お金で確実に幸せが買えることはないのですが、有意義なことにお金を使えば幸せになれる確率は格段に上がります。世の中のお金持ちの人は大抵の場合(意識しているのか無意識なのかはわかりませんが)、幸せになるためにお金を使っています。
一方、貧しい人は幸せから遠ざかるようなお金の使い方をしているのでいつまでたっても幸せにならず、他人を妬むような生き方を続けます。他人を妬むだけのみすぼらしい人生から脱却するためにも、正しいお金の使い方を知りましょう。
お金は使うためのもの
究極的には、お金は稼ぐものでもなく、貯めるものでもなく、使うものです。高額所得者で、貯金がいっぱいあっても、それを使う時間がなかなか取れないと幸せにはなれません。
現役時代に頑張って働いて、引退したら旅行や趣味を楽しもうと思っても、引退する頃には満足に身体が動かなくなったり、若い時代には興味を持っていた旅行や趣味がどうでも良くなっていたりすることがしばしばあります。
それでは頑張って稼ぎ、貯めた意味がなくなってしまいます。お金の使い方と若いうちから向き合うことによって、より幸福になれるお金の使い方を把握することができます。
研究でわかった5つの幸せになるお金の使い方
ハーバード大学のマーケティング専門家であるマイケル・ノートン博士とカナダ・ブリティッシュコロンビア大学の心理学者エリザベス・ダン博士によれば、以下の5つのお金の使い方をすることによって、幸せに近づくことができます。
経験を買う
お金で買えるものは、大きく分けて2種類に分類できます。車、家、家具、電化製品といった形のある「もの」と、旅行やコンサート、パーティなどの形のない「経験」です。
研究によれば、このうちより人生の幸福度を効率的に増やせるのは「経験」の方なのだとか。
多くの人にとって人生で一番大きな買い物はやはりマイホームかと思いますが、研究によればマイホームを持っている人と賃貸物件に住んでいる人の間に幸福度の差は殆どなかったそうです。
高いお金を出しているにも関わらず、マイホームは人々をあまり幸せにはしてくれないということです。無論、これは平均値の話であり、マイホームを買ったことで満足する人もいますが。
ものを買うと、たしかにその瞬間は幸せになります。しかし、時間が経てば経つほど、自分の中でその物の価値が薄れて、別のものに興味が移ってしまいます。何時間も並んで高いお金を払ってiPhone6を手に入れても、その後iPhone7が発売されたら手元のiPhone6はどうでも良くなってしまうわけです。
もちろん、iPhone7を手に入れても、iPhone8が発売されればiPhone7はどうでも良くなってしまいます。人間の欲望は無限大なので、物質で心を満たそうとすると無限のお金が必要になってしまうのです。
一方、経験は物質とは逆に、購入してから時間が経つほど自分の中で価値が上がっていきます。子育て真っ最中は色々と辛くても、子供が独立したあとでそのことを思い出すと「あの頃は楽しかったな」という気持ちになれるのはそのためです。
これは子育てに限らず、旅行、イベントなどにも言えることです。こうした経験にお金を出すことは、幸福追求としては極めて正しいといえます。
時間を買う
自分が一生涯の間にが使えるお金に限りが有ることは皆さんご存知かと思いますが、一方で自分が一生涯の間に使える時間にも限りがあることは意外と失念してしまいがちです。
特に現代ではなかなか若いうちに人が死なないため、死がまるで自分とは関係のない物語のように思えてしまいますが、人間はいずれ必ず死にます。お金持ちも、貧乏な人も、男性も、女性も、聖人君子も、犯罪者も、必ず死ぬのです。
そのことを理解していれば、少しの金額を節約するために、遠くのスーパーまで出かける行為が以下に非効率的なことであるかがわかります。1時間かけて100円を節約する行為は、時給100円で働いているのとかわりありません。1時間100円で人生の貴重な一部を切り売りするような行為は慎むべきです。
旅行で東京から大阪に行く場合は、新幹線を使えばお金はかかりますが、約2時間で行けますし、道中も快適です。高速バスならばお金や節約できますが、時間は7時間ぐらいかかりますし、座席も狭く不快です。徒歩ならばお金はかかりませんが、何日もかかりますし、なにより疲れます。
むろん、高速バスを使うのが大好きで、高速バスに乗るという経験がしたいのならばそちらを選ぶのはアリですが、そうでないのならば時間が節約できて快適な新幹線に乗った方が、現地で使える時間も増え、たくさん思い出が作れます。
もっと身近なところでは、ベビーシッターや家事代行を頼むというのも時間を買う行為といえます。
たとえベビーシッターや家事代行業者にお金を払っても、それで浮いた時間でもっと価値のある仕事や経験をすれば、トータルではプラスになります。時間を節約できることに大胆にお金を使うのも、幸せへ近づく道の一つです。
先にお金を払い、あとで商品を受け取る
お金を使って何か買い物をする場合、後払いよりも先払いのほうが幸福感を高める事がわかっています。
これをもっと大きく解釈すると、苦痛と快楽の両方が得れることが明らかになっている場合、苦痛を先に体験し、あとで快楽を得たほうが、総合的な幸福感は大きくなるということです。
例えば、旅行会社が販売しているツアープランは、大抵の場合旅行代金(苦痛)は先払いで、その後に実際のツアー(快楽)に参加することになります。これは人間の心理をよくわかった構成です。逆に、クレジットカードで先に商品を手に入れてから分割払いをするのは、先に快楽を得て後で苦痛を得るという、最もまずい買い方です。
この原理は仕事などでも使えます。例えば、クライアントにいい情報と悪い情報をまとめて伝えなければならない場合、悪い情報を先に伝えてから後でいい情報を伝えると、クライアントの満足度が上がり、こちらの思うとおりに運べる可能性が高まります。
その他にも勉強は嫌いな分野から始めるとか、ジムでのトレーニングは苦手なものから始めるとか、家の掃除は最も面倒なところから始めるとか、色々活用できます。苦痛の先払いで幸福感を高めていけば、人生の満足度も上がります。
相手に利益を与える
他人のためにお金を使うと、自分の人生の満足度が上がります。他人のために何かをしてあげたという事実が、そのまま満足感に繋がるのです。
例えば、世の中の大金持ちは総じてチャリティーや慈善事業に協力的です。
もちろん、そうした活動に精を出すことによって自身の評判を高めたい、商売で有利に働くかもしれないという目論見もあるのでしょうが、幸福感を高める効果に魅了されている面も少なからずあることでしょう。
といっても、我々はビル・ゲイツのように何億ドルも寄付することはできません。無理のある慈善活動は長続きしませんし、自分を不幸にします。
我々はたまにコンビニで受け取ったお釣りを募金箱に入れたり、身近な人にプレゼントを送ったりするだけでいいのです。それで十分幸福になれますし、どこかの誰かがほんの少しだけ喜びます。
ご褒美には制限をかける
自分の好きなものは毎日食べられる!と思っていても、実際に毎日食べてみるとすぐに飽きてしまった、という経験をしたことがある方も少なくないのではないでしょうか。
好きなものにはあえて制限をかけて、何か成し遂げた時にだけ消費するようにしたほうが、却って幸福感を高める結果につながります。
行動経済学が明かす幸せへの近道
人間の合理的、あるいは非合理的な心理、思考に重点を置いた経済学を行動経済学といいます。ノートン・ダン両教授の研究も、行動経済学に重点を置いたものになっています。多くの研究者によって、以下の様なことが明かされています
お金は一括で払い、商品は分割で受取ると幸福度が増す
人間は何かを失うと損失感を感じ、何かを得ると利得感を感じます。しかし、この損失感や利得感は単純に足し算できるものではありません。例えば、1000円を1回失うのと、100円を10回失うのでは、合計損失額は同じですが、損失感は後者のほうが高くなります。
一方、1000円を1回得るのと、100円を10回得るのでは、合計利得額は同じですが、利得感は前者のほうが高くなります。要するに、損失も利得も小分けにするとその感情が大きくなるということです。
つまり、損失感を少なくして、利得感を大きくするためには、損失は一度に支払い、利得は分割して受け取った方がいい、ということになります。
旅行会社のツアープランが一括払いなのも、損失感を少なくするための演出です。そして旅行先では様々な経験(利得)が得られるため、満足して旅行を終えられるのです。
逆に、最悪なのは商品を1回で手に入れ、その代金は分割で払う、つまりは自動車ローンや住宅ローンです。せっかく苦労して自分だけの住宅を得ても満足度が殆ど変わらないのは、住宅ローンの性質のせいなのかもしれません。
自身の健康に投資すると幸福感が増す
お金で大抵のものは変えますが、中には買えないものもあります。そしてお金で買えないものの中でも特に代表的であったものが健康です。が、現代においては、健康すらもある程度お金で買えるようになっています。
厚生労働省の行った調査によれば、所得が低い世帯ほど穀物の摂取量が少なく、肥満の割合が多く、運動量が少なく、喫煙率が高く、健康診断を受けていない人の割合が多くなっています。
つまり、低所得な人ほど健康に対する意識が低く、実際に不健康であるということです。言いかえれば、高所得者は健康に気を使っており、健康診断などにもお金をかけている、ということになります。
当然、健康な人のほうがそうでない人よりも人生に対する満足度は高いです。自分の健康にお金を使うことは、人生をより良くすると言って差し支えないでしょう。
自分の性向を知ることも大切
さて、ここまで色々と幸せになるお金の味方を見てきましたが、これはいずれも概論、一般論であり、すべての人に当てはまるわけではありません。
中には人のためにお金を使っても損したという気持ちにしかならない人もいるでしょうし、分割払いのほうが得した気分になるという人もいるでしょう。大切なのはそうした自分の特性、感じ方をしっかりと把握し、それに沿った行動をすることです。