ハローワークの求人は、一般的な求人誌や求人サイトのそれと比べるとブラック企業の割合が多いとよく言われています。正確な統計がないのでどこまで正しいのかはわかりませんが、ハローワークにブラック企業の求人が出やすい環境が整っていることは否定できません。
今回はなぜハローワークにブラック企業の求人が集まるのか、そしてそのような求人を避けるためにはどうすればいいのかを考えていきたいと思います。
目次
そもそもハローワークってどんなところ?
ハローワークを利用したことない方(幸せなことです)もいらっしゃるでしょうから、まずはハローワークがどのようなところなのかについて軽く説明いたします。
ハローワークは公共職業安定所、職業安定所とも呼ばれる国営の職業紹介所です。世界各国に似たような組織が存在しており、日本の場合は厚生労働省が管轄しています。
国民に安定的な雇用機会を確保するために運用されており、求職手続きや雇用保険手続き、各種情報の提供や人材の紹介(事業者向け)などが行われています。
ハローワークを運営しているのは都道府県労働局
ハローワークを運営しているのは各都道府県の労働局です。労働局とは厚生労働省の設置する地方支部で、都道府県名がついているものの、あくまでも地方自治体ではなく国の出先機関であり、職員は国家公務員として働いています。労働局の主な仕事は労働相談、失業防止などであり、その一環としてハローワークの運営を行っています。
ハローワークがある場所
ハローワークは全国の各都道府県に最低でも1箇所設置されています。設置箇所数は都道府県によってまちまちですが、例えば東京都の場合は29箇所設置されています。基本的には人口の密集している地域に多く設置されています。
ハローワークごとに管轄地域が決められていますが、新しい仕事を探す場合は、どこのハローワークに行っても構いません。ただし、失業保険の受給申請は、自分の自宅がある住所を管轄するハローワークに行かなければいけません。
具体的な住所は厚生労働省のWebサイトに掲載されていますので、そちらを参考にしてください。
企業がハローワークに求人を出すまでの流れ
ハローワークに求人を出したい企業は、まずは事業所を管轄するハローワークに連絡し、事業所登録(審査)を行います。事業所登録は初回のみ必要で、2回目以降の求人の際に改めて登録し直す必要はありません。
審査事態は非常に簡単で、明らかな虚偽申請などでない限りは通るという仕組みになっています。事業登録の際には登記簿謄本の写しなど、いくつかの書類の提出が求められます。
事業者登録を済ませたら、ハローワークから渡される求人申込書に記入します。申込書には、具体的にどのような人を求めており、どのような業務をしてもらいたいのかを記載します。求める資格や経験、スキルなどはなるべく正確に書き出すと、ミスマッチを起こす可能性が低くなります。
申込書を提出すると、ハローワークに仕事が掲載されます。掲載費用は無料です。求職者の紹介が受けられるので、企業は書類選考や面接などを行い、採用の可否を決定します。選考結果は求職者だけではなく、ハローワーク側にも伝えなければいけません。
ハローワークにブラック企業が多いとされる大きな理由は「掲載費用が無料だから」
すでに勘の言い方はお気づきかと思いますが、ハローワークにブラック企業が多いとされる一番大きな理由は「掲載費用が無料だから」です。
通常、求人誌や求人サイトに求人を掲載する場合、広告費をその媒体の運営元に対して支払う必要があります。例えば求人誌の「タウンワーク」の場合、関東の求人の掲載費用は1週間で1万9000円~、関西で1万8000円~、北海道で1万円~となっています。
また、求人サイトのタウンワークオンラインの場合、掲載エリアにかかわらず2~4週間で9000円~1万8000円となっています。
最近は掲載は無料で行い、求人サイトを通じた採用が発生したらその都度報酬を請求する成果報酬型の求人サイトも増えてきていますが、どちらにしろ求人サイトを通じて採用した場合にはお金がかかります。
大抵のブラック企業はお金がありませんから(お金がないからブラック化したのかもしれません)、当然無料で掲載できるハローワークの方を好んで使います。一方、お金に余裕があり、経営戦略もしっかりとしているホワイト企業は、優秀な人材を採るお金を惜しまないので、有料の求人誌や求人サイトにも求人を掲載します。
ホワイト企業はあまり求人を出さないので、ブラック企業が多いように見える
当然ながら、ハローワークに掲載されている求人のすべてがブラック企業というわけではなく、ホワイト企業の求人もそれなりに存在します。しかし、ホワイト企業はめったに人がやめていかないのであまり頻繁に人員を補強する必要がなく、稀にしか求人を出しません。
一方、ブラック企業はすぐに人がやめていくので度々人員を補強する必要があり、頻繁に求人を出します。そのため、全体としてブラック企業の求人が多いようにみえるのです。
当然、求職者としてはブラック企業に就職してやる義理などありません。しょっちゅうハローワークに同じような内容で求人を掲載している企業は、ブラック企業である可能性が非常に高いです。雇っては辞めていく、という状態が慢性化しているのかもしれません。その求人にとてつもない魅力を感じたのでもない限りは、応募は避けたほうがいいでしょう。
ハローワークの紹介状は必須ではないが、ほとんどのケースで求められる
ハローワークを通じて求職する場合、企業側から紹介状を求められることがあります。紹介状とはハローワークが書いてくれる求職者のデータが欠かれた書面です。
ハローワーク意外の媒体でも求人を掛けている企業は紹介状なしでも面接してくれることがありますが、ハローワークでしか求人を出していない企業の殆どは紹介状がなければ面接をしない、という仕組みになっていることが多いです。
なぜ多くの企業が紹介状にこだわるかというと、補助金をもらうためです。ハローワークの紹介状は、そのままハローワークを通じて採用した証拠になります。
見方を変えれば、やたら紹介状にこだわる企業は、補助金が目当ての可能性が高いです。そうした企業はブラック企業である可能性が非常に高いので気をつけましょう。
ハローワークによく見られる「カラ求人」とは
ハローワークにはカラ求人が多いと言われています。カラ求人とは、採用に対して余り熱心でない企業がとりあえず出している求人です。
滅茶苦茶能力が高い人が来てくれたら採用しようかな、ぐらいにしか考えているのですが、ハローワークを通じてそのような人が現れる可能性は非常に低く、実質的にほとんど中身が無い求人です。中身が無いのでカラ求人、というわけですね。
ハローワークは前述の通り、企業側は無料で求人が出せます。求人を出しても出さなくてもかかる費用は同じ(0円)です。また、ハローワークを通じて採用した場合、一定の条件を満たせば企業に補助金が支給されます。
この制度下では、積極的に採用する気がなくてもとりあえず求人を出しておいたほうがいいかな、という企業が増えるのは仕方のないことかもしれません。ならば制度を変えるべきでは、と思われるかもしれませんが、ハローワークには企業、特に余りお金がない地元企業への人材紹介という役割もあるため、簡単には辞められないのです。
ハローワークからホワイト企業を探し出す方法
さて、ここからはいよいよハローワークを通じてホワイト企業に就職する手順を紹介していきたいと思います。ハローワークのホワイト企業の求人は埋もれがちなので、待遇の割に倍率が低いことも多く、見つけられれば他の求職者に大きく差をつけることができるはずですので、しっかりと学んでいってください。
まずは求人票をチェック!
ハローワークでホワイト企業を探すために最初にチェックすべきは求人票です。求人票には労働条件や仕事内容などが記載されています。
休日数は最低でも120日以上、できれば125日以上
ホワイト企業の一番の特徴は、社員にきちんと休みを取らせることです。彼らは従業員を丁寧に扱うことが、自社の利益を長期的に増加させると考えています。一方、ブラック企業にはそんな殊勝な考えはないため、少ない人数を休ませず働かせることによって利益を増やそうとします。
1年に土日は合計105日程度あり、それとは別に祝祭日も12日~15日程度あります。つまり、土日祝日をしっかり休めれば、それだけで休日数は120日程度になるはずなのです。それすら達成できていない企業は非常に危険です。
なお、休日制度には「完全週休2日制」と「週休2日制」があります。両者は似ているようで全く異なるものです。完全週休2日は毎週2日の休みがある制度で、週休2日制は1ヶ月の内1回以上週2日の休みがある制度です。後者だと、休日数が120日を超えることは殆どありません。絶対に避けましょう。
具体的な仕事内容が書いてない求人は要注意
求人票には仕事の内容が記載されていますが、その内容が曖昧な場合は注意が必要です。「幹部候補として様々な仕事にチャレンジしていただきます」などという言葉は聞こえこそいいですが、実際に就職してみると幹部とは何の関係もなさそうな雑用を押し付けられる可能性が高いです。
そうした企業は効率的な仕事を達成するために必要不可欠な「分業」が十分になされていない可能性が高く、利益も挙げられていないでしょうから、避けましょう。
仕事内容とは関係ない部分でも「成長できる環境があります」「人物重視の採用です」などの抽象的で何を言ってるのかわからない文章が多い企業は非常に怪しいです。
給料の振れ幅が大きすぎる求人は危険
ハローワークに掲載されている求人は目安なので、給料にある程度幅がある、例えば30万円~32万円といった感じになるのは仕方ありません。しかし、この幅があまりにも大きすぎる、例えば20万円~50万円となっている場合は要注意です。
このような求人では殆どの場合下限値、この場合20万円しかもらえないと思ったほうがいいでしょう。上限値に近づくためにはどう考えても達成不可能なノルマや残業をしなければならない可能性が高いです。
手書きの履歴書を求める企業は地雷
履歴書の内容はPC(ワープロソフト)で書いても手書きで書いても全く同じになります。どちらを選んでも同じ内容になるのですから、(PCがよほど苦手でない限りは)時間が省けるPCで作成したほうが良い、と考えるのが、効率を考えて行動できる社会人というものです。
いまどき手書きの履歴書にこだわる企業は少ないかと思いますが、もしあったとしたらよほど気に入った面がない限りは応募しないほうがいいでしょう。
手書き信者は「文字に人間性が現れる」などというかもしれませんが、そんなわけはないでしょう。彼らは自分が文字だけで相手の人間性を読み取ることができるなどと考えている傲慢な阿呆です。他者人間性がそんなに簡単に可視化されるのならば誰も苦労しません。他者の人間性というのは、長い間時間をかけて付き合って初めてぼんやりと見えてくるものです。
求人票はウソまみれ?
恐ろしいことに、ブラック企業は求人票にすら平気で嘘を書きます。厚生労働省によれば、2013年にハローワークに寄せられた約9400件の苦情の内、およそ40%は「求人票の内容が事実と違う」というものでした。
特にブラック企業は求人内容を「盛る」傾向があるため、あまりにも待遇が良すぎる求人は逆に注意が必要です。本末転倒な話になってしまいますが、ハローワークにそこまで良い求人が来ることはありません。
求人票に嘘を掲載するのは労働基準法違反では?と思われるかもしれませんが、求人票に記載されているのはあくまでも募集の際に提示する目安であって、労働条件の明示には該当しないため、違法ではないとされています。
求人票に書いてあることが信頼できないのならば求人票など読み込んでも無駄ではないかと思われるかもしれませんが、あまりにもウソまみれの場合はハローワーク側から注意が行くため、嘘しか書いていないということもまたありえません。ある程度は信頼できるものですので、必ず内容をチェックしましょう。
対応や面接のチェックポイント
求人票以外にも、ブラック企業を見抜くコツは色々とあります。企業のウェブサイト、口コミサイトの内容、人事担当者の対応、面接時間や内容など……得られる情報をすべて駆使して、ブラック企業を見抜きましょう。
企業のWebサイトの経営理念は意外と重要なチェックポイント
余り注目されませんが、意外と大切なのがその企業のウェブサイトです。特に大切なのが、経営者の挨拶ページです。経営者の方針は非常に重要です。どのような理念を持とうが人の勝手ですが、経営者の苦労話や自慢話など、顧客にとってはどうでもいいことがやたらと書いて有る場合はいわゆるワンマン経営に陥っている可能性が高いです。
口コミサイトはある程度の参考に留める
転職会議やカイシャの評判といった口コミサイトには、その企業の元社員の口コミが多数掲載されています。中小企業だと掲載されていないこともありますが、複数のサイトを見てみれば1つぐらいは見つかる可能性が高いです。
悪評まみれだった場合はかなり危険ですが、いい評価と悪い評価が別れている場合は判断が難しいところです。
どのような企業を働きやすいと感じるかには個人差もありますので、評判が割れることはおかしいことではありません。もしかしたら、問題のある社員やライバル企業などがその会社を貶めるために書き込みをしている可能性もあります。匿名の情報はあくまでも参考程度にとどめておいたほうがいいでしょう。
採用をやたらと急いでいる企業は要注意
ブラック企業はどんどん人がやめていくため、慢性的な人手不足を起こしています。人手が足りず定着しないのならば、給料を上げて従業員の満足度を挙げていくのが正解のはずなのですが、ブラック企業はそんな時間のかかることをせず、大量採用によってしのごうとします。
そのため、ちょっと興味を見せると早く面接を受けてほしいとせがんでくることが多いです。そのような企業は避けたほうがいいでしょう。
面接時間が短すぎる企業は危険
面接が苦手な人にとって、面接時間が短いのはありがたいことのように思えますが、面接時間があまりにも短すぎる場合はその対応を怪しんだほうがいいかもしれません。誰でもいいのでとりあえず採用しようとしている可能性が高いからです。
また、面接時に雇用条件を話したがらない企業も要注意です。雇用条件の確認は本来、双方にとって有益なことです。あとで揉める可能性を減らすことが出来ますからね。それをしたがらないということは、何か隠したいことがあるのでしょう。
ハローワーク以外で仕事を探す方法
ハローワークにはホワイト企業の求人もありますが、ブラック企業の求人の山に覆われてしまっているため、探すのが非常に難しいです。
ゴミ山からダイヤの原石を探し出す努力をするよりは、最初からゴミの割合が少ない求人サイトや転職エージェントなどを使用したほうがいいでしょう。求職サイトや転職エージェントなどにお金を払うのは採用する側なので、こちらの懐は傷みません。
まとめ
- ハローワークにはホワイト企業の求人もあるが、多数のブラック企業の求人の中に埋もれてしまっており、発掘は難しい
- 求人票をよく読み込むと、その企業が怪しいかどうかが少しずつ見えてくる
- 企業のウェブサイトや口コミサイト、面接時の対応などもブラック企業を見抜くヒントになる
- 基本的にはハローワークよりも求人サイトや転職エージェントを利用したほうが良い
ハローワークは求人を探す方法の一つであり、ハローワークで求人を探さなければいけないというルールはありません。できれば求職活動の際には求人サイトや転職エージェントなども利用して、