お金を増やすための手段として有名なものといえばやはり株式投資ですよね。株式投資は安く買って高く売るもの、というイメージをお持ちの方も多いかと思いますが、株式投資で得られる利益はいわゆる売却益だけではありません。株式を持っていたり、分割したりするだけで受け取れる利益もあるのです。
今回は株式投資で得られる4つの利益について解説いたします。
目次
株式投資では「売却益」「配当益」「株主優待」「株式分割」で儲ける
株式投資で得られる利益は全部で4つです。
- 売却益
- 配当金
- 株主優待
- 株式分割
です。これら4つの利益は互いに独立したものではなく、影響を与え合うことがあります。
売却益は安く買って高く売ることで得られる利益
売却益とはその名の通り、株式を売却することによって得られる利益のことです。
例えば、株価が1200円の株を1000株買い、その後株価が1400円になった段階で全て売却したとします。この場合、売却益は1400円×1000円-1200円×1000株=20万円となります。逆に購入時よりも株価が下がったときに売却してしまうと売却損が発生します。
売却益を狙うメリット
売却益を狙うメリットは、ズバリ利益が大きくなりやすいことです。株価というのは毎日変動します。
そしてその変動幅は非常に大きいものです。例えば、任天堂場合、直近1年(2016年4月~2017年3月)の株価の最安値は1万3800円(2016年6月24日)、最高値は3万1770円(2016年7月19日)となっています。
仮に2016年6月24日に株式を買い、7月19日にすべて売却できていれば、1ヶ月弱の間に(3万1770円-1万3800円)÷13800円=130%もの利回りを得たことになります。年間に直せば1000%以上の利回りです。売却益を積極的に狙っていけば、ここまで行かずともかなりの高利回りを得られる可能性があります。
売却益を狙う際の注意点
世の中に存在するすべての投資は、大きな利益が狙える確率が高くなるほど、大きな損失が出てしまう可能性も高くなります(ハイリスクハイリターン)。
逆に大きな損失が出る確率が小さくなるほど、大きな利益が出る確率も小さくなっていまいます(ローリスクローリターン)。売却益狙いの株式投資は典型的なハイリスクハイリターンの投資であり、ちょっと間違えると大きな損失を生み出してしまいます。
前述の任天堂株の場合、7月19日に3万1770円をつけた株価は、その後2016年8月1日には2万965円をつけています。株式がこの程度の動きをするのは珍しいことではありません。大損を避けるためにも、「●●%以上下がったらその時の状況にかかわらず売却する」といったようなルールを事前に定めておくことが大切です。
配当金は株式を保有しているだけでもらえるお金
配当金とは、株式を保有し続けるだけでもらえるお金のことです。
会社は毎年事業を行い決算をします。決算では最終的に当期純利益を計算します。当期純利益とは、経費や税金などをすべて差し引いた会社の実質的な儲けのことを言います(当期純利益がマイナスになれば損失が出たということになります)。
当期純利益がプラスになった場合、企業はそのお金を利益剰余金として積み立てておくことができます。お金を積み立てておけば将来経営が悪化したときにそのお金を崩して凌ぐことができますし、設備投資をする際にも使えます。
一方、当期純利益や利益剰余金は株主に配当されることもあります。配当金額は株式保有数に比例し、例えば1株あたりの配当が8円の場合、1000株保有していれば8000円を受け取ることができます。
株価に対する1年間の配当金の割合を配当利回りと言います。例えば、株価が800円で、1年間の配当金が8円の場合、配当利回りは8円÷800円=1%となります。
当期純利益や利益剰余金が増えればそれだけ配当金の金額も多くなるので、配当利回りも高くなります。一方、業績が悪化した場合は配当金が配られないこともあります。
当期純利益がプラスになってもその全部が利益剰余金や設備投資に回されて配当金が出ないこともありますし、当期純利益がマイナスになっても過去の利益剰余金を取り崩して配当金が配られることもます。
しかし、基本的に配当金の金額や配当利回りは直近の当期純利益に左右されると言っても考えて間違いありません。
配当金を狙うメリット
配当金を狙うメリットは、利回りが安定しやすいことです。売却益は利回りがプラス方向にもマイナス方向にも触れやすく、時には大損してしまうことがあります。
配当金や配当利回りはそれと比べると乱高下しづらい(ある企業の当期純利益や配当性向が短期間のうちに大幅に変わることはそうそうない)ため、利益が安定しやすくなります。ただ、もちろん銀行預金や保険商品などと比べれば不確実性は高いため注意が必要です。
配当金を狙う際の注意点
配当金をもらう条件は、株式を「権利付き最終日」まで保有していることです。権利付き最終日とは個々の会社が決める日です。この日に株を保有していなければ、それまでどんなに株式を保有していても配当金はもらえないので注意しましょう。
懸命な方は、ここまでの情報だけで株式を権利付き最終日に買って1日だけ保有し、配当金が貰える権利が確定したらすぐに売ればいいのではないか、という考えに行き着いたかもしれません。
しかし、このような方法はおすすめしません。大抵の場合、権利付き最終日の次の日(権利落ち日)になると、株価が大きく下がり、売却損が発生してしまうからです。
配当金をもらってもそれが売却損の穴埋めに消えてしまうことが多く、場合によっては穴を埋められないことさえあります。
もう一つの注意点は、配当金が多く出る企業が必ずしも投資家にとって良い企業ではないということです。配当金が増えれば、それだけ企業の事業に対する投資が減ります。事業に対する投資が減れば将来得られる利益が減ってしまい、株価が下がる可能性があります。配当金ばかりが多く、業績が悪い企業には注意が必要です。
株主優待は配当金の「モノ」バージョン
株主優待とは、株式を保有し続けることでもらえる、その企業に関連した商品や割引券などです。例えば、吉野家ホールディングスの株式を一定以上保有している場合、2月末と8月末に300円のサービス券が贈呈されます。
現金以外の形でもらえる配当金だと思ってもらえればだいたい間違いありません。株主優待をもらう条件は配当金と同じで、権利付最終日に株式を持っていればOkです。株価に対する株主優待の金額の割合を優待利回りと言います。
株主優待のメリット
株主優待のメリットは、優待利回りが高いところで安定しやすいことです。配当金は当期純利益や利益剰余金などから捻出されるので、業績が良くない場合は配られないことがあります。
それに対して株式優待が配当なしになることはほとんどありません。株主優待は企業が自社の株を買ってもらうための宣伝的な意味合いが大きく、削られることがあまりないからです。
また、株主優待は税制上も優遇されています。
配当金は企業の税引前当期利益から税金を差し引いた当期純利益や利益剰余金から支払われます。そして、投資家は配当金を受け取ったら、その利益に応じて所得税を支払わなければなりません。つまり2回税金がかかるわけです。
一方、株主優待は雑所得扱いとなります。雑所得が年間20万円以下の場合、つまり株主優待以外に所得がない殆どの場合において実質的に税金は0円になるため、1回しか税金がかからないことになります。
株主優待狙いの注意点
株主優待は一定数以上の株式を保有していなければ受け取ることができません。例えば、吉野家ホールディングスの株主優待精度は以下のようになっています。
- 保有株式100株~999株:300円サービス券10枚
- 保有株式1000~1999株:300円サービス券20枚
- 保有株式2000株以上:300円サービス券40枚
保有株式が100株を割ってしまった場合、株主優待はもらえません。株主優待がもらえる最低株式数は企業によって違うので、必ず株式を買う前に確認してください。
また、株主優待は通常、最低株式数に近いほうが優待利回りが高くなります。優待利回りを高くしたいならば、1つの企業の株式を大量に持つよりも、複数の企業の株式を最低株式数だけ持ったほうがいいでしょう。
なお、株主優待で受け取れる商品は企業ごとに様々です。優待利回りは高いけれど、肝心のもらえる商品やサービスが自分にとって必要ないものである場合は意味がなくなってしまうので気をつけて下さい。
株式分割は株式を分割して購入しやすくする仕組み
株式分割とはその名の通り株式を分割することです。分割したぶん株数が増えて、その分株価は下がります。例えば、発行株式が10万株、株価が1000円の株式があったとします。
この株式を2倍に分割する場合、発行株式の数は2倍の20万株になり、株価は2分の1の500円になります。4倍に分割する場合、発行株式の数は4倍の40万株になり、株価は4分の1の250円になります。
何倍に分割しても、時価総額(発行株式×株価)は変わりません。各投資家の持ち分も変わらないため、株式分割の前後で損も特もしませんが、一般的に株式分割は投資家にとっては好材料です。
株式分割のメリット
株式分割の直後は、一般的に株価が上がるとされています。分割によって株価が下がり、割安感が強まって買いやすくなるためです。買いやすくなれば実際に買う人が増え、買う人が増えればそれに引っ張られて株価が上昇します。もちろん、そうならない場合もありますが。
また、株式分割が行われると、前述の配当金が増える可能性があります。通常、株式分割を行うと、配当金もそれだけ減らされます。例えば、1株の配当金が500円だった株式が2倍に分割した場合、1株あたりの配当金は250円になります。
しかし、業績が好調な企業の場合、株式分割後も配当金を据え置きにする(上記の例の場合は1株500円のままにする)事があります。この場合、配当金の額は500円から1000円に増えます。配当金の額が増えるのが必ずしもいいことというわけではありませんが、業績が好調な企業は配当金を増やしても問題ないことが多いです。
また、株式分割が行われると、その分株式配分の自由度が高まります。例えば、単元株が100株の株式を100株持っているとします。この場合、選択肢は「全部(100株)売る」か「売らない」の2択しかありません。
しかし、株式分割で100株が200株になれば、選択肢が「全部(200株)売る」「半分(100株)売る」「売らない」の3択に増えます。全体の半分だけ売る、ということができるようになるため、より多くの銘柄を持てるようになり、リスクヘッジにつながります。
株式分割を狙う際の注意点
そもそも株式分割は企業が企業の意志で行うものであるため、狙って行うのが難しいです。具体的な日程は各企業のホームページや総合投資情報サイト「トレーダーズ・ウェブ」で公開されているため、株式分割を狙いたい場合はここを逐一チェックする必要があります。
株式投資で主に狙うべき利益は「売却益」と「配当金」のどちらか
ここまで株式投資で狙える4つの利益について説明してきましたが、株式投資を行う上では一体どれをメインに狙えばいいのでしょうか。
もちろん投資のスタイルは人それぞれなので一概にはいえませんが、基本的には「売却益」と「配当金」の2つのうちどちらかを狙っていくといいでしょう。どちらも狙う、と言うのはおすすめできません。売却益が出やすい銘柄と、配当利回りが高い銘柄はまた別物だからです。
資産が少ない売却益、資産が十分あるなら配当金を狙うのが基本戦略
資産があまりない人におすすめなのは売却益狙いの株式投資です。売却益狙いの株式投資は、配当金狙いの株式投資と比べるとハイリスクハイリターンであるといえます。ハイリスクハイリターンな投資は資産を持っている人向けのものではないか、と思われるかもしれませんが、そんなことはありません。
資産が少ない人がローリスクローリターンな投資を行っても、ほとんど利益は得られません。資産がない人が資産を築きたいと思ったら、ある程度のリスクを背負ってもハイリスクハイリターンな売却益を狙うしかないのです。
そして、売却益が出やすいのは成長株です。成長株とは簡単にいえば、成長期にある企業の株式です。
企業は無限に大きくなっていくわけではなく、ある程度のところに到達すると成長が鈍くなります。人間が無限に成長しないのと同じです。一番成長率が高い企業を探して投資するのが売却益を出すコツです。
成長期の企業の株式は上昇しやすいため、上昇の波にのることができれば大きな売却益を得られるでしょう。ただしその分下落もしやすいため、無理な投資は厳禁です。
一方、現時点ですでに資産を十分持っている場合は、配当金を狙うのもいいでしょう。配当金狙いの株式投資は、売却益狙いの株式投資と比べてローリスクローリターンであり、今まで築いてきた資産を運用して安定した利回りを得るのに向いています。
もちろん、配当金が多くても株価が大きく下がってしまっては意味が無いため、ある程度株価にも気を配る必要があります。
配当金が狙いやすいのは、毎年の収益が安定している大企業の株です。毎年の収益が安定している企業は配当金も毎年安定しやすく、更に株価が安定しているため利回りがプラスになりやすいです。ただ、大企業でも当然株式下落のリスクはあります(成長株よりは少ないですが)。
配当金狙いの投資は配当金が出るまで待たなければならないため、時には大きな含み損を抱えてしまうこともあります。その含み損に耐えられる精神と判断力を持つことも大切です。
配当金を待っている間に株価が回復することはよくありますが、その一方でなかなか上がらず更に含み益が拡大してしまうこともあります。
配当金狙いの場合でも、損失が一定以上の割合になったときはその時点で売却するといったような自己ルールを作っておいたほうがいいでしょう。
株主優待と株式分割はおまけ程度に考える
では、残った株主優待と株式分割はどう考えればいいのでしょうか。まず株主優待についてですが、基本的にはおまけのようなものだと考えてください。株主優待はそもそもお金ではなく物やサービスという形で支給されるため、これをメインに狙っても仕方がありません。
いくら優待利回りが高くても、その商品が自分にとって使いづらいものであれば全く意味がありません。
ただし、世の中には比較的換金しやすい(金券ショップなどで高く買い取ってもらいやすい)タイプの株主優待を支給してくれるところもあります。
例えば、鉄道会社はその鉄道の無料乗車券を株主優待として配布することが多く、金券ショップでは額面金額の80%~で売れることも少なくありません。その他スーパーの商品券やビール券なども高く売れることが多いです。地域によって買取額が変わることもありますが。このような優待に関しては、ある程度重視してもいいでしょう。
一方、株式分割は狙うのがそもそも難しいため、その恩恵をうけることができればラッキー程度に考えたほうがいいでしょう。
まとめ
- 売却益は安く買って高く売ることにより得られる利益で、最も大きくなりやすい
- 配当金は株式を保有していると得られる利益て、比較的安定した利回りが魅力
- 株主優待は株式を保有していると得られる商品やサービスで、企業により内容が異なる
- 株式分割は直接的な利益ではないが、分割後は株価が上がりやすい
- 株式投資では基本的に売却益と配当金のどちらか一方を中心に狙うべき
- 資産が少ない場合は売却益の大きなリターンを期待し、資産が多い場合は配当金で安定的なリターンを狙う
株式投資と聞くと複雑そうに感じられるかもしれませんが、その基本は「売却益か配当金のどちらか一方を狙う」という、非常に簡単なものです。自身の資産状況に応じて狙いを絞り、効果的に資産を投下していきましょう。