ものぐさでもできる!楽してお金を節約し貯める方法

世の中には様々な節約法・貯蓄法があります。しかし、その中には手間のかかるものが少なくありません。確かに手間を掛ければそれなりにお金は貯まるのですが、正直大変なことはやりたくないと思うのが人間の性です。

そこで今回は、ものぐさな人間でもできる、少しの労力で効果的にお金を節約し貯められる方法を紹介していきたいと思います。口座の使い分けや固定費削減など誰でもできることばかりですので、是非実践してみてください。

節約も貯蓄も労力が少ないものほど長続きする

人間というのは本質的に楽をしたがる生き物です。努力をするのは素晴らしいことですが、継続的な努力ができる人間はほんの一握りの人間だけです。ほとんどどの人は頑張れば将来大きな利益が得られるとわかっていても、目の前の安楽・快楽に逃げてしまうものです。

この性質を変えるのは、かんたんなことではありません。むしろこの性質とうまく付き合い、楽して節約・貯蓄ができる方法だけを実践したほうが、効率的にお金が溜まっていきます。

人間は習慣を変えたがらない

人間は大なり小なり、保守的な傾向、現状維持を良しとする傾向を持ち合わせています。意識している、していないにかかわらず、現状維持を望む傾向を現状維持バイアスと言います。

目の前に明らかにより優れている別の選択肢が合っても、それを選ばず今と同じ状態を維持しようとしたことがある方は、少なくないのではないでしょうか。

例えば医師にダイエットをしろと言われたにも関わらずしなかったり、既存の製品やサービスよりも明らかに優れている新規製品やサービスを発見しても導入しなかったり……こういった不合理な判断の裏には、現状維持バイアスが大きく関わっています。

現状維持バイアスは人間の合理的な行動を阻害する厄介なものである一方、うまく付き合えば有益に働くこともあります。

一度節約や貯蓄を始めてしまえば、今度は節約や貯蓄を続けるのが現状維持になります。一度始めてさえしまえば、あとは大した労力をかけずとも続けることができるのです。

したがって、節約や貯蓄の習慣を身につけるためには、いかにしてそれを始めるのか、が重要になります。

定量的に評価できる節約や貯蓄は始めやすい

現状維持バイアスを打破し、新しい習慣を身につけるためには、定量的な評価が必要になります。定量的な評価とは簡単に言えば、数字による評価です。

どのくらい時間と労力をかければどれくらいの効果が得られるか、を数字で理解すれば、新しい習慣を身につけることに前向きになれます。今回紹介する節約・貯蓄法は、どれも少ない時間で大きな効果を得られるものばかりです。

銀行口座を使い分けてお金の流れと量を把握する

お金を効率的に貯める上で最初に行うべきは、銀行口座の複数管理です。

銀行口座が一つしか無いと、口座の中で生活費、固定費、貯蓄などが入り混じってしまうため、毎月何にどれくらいのお金をかけているのか、毎月いくら貯蓄できているのかを把握できません。口座は目的ごとにつくって管理していくべきです。

口座開設はとっても楽

複数の口座を解説するのは面倒くさそう、と思われるかもしれませんが、現代においては銀行口座の申込みはとっても楽に行なえます。

例えば、楽天銀行の場合、PCやスマホで必要事項を入力するだけで口座が解説できます。楽天銀行にかかわらず、ほぼすべてのネット銀行、都市銀行、地方銀行が、ネットで完結する口座開設申込に対応しています。

口座は3つが基本

口座の数は多ければ多いほどお金の流れを把握しやすくなる一方、あまり多すぎると口座管理が大変になるという一面もあります。

今まで複数の口座を扱ったことがないという場合は、とりあえず3つ口座を持つところから始めてみましょう。それぞれ「メイン口座」「貯蓄口座」「引き落とし口座」として扱います。

メイン口座は、給料の入金を受けるのに使います。給料が振り込まれたら、毎月一定額を貯蓄口座に振込み、残ったお金でその月を生活していきます。つまり、貯蓄を給料をもらったの直後にしてしまうのです。

人間というのは怠惰な生き物で、毎月余ったお金を貯蓄に回そうとしても、ついつい使いすぎてしまいます。最初に貯蓄を済ませてしまえば、それを防ぐことができます。

毎月自動で2~3万円ほど、メイン口座から貯蓄口座に振り込まれるようにしておけば、自然とお金がたまっていきます。通帳の額が増えていくのを見れば、モチベーションも維持できるはずです。

引き落とし口座は公共料金や家賃、クレジットカードの支払などの支払いに使います。給料が振り込まれたら、貯蓄口座にお金を入れた上で、毎月の見込み支出を予測して、引き落とし口座にもお金を入れます。足りないと困るので、少し多めに入れておくのがポイントです。

口座を作った直後に10万円~30万円ほど入れておき、常にそれくらいのお金が残るように調整していきましょう。

貯蓄が増えたら口座を増やそう

貯蓄が増えてきたら、口座を4つに増やしましょう。これまでは貯蓄口座として1つにまとめてきたお金を、定期預金と普通預金に分けるのです。

定期預金口座には、今すぐ必要でないお金を入れます。定期預金は普通預金よりも金利が高いので、効果的にお金を増やせます。一方、普通預金には急な冠婚葬祭や病気などの出費に対応できるだけの金額を入れておきます。

固定費を削るとあとは自動的にお金が貯まっていく

毎月の出費は原則として、固定費と変動費に分けることができます。固定費とは毎月の出費が一定、もしくはほぼ一定となる費用で、

  • 家賃
  • インターネットへの接続料金
  • 保険料
  • 水道光熱費
  • 習い事の費用

などが当てはまります。

一方、変動費とは毎月の出費にある程度の幅がある費用で、

  • 食費
  • 交際費
  • 交通費
  • レジャー費

などが当てはまります。

このうち、お金を貯める際に優先的に減らしていくべきなのは、固定費の方です。大抵の人は節約にあたって食費や交際費などの変動費を減らそうとするようですが、それは長続きしません。

変動費を減らすためには、継続的な努力が必要になることが多いからです。毎月毎月食費や交際費を切り詰め続けるのは疲れます。

一方、固定費は最初に引っ越しやプロバイダの乗り換え、保険の見直しなどをする必要がありますが、それを乗り越えてしまえば後は特に何も考えないでも節約ができるので、自然とお金がたまっていきます。

例えば家賃が1万円安いところに引っ越した場合、収入と他の支出を変えなければ自動的に12万円ずつ貯まっていきます。お金を貯めたいのならば、なるべく節約の余地が大きい固定費から減らしていくべきなのです。

人生の三大出費「住宅費」「保険費」「教育費」を見直そう

人生の中で特に総出費額が多くなるのは、「住宅費」「保険費」「教育費」の3つです。これらはいずれも固定費なので削れる幅が多いです。特に削りやすいのは住宅費と保険費の2つ。この2つ効率的に削るだけで、どんどんお金がたまっていきます。

家賃が割安な物件は各駅停車駅に多い

まずは家賃を安くする歩法を考えていきましょう。家賃は概ね部屋の広さと立地で決まります。立地とは簡単にいえばその土地の利便性のことで、周辺の商業施設や公共施設の充実度、駅からの距離、都心部へのアクセスに係る時間などが絡み合います。

家賃に回すお金を多くすれば当然より快適な家に住めますが、家賃をある程度下げても十分快適な家は見つかります。特に近年、家賃相場は下落傾向にあるので、それを利用しない手はありません。

とはいえ、家賃を優先しすぎて周りに何もなく、駅まで1時間以上というような物件に住んでしまうと、今度はまともな生活ができなくなってしまいます。立地と家賃はトレード・オフの関係にあり、どこで妥協するかが最大のポイントになります。

もしあなたが東京23区や横浜市・大阪市の都市部など、比較的公共交通に恵まれているところに住んでいる場合は、各駅停車しか止まらない駅が最寄駅の物件を探すといいでしょう。急行や特急が停まる駅と比べると、かなり家賃相場は低めに設定されているからです。

例えば、HOME’Sによれば、中央線の国立駅(各駅停車しか止まらない駅)と立川駅(一番早い通勤特快まで停まる駅)では国立駅のほうが東京都市部(新宿、東京方面)に近いにも関わらず、家賃相場は1K、1DK、2DKなど、多くの形体で立川駅のほうが家賃相場が高くなっています。

つまり、国立駅周辺の物件は総合的に見て割安といえるわけです。このような関係は国立駅と立川市に限った話ではなく、都市部ではよく見られます。

もちろん立川駅のほうが早い電車が出ている分便利で、新宿や東京へのアクセスも便利なのですが、時間差などせいぜい数分の話です。

国立から新宿方面行きの電車に乗っても、2つ先の国分寺駅で急行は通勤特快に乗り換えられるので、実質的な所要時間にはほとんど差がありません。このようなことを考えれば、各駅停車しか止まらない駅の周辺は大いに狙い目であるといえます。

駅徒歩10分をちょっとだけ過ぎた物件が狙い目

他の条件が全く一緒だと仮定した場合、基本的に駅から近いほど家賃が高く、遠いほど安くなります。しかし、家賃は駅からの距離に合わせて一定のペースで下がっていくというわけでもありません。

人間の心理として、徒歩10分を超える物件は避ける傾向があります。徒歩9分も11分も実質的にはほぼ同じようなものなのですが、徒歩9分の物件は徒歩11分と比べて明らかに人気が高く、家賃も高いのです。

逆に考えれば、徒歩11分の物件は駅からの距離の割には家賃が低いので、固定費削減にはもってこいということになります。

一般的に駅から10分以上の物件は余り人気もないので、大家との交渉次第でさらに家賃を下げることも可能です。若くて健康なうちはある程度歩いたほうがいいですし、あまり駅から近すぎない物件を探したほうがいいかもしれません。

地方の場合は駅からの距離はほとんど家賃に影響がない

なお、自動車での生活が前提になっている地方の場合は、駅からの距離が家賃に影響をあたえる影響は限定的です。住民は普段から自動車を使うので、駅から近いとか遠いとかは余り気にしないからです。

こういった地域では、逆に駅から近い物件のほうが割安に感じられることもあります。徒歩3分でも20分でも家賃が1000円ぐらいしか変わらないのでしたら、駅周辺部の市街地に気軽に出られる前者のほうがお得ですし、ガソリン代も節約できます。

家賃は交渉次第で安くできる

家賃は交渉次第で下がることがあります。むろん、交渉が決裂すれば家賃は下がりませんが、交渉するだけの価値はあります。仮に1ヶ月の家賃を3000円安くすることができれば、それだけで3万6000円の貯金ができます。

家賃の交渉の適切なタイミングはこちらの立場が有利にある時、つまりは入居前と更新時です。入居前はオーナーの方もなんとしても入居してほしいと思っているので(他に借りたい人間がゴロゴロ居るというのならば別ですが)、ある程度の家賃下げには対応してくれることが多いです。

更新時は物件の経年落下を理由に家賃の引き下げ交渉がしやすく、また決裂しそうな時は出ていくと脅しを掛けることができるので、こちらもおすすめです。

入居中の交渉は決裂しても引っ越しがしづらい(物件によっては違約金が取られる可能性があり、せっかく払った更新料が無駄になってしまう)ので、避けたほうが懸命です。

また、交渉では余り大きな引き下げをふっかけないことも大切です。交渉にハッタリは必要ですが、それにも限度があります。家賃5万~6万円程度の物件でいきなり1万円の減額を要求しても、まともに取り合ってもらえないことが多いでしょう。減額幅は最大でも家賃の5%程度に収めておいたほうが無難です。

住宅ローンは繰上返済や借り換えで大きく負担を減らせる

今度は賃貸ではなく持ち家に住んでいる場合について考えます。すでに住宅ローンを支払い終わっている場合は問題ありませんが、そうでない場合は毎月の住宅ローンが家計にとって大きな負担になります。これを減らすことができれば相当スムーズに貯金ができるようになるでしょう。

住宅ローンは交渉で下げることができませんし、減らすのは不可能だと思われるかもしれませんが、実は減らす方法があります。繰上返済や、借り換えを行えばいいのです。

繰上返済で将来の利息を減らす

繰上返済とは、毎月決められている額とは別に、追加で住宅ローンを返済することです。例えば、毎月10万円を返すという契約をしている場合、ある月に15万円返せば、その内5万は繰上返済に充てられます。

繰上返済の良いところは、全額が元本に当てられるところです。例えば前述の例では、毎月返済している10万円のうち、一部は利息の返済に当てられます。そのため、なかなか元本が減っていかず、それが余計な利息を生むことにつながります。

一方、繰上返済に当てられた5万円のほうはすべてが元本に当てられるため、元本が一気に減り、将来発生する利息を大幅に減らせます。

繰上返済には「期間短縮型」と、「返済額軽減型」があります。期間短縮型は繰上返済を行った分だけ、返済期間自体を短縮するという方法です。返済期間が短縮されるので、大幅に将来の利息の支払いを減らすことができます。

一方返済額軽減型は、返済期間は変えず、繰上返済以降の毎月の支払額を軽減するというものです。返済期間が変わらないので利息の減少幅は少なくなりますが、繰上返済を行って以降の支払いが楽になるため、家計が安定します。どちらも一長一短ですので、自身の家計の余裕に応じて選ぶといいでしょう。

繰上返済の注意点

繰上返済は将来発生する利息を減らせるというメリットがある一方で、現時点での手元の資金が減ってしまうというデメリットもあります。

繰上返済をしてしまったばかりに手元の資金がなくなり、生活ができなくなってしまい、金利の高いカードローンを利用するような事態に陥らないように気をつけましょう。繰上返済は、必ず余裕資金で行ってください。

また、金融機関によっては繰上返済自体に手数料がかかることもあります。ネット銀行は繰上返済を無料にしているところが多いですが、都市銀行などだと1万円~5万円程度の手数料がかかることもあります。

繰上返済額の大小にかかわらず手数料は一定になることがほとんどなので、なるべく一度にまとまった額を返済したほうが手数料の実質的な負担が少なくなります。もちろん、手数料が無料の場合は細かく返済しても一向に構いません。

ただし、住宅ローンの種類によっては繰上返済額に下限が設定されていることもあります。特にフラット35は下限額が100万円以上とかなり高めに設定されているので、注意が必要です。

住宅ローン控除の適用について

また、繰上返済によって返済期間が10年未満になった場合、住宅ローン控除が受けられなくなり、税金の支払額が多くなります。

住宅ローンの利息が減っても税金が増えてしまっては効果が薄くなります。他に何かローンを借りている場合は、そちらを優先的に変えした方がいいでしょう。

借り換えで総支払額を減らす

住宅ローンの金利は金融機関や住宅ローンの種類によって異なります。当然、少しでも金利が低いところで借りたほうが毎月の支払額、総支払額ともに少なくなるので有利です。

住宅ローンの金利はどこも低く見えるため、どれを選んでも差がつかないように見えますが、元本が大きいため1.0%違うだけで返済額には大きな差が付きます。

例えば、元本3000万円、返済期間30年、固定金利とした場合、金利が1.0%だと総支払額は約3474万円になりますが、2.0%だと約3991万円になります。金利が1.0%違うだけで、総支払額に500万円以上の差がつくのです。このことを考えると、住宅ローンの金利は0.01%でも低いところで借りたほうがいいということになります。

現在すでに高めの金利の住宅ローンを契約してしまっているという場合は、住宅ローンの借り換えを行うことによって、総支払額を効果的に減らすことができます。

借り換えには手数料がかかる

住宅ローンの借り換えには、保証料や登記費用などの手数料がかかります。いくら掛かるかは借入金額や返済期間に左右されますが、30万円~60万円程度の費用は見積もっておいたほうがいいでしょう。

特に元本が多い場合はその分手数料も高くなります。元本が多ければ総支払額圧縮効果も高いのですが、手数料はまとめての出費になるため注意が必要です。

借り換え先の金利は固定と変動、どちらを選ぶべき?

住宅ローンの金利は大きく固定金利と変動金利に分けることができます。固定金利とは当初金利が返済終了まで続くというもので、借りた時点で総返済額が決まります。

一方、変動金利はその後の経済情勢に応じて金利が上がったり下がったりする可能性があるもので、借りた時点では総返済額が決まりません。

変動金利の当初金利は固定金利の当初金利より低く設定されていますが、金利が上昇した場合は変動金利のほうが総支払額が大きくなってしまうこともあります。

変動金利には金利が見直されても5年間は毎月の返済額が変わらな「5年ルール」と、5年毎の見直しの際に新しく決まる返済額はそれまでの1.25倍までにしかならないという「1.25倍ルール」があるため、いきなり毎月の返済額が大きくなることはありませんが、そのかわり返済期間が伸び、返済利息が大きくなるリスクも孕んでいます。

金利に関する予測は色々ありますが、いずれも予測に過ぎません。予測が外れても誰も責任を取ってくれません。固定金利と変動金利はどちらが得か、を考えるのは時間の無駄です。固定金利は総支払額がすぐにわかりますが、変動金利は最後まで総支払額がわからないからです。総支払額がわからない以上、比較は絶対に不可能です。

したがって、金利パターンは得か損か、という観点から離れて選ぶことになります。

まず、金利変動のリスクを取りたくない、金利が上昇した場合に払える余裕がないという方は、固定金利を選んだほうがいいでしょう。固定金利は最初に総支払額が決定するので、その後市場金利がどれだけ上がろうが、あるいは下がろうがその影響を無視できます。

逆に、金利変動のリスクを取れる、仮に金利が上昇しても問題なく返済できるという見込みがある方は、変動金利を選んだほうがいいでしょう。

仮に金利が上がらず、もしくは下がり、固定金利よりも総支払額を少なく抑えられれば万々歳ですし、仮に金利が上昇してしまっても返済できるので問題ありません。どっちに転んでもとりあえずはセーフになります。

また、自身の性格から選ぶという手もあります。変動金利は世の中の金利の動向に常に気を配らなければならないので、結構疲れます。

そんなつまらないことを意識するのは面倒だ、多少高い利息を払うことになってもいいからそんなことは考えたくないという場合は、固定金利を選んだほうがいいでしょう。逆に世の中の流れに応じて積極的に対策を考えていきたいという方には、変動金利がおすすめです。

保険は思ったほど必要ない!?

さて、今度は保険費を考えていきましょう。保険料は毎月少しずつ出費していくので余り負担している感じがありませんが、生命保険文化センターによれば、平成24年時点での1世帯・1年間あたりの平均保険料は41万5500円です。

これは平均であり、例えば5人家族と単身世帯では大きく違うので一概には言えませんが、皆思ったよりも高額な保険料を支払っているのは間違いありません。

支払っている額が大きいということは、それだけ削る余地が大きいということでもあります。保険の適切な見直しによって、毎月の負担を大きく減らせます。

私的保険は公的保険では賄えない部分をカバーするもの

保険には公的保険と私的保険があります。公的保険とは公的医療保険(社会保険・共済保険・国民健康保険など)や年金保険(厚生年金・国民年金など)などの公的な保険制度、私的保険は民間企業が提供する生命保険です。

批判の対象になることも多い日本の福祉制度ですが、実は日本の公的保険は世界的に見てもかなり優秀で、様々な場面で利用が可能です。

例えば、日本では病院にかかったときには原則医療費を3割負担するだけで済みますが、これは国民が原則公的医療保険に加入することを義務付けられているからです。このような制度がない国では公的保険料がかからない代わりに、病院にかかった場合は全額医療費を自己負担しなければなりません。

また、会社員が業務が原因となる怪我や病気を負った場合は、労働者災害補償保険(労災保険)で保険金を受け取れます。保険金は原則として働いていた期間の賃金の80%が支給される他、その怪我や病気の治療費用も全額支給されます。

労災は原則、1年6が月間受け取れます。その時点でその病気や怪我の等級が第1級~第3級に該当すると判断された場合は、労災は止まりますが代わりに傷病補償年金という年金が受け取れるようになります。その等級に該当しないと判断された場合は、そのまま労災が受け取れます。

失業した場合は、一定の期間(勤務年数などによってことなる)の間失業保険を受け取ることができます。給付額は原則として働いていた期間の賃金の66%です。

また、公的年金保険は高齢者になった場合は年金を受け取る制度であると考えられがちですが、実は障害を負った場合や、一家の家計の担い手がなくなった場合にも年金が受け取れることがあります。前者を障害年金、後者を遺族年金と言います。

これらの制度を考えると、一般の会社員や公務員は民間の保険にはそれほどたくさん入る必要はありません。そんなことをしなくても、公的保険でかなりの部分がカバーされるからです。

とは言え何も入らないというのはやや危険ですし、自営業者の場合は公的保険でカバーされる範囲が少ないのでより自己防衛に努めなければなりません。

生命保険は遺族年金などの公的保険も考慮して決める

生命保険は、自分自身が亡くなった時に、家族にお金を残すための保険です。現時点で配偶者に稼ぐ能力が十分にある、もしくは配偶者や子供がいない場合は、特に必要ないでしょう。

もし養うべき相手がいる場合も、遺族年金でもらえるぶんは考慮したうえで必要額を計算し、それに見合った保証をつけるべきです。自営業者は会社員や公務員よりも遺族年金が少なくなるので注意が必要です。ただし、どのみち若くして死ぬことはめったになく、万が一の際にも遺族年金で結構カバーできるので、大きすぎる補償は不要です。

医療保険は健康で貯蓄があれば最低限でOK

医療保険は入院した際に、その期間に応じてお金が受け取れる保険です。先進医療特約などがついてくることもあります。近年は入院期間が短くなっているので、医療保険の効果自体も小さくなってきています。

貯蓄が数百万もあれば大抵の病気には対応できるはずですので、こちらもあまりたくさん入る必要はありません。特に健康な人はめったに入院せず、入院してもすぐ退院できるので、過剰な補償は一切不要です。お守り程度に掛け捨てのものを掛けておけばいいでしょう。

がん保険はがん家系の人ならば一考の余地があります。がんの治療費は相当高額であり、数百万ではまかないきれないことも少なくないので、心配ならば入っておくべきです。若いうちから入っておけば、総支払保険料を少なくできます。

年金保険・学資保険

年金保険や学資保険は貯蓄性の保険で、予め利率が決まっている事が多いです。利率が決まっているのでインフレに弱く、肝心の利率もあまり高くはないなど、投資としては優秀とはいえません。

それなりに投資の知識がある人は自分でNISA口座を開設して運用した方がいいですし、投資が嫌ならば流動性の高い貯蓄で賄おうとしたほうが効率的です。

自動車保険は対人・対物無制限の任意保険が絶対に必要

一部の損害賠償請求権は、自己破産をしても消えることがありません。どんなことをしても払い続けていく必要があるのです。

したがって、自動車保険は対人・対物ともに無制限が基本です。賠償金付で一生お金がまともに使えなくなったら困るからです。車両保険は車両自体の価値があまりない時はつけないでも構いません。

保険プランナーに見直しを頼もう

どの保険が無駄なのかわからない時は、「ほけんの窓口」などのプランナーに相談することをおすすめします。彼らに相談すれば、適切な保険の掛け方がわかるはずです。特に現時点で保険料の負担を強く感じている方は、一刻も早い見直しをした方がいいでしょう。