今回は日本と海外の借金や上限金利・総量規制を取り巻く環境について、お話したいと思います。
目次
日本の上限金利と総量規制
まずは日本の借金事情について見ていきましょう。日本の利息の上限を決める法律は出資法と利息制限法です。
かつては出資法と利息制限法で上限金利が違っていたため、いわゆるグレーゾーン金利というのが存在していたのですが、出資法が改正されたことにより、グレー金利は消滅しました。(グレー金利時代にお金を借りていた人は過払い金がないか確かめましょう)。
現在の法律では、上限金利は15~20%(融資額により異なる)と定められています。
また、日本には総量規制という規制があります。総量規制とは簡単にいえば、消費者金融が個人に対して過度な貸付(年収の3分の1以上の貸付)を行わないように定められた規制のことです。例えば、年収が600万円の人は、200万円までしか借りることができません。
ただし、全ての貸付が総量規制の対称となるわけではありません。総量規制の対称となるのは消費者金融からの借り入れ、信販会社からの借り入れ、クレジットカードの利用などです。
銀行からの借り入れ、住宅ローンや自動車ローン、担保がある借り入れなどは総量規制の対象外となっています。
アメリカは州によってルールが異なる
まずは世界一の超大国にして、世界経済に対する影響力が最も大きいアメリカの事情を見ていきましょう。アメリカは個人消費が旺盛な国として知られています。日本の全GDPに対する個人消費の割合は60%弱程度ですが、アメリカでは70%前後となっています。
この旺盛な個人消費が経済の牽引役であり、また日本人ほど借金に対する警戒心が強くないこと、クレジットカードの審査が緩いことなども手伝って、多くの人が借金をしています。
個人向け金融情報サイトのバンクレート・ドットコムが2015年2月に行った調査によれば、アメリカ人の8人に3人はクレジットカードの負債額が貯蓄を上回っているとか……日本人の経済観念からは考えづらい行動ですね。
さて、気になるアメリカの借金事情ですが、アメリカは連邦国家であるため、州によってそのシステムが異なります。例えば、ニューヨーク州の場合、上限金利は25%となっています。日本が20%なのと比べるとやや高いですね。
アメリカの消費者金融の有名なサービスに「ペイデーローン」があります(ペイデーローンを禁止している州もあります)。これは給料をローンの担保にする借金です。給料を担保にするくらいなら給料日まで待てばいいじゃないか、と思いますが……。
また、アメリカには日本のような総量規制がありません。自己責任を重んじるアメリカならではといえますね。
中国は人民銀行の金利が上限金利の基準に
中国は社会主義国家であるため、かつては消費者金融というものの存在自体が認められていませんでしたが、2009年に貸金事業ができるようになりました。日本には見られない商業銀行や小額貸付会社、第三者支払い機関などの金融機関も、貸金事業を行っています。
中国の上限金利は、中央銀行である人民銀行の基準金利の4倍までとなっています。人民銀行の基準金利はこのところ5~8%ぐらいで推移しているので、概ね20~30%程度ということになります。日本より少し高いか、ほぼ同じくらいですね。
また、中国には総量規制もあります。中国の総量規制は「月収の5倍まで」つまり「年収の12分の5まで」です。日本の総量規制は年収の3分の1、つまり12分の4なので、それよりもちょっとだけ緩いということになります。総じて日本に近い制度を採用しているといえます。
ドイツには消費者金融がない!
景気が低迷する中でも経済大国として一定の地位を守っているドイツ。実はこの国には、日本の消費者金融や商工ローンのような、いわゆるノンバンクに当たるものがありません。
ドイツでお金を借りようと思ったら、銀行や信用機関で借りるしか無いのです。ドイツは消費者保護の考えが強いためです。
上限金利は法律で定められているわけではないですが、判例法で存在しています。市場金利の2倍、もしくは市場金利+12%を超える金利は無効とされています。日本と比べると低金利ですね。なお、総量規制はありません。
イギリスにはつい最近まで上限金利がなかった!
紳士的な国というイメージが強いイギリスですが、実はこの国、つい最近まで上限金利というものがありませんでした。
割りと早い段階からイギリス国内でも上限金利を制定しようという動きはあったのですが、消費者金融団体や元より、消費者団体からも抗議を受けたためその計画は頓挫してしまいました(消費者団体が工具したのは審査が厳しくなるのを恐れてだそうですが……)。
そのため、なんと少し前までは年利4000%、あるいは5000%というような金利も横行していました。日本のヤミ金も真っ青な金利ですね。
こんな金利で誰が借りるんだ、と思われるかもしれませんが、イギリスの場合はお金は短期で返すのが一般的なので、金利が高くてもあまり問題にならないのだとか。
とは言え流石にこれは高過ぎるということで、2015年に上限金利が定められました。しかし、その金利は292%と、他の国と比べると異常に高い数値です。こんな金利でも借りる人がいるのだから、消費者金融は笑いが止まらないでしょうね。なお、総量規制はありません。
韓国の上限金利はかなり高い
日本の隣国である韓国には、実は日系消費者金融が多数進出しています。なんと、韓国の消費者金融市場の5割り以上を日系企業が占めています(金額ベース)。
アメリカ同様に消費は旺盛であり、カジノ(韓国では合法)の周辺に数多くの貸金業者が見られるほか、乗ってきた車を担保にお金を貸す消費者記金融など、日本では見られないタイプの消費者金融もあります。
韓国の上限金利はかつて(2002年頃まで)は66%と世界有数の高さでした。その後何度か段階的に引き下げられ、2014年には34.9%になりました。
日本よりだいぶ高いとはいえようやくだいぶ落ち着いたように見えましたが、なんと2016年には40%まで逆戻りしてしまいました。
本来、34.9%にまで引き下げられたのは暫定措置だったため、延長手続きをしなければならなかったのですが、国会のゴタゴタで手続きが取られなかったのです。
韓国は借金社会であると言われています。2014年時点の韓国人の一人あたりの借金額は232万円とかなり高く、専門家の4割が3年以内に金融危機が発生すると警告しています。
最後に
他の国と比べると日本の上限金利は至って良心的な水準になっていますが、それでも流行り借り過ぎは良くありません。借金の返済が厳しくなってきたら、債務整理を検討したほうが良いかもしれません。