住者が増えているようなところもありますが、一般論で言えばこれらのビジネスは都心、あるいは地方都市の中心部などで行うものです。

一方、太陽光発電は太陽がどれくらい照りつけるかが収益の分かれ目になるため、周辺に人がいてもいなくても成り立ちます。むしろ、太陽光を遮るような建物がない田舎のほうが成功しやすいとすら言えるのです。

固定価格買取制度を利用できる

固定価格買取制度とは、国が電力会社に自然エネルギーで発電した電力を一定の価格で買い取るように定めた制度のことです。価格は年によって多少異なりますが、平成29年度では住宅用が28円/kwh、産業用が21円/kwhとなっています。

固定価格買取制度があるため、せっかく作った電気が売れずに困るようなことはありません。ただし、この価格は将来下がるものと予想されていますので、始めるならなるべく早いほうがいいでしょう。

自治体から補助金が出ることがある

国が実施していた補助金制度は平成27年度をもって終了してしまいましたが、一部の自治体は独自の補助金制度を採用しています。該当する地域で太陽光発電を行う場合は、初期費用を大幅に削減することが可能です。

メンテナンスの手間が余りかからない

太陽光発電に必要な設備は屋外に直接設置されるものであり風雨に晒されたり、枯れ葉や鳥の糞などが表面に付着することはありますが、アパート・マンションほどメンテナンスに手間はかかりません。資源エネルギー庁によれば、業者による定期的な点検は4年に1度以上の頻度が推奨されています。

土地活用の観点から見た太陽光発電のデメリット


このように太陽光発電には様々なメリットがありますが、デメリットも少なからず存在しています。田舎の土地を保有しているからという理由だけでなんとなく始めてしまうと、あとで泣きを見てしまいかねません。太陽光発電を始める前には、必ずデメリットを確認し、それが許容範囲であるかを確認することが大切です。

買取価格が毎年下がっている

固定価格買取制度によって買取の保証がされている太陽光発電ですが、ここのところ買取価格は下がってきています。今後買取価格がどうなるかはわかりませんが、いきなり反転するとは考えづらいでですし、今後さらに買取価格が下がることを覚悟しておいたほうがいいでしょう。

場合によっては、発電した電気を売電するのではなく、自家消費して電気代を下げたほうがお得になることもあります。

固定価格買取制度には期限がある

固定価格買取制度は10kW未満ならば10年、それ以上の場合は20年しか利用できないという決まりがあります。

その期間が過ぎた場合は発電事業者(土地のオーナー)と電気事業者(電力会社)が話し合って買取価格を決めることになります。買取価格は市場に調整されるため、固定価格よりは安くなると考えたほうがいいでしょう。

設置後に日照が減るリスクが有る

田舎の土地ならば周辺に建物が作られることはあまりないでしょうが、それでも10年、20年という長いスパンで見れば近くに建物ができる可能性は十分にあります。建物ができれば影ができ、それだけ発電量は少なくなってしまいます。

初期費用がかなりかかる

維持費用はほとんどかからない太陽光発電ですが、初期費用はそれなりの大きさになります。経済産業省が発表した資料によれば、10kW未満では38.5万円/kW、10kW~50kW未満では36.9万円/kWとなっています。

仮に20kWの太陽光発電設備を設置する場合、その費用は36.9万円/kW×20kW=738万円が目安になると思ってください。アパート・マンションほどではありませんが、それなりにまとまった出費があることは覚悟しておきましょう。

太陽光発電に適した土地はこんな土地!


太陽光発電に適した土地の特長を幾つか上げてみます。

天気が安定している

太陽光発電は太陽光を使うものですから、当然晴れの日が多い、日照時間が長い、日射量に越したことはありません。

1年の日照時間が最も長い都道府県は埼玉県で約2366時間、最も短いのは秋田県で1647時間で実に700時間もの差があります。全体的に太平洋沿岸地域では長く、東北や日本海沿岸では短くなっています。(参考:年間日照時間ランキング

また、日照時間が同じでも、低緯度地域(赤道に近い地域)は日射量が多く、高緯度地域(北極に近い地域)は日射量が少なくなる傾向があります。これらのことを考えると、太平洋に面した東海地方、近畿地方、四国地方、九州地方などの沿岸沿いがおすすめと言えそうです。

地価が安い土地

太陽光発電はアパート・マンションなどと違い、立地に左右されることがありません。そのことを考えると、地価の安い土地に設置したほうがお得になります。地価が高いいい土地を持っている場合は、アパート・マンションや駐車場など他の活用方法を考えたほうがいいでしょう。

面積が広い土地

面積が狭いと、太陽光発電設備の設置効率が下がってしまい、効率的な発電ができなくなってしまいます。どのくらいの面積があればOKとは一概には言えませんが、例えば10kWの太陽光発電設備を導入したい場合は、およそ60平米ほどの面積が必要になります。

地盤が強固な土地

太陽光発電は基礎の上に架台を設け、更にその上に太陽光パネルを設置するという仕組みになっています。基礎は地盤に支えられており、地盤がゆるいと基礎が沈み込んだり、引き抜けたりしてしまう可能性があります。

そうなると当然発電効率は下がってしまいますし、設備自体が機能しなくなったり、台風や強風で吹き飛んで周囲の施設や住民に被害を与える可能性もあります。設置前には地盤調査を行い、その土地が太陽光発電に適しているかを調べるようにしましょう。

電柱が近くにある

太陽光発電設備で発電した電力を売電するためには、その電力を電線で近隣施設に送る必要があります。近くに電柱がない場合、自費で新たに電柱を作らなければならないため、余計に費用がかかります。

太陽光発電の利回りを計算してみよう


ここからは、太陽光発電の具体的なシミュレーションに入っていきたいと思います。ここでは田舎に180平米の土地を持っているものと仮定して話を勧めます。

まずは初期費用を計算してみましょう。200平米の土地に太陽光発電設備を隙間なく敷き詰めると、概ね30kWの発電能力を保有することが出来ます。前述の通り10kW~50kW未満での初期費用は36.9万円/kWなので、36.9万円×30=1107万円となります。

一方、この太陽光発電設備が1年間問題なく稼働した場合、地域にもよりますが1年で大体3万5000kWh前後の発電が期待できます。産業用の場合買取価格は21円/kwhなので、1年あたりの売電収入は3万5000×21=73万5000円となります。

したがって、利回り位は73万5000円÷1107万円6.6%となります。自治体によっては補助金が出ることもあるので、実質利回りは7~8%ぐらいになることが多いです。

実質利回り7~8%をどう捉えるかはその人次第ですが、他に土地の有効活用をするのが難しい田舎の土地でこれだけの利回りが出れば悪くはないといえるのではないでしょうか。

ただし、これは現時点での実質利回りであり、今後固定価格が下がっていけばそれにともなって実質利回りも低下します。一方で今後技術革新が進めば更に初期費用が安くなる可能性もあるなど、将来への見通しは不透明となっています。

投資に先行き不透明はつきものであり、このあたりのリスクを許容できるのならば、太陽光発電は十分おすすめできます。