日本銀行券や硬貨などのお金が作られ流通し破棄される流れとは?

お金(現金)を一度も使ったことがない人はまずいないかと思いますが、お金がどこでどのように作られ、流通し、破棄されていくのかは知らない人は結構多いのではないかと思います。

よくある勘違いは「日本のお金はすべて日本銀行が印刷している」というものです。

たしかに紙幣を発行しているのは日本銀行ですが、実際に印刷しているのは国立印刷局です。紙幣をよく見てみると「国立印刷局製造」という文字が見つかるはずです。国立印刷局は東京都港区に本局があり、全国に6つの工場があります。

また、硬貨は日本政府が発行していますが、実際に製造しているのは造幣局です。大阪市北区天満日本局があり、埼玉と広島に支局があります。今回はこれらの施設でお金が具体的にどう作られているのかを解説いたします。

日本銀行券が製造され、日本銀行に送られるまでの流れ


日本銀行券は、日本銀行の指示に基づいて、国立印刷局が印刷します。印刷するというのは簡単ですが、実際に印刷に至るまでには多くの工程をクリアする必要があります。紙幣を印刷するまでの主な工程は以下のとおりです。

  • 製紙工程
  • 材料工程
  • 印刷工程

製紙工程

製紙とは、紙を製造することです。日本紙幣は市販品として売られているようなコピー用紙やメモ帳などとは大きく異なる、独特な手触りと色味を持つ、耐久性が高い紙でできています。

このような紙を作るのには手間も時間もかかります。製紙工程を更に細かく見ていくと、以下のような工程に分けられます。

  • 原材料収穫
  • 裁刻
  • 離解
  • 精選
  • 叩解
  • 調合
  • 抄造
  • 断裁

原材料収穫

日本紙幣用の紙を作るために必要な原材料は三叉、アバカなどです。アバカとはマニラ麻とも呼ばれる熱帯地方の山間部に生息する多年草で、見た目はバナナに似ていますが、食用の実がなるわけではありません。日本は主にフィリピンからアバカを輸入しています。

裁刻

紙を作るためにはまずパルプを取り出す必要があります。パルプは紙を作るための原料で、植物の繊維から得られます。パルプを取り出したら、専用の大きな裁断機でそれを細かく砕きます。

離解

パルプを細かく砕いたものに、大量の水を混ぜます。こうすることによって繊維が解きほぐされます。

精選

原材料に含まれている異物を取り除きます。

叩解

離解によって解きほぐされた繊維を、さらに細かくすりつぶします。繊維がよく絡むほど引っ張りに強くなるため、できる限り細かくすりつぶします。

調合

叩解ですりつぶした繊維に、薬品を混ぜて紙のもととなる紙料を作ります。

抄造

出来上がった紙料を網の上に薄く流して均し、乾燥させます。するとわれわれが知っている「紙」の形状になります。十分乾燥したら大きなトイレットペーパーを作るように巻き取ります。

断裁

巻き取った紙を、印刷に適した大きさに切り分けます。

材料工程

お金の印刷に必要なのは紙だけではありません。紙に文字や肖像などを書き込むためのインクや原版は欠かせませんし、お金のデザインも考えなければなりません。これを作るのが材料工程です。

材料工程を更に細かく見ていくと、以下のような工程に分けられます。

  • 原図
  • 原版
  • デジタル製版
  • 版面作成
  • インク製造

原図

デザインや彫刻の専門家である工芸官が、お金のもとになる図を作成します。イラストレーターなどのソフトウェアは使わず、筆や色鉛筆などを使って精密に作成します。

原版

原図を元に、特殊な彫刻刀を使って金属板に溝を掘り、原版を作成します。原図と同様に手作業で行います。

デジタル製版

お札の細かい模様、背景、彩紋と呼ばれる幾何学模様などは細心のコンピュータでデザインします。

版面作成

原版を元に、一度にたくさんの印刷ができる多面の印刷用版面を作成します。

インク製造

顔料とワニス(樹脂などを溶かした透明の塗料)を独自の配合で混ぜたインクを作ります。

印刷工程

今まで製造した紙、インク、製版などを使って、実際にお金を印刷します。

  • 印刷
  • 貼付
  • 記番号印刷
  • 断裁
  • 検査・仕上げ
  • 封包
  • 日本銀行へ送金

印刷

お札専用の印刷機に反面をセットして、まずは裏面、次に表面を印刷します。凹版印刷(版画のように凹んだ部分にインクを入れて印刷する方法)とオフセット印刷(インクを一度転写してから印刷する方法)を併用しているため、精度が高く偽造が難しい紙幣が製造できます。

貼付

1万円札と5000円札には、角度を傾けることによって画像が変化して見えるホログラムを貼付します。

記番号印刷

記番号とは、アルファベットと数字からなる文字列です。

記番号は8桁~9桁で、最初の1~2文字がアルファベット、その後6時文字の数字が続き、最後に1文字のアルファベットという組み合わせになっています。ただし、アルファベットの「I」と「O」はそれぞれ数字の1と0に似ていることから使われません。

すべての組み合わせを使い切ってしまった場合は、インクの色を変える事によって区別します。インクの色も文字列も全く同じということはありえません。

断裁

断裁機という機械を使って、製造されたお金を正しいサイズに切り分けます。

検査・仕上げ

製造された紙幣を機会を使って1枚1枚チェックします。問題がない紙幣は1000枚ずつの束にまとめられます。

封包

1000枚ずつの束になった紙幣をフィルムでおおいます。

日本銀行へ送金

封包した紙幣を日本銀行に送ります。

日本銀行に送られたお金が市場に出回るまでの流れ

造幣局から日本銀行へと送られた日本銀行券は、民間金融機関を通じて市場へ出回ります。

銀行や証券会社などの民間金融機関は、日本銀行に対して日本銀行当座預金という預金を預けています。

これは民間金融機関が他の民間金融機関・日本銀行・国などと取引する際の決済手段にも使われますが、金融機関や個人や企業に支払う現金通貨の支払準備という役割も持っています。

また、民間金融機関は日本銀行当座預金に対して、顧客からの預金の一定割合を預けなければいけないというルールがあります。預け入れなければならない最低金額を「法定準備預金額」といいます。ここを超える部分については、自由に出し入れできます。

民間金融機関が日本銀行当座預金から自由に出し入れできる分の預金を引き出すときに、日本銀行は手持ちの紙幣を渡します。

民間金融機関はその受け取ったお金を、顧客の個人や法人などに渡します。こうすることによって、日本銀行内のお金が市場にと出回っていくのです。

金融緩和政策が行われると日銀当座預金残高が増える

不景気時・デフレ時には金融緩和政策が行われます。金融緩和政策の一つに買いオペが有ります。買いオペとは、おもに民間金融機関から国債などを買い取ることです。

日本銀行が民間金融機関の国債を買い取ると、民間金融機関の当座預金残高が増えます。

すると民間金融機関が自由に使えるお金が増えるので、お金を貸しやすくなるため、市場に出回るお金の量が増えます。お金の流通量が増えるとお金の価値が下がるのでデフレが解消される、という仕組みです。

逆に好景気時・インフレ時には金融引締め差異作が行われます。金融引締め政策の一つに売りオペが有ります。売りオペとは、おもに民間銀行に国債などを売ることです。

売りオペを行うと民間金融機関が自由に使えるお金が減り、お金が貸しづらくなるので、市場に出回るお金の量が減ります。お金の流通量が減るとお金の価値があがるのでインフレが抑制される、という仕組みです。

マネーストックに対する現金の流通量は意外と少ない?

マネーストックとは、「金融部門から経済全体に供給されている通貨の総量」のことです。もう少し具体的に言えば、個人や法人、地方自治体など(金融機関と中央政府以外の経済主体)が保有する通貨のことです。

ここで言う通貨とは、現金だけではありません。普通預金や定期預金、外貨預金などもマネーストックとして扱われることがあります。

マネーストックにも幾つか定義が有り、どの範囲までを通貨に含めるかでM1(エムワン)、M2(エムツー)、M3(エムスリー)、広義流動性の4つにわけられます。現在はM3が重視されることが多いです。

M3は

  • 現金
  • 要求払預金
  • 定期性預金
  • 外貨預金
  • 譲渡性預金

から成り立っています。要求払預金とは預金者の要求に応じてすぐに払い出される預金の総称です。普通預金、当座預金などが代表例です。

譲渡性預金とは、他人に譲渡できる定期預金です。通常の定期預金は他人に譲渡できませんが、譲渡性預金は銀行から証書を発行してもらえば預金をそのまま譲渡できます。

M3のうち現金が占める割合はおよそお10%程度です。

流通した紙幣が破棄されるまで

紙幣は丈夫な紙で作られていますが、度々人の手にさらされるため、寿命は意外と短いです。1000円札ならば1年~2年程度、比較的使われづらい1万円札でも5年程度で寿命が来ます。

寿命が来たり、一部が破損したりした紙幣は民間金融機関に持っていけば、別の紙幣と交換してもらえます。日本銀行に直接持ち込んでもいいですが、家や職場が日本銀行に極めて近い人以外はすることはないでしょう。

寿命が尽きたり破損したりした紙幣を受け取った民間金融機関は、日本銀行にそれを送ります。日本銀行はその紙幣の枚数と真偽、状態を確認します。

まだ使えると判断された紙幣は再度供給されますが、もう使えないと判断された紙幣は復元できない大きさまで裁断されてしまいます。

裁断された紙幣はかつては一般廃棄物として処理されていましたが、最近は紙幣屑を様々な形で再利用する取り組みを始めています。

現在は廃棄される紙幣の約6割が健在、固形燃料、トイレットペーパー等に生まれ変わっています。残りの約4割は地方自治体の焼却施設で焼却処分されています。

紙幣に使われている紙は紙質が固く、落ちにくいインクもついていることから、一般用の紙にリサイクルするのは難しいと言われていましたが、最近は技術の進展によってリサイクル率がかなり高くなりました。

プラスチック紙幣導入の取り組み

近年、プラスチック紙幣を採用する国が増えてきています。プラスチック紙幣とはその名の通りプラスチックで出来た紙幣で、オーストラリアで開発されたものです。現在約30の国と地域が一部もしくは全部の紙幣をプラスチック紙幣にしています。

プラスチック紙幣は偽造がしづらい、耐水性に優れる、寿命が長い、リサイクルしやすいなどのメリットがある反面、お札が滑りやすい、お札同士がくっついて扱いづらい、生産コストが高いなどのデメリットもあります。日本でも導入される日がいつか来るかもしれませんね。

硬貨が製造され、日本銀行に送られるまでの流れ

硬貨は、日本政府の指示に基づいて、造幣局が製造します。主な工程は以下のとおりです。

  • 溶解
  • 熱間圧延・冷間圧延
  • 圧穿
  • 圧縁
  • 圧印・検査
  • 計数・袋詰め

溶解

銅やニッケル、亜鉛などの金属を電気炉で溶かし、鋳塊を製造します。鋳塊とは溶かした金属や合金を鋳型に流し込んで固めたものです。

熱間圧延・冷間圧延

製造した鋳塊を均熱炉で加熱し、鋳塊を伸びやすい温度温度まで加熱して所定の厚さまで伸ばします。これを熱間圧延と言います。

その後さらに常温で圧延し、貨幣の厚みの薄板にします。これを冷間圧延と言います。

冷間圧延が終わると、1枚の大きな金属の板(圧延板)が出来上がります。

圧穿

圧延板を貨幣の形に丸く切り取ります。この切り取られた貨幣のもとになる丸い金属板を「円形(えんぎょう)」といいます。

圧縁

貨幣に模様をつけやすくするため、円形の周囲に縁をつけます。縁をつけたら焼きなましと呼ばれる熱処理を施して、模様をつけやすくします。

圧印・検査

表や裏に所定の模様をつけて、検査を行います。傷があったり、模様がずれていたりする貨幣はここで取り除かれます(たまに取り除かれずに流通することがあり、それらはエラーコインとして額面よりも高く取引されることが多いです)。

計数・袋詰め

無事合格となった貨幣は計測され、袋詰されて日本銀行に送られます。

硬貨の寿命

硬貨は紙幣よりもはるかに頑丈で傷つきづらい金属でできていますので、寿命はかなり長いです。

30年ぐらい経つと摩耗したり汚れが目立ったりするようになりますが、それでも問題なく使えます。

基本的に寿命というものは存在せず、その硬貨の流通が法律で停止されるか、極端に傷むかしない限り、半永久的に使えるという解釈で間違いないでしょう。

どうしても交換したい場合は、日本銀行の本支店、もしくは民間の銀行で交換が可能です(民間の銀行は受け付けていないこともあります)。

なお、市中に流通した硬貨が再び日本銀行に戻ってきた場合、その効果は再使用可能なものとそうでないものに分けられます。

再使用可能なものは再び民間金融機関を通じて市中に出ていきますが、そうでないものは造幣局に戻され、素材別に鋳潰され、再び貨幣の材料となります。

なぜ硬貨の加工は違法で、紙幣の加工は違法ではないのか

日本には貨幣損傷等取締法という法律があり、それによると貨幣を損傷または鋳潰すことを禁じるとの文言が記載されています。

ここで言う貨幣とは500円玉、100円玉、50円玉、10円玉、5円玉、1円玉、そして各種記念貨幣のことで、要するに硬貨のことです。硬貨を勝手に加工すると罰せられるわけです。

2017年10月には、貨幣損傷等取締法の疑いで、硬貨を加工したマジック道具販売業者兼マジシャンの男性ら3人が逮捕されています。(参考:手品用に硬貨加工容疑 3人逮捕、プロにも販売

一方、紙幣についてはこの法律の対象外です(もちろん偽札を作るのは犯罪です)。一体なぜ硬貨の加工だけが禁じられているのでしょうか。この理由を理解するためには、この法律ができた当時=1947年の日本経済について理解する必要があります。

当時、日本は終戦食後でハイパーインフレによる物資不足が続いていました。金属も不足しており、経済安定のために効果を大量に供給しても、勝手に加工されて(溶かされて)金属材料として売られ兼ねないご時世でした。

そのようなことが起こると硬貨の流通量がコントロールできなくなるため、法律で加工事態を禁止したのだと思われます。法律の制定から約70年経った現在ではこのようなリスクは極めて低くなりましたが、まだこの法律自体は残っています。

ちなみに、紙幣は所詮紙であり、材料としての価値は非常に低いため、加工しても罰されないものと思われます。

まとめ

  • 紙幣は日本銀行の指示の下、国立印刷局で発行される
  • 紙幣は民間金融機関を通じて市中に出回る
  • 寿命が来た紙幣は日本銀行に戻され、約6割がリサイクルされる
  • 硬貨は日本政府の指示の下、造幣局で製造される
  • 硬貨は金属でできているため、寿命が非常に長い
  • 硬貨を加工するのは犯罪である

お金について最も学びたいという方は、お金に関する雑学の記事も参考にしてください。

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