借金400万円の債務整理!奨学金の有無が重要な理由

借金が400万円あるとき、奨学金の有無によって債務整理をするかどうかの判断がわかれることがあります。

学生時代に奨学金を借りていたという人は、債務整理をすると大きなデメリットを被ることがあるからです。

奨学金に限った話ではなく、連帯保証人がついているローンや、担保がついているローンなども同じように大きなデメリットを受ける可能性があります。

ここでは、借金400万円の債務整理について、奨学金がある場合と、ない場合のメリットとデメリットを比較してみます。

奨学金がある場合の借金400万円の債務整理

奨学金がある場合の債務整理では、連帯保証人に大きな迷惑をかけてしまう可能性があります。

借金の内訳が次のようになっていたとします。

クレジットカードのリボ払い・・・100万円(手数料15%)
消費者金融からの借金・・・100万円(金利15%)
奨学金・・・200万円

このとき、個人再生もしくは自己破産をすると、連帯保証人になってくれている親や親族に200万円の残高一括請求が行ってしまいます。

親などに迷惑をかけることを避けるために債務整理をしないという選択をとる人も多いようです。しかし実は、任意整理なら連帯保証人に迷惑をかけずに借金を減額することが可能です。

債務整理の種類

債務整理には、任意整理、特定調停、個人再生、自己破産の4種類があります。

任意整理・特定調停の場合

任意整理と特定調停では対象を自由に選ぶことができます。

クレジットカードのリボ払い・・・100万円
消費者金融からの借金・・・100万円

の合計200万円だけを任意整理もしくは特定調停することで、連帯保証人に迷惑をかけずにすみます。

日本学生支援機構の奨学金の金利は0.01%~3.0%となっていますので、任意整理をして利息をゼロにするメリットはそれほど大きくありません。

また、任意整理をすると残った借金を3年~5年程度で返済をしていかなくてはなりません。

奨学金は10年~20年程度かけて返済していくというプランを立てているはずです。

その意味でも、奨学金は対象から外すべきでしょう。

そもそも、日本学生支援機構は任意整理の交渉に応じてくれないという噂もあります。

任意整理をした結果、

クレジットカードのリボ払い・・・100万円(手数料ゼロ・遅延損害金免除)
消費者金融からの借金・・・100万円(金利ゼロ・遅延損害金免除)
奨学金・・・200万円(そのまま返済を続ける)

となるでしょう。

個人再生と自己破産の場合

個人再生もしくは自己破産を選ぶと、原則としてすべての借金を整理の対象としなければなりません。

債権者平等の原則があるので、「奨学金だけは対象から外し、自力で返済をしていく」ということは許されません。

例外的に、個人再生では住宅ローンの特例があるので、住宅ローンだけは対象から外すことが可能です。

個人再生をした場合、400万円の借金は100万円にまで圧縮されます。原則として3年間で100万円の借金を返済していきます。経済的困難など特別な事情がある場合には、返済期間を5年以上に延ばせることもあります。

自己破産をすると借金はすべてゼロになります。自己破産をしたなら、

クレジットカードのリボ払い・・・帳消し
消費者金融からの借金・・・帳消し
奨学金・・・帳消し(しかし連帯保証人に200万円の一括請求が行く)

という結果になります。

連帯保証人に迷惑がかかる

クレジットカードのリボ払い100万円、消費者金融からの借金100万円については、基本的に無担保・無保証で借りるものなので借金が単純に減額されると考えてよいです。

しかし、奨学金の場合には連帯保証人がついています。債務整理をして借金を減額してもらえるのはあくまで手続きをした本人だけです。連帯保証人の借金までは減額がされません

そのため、奨学金200万円については連帯保証人に対して残高の一括請求が行ってしまう可能性が高いです。

債務整理をすると期限の利益が失われますので、分割払いを主張することもできなくなります。親や親族が200万円の一括請求に応じることができなければ、親や親族まで債務整理をするはめになってしまうかもしれません。

奨学金がない場合の借金400万円の債務整理

次は、奨学金がない場合の債務整理について考えてみます。

クレジットカードのリボ払い・・・200万円(手数料15%)
消費者金融からの借金・・・100万円(金利15%)
銀行カードローンでの借金・・・100万円(金利12%)

があったとします。銀行カードローンについても基本的に無担保・無保証で借りられます。

つまり、担保がいっさいついていないので、担保として入れているものが没収されたり、連帯保証人に迷惑がかかったりということを心配しなくてよいです。

任意整理もしくは特定調停の場合

任意整理と特定調停は基本的には同じ効果が期待できます。

任意整理は弁護士や司法書士に依頼をするのが一般的であり、特定調停は自分で手続きをするのが一般的であるという違いがあります。

特定調停の裁判所への出頭は平日にしなければならないので、忙しい社会人の人は任意整理を選ぶことになるでしょう。

クレジットカードのリボ払い・・・200万円(手数料ゼロ・遅延損害金免除)
消費者金融からの借金・・・100万円(金利ゼロ・遅延損害金免除)
銀行カードローンでの借金・・・100万円(金利ゼロ・遅延損害金免除)

という結果になるでしょう。

個人再生もしくは自己破産の場合

個人再生をしたら、400万円の借金が100万円にまで圧縮されます。残った100万円の借金は原則として3年をかけて返済していきます。特別な事情がある場合には、5年以上に延ばすことも可能です。

自己破産をすると借金はすべてゼロになりますが、資産はすべて没収されてしまいます。99万円までの現金は手元に残せるので、しばらくの生活費は残ります。

奨学金がないケースでは、連帯保証人に迷惑をかける心配がありません。奨学金があるケースと比較すると、個人再生や自己破産を選ぶことのデメリットが小さく、メリットが大きくなっていると言えます。

自己破産をした場合、

クレジットカードのリボ払い・・・帳消し
消費者金融からの借金・・・帳消し
銀行カードローンでの借金・・・帳消し

という結果になります。

個人再生や自己破産をすると連帯保証人に迷惑がかかる

奨学金がある場合とない場合の両方のケースで債務整理をするとどうなるのかについて見てみました。

奨学金がある場合には、

連帯保証人となってくれている親や親族に迷惑がかかる

という大きなデメリットがあります。

しかも、原則として残高の一括請求がされてしまうというポイントも重要です。分割払いの交渉ができることもありますが、債権者の側に分割払いの交渉に応じなければならない義務はありません。

早めに相談をして、任意整理をしてしまうことが重要

個人再生や自己破産になってしまうと、連帯保証人に迷惑がかかることは避けられないでしょう。

対策として、早めに弁護士や司法書士に相談をして、借金問題が深刻化する前に任意整理をしてしまうことが重要であるということになります。

奨学金では減額返還・返還期限猶予の制度が用意されている

日本学生支援機構の奨学金では、返還が難しいときに減額返還制度もしくは返還期限猶予制度が利用できます。

減額返還制度とは

減額返還精度が利用できるのは次の2つの条件を満たす方です。

・災害、傷病、その他経済的理由により奨学金の返還が困難な方

・当初約束した割賦金を減額すれば返還可能である方

特に重要なのは1つ目の条件となります。2つ目の条件を満たしていない方は返還期限猶予制度のほうを利用しましょう。

「経済的困難」とはいっても、その条件は比較的緩やかになっています。給与所得者の場合なら年収300万円以下という条件を満たしていれば減額返還制度を利用できる可能性が高いです。

返還期限猶予制度とは

災害、傷病、経済困難、失業などの返還困難な事情が生じた場合」に、返還期限猶予制度が利用できます。

逆に、このような事情が生じた場合にはすみやかに手続きを行いましょう。日本学生支援機構は全国銀行信用情報センター(KSC)に加盟していますので、3ヶ月以上の延滞をするといわゆるブラックリストにのってしまいます。

返還期限猶予制度が利用できるのは次のようなケースです。

傷病
生活保護受給中
失業中
経済困難
災害
大学在学
海外派遣

経済困難のケース

借金をしている人は経済困難に該当する可能性が高いでしょう。

給与所得者・・・年収(税込)300万円以下

給与所得以外の所得を含む場合・・・年間所得(必要経費等控除後)200万円以下

というのが目安となっています。経済困難とはいっても、意外と収入条件は緩いということに気がつくでしょう。

減額返還や返還猶予はずっと受け続けられる?

減額返還や返還猶予はずっと受け続けられるわけではありません。

猶予期間・・・1年ごとに願い出る。 他の取得年数制限あり事由と通算して10年が限度

と日本学生支援機構のホームページに書かれています。

「経済困難」や「失業中」という理由で合計10年間減額返還もしくは返還猶予を受けたら、それ以後は「経済困難」という理由では減額返還もしくは返還猶予を受けられなくなるということです。具体例で説明をします。

「新卒等」が理由で1年間返還猶予の制度を利用した
「経済困難」が理由で5年間減額返還の制度を利用した
「失業中」が理由で4年間返還猶予の制度を利用した

というケースでは、「1年+5年+4年」の合計で10年間制度を利用しているので、それ以上はこれらの制度を利用できません。

ただし、

傷病
生活保護受給中
災害
大学在学
海外派遣

などを理由として返還猶予の制度を利用する場合には、取得年数の制限はありません。

例えば、傷病で働けない状態がずっと続いている人は、20年でも30年でも返還猶予を受け続けられるということです。

申請書類

減額返還もしくは返済猶予を受けるためには申請をしなければなりません。

必要書類はそれほど多くはなく、基本的には「猶予願&チェックシート」と証明書があれば足ります。

用意する証明書の種類は、「返還困難な事情」によって変わってきます。

経済的理由ならば、所得証明書、住民税非課税証明書、市県民税(所得・課税)証明書のうちいずれか1点が必要になります。

失業中の人ならば、雇用保険受給資格者証、雇用保険被保険者離職票などが失業中であることを証明する書類となります。

わからないことがある場合には、奨学金返還相談センターに相談をしてみましょう。

担保付きの借金には注意

担保には「人的担保」と「物的担保」の2種類があります。

人的担保とは

人的担保というのは、連帯債務・保証債務などのことを指します。日本ではほとんどの場合に保証人が必要な借金というと連帯債務・連帯保証人のことを指すようです。

保証人と連帯保証人の違い

保証債務と連帯債務の大きな違いは、催告の抗弁権・検索の抗弁権・分別の利益の3つにあります。

具体例で見てみます。

Aさんの借金1,000万円に対して、BさんとCさんが保証人になっていた

とします。

債権者はまずはAさんに対して請求をしなければなりません。Aさんに資力があるのにBさんやCさんに請求をすることはできません。

催告の抗弁権

逆に、BさんやCさんは「まずはAさんに請求をしてください」と主張する権利を持っています。これが催告の抗弁権です。

検索の抗弁権

検索の抗弁権とは、主たる債務者に資力がある場合には弁済を拒むことができる権利です。

Aさんに資力があることを証明すれば、BさんやCさんは弁済を拒むことができます。

分別の利益

分別の利益とは、複数の保証人がいる場合には、1人あたりの保証額は借金の金額を保証人の数で割った金額になるという利益のことです。

このケースでは、Aさんの借金1,000万円に対して、2人の保証人がいるので、BさんとCさんはそれぞれ500万円を上限として保証します。

連帯保証人の場合

連帯保証人の場合には、催告の抗弁権・検索の抗弁権・分別の利益いずれもありません。

Aさんの借金1,000万円に対して、BさんとCさんが連帯保証人になっている場合

で考えてみます。

債権者はAさんに請求せずとも、BさんもしくはCさんに請求をすることができます。BさんとCさんは請求されたら弁済を拒むことはできません。

さらに、分別の利益もないので1,000万円全額を請求されてしまう可能性があります。

連帯債務

連帯債務と連帯保証人は、責任においてはほぼ同じものと考えておくとよいでしょう。

ただし、連帯保証人はあくまで保証人であるのに対して、連帯債務は「連帯して責任を負うもの」であり、主たる債務者と立場が変わらないという違いはあります。

これは住宅ローンにおいて重要になります。

住宅ローンでは主たる債務者は住宅ローン控除が受けられますが、連帯保証人は保証人にすぎないので、住宅ローン控除は受けられません。

一方、連帯債務者は主たる債務者と同じ立場なので、住宅ローン控除を受けることができます。

物的担保とは

物的担保とは、「特定の財産による債権の担保」のことを言います。抵当権や質権などが物的担保です。

物的担保がついているローンとして代表的なものをあげてみます。

住宅ローン・・・家(土地・建物)に抵当権を設定
不動産担保ローン・・・土地などの不動産に抵当権を設定
ディーラーローン・・・車の所有権をディーラー側もしくはローン会社側に留保(所有権留保)

こういった有担保のローンを借りている人が債務整理をすると、抵当権などが強制的に実行されてしまいます。

例えば、ディーラーローンを借りている人が債務整理をしたら、車が没収されてしまうというデメリットを受けます。

それを避けるためには、任意整理を選択して、有担保のローンを対象から外す必要があるでしょう。

同じマイカーローンでも、銀行のカーローンの場合には基本的に無担保・無保証なので安心です。

借金問題で困っている人は自分でなんとかしようとしてしまう傾向がありますが、それは危険なことです。

特に奨学金や有担保ローンを借りている人は、個人再生や自己破産になってしまうとデメリットが大きいので、なるべく早い段階で専門家(弁護士や司法書士)に相談をしましょう