かんぽ生命保険(旧・簡易保険)は民間の生命保険よりも加入しやすく、保険料も安いことから一定の人気を集めていますが、一方でデメリットも少なくありません。
今回はかんぽ生命保険と民間の生命保険、どちらが保険商品として優秀かを比べていきたいと想います。
目次
簡易保険はイギリスで生まれた制度
簡易保険はイギリスで誕生した無審査で入れる生命保険です。19世紀の中頃、保険を必要としながらも民間の医療保険に入れない労働者のために開発された保険商品で、労働者の生計に合わせて保険料は低額に(その分保証も少なめに)設定されていました。
日本にも明治時代に生命保険という制度が輸入されたのですが、やはり民間の生命保険は高くて入れない人が多く、その問題を解消するために、大正5年に当時の日本政府はより簡単に入れる簡易保険を導入しました。
簡易保険には一般的な医療保険のみならず、学費、終身年金、など多数の商品があり、低~中所得者層の間で人気を博しました。
戦後はこの制度を日本郵政公社が引き継ぎますが、同公社が2007年に民営化されたのに伴い、簡易保険は廃止になり、同公社の業務を継承した独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構が「かんぽ生命保険」を提供するようになりました。なお、民営化以前に簡易保険に入っていた人は契約当事の保証を引き続き受けることができます。
かんぽ生命保険は国からの保証がない
日本郵政公社の「簡易保険」と、郵便貯金・簡易生命保険管理機構の「かんぽ生命保険」の最大の違いは政府保証の有無です。簡易保険には政府保証がありましたが、かんぽ生命保険には政府の保証がなく、代わりに「生命保険契約者保護機構」に加入しています。
この機構は生命保険会社が破綻した際に契約者を保護するためのもので、国内の殆どの生命保険会社が加入しています。
ある生命保険会社が破綻した場合、同機構は救済保険会社、つまり破綻した会社の業務を引き継いでくれる会社を探します。救済保険会社が現れた場合は、その会社が契約を引き継いで、同機構は法令に基づいて資金援助などを行います。
一方、救済保険会社が現れなかった場合は、同機構の子会社である「承継保険会社」が契約を引き継ぐことになります。つまり、救済保険会社が現れても現れなくても、いきなり無保険になることはないわけです。
生命保険会社が倒産すると契約者にマイナスの影響が出ることも
ただし、生命保険会社が倒産した場合、責任準備金はまでしか90%補償されません。責任準備金とは、生命保険会社が保険金や給付金の支払いのために積み立てていたお金です。
つまり、生命保険会社が倒産してしまうと、最大で10%積み立てたお金が減ってしまうのです。
また、場合によっては契約内容が不利になることがあります。倒産した会社の財務状況によっては、年金商品などの利率が少なくなってしまったり、医療保険などの保障額が少なくなってしまったりします。やはり、生命保険会社が倒産しないに越したことはないのです。
かんぽ生命保険にはどんなメリットがある?
日本郵政公社の簡易保険には政府保証という大きなメリットがありましたが、かんぽ生命保険にはそのようなメリットはありません。しかし、それでも民間の生命保険には無い様々なメリットがあります。
無診査で加入できる
かんぽ生命保険の一番の特徴は、医師の診査なしで加入できることです。ただし、これは無選択で加入を認めるものとは違います。あくまでも医師の診査を必要としないと言うだけで、それとは別に幾つか審査があります。
まず、保険契約の際には、被保険者はかんぽ生命、もしくは代理店(郵便局)の面接を受ける必要があります。
また、自身の健康状態についても告知する必要があります。事実の告知がなかったり、事実とは違うことを告知していた場合、かんぽ生命は「告知義務違反」として契約を解除することがあります。この場合、保険金は支払われないので、必ず正直に告知しましょう。
職業にかかわらず加入が可能
民間の生命保険会社の場合、他の職業と比べてリスクが高い職業(高所作業をする職業、爆発物や高電圧設備を取り扱う職業、消防士など)の人は保険料が上がったり、保障額が制限されたりすることがありますが、かんぽ生命保険では職業にかかわらず保障額は一定です。
他社の生命保険を断られた場合でも、かんぽ生命ならば加入できます。
代理店が多く入りやすい
かんぽ生命保険の代理店は郵便局の窓口です。郵便局は日本中にありますから、加入の手続きがしやすいというのも大きな魅力です。民営化された現在は職員の対応も丁寧になってきています。
保険料が安い
かんぽ生命保険も多数の商品を取り扱っているので一概には言えませんが、商品は概ね価格が安めに抑えられています。
もともと低~中所得者向けに作られた生命保険ですから当然といえば当然ですが、民間の生命保険に入るのは経済的に厳しい場合は、かんぽ生命を選んだほうがいいかもしれません。
かんぽ生命保険は保険金額が少ないなどのデメリットも
このように様々なメリットがあるかんぽ生命保険ですが、一方でデメリットも見逃せません。
保険金額が少ない
かんぽ生命保険の保険商品には保険金、年金額の上限があります。例えば、現時点ではかんぽ生命から受け取れる保険金額の上限は1000万円に設定されています。それ以上の補償を受けることはできないわけです。
ただし、被保険者が一定の条件を満たせば、上限額を2000万円まで増額することが可能です。
その他にも年金額は90万円まで、災害特約及び介護特約は1000万円までといった感じで様々な制限があります。万が一の際には十分な保険金がほしいという場合は、民間の生命保険会社を選んだほうがいいかもしれません。
よく見ると保険料が割高
先ほど保険料が安いということをメリットに上げましたが、それは保険金の金額が少なめに設定してあるからです。保険料と保険金額のバランスを見ると、民間の生命保険会社よりも割高な面があることは否めません。
前述の通りかんぽ生命保険は無診査で職業制限がなく、それゆえに民間では断られるようなリスクの高い人も流れてくるため、どうしても保険料は割高になってしまうのです。
掛け捨ての医療保険、がん保険がない
かんぽ生命の商品ラインナップは概ね民間の生命保険会社のそれと代わりありませんが、他社にはよく見られる掛け捨ての医療保険、もしくはがん保険がありません。
主契約の保証として医療保障をつけることはできますが、ちょっと面倒です。掛け捨てでかまわないという場合は、民間の生命保険を選んだほうがいいでしょう。
かんぽ生命保険と民間の生命保険、どちらが有利?
かんぽ生命保険と民間の生命保険、どちらが一概にお得とはいえませんが、現時点で健康であり、特に病気の心配もなさそうな場合は、民間の生命保険会社を選ぶことをおすすめします。
前述の通り、かんぽ生命保険は民間の生命保険と違い無診査で職業制限がないため、保険料が割高に設定されています。
一方、民間の生命保険会社はそれよりもしっかりとした診査や職業制限を行っているため、リスクが高い人は排除され、その分保険料も割安になっています。わざわざ知らない人のリスクを肩代わりしてやる必要もないですし、健康状態に現時点で問題が見られないという場合は、民間の生命保険会社を選んだほうがいいでしょう。
また、かんぽ生命保険は保険金額にも上限があるので、多く保証をつけたいという人にもあまり向いていません。その場合もやはり、民間の生命保険会社を選んだほうがいいでしょう。
かんぽ生命保険を選んだほうがいいケースとは?
民間の生命保険会社は、通常の診査には通らない持病のある人のために、引受基準緩和型、無選択型の保険を販売しています。前者は従来よりも診査が簡単な保険で、後者は診査がない保険です。
これらの保険は通常の民間の生命保険よりもかなり保険料が割高に設定されていますので、これに入るよりはかんぽ生命保険に入ったほうがいいかもしれません。
かんぽ生命保険は健康な人と病気のリスクが高い人が入り混じっていますので、相対的なリスクは引受基準緩和型や無選択型よりも少なく、したがって保険料も割安だからです。
また、かんぽ生命は掛け捨ての保険商品がないぶん、貯蓄性の高い保険商品が充実しています。貯蓄型の生命保険に加入するならば、かんぽ生命を検討したほうがいいかもしれません。
保険選びで迷ったらアドバイザーに相談を
どの保険商品を選んでいいのかわからないという場合は。保険アドバイザーに相談するといいでしょう。最近は「ほけんの窓口」や「保険のビュッフェ」など、無料で保険相談できる窓口が増えています。
彼らは各生命保険会社、パートナー代理店などから支払われる資料請求手数料、広告掲載料を収入源としているため、相談は無料ですし、特定の保険会社に肩入れすることもありません。保険選びで迷った場合は、まず相談してみましょう。