カードローンの金利には固定金利型と変動金利型があります。固定金利型を選んだ場合、何があろうと最初から最後までずっと金利は変わりません。一方、変動金利型を選んだ場合は、経済情勢によって金利が上がったり下がったりします(もちろん、変わらないこともあります)。
現代日本ではどちらかと言うと固定金利型のほうが人気があり、変動金利型のカードローンはややマイナーな存在ですが、最近は銀行を中心に変動金利型のカードローンも少しずつ広まりつつあります。
固定金利型も変動金利型もそれぞれメリットとデメリットがありますが、当サイトではカードローンの場合は(2017年12月現在の環境では)変動金利をおすすめしています。今回の記事では固定金利型と変動金利型の仕組み、メリットやデメリット、使い分け方などを解説いたします。
目次
変動金利型カードローンの金利はどのように変動する?
固定金利型と変動金利型のメリットやデメリットについて論じる前に、変動金利がどのように変動するかを軽く解説します。
変動金利の金利の決まり方
変動金利の基準となるのが、短期プライムレートです。短期プライムレートとは、金融機関が優良企業(財務状況が良い、業績が優秀な企業)に対して短期(1年以内)でお金を貸し出す時の優遇金利のことです。
金融機関は返せる見込みがある優良企業に対しては低金利でお金を貸し出すため、短期プライムレートは低いです。高度経済成長期やバブル期には8%を越えた事もありましたが、現在は1.5%程度です。
短期プライムレートが高くなれば変動金利も上がり、短期プライムレートが低くなれば変動金利も低くなる、という仕組みになっています。通常は4月と10月の年2回見直しが行われます(見直しが行われた結果、金利が変わらないこともあります)。
では、短期プライムレートはどのように決まるのでしょうか。短期プライムレートは金融機関同士がお金を貸し借りする際の「市中金利」に連動します。そして、その市中金利をコントロールするのが政策金利です。政策金利とは中央銀行(日本の場合は日本銀行)が民間銀行に対してお金を貸し出す際の金利のことです。
政策金利が上がると市中金利が上がり、市中金利が上がると短期プライムレートも上がり、カードローンの変動金利も上がります。
逆に政策金利が下がると市中金利下がり、市中金利が下がると短期プライムレートも下がり、カードローンの変動金利も下がります。いろいろな種類の金利を経由しますが、基本的には政策金利とカードローンの変動金利が連動すると考えてください。
では、政策金利はどのようなときに上がり、どのようなときに下がるのでしょうか。これについてはご存じの方も多いかと思いますが、不景気のときには政策金利を下がります。
政策金利が下がると銀行が民間企業に対して低金利でお金を貸し出せるようになるので各企業の借り入れが増え、新たな投資や雇用が生まれ、不景気が改善されます。
逆に好景気が加熱しているときには政策金利を挙げます。政策金利を上げれば銀行が民間企業に対して低金利でお金を貸し出せなくなるので各企業の借入が減り、無謀な投資やバブルを防げます。不景気ならば低金利に、好景気ならば高金利に動くと考えていただければ、だいたい間違いないでしょう。
変動金利の3つのルール
変動金利だと急に好景気になった場合際限なく金利や毎月の返済が膨らんでいくのではと思われるかもしれませんが、実際にはそのようなことはありません。変動金利で借りた人が返済に行き詰まらないように、3つのルールが定められているからです。3つのルールとは、具体的には以下のルールのことを指します。
- 5年ルール
- 125%ルール
- 上限金利
5年ルール
5年ルールとは、金利が変動しても5年間は毎月の返済額を一定に保つというルールです(元利金等返済の場合のみ)。金利の見直しが年2回行われるのに毎月の返済額が5年に1回しか変わらないのはおかしい、と思われるかもしれませんが、元本と利息の割合を変更すれば、金利の変更にも対応できます。
毎月返済しているお金は、元本部分の返済と利息の支払いに振り分けられています。例えば毎月1万円返済していたら、そのうち9000円が元本の返済に当てられ、残りの1000円が利息の支払いに充てられるといった感じです。
金利が上がった場合は、8800円を元本の返済に当て、残りの1200円を利息の支払いに当てます。逆に金利が下がった場合は例えば9200円を元本の返済に当て、残りの800円を利息の支払いに当てます。このような調整をすることによって、金利上昇に伴い急激に毎月の支払額が増えるのを防ぎます。
ただし、金利が上昇し毎月の返済額における利息の割合が増えれば、当然元本の減りは遅くなります。元本の減りが遅くなれば支払利息は増え、返済期間は伸びます。毎月の支払額は変わらなくても、返済総額は増えます。これを防ぎたい場合は、積極的に繰り上げ返済を行うべきでしょう。
125%ルール
125%ルールとは、5年が経過して毎月の支払い額が見直せるようになった場合、見直し後の毎月の支払額は見直し前のそれの125%(1.25倍)までにしなければならないというルールです。
例えば現在毎月1万円返済している場合、5年が経過しても毎月の返済額が1万2500円を超えることはありません。このルールがあるため、5年が経過しても過剰に毎月の支払額が増えることはありません。
しかし、金利が急激に上昇したにも関わらず毎月の返済額が少ししか増えなければ、やはり元本の減りは遅くなります。元本の減りが遅くなれば支払利息は増え、返済期間は伸びます。やはりできる範囲で繰り上げ返済を行い、元本を積極的に減らしていくべきです。
上限金利
金融機関が融資を行う場合、その金利は法律で定められた上限金利を超えてはいけないことになっています。上限金利を決める法律には利息制限法と出資法があります。
利息制限法はお金を貸し借りする際の金利の限度を定めた法律で、個人間の貸し借りにも適用されます。一方、出資法は貸金業者を規制するための法律で、貸金業者との貸し借りにのみ適用されます。
利息制限法を超える金利は無効であり、出資法を超えた場合は貸金業者が刑事罰の対象になります。
利息制限法による上限金利
元金 | 金利 |
---|---|
10万円未満 | 20.0%まで |
10~100万円未満 | 18.0%まで |
100万円以上 | 15.0%まで |
出資法による上限金利
元金 | 金利 |
---|---|
金額に関係なく | 年20%まで |
金利の上限を定める法律が2つあってよくわからないと思われるかと思いますが、まともな金融機関は必ず両方の上限金利を守って貸出しています。万が一これを超える金利を請求された場合は、金融庁などの行政機関、あるいは弁護士に相談しましょう。
固定金利のメリット・デメリット
固定金利のメリットは、契約時に毎月の返済額や総支払額が決定することです。借入の時点で正確な返済計画を立てやすいのは大きなメリットと言えます。将来どれだけ金利が上昇しようが、固定金利ならば関係ありません。
一方、デメリットは変動金利と比べると最初の金利が高いことが挙げられます。固定金利はいわば金融機関側に金利変動リスクを飲ませる仕組みですので、その分金利自体が高くなってしまう傾向があるのです。
また、固定金利の場合、本来ならば金利が下がる局面でも金利は固定されっぱなしです。金利が変わらないのはメリットばかりではないのです。
変動金利のメリット・デメリット
変動金利の最大のメリットは、最初の金利が固定金利と比べて高いことです。変動金利は自ら金利変動のリスクを飲み込む仕組みですので、その分金利が低くなるのです。また、変動金利は将来金利が低くなる可能性を秘めています。
デメリットは金利が上昇する可能性があることです。金利が上昇しても前述の3つのルールにより返済額が急に増えることはありませんが、金利が高くなれば最終的な支払額は当然増えます。
固定金利と変動金利、結局どっちがお得なの?
近年、短期プライムレートは非常に低い水準で推移しています。これだけを見れば、将来短期プライムレートは将来的に上昇する可能性が大きく、したがって変動金利も上昇する可能性が大きく、となれば固定金利のほうが良さそうに見えます。
しかし、このような言説はかなり前からありました。その時から短期プライムレートは上がる上がると言われていたのですが、結局2009年以降短期プライムレートは変動していません(日本銀行のデータより)。
こちらを見れば変動金利は今後も上昇せず、したがって変動金利のほうが良さそうに見えます。一体どちらを選んだほうがいいのでしょうか。
最終的にはあくまでも自己責任になりますが、カードローンの場合は基本的には変動金利をおすすめします。理由は以下の2つです。
- 返済期間が短いので、金利が変わる前に返済しやすい
- 金利がもともと上限金利に近いので、上がる余裕が小さい
返済期間が短いので、金利が大きく変わる前に返済しやすい
カードローンの返済期間は、通常は1年以内、長くても5年以内に終わる事がほとんどです。ジャパンネット銀行の調査によれば、カードローン利用者の6割は1度あたりの借入金額が10万円以下でした。
返済期間は明らかになっていませんが、10万円以下の借入で返済期間が1年以上になることは考えづらく、平均返済期間もかなり短いものと推測できます。
半年以内に返済が終わればそもそも1回も金利が変動しませんし、それより多少長くなってもそれほど金利が大きく変わることはありません。金利が大きく変わる前に返済しきれるのならば、最初の金利が低い変動金利のほうが何かと有利です。
金利がもともと上限金利に近いので、それ以上上がってもそれほど危険ではない
カードローンの金利は住宅ローンや自動車ローンなどと比べると非常に高いです。例えば、横浜銀行の場合、金利は以下のようになっています。
お借入限度額 | 金利 |
---|---|
100万円以下 | 年14.6% |
100万円超200万円以下 | 年11.8% |
200万円超300万円以下 | 年8.8% |
300万円超400万円以下 | 年6.8% |
400万円超500万円以下 | 年4.8% |
500万円超600万円以下 | 年4.5% |
600万円超700万円以下 | 年4.0% |
700万円超800万円以下 | 年3.5% |
800万円超900万円以下 | 年3.0% |
900万円超1,000万円未満 | 年2.5% |
1,000万円 | 年1.9% |
銀行のカードローンで100万円以上借りる人はめったにいないでしょうから、大抵の場合は一番下の14.6%が適用されます。今回は横浜銀行を例に出しましたが、他の地方銀行、あるいは都市銀行もだいたい似たような金利を採用しています。
一方、消費者金融の場合はさらに金利が高くなることが大半です。例えばアコムの場合、100万円未満の借入ならば金利は7.7~18.0%ですが、大抵の場合は18.0%、もしくはそれに近い金利が採用されます。下限の7.7%やそれに近い金利は、借り入れと返済を繰り返したごく一部の優良顧客のみに採用される数値だと思ったほうがいいでしょう。
結局、銀行でも消費者金融でも、借入額が100万円以下のケース(要するにほとんどのケース)では、概ね14.0%~18.0%が採用されます。
一方、利息制限法によれば、上限金利は10万円以下の場合金利は20.0%、10万円以上100万円未満の場合は18.0%となっています。銀行も消費者金融も少額融資の場合は金利上限に近い貸出金利を採用するので、仮に上昇してもその上昇幅は小さいものになります。
住宅ローンの場合は固定金利が有利なケースが多い
本記事のテーマとはちょっとずれてしまいますが、住宅ローンの場合は今の環境下ならば基本的に固定金利が有利です。固定金利のデメリットは金利が高いことですが、現在は住宅ローンの固定金利はかなり低いからです。
例えばフラット35の場合、多くのケースでは借入金利1.5%前後が採用されています(借入額や借入期間、融資率などによって異なります)。
フラット35とは別に銀行が独自の住宅ローンを提供していることもありますが、こちらも適用金利は1.5%前後になることが多いです。
また、住宅ローンは借入期間がかなり長くなるため、借入期間中に金利が変動するリスクは銀行カードローンのそれよりもかなり高いです。
借入期間の後半の変動は大した痛手にはならない(すでに元本がかなり減っているため)ことも多いのですが、前半に変動が起こるとやや危険です。
必ずしも全期間を固定金利にする必要はないかと思いますが、最初の10年程度は固定金利を選んだほうがいいかと思います。
まとめ
- 銀行のカードローンには固定金利型と変動金利型がある
- 変動金利の金利は日本銀行の政策金利に連動する
- 政策金利が高くなると、変動金利も高くなる
- 固定金利は最初から最後まで金利が同じなのでリスクは低いが、その分最初の金利が高め
- 変動金利は途中で金利が上昇するリスクを追うが、その分最初の金利は低め
- カードローンの場合は変動金利のほうが有利になりやすい
- 住宅ローンの場合は固定金利のほうが安全
ローンに応じて固定金利型と変動金利型をうまく使い分けることによって、リスクを減らしながら総返済額を減らせます。どちらでも同じと軽く考えずに、慎重に金利タイプを選んでください。