年金受給者でも借金ってできるの?

世界にも類を見ないペースで少子高齢化が進む日本。年金をベースに生活している人も少なくありませんが、果たして年受給者は借金をすることができるのでしょうか?

そもそも年金っていくらもらえるの?

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現在の日本の年金制度は3階建てになっています。

1階部分は全国民が加入する「国民年金」、2階部分は自営業者が加入する「国民年金基金」や会社員・公務員が加入する「厚生年金」、3階部分は会社独自の上乗せ制度である「企業年金」や公務員の「年金払い退職給付」などです。

国民年金はすべての20歳以上の人間が加入する年金

日本に在住する20歳以上のすべての人(外国人も含む)は、1階部分の国民年金に加入するように定められています。国民年金の保険料ははその人の所得にかかわらず一定で、平成28年度現在の1か月当たりの保険料は1万6260円となっています。

まとめて支払すると割引が適用されることがあるほか、付加保険料を支払うことによって将来もらえる年金額を多くすることも可能です。

給付額は加入期間のみで決まります。20歳から60歳までの40年間加入することによって、年間で約80万円(月間約6万8000円)を受給することができます。

過去に滞納や免除をしていた場合、満額支給されないこともありますが、基本的にはこの国民年金を老後の生活のベースとしていくことになります。

さて、前述のとおり国民年金の給付額(受給額)は、満額でも月間で約6万8000円にしかなりません。これだけでは当然、生活していくことができません。したがって、多くの社会人は以下に示す2階建て、あるいは3階建て部分の年金にも加入しています。

国民年金基金は自営業者のための年金

国民年金基金は、自営業者などの豊かな老後を実現するために考案された、2階部分の年金制度です。会社員、公務員、専業主婦などは入ることができません。また、国民年金の支払いを免除されている人なども加入できません。

国民年金基金には各都道府県に一つ設置されている「地域型国民年金基金」もしくは特定の職種の人によって構成されている「職能型国民年金基金」の2つがあり、どちらか一つにしか加入できないことになっています。

国民年金基金の特徴として、加入が任意であることが挙げられます。国民年金は20歳以上のすべての人が入らなければならないことになっていますが、国民年金基金は入りたくなければ入らなくてもOKなのです。

また、保険料についても上限こそ定められているものの(月6万8000円まで)、その額は加入者が任意で設定することができます。将来たくさん年金が欲しいという人は保険料を上限いっぱいまで掛ければいいですし、逆にあまり必要ないという人は少しだけ掛ければいいのです。

国民年金基金は基本的に途中で解約できませんが、途中で掛け金を増額したり、減額したりすることは可能です。

受給額は上記のとおり、毎月の保険料や加入期間によって異なります。仮に28歳で加入し保険料は毎月5万8560円だった場合、65歳から亡くなるまで、毎年147万8784円(月間約12万円)を受け取ることができます。

厚生年金は会社員・公務員のための年金制度

厚生年金は会社員や公務員のための2階部分の年金制度です。自営業者、専業主婦などは加入することができません。かつては会社員は厚生年金、公務員は共済年金と分けられていたのですが、平成27年に両社は統合され共済年金は廃止となりました。

厚生年金は国民年金基金と同じく2階部分に該当しますが、国民年金基金と違い加入は強制となっています。会社員や公務員として働く人は原則として、必ず厚生年金に入らなければなりません。

厚生年金保険料は国民年金保険料と一緒に、給料から天引きされます。つまり、厚生年金の受給資格がある人は、必然的に国民年金の受給資格も持ち合わせることになります。

厚生年金保険料は標準月額報酬(月給)×保険料率で計算され、それを事業者と被保険者が半分ずつ折半します。現在の保険料率は17.828%なので、被保険者はその半分、8.914%を負担します。

仮に月給が40万円だった場合、負担額は40万円×8.914%で約3万6000円となります。

このように、厚生年金保険料は月給に左右されます。現役時代に月給が高かった人ほど厚生年金保険料を多く支払うことになり、そのぶん将来受給できる年金も増えます。平成25年度現在の厚生年金受給額は9万1000円程度です。ここに国民年金が加算されます。

企業年金はより豊かな老後を目指す私的年金

企業年金は各企業が、従業員の豊かな老後を確保するために設置する私的な年金です。当然、自営業者や専業主婦などは加入できません。また、企業年金そのものがないという企業も少なくありません。

企業年金は、年金の運用は管理、給付などはその企業が設置した厚生年金基金、企業年金基金が行います。

企業年金にはあらかじめ給付額を定めておき、その額が給付できるように保険料を調整する確定給付型企業年金と、掛け金を従業員がきめて自ら運用を行い、運用実績によって給付額が決まる確定拠出年金があります。

年金払い退職給付

年金払い退職給付は公務員のための年金です。企業年金の公務員版のようなものです。かつては職域加算と呼ばれていたもので、平均的な給与、賞与で40年間職務を全うした場合、月額で約1万8000円が支給されることになります。

で、結局年金っていくらもらえるの?

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厚生労働省の平成23年の調査によれば、国民年金のみの加入の場合、その平均受給額は月額5万4000円です。厚生年金にも加入している場合は、国民年金と厚生年金を合わせて15万2000円となっています。

性別ごとに見た場合、男性が17万円、女性が10万4000円で、共働きの夫婦だった場合は平均で約27万円受給できることになります。妻が専業主婦だったという場合は、男性の国民年金+厚生年金17万円に、女性の国民年金5万円プラスされて22万円が受給できることになります。

企業年金や年金払い退職給付が受けられない場合は、一般的な夫婦の受給額は22万円~27万円/月程度になると覚えておいてください。自営業者の場合は、これより少なくなることが一般的です。

年金生活だけでは豊かな生活は手に入れられない

さて、一方生命保険文化センターが行った意識調査によれば、夫婦二人で老後生活を送るために必要な最低日常生活費は22万円/月でした。また、ゆとりある老後の生活を送るために必要な日常生活費は35万円/月でした。

つまり、一般的な会社員の夫と専業主婦の妻がいる家庭の年金平均受給額22万円では、最低限の生活しかできず、豊かな老後には程遠いというわけですね。

もし夫や妻に国民年金未加入の時期があったり、現役時代の給与が低くて厚生年金をあまり納めていなかったという場合は、最低限の生活すら危うくなります。

それを穴埋めするには貯蓄が必要です。ゆとりある老後の生活を送るためには最低でも35万円/月-22万円/月=13万円/月が必要になります。仮に老後が25年続くと仮定した場合、必要な額は13万円/月×12か月×25年=3900万円が必要になります。

現役時代にこれだけの金額を用意するというのは、結構大変なことです。もちろん、老後の生活のランクが下がってもいいというのならばこれだけ用意する必要はありませんが、老後の生活が貧しいというのは結構な屈辱です。

そのわびしさに耐えられず、借金をしようとする人も少なくありません。しかし、年金しか収入減がないという人が、借金をすることなど可能なのでしょうか?

年金生活者が借金をするのは難しい

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結論から言えば、年金受給者が現役時代のように借金をするのは難しいです。理由は簡単で、年齢に難があるからです。縁起でもない話だと思われるかもしれませんが、もし借金をしてその直後に亡くなってしまったら、金融機関としては非常に困ります。

そのため、多くのカードローンやキャッシングでは年齢制限が定められています。ただし、年金とは別に給与収入や事業収入がある場合は、借入ができることもあります。

どうしても借金をしたい場合は「年金担保貸付制度」を活用しよう

年金を受給する年齢になると民間の金融機関から借金をするのは非常に難しくなってしまいますが、公的な融資制度は利用することができます。年金を担保にお金を借りられる制度に「年金担保貸付制度」があります。

これは「独立行政法人 福祉医療機構」及び「日本政策金融公庫」が行っている事業です。これ以外の組織や企業で年金を担保にしている融資を行っているところは違法業者の可能性が高いので気を付けてください。

独立行政法人福祉医療機構の場合、国民年金や厚生年金などを受給している人ならばだれでも利用することができます。元公務員で共済年金を受け取っている人は対象にならないので注意しましょう。

金利は現在1.8%で、融資額は年金の年額の範囲内、1回あたりの返済額の15倍までという制限があります。

原則として追加の借り入れはできません。また通常は保証人が必要ですが、信用保証料を払えば保証人はいなくてもOKです。お金の使い道については、あらかじめ選択する必要があります。

年金という担保が重視される融資制度なので、そこまで審査は厳しくありませんが、生活保護を受けている、もしくは過去5年以内に受けていたという場合は融資が受けられないので気を付けましょう。

日本政策金融公庫の場合、対象者は恩給、共済年金、災害補償年金などを受給している人となっています。金利は恩給が0.45%、共済年金が1.95%で、完済までに支給される年金は全額返済に充てられます。

年金受給者が借金を支払えなくなったらどうなるの?

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上記の制度を利用したものの借金の返済ができなくなった場合でも、年金は法律で非免責債権と定められているので、年金自体を差し押さえられたり、減額されたりすることはありません。

ただし、口座に入金されるとそれはただの預貯金となるので、いずれ差し押さえられることになるので注意が必要です。また、年金受給者であっても口座、家などは差し押さえられることになります。

借金が返済できなくなってしまったら、年金受給者であってもすぐに債務整理を行ったほうがいいでしょう。いい年して債務整理なんて……と思われるかもしれませんが、そうしたつまらないプライドは安定した老後生活の大敵となります。

債務整理をして毎月の支払額を減らせば、年金の中から借金を返済していくことも可能になります。

債務整理をすると信用情報に傷がつき、一定期間新たな借り入れができなくなるというデメリットがあります。

これは将来住宅ローンやカーローンを組もうと考えている人にとっては大きなデメリットですが、将来そうしたローンを組む必要がない年金受給者にとっては大した痛手ではありません。

そもそも年金受給者は借金をすること自体が難しいので、実質的にはデメリットなどないようなものです。

借金が返済できるのならば、自宅を手放さない任意整理や個人再生を選ぶこともできます。なんにせよ借金は放置すると不利になる一方なので、なるべく早く弁護士に相談するようにしましょう。

※相談前に今の借金がどのくらい減らせるか知りたい方はこちらへ