自己破産大全!メリットデメリットからチャラになる借金の統計まで

債務整理の中でも最も効果が大きく、またデメリットも大きいとされている自己破産。

経済状況の低迷が続く現在の日本では、自己破産まで行きつく人も決して少なくありませんが、自己破産するといったいどのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。また、自己破産はどんな人がしているのでしょうか。一緒に見ていきましょう。

自己破産は借金を帳消しにするほぼ唯一の制度

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自己破産というワードを聞いたことがある方は少なくないかと思いますが、その内容や効果までをはっきりと認識している人はそうは多くないかと思います。自己破産とは簡単に言えば、借金をチャラにする制度です。債務整理の中でも、最も借金の圧縮幅が大きいです。

そもそも、借金を整理する仕組みはまとめて債務整理といいます。債務整理の中に「任意整理」「個人再生」「自己破産」などがあります。任意整理は簡単に言えば私的な話し合いによって借金を減額する制度、個人再生は裁判所を通して借金を減額する制度です。

任意整理・個人再生はあくまでも借金を減らす制度であって、借金そのものをなくす制度ではありません。それに対して、自己破産は借金そのものをなくす制度です。合法的に借金をなくすほぼ唯一の制度が自己破産なのです。

借金の時効を迎えるのは非常に難しい

先ほど自己破産は合法的に借金をなくすことができるほぼ唯一の制度だと申し上げました。なぜ「ほぼ」なのかというと、実は借金には時効があるのです。時効を迎えたうえで所定の手続きを行った借金は、チャラになるのです。

それならばデメリットの大きそうな自己破産などせずに、ただひたすら借金の時効を待った方がいいように思えますが、その戦術は必ずしも正しいとはいえません。

借金の時効自体は5年、もしくは10年(銀行や消費者金融などの商取引の借金は5年、個人間の借金は10年)とそれほど長くないのですが、時効は様々な手続きによって中断してしまうからです。

たとえば、債務の承認があった場合、つまり債務者がその借金が自分のものであると認めた場合には、時効は中断します。債務が自分の借金であると認めるということは、簡単に言えば、1円でもその借金を返すことです。

債務者が1円でも借金を返してしまった場合、今まで経過していた時間がリセットされてしまいます。

また、債権者が裁判になる前に、「借金を返済してください」という督促の書類を内容証明郵便で送付すると、事項を一時的に中断することができます。

中断される期間は6か月ですが、債権者はこの間に裁判の準備をすることができます。訴状の提出が行われたり、仮執行宣言が行われた場合は、時効は中断します。

このように、借金の時効を迎えるというのは簡単なことではないのです。金融機関も金貸しのプロなので、債務者を放置することはまだ考えられません。あの手この手を使って時効を中断させようとします。もちろん、それは金融機関に認められた正当な権利です。

また、仮に時効期間(5年または10年)が過ぎたとしても、それだけでは時効は成立しません。その借金が時効であることを、書類を用いて証明する必要があるのです。

仮にここまで手間と時間をかけて時効が成立し、借金がチャラになったとしても、そのあとに待っているのはいばらの道です。時効期間が過ぎ、借金がチャラになることを時効援用といいます。

時効援用が認められたことは、信用情報機関に登録されます。銀行や消費者金融はローンの審査を行う際に、この信用情報機関の情報にアクセスします。つまり、その人が時効援用をして借金を踏み倒したという事実は、金融機関に筒抜けになるわけです。

そして、どの金融機関も基本的に、時効援用を受けたことがある人に対してはお金を貸そうとしません。銀行であっても、消費者金融であっても、信用金庫であってもです。つまり、時効援用を受けると、二度と金融機関からお金を借りることができなくなってしまうわけです。

仮に子供ができたとしても学資ローンは組めませんし、自動車ローンや住宅ローンも組むことができません。現金一括以外での買い物は一切できなくなってしまうのです。

自動車ぐらいならば頑張れば現金一括で買えるかもしれませんが、住宅を現金一括というのはかなり無理がある話です。時効援用を受けたら持ち家を持つのはあきらめたほうがいいでしょう。

このように、時効援用には借金を帳消しにできるというメリットを補って余りある非常に大きなデメリットがあるのです。一方、自己破産にもそれなりにデメリットがありますが、時効援用のように二度と金融機関から借金できなくなるということはありません。

一定の期間(5年~10年程度)借金ができなくなることはあっても、一生借りられないということは考えられません。自己破産後生活をしっかりと建て直せば、住宅ローンや自動車ローンを組むことだってできます。

自己破産のメリットは?

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さて、ここまで自己破産の概要についていろいろと説明してきましたが、自己破産にはいろいろなメリットとデメリットがあります。まずはメリットの方から先に説明していきたいと思います。自己破産を選択することによって得られるメリットは以下の4点です。

借金がチャラになる

散々申し上げてきた通り、自己破産は借金をチャラにすることができるほぼ唯一の制度です。債務整理や個人再生は借金を減額する制度なので、借金があまりにも多すぎる人にとってはあまり意味をなさないことがあります。その点、自己破産をすれば借金は1円もなくなります。

自己破産をした時点で、取り立てが止む

一般的な消費者金融や銀行の取り立てはガイドラインにのっとって行われます。現在は取り立てにも厳しい規制があるので、ドラマのように怖い人が家に押し寄せてきて関西弁で脅してくるといったようなことはまず考えられません(闇金から借りていた場合は別ですが)。

しかし、それでも毎日毎日取り立てにあっていると精神を結構病みます。すべては身から出た錆であり仕方のないこととはいえ、それは辛いですよね。

しかし、自己破産の申請をすれば、取り立ては嘘のようにぴたりとやみます。裁判所に自己破産の申請を行うと、その直後に裁判所は各金融機関に「意見聴取書」を送付します。

意見聴取書はその名の通り、裁判所が金融機関の意見を確認するために送付される書類ですが、実はこの書類には取り立てを規制する効果があるからです。

一定の期間、借金ができなくなる

これは一見デメリットに見えますが、実はデメリットの方が大きいです。なぜなら、借金ができなくなれば借金体質を改善することができるからです。

自己破産に陥る人は皆どこか見栄っ張りだったり、収入と支出のバランスが取れていなかったりします。そうした借金体質を一定の期間で改善することができるのは大きなメリットといえます。

一定の期間ができれば借金ができるようになる

時効援用を受けた場合は一生借金をすることができませんが、自己破産の場合は一定期間が過ぎればまた借金をすることができます。

自己破産のデメリットは?

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自己破産はこのようにメリットも大きい仕組みですが、それに負けずとも劣らないくらい大きなデメリットもあります。自己破産の主なデメリットは以下の5点です。

一定以上の価値がある財産が没収される

自己破産を行った場合、債務者の財産は原則として処分され、債権者に分配されることになります。20万円以上の価値がある(購入時の金額ではなく、破産時の価値)財産は没収されます。持ち家の場合は当然それも没収されます。

20万円以下の財産及び、99万円以下の預貯金は生活再建のために残すことができます。

家族に影響が出ることがある

借金は個人単位のものなので、たとえば夫が自己破産をしたからと言って、妻がローンを組めなくなるといったようなことはありません。妻に十分な収入や安定した職業があれば、ほかの人と同じように借金をすることができます。

ただし、上記のとおり一定以上の価値のある財産は没収されるため、たとえば夫名義の住宅や自動車は手放すことになります。

任意整理や個人再生には財産の没収はないので、どうしても没収されたくない財産があり、なおかつある程度の借金ならば返せるという場合は、自己破産を選択しないほうがいいでしょう。

資格が制限されることがある

自己破産をすると、弁護士や司法書士、行政書士、税理士などの一定の資格が制限されることになります。制限される期間は自己破産の手続きが終わるまでの間、3か月から6か月程度とあまり長くはありませんが、こうした職業についている場合は注意が必要です。

借金が免責にならないことがある

どんな借金でも必ず自己破産が認められるわけではありません。決められたとおりに手続きを行っていても、一定の事由がある場合は、借金の免責が認められないことがあります。

これを免責不許可自由といいます。免責を認めるか認めないかの判断は裁判所が行います。免責不許可自由についてはこちらの記事も参考にしていただければと思います。

ただし、免責不許可自由があるからと言って、必ずしも自己破産が認められないわけではありません。裁判所が諸般の事情を考慮して免責とすることがあります。これを裁量免責といいます。よほど悪質な免責不許可自由がない限りは、裁量免責が認められるのが普通です。

すべての債務を免責しなければならない

自己破産では原則として、すべての債務を整理する必要があります。住宅ローンは免責してほしいけど、自動車ローンはこのまま払い続ける、といったようなことは不可能です。任意整理の場合はこうした一部の債務の免責が認められています。

連帯保証人の借金は免責とならない

自己破産をすると債務者本人の免責は認められますが、その連帯保証人の免責は認められません。債務者本人が自己破産をした場合、連帯保証人はそれを肩代わりして払わなければいけないということです。

強制執行も拒めないので、借金を支払うか、連帯保証人も債務整理するしかありません。なお、連帯保証人でない人には一切支払い義務はありません。それがたとえ家族であってもです。

自己破産の統計

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私的な手続きである任意整理は統計がありませんが、自己破産は公的な手続きであるため、正確な統計があります。裁判所の司法統計によれば、バブルがはじける前の自己破産件数は常に年間1万~1万5000件程度でした。

が、バブルの崩壊とともに自己破産件数は急激に増加、平成15年には約25万2000件にまで達しました。

しかし、その後自己破産件数は急激に減少しています。平成24年には久々に10万件を下回り、平成27年現在は7万件程度にまで減少しました。債務整理というものが広く知れ渡ったことにより、任意整理や個人再生などのほかの制度を利用する人が増えたせいかもしれません。

自己破産の原因

少し古いデータですが、2005年の日本弁護士連合会の調査によれば、自己破産の原因で最も多いのは「生活苦・低所得」で24.47%となっています。

以下「病気・医療費」が9.06%、「失業・失職」が7.17%で続いています。一方、「ギャンブル」は1.34%、「浪費・遊興費」は2.79%、「投資」は0.31%と少数派です。

自己破産時の月収

自己破産時の月収で1番多かった区分は「5万円未満」で全体の33%です。以下「10万円以上15万円以下未満」が18%、「15万円以上20万円未満」と「5万円以上10万円未満」が14%で続いています。

30万円以上の月収があったのは、全体の6%のみです。低収入がそのまま自己破産につながっていることがうかがえます。

自己破産者の職業

一番多いのは「給与生活者(会社員、公務員など)」で36.93%でしたが、「無職」も28.05%とかなりの割合を占めています。「パート・アルバイト・期間社員」は20.12%、「自営・自由業」は6.79%でした。

自己破産者の年代

最も多いのは「30代」で23.95%でしたが、「40代」も23.87%、「50代」が22.04%と僅差で続いています。「60代」は14.20%、「20代」は12.80%であり、年代にかかわらず多くの人が自己破産をしていることがわかります。

自己破産をする前に

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自己破産には前述のとおりメリットだけではなく、デメリットもあります。弁護士などとも十分に協議を重ねて、自己破産以外の解決方法がないか探ってみることも忘れないようにしましょう。