「行きたくない、でも休めない・・・」仕事中の吐き気にはどんな対処法がある?

仕事中に繰り返し襲ってくる吐き気を我慢するのは、本当に大変です。

風邪や胃腸炎といった治療と休養で治るものであれば、数日~1週間の休みをもらえればすっかりよくなるでしょうが、精神的な負担が関係しているならそうもいきません。

症状の現れ方は人それぞれですが、中には仕事以外では何ともない、休むという連絡をいれたらすーっと吐き気が消える場合もあります。そうなると、嘘をついているかのような罪悪感を溜め込んでしまいます。

さらに、仕事中の吐き気に悩まされている人の多くは、頭痛や胃痛、嘔吐、下痢、めまい、食欲不振、倦怠感といった別の症状も同時に襲ってきますから、一日一日やっとの思いで働いているのでしょう。

こうした症状は、調べなくてもストレスと深い関わりがあることは明らかですが、仕事中の吐き気とはどう付き合っていったら良いのでしょうか。その対処法についてお話します。

吐き気は「止まれ」のサイン!放置するとこんな問題が起こります

どんな苦難も、決して屈しないという強い心があれば乗り越えられる・・・の精神論で、次から次へと課題をクリアしていく人がいたとしたら魅力的に映るでしょう。ドラマの主人公には、こうしたタイプが多いです。

ただ、自分もそうでありたいと憧れを持つならまだしも、根性がないとダメな人間だと思ってしまうのであれば、苦しみの連鎖は断ち切れません。

病気など身体面に問題がなく、会社へ行くと決まって吐き気が繰り返し起こるという症状は「心因性嘔気症」と呼ばれるものかもしれません。

心因性嘔気症とは

吐き気の原因が身体にあるのではなく、抱えきれないストレスがあって吐き気がすること。大人に多く見られ、不安や緊張感が高まった時だけではなく、本人に自覚がなくてもこの症状は現れる

威圧的な上司がいる、やりたくない仕事に回されたなど、職場で強いストレスを感じると、体に異常がないにもかかわらず、吐き気が症状として現れます。

他には、過去のトラウマが関係しているケースもあります。たとえば職場で吐いた、もしくは吐き気がした経験を忘れられず、職場に来ただけで不安や緊張感でいっぱいなってしまうというものです。

心因性嘔気症は、ストレスが原因であると自覚している人は多いですが、中には大きなストレスを抱えていることに気付いていない人もいます。思い当たる部分がないのに吐き気を繰り返すという状況も、非常に辛いことだと察します。

心因性嘔気症が疑われる時点で、自分が思っている以上のストレスを抱えていると思って、できるだけ早く対処していく必要があります。

ストレスが蓄積していくと、こんな不調が・・・

誰でもある程度のストレスとは付き合っていかなくてはいけませんが、限度を超えてしまうと心因性嘔気症だけではなく、こんな症状が現れることも・・・。

・睡眠リズムが変わった(寝つきが悪い・すぐに目が覚めてしまう・夢をよく見るなど)
・体調不良が長く続いている(頭痛・肩こり・腹痛・耳鳴り・倦怠感など)
・疲れやすいなと感じるようになった
・体を動かしていないのに動悸がする
・前より怒りっぽくなったと感じる
・暑くもないのに、手のひらやわきの下に汗をかきやすい
・過去の失敗や嫌なことを度々思い出しては自己嫌悪に陥ってしまう
・NOとは言えない性格だと思う
・趣味を楽しめない
・食事を美味しいと思えない
・以前と比べて身だしなみに気を使わなくなった
・感動したり泣いたり笑ったりなど、心が揺さぶられることがなくなった
・食事量が増えた、もしくは減った
・酒やタバコが増えた
・自分は一人なんだ・・・と孤独感でいっぱいになる
・疲れを翌日に持ち越してしまう
・忘れっぽくなったと思う
・皮膚がやたら痒いと感じる
・女性は生理周期のバランスが崩れる
・治ったと思ったら風邪をひく・・・と繰り返している
・朝起きるのがとにかく辛い

ストレスには鈍感であっても、上のような体調や生活リズムの変化は気付きやすいでしょう。いつもと違う・・・と思ったら、安易に考えてはいけません。

始めは勤務中だけの吐き気だけだったのに、放っておいたら吐き気だけではなく、嘔吐を伴う場合もあります(心因性嘔吐症)。

更に悪化すると、仕事をしている場面や職場を思い出すだけでも吐き気を誘発するようになったり、うつ病など深刻な病気になってしまうこともあります。

ちなみに、心因性嘔気症はスピリチュアルの視点だと次のように解釈するようです。

・消化しきれていない思いがある
・人、もしくは何かに人生を脅かされている
・人、もしくは何かに反感や恐れがある

仕事中の吐き気は「無理してますよ」という、心と体からのメッセージですから、絶対に無視してはいけません。

心因性の吐き気を和らげるための応急処置4個

これからお話するのは応急処置についてです。吐き気がいつ起こるのか不安、ここぞという場面で吐き気に邪魔されたくないという時に覚えておくと役立つと思います。

根本的な解決策ではありませんので、長期的に考えるのであればやはりストレスとどう向き合うかが大切になってきます。

①他へ意識を向けるようにしてみる

吐き気に意識を向けてしまうと、どんどん悪化していくでしょうし、症状が長期に渡って続くリスクもあります。

そこでやってみて欲しいのが、他へ意識を向けるというものです。

・体の部位(顔・足・手等)に意識を向ける※吐き気以外で
・好きな歌の歌詞や詩を暗唱する
・学生時代の楽しかった思い出を振り返る
・休日はどう過ごそうか予定を立てる 等

これは「注意分散法」と言われる方法で、他を意識することで吐き気を抑える効果が期待できます。

心因性嘔気症であれば、身体的な問題があるというわけではないので、気を紛らわすことで、吐き気の症状が和らぐことも多いです。

②深呼吸をしてみる

自覚はないかもしれませんが、人はストレスを感じると呼吸が浅くなります。

呼吸が浅いとストレスや疲れがより蓄積されていき、はっきりとした理由はないのに漠然と不安で仕方ないという気持ちになってしまいます。

そこで意識的にやってほしいのが深呼吸です。

・お腹を膨らんでいることを意識しながら、鼻から息を吸う
・3秒ほど息を止める
・お腹を凹ませつつ、口から細く長く息を吐く

息を吸っても、しっかり吐くのは意外にできていない人が多いですから、時間をかけて吐くことを意識してみてください。

深呼吸は、心因性嘔気症の改善が期待できる他、熟睡できますし、血圧を下げたり、疲労回復にも繋がります。

仕事中でも気軽に試せる方法なので、日常的に取り入れるよう心がけてください。

③ツボ押しをしてみる

ツボ押しも一時的に効果があります。仕事中でも気軽にできるのでぜひ覚えておいてください。

ツボ部位方法
関衝(かんしょう)手の薬指。小指側の爪の生え際にあるちょうど気持ちいいくらいの強さでゆっくりと押す。胃腸が弱い人にもおすすめ
内関(ないかん)手首を曲げた時にできる最も濃いシワから指3本分のところにある筋の間を人差し指の先を使って押し込むように刺激する。胃の不快感、乗り物酔いにも効果あり

ツボ押しの際には、深呼吸をして心を落ち着けてから行うようにしましょう。

④薬に頼ってみる

毎日のように服用するのはおすすめできませんが、時には吐き気止めの薬に頼るのも良いでしょう。用法・用量はしっかり守ってください。

ただ「薬がないと吐き気が治まらない」と思い込んでしまうリスクはあります。副作用の心配もありますし、連続しての服用は気をつけてください。

ちなみに即効性はありませんが、副作用が起こりにくい、長期間服用しても負担が少ないという点では漢方薬もおすすめです。

心因性嘔気症の場合、半夏寫心湯(ハンゲシャシントウ)や柴芍六君子湯(サイシャクリックンシトウ)を服用することで一定の効果が期待できます。

漢方薬はドラッグストアでも購入できますが、専門家に相談したほうがよりあなたに合ったものを処方してくれるので、一度相談してみてはいかがでしょうか。

【注意】無理に吐いてはいけません!

責任重大な仕事を任された時は、当然万全な状態で挑みたいですから、吐き気はとても邪魔な存在になります。

いっそのこと吐いてしまえばスッキリするかも・・・という応急処置をやっている人もいるかもしれませんが、嘔吐する兆候はないのに無理に吐こうとするのは避けるべきです。

本来、喉は逆流しないように、弁のような構造になっています。吐くという行為は、その弁を無理やり開けて、出すことになります。

それは、胃だけの力ではできず、筋肉や横隔膜を使わなければならないほど、強い力が必要であり、体に大きな負担をかけている状態なのです。

吐くことが日常になってしまうと、こんな問題が起こります。

・水分の調整に必要な電解質(ナトリウムやカリウム等)が損なわれる
・摂取した栄養素が十分に吸収できない
・体に負担をかける事で肉体的な疲労が溜まる
・胃酸による喉の炎症を起こす
・胃酸によって歯が溶け、虫歯になる

吐き気を止めるために、無理やり吐くというのが習慣化してしまうと、体の負担は大きくなりますし、摂食障害になってしまうリスクもあります。

心因性嘔気症は、吐くことでは解決できないのです。

周囲の理解が得られず、辛い思いをすることも・・・

たとえ繰り返し吐き気に襲われたとしても、吐くまではいきませんし、病院で調べてもらってもこれといった病気は見つからないので、周囲からはなかなか理解してもらえません。

中には、仮病ではないか、甘えによるものだろう・・・と、受け止める人も少なくありませんし、本人ですら気のせいだと思い込もうとしてしまいます。

これが精神的な不調の怖いところです。

本来であれば、精神的な負担をできるだけ減らしたり、お手洗いから近い席を用意したり、休息を取らせたりといった会社側のサポートが必要です。

吐き気は安心できる場所では起こりません。会社は助けてくれるから大丈夫・・・と思える環境であれば、症状の緩和も期待できるのです。

ですが、本人がSOSを出せず、周囲も問題の深刻さに気付けないために、症状の悪化や別の病気を引き起こしてしまうリスクを抱えることになってしまいます。

心因性嘔気症の新たな問題

心因性の吐き気で10年以上も悩まされる人は希だといわれています。

なぜ早く改善できるのかは、医学的に解明できてはいませんが、年齢を重ねていくと、精神的に成長し安定するからではないか?というのがが、今のところ有力です。

ずっとこの苦しみが続くわけではありませんから、深く悩み過ぎず明日に希望を持って、一日一日を過ごしていきましょう。

ただ、くれぐれも気をつけて欲しいことがひとつあります。

それは、心因性嘔気症がきっかけで、別の病気を引き起こすかもしれないということです。

ストレスを抱えたことで心因性の吐き気に悩まされ、繰り返す吐き気により強いストレスを感じるという悪循環に陥ってしまいます。

たとえ、心因性嘔気症自体は早い改善が見込まれたとしても、吐き気がきっかけでうつ病や摂食障害といった、場合によっては一生付き合っていく病気になってしまうケースもあるのです。

ですから、我慢していればいずれは治ると考えずに、早い段階で専門的な治療を受けることをおすすめします。

治療は、必要に応じて薬物療法を行ったり認知行動療法、カウンセリングを受けるといった内容になります。

吐き気にとらわれない生活を目指そう

心因性の吐き気を毎日繰り返してしまうと、あなたと吐き気の結びつきがどんどん強くなっていきます。

はじめは会議の時だけ吐き気がしていたのに、いつの間にか会社にいるだけで症状が現れたり、会社にいることを想像するだけでもダメだ・・・と悪化していくのです。

この悪循環を断ち切るには、吐き気を思い出さない時間を大切にすることが最も重要になります。友達と遊ぶ時間を作る、趣味に打ち込む、思い切り笑えるテレビ番組を観るなど、何でも良いので時間を忘れて楽しめることを探してみてください。

専門的な治療を受けてサポートしてもらいながら、吐き気にとらわれない生活を目指していきましょう。

すると、多少の吐き気には動じないようになりますし、それが自信となって心の安定を得られ、さらに吐き気の影響が小さくなっていきます。

1日、3日、1週間、1ヶ月・・・と、吐き気にとらわれないベスト記録を更新していくことを目標にしてください。

【根本的な対処法】環境を変えて吐き気と決別する

心因性嘔気症の改善には、専門的な治療を受けつつ、吐き気を忘れる時間を増やしていくことがカギだとお話してきました。

そこで、ここでは吐き気を忘れる時間について考えていきましょう。

吐き気を忘れるには、ストレスや疲れによって失われていった自信を取り戻していくことが大切です。

疲れは、十分な睡眠と栄養バランスの取れた食事、適度な運動や、趣味に没頭するといった日常生活を改めることで良い変化が見られるようになります。

まずは疲れを翌日に持ち越さないよう心がけましょう。

そして、自力での解決がなかなか難しいのが、職場でのストレスを根本的になくすということです。

多くの場合、すぐにどうにかできるものではありませんし、職場の人間関係、労働時間、給与待遇など、あなた一人の働きかけでは難しいことばかりです。

今の時代は男女問わず、できる限り働き続けたいと思う人は多いですが、私たちの目的はあくまで働き続けることであり、今の会社に居続けることが絶対ではありません。

吐き気を誘発してしまうほどにストレスが溜まっているのなら、今の会社はあなたには合っていないということ。

もっと活躍できて、働きがいのある職場はいくらでも見つかります。

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世の中の広さを感じると、今の会社で本来の能力を活かせず吐き気に悩まされている状況を、何てもったいないことかと客観視できるようになります。

そのまま踏ん張り続けることが正しいことのように諭してくる上司もいるでしょうが、あなたの人生はあなただけのもの。

正しくないかそうでないかも、最終的な決断はあなたにしかできません。

繰り返しますが、心因性嘔気症で最も怖いのは、症状の長期化、悪化により別の重大な病気を引き起こすリスクがあるということです。

吐き気の悩みや、新たな病気のリスクを抱えてまで、今の会社で働く価値とは何でしょうか。

転職したい気持ちはあっても、あと一歩の勇気が出せずにモヤモヤした気持ちを抱えて働く人は本当に多いです。

心因性の吐き気は、そんなあなたの背中を押してくれているのかもしれません。