現在の日本には約500万人のギャンブル依存症患者がいると言われています。一口にギャンブルといってもいろいろありますが、その中でも多くの人が苦しんでいるのがパチンコ依存症です。
今回の記事では一体なぜ人はパチンコ依存症になってしまうのか、そこから抜け出すにはどうすれば良いのかを考えてみたいと思います。
パチンコ店舗数・プレイヤーは減り続けている
まずはパチンコに関する資料を幾つか見てみましょう。日本遊戯関連事業協会の発表に寄れば、平成10年に約1万7400店舗存在していたパチンコ店(パチスロ専門店など含む)はその後右肩下がりで減り続けており、現在の店舗数は1万2000店舗ほどになっています。
警察庁の集計でもほぼ同じような数字が出ており、全体として店舗が減少傾向にあることは間違いないようです。
また、公益財団法人日本生産性本部「レジャー白書」によれば、昭和50年代後半から平成初期にかけて約2900万人いたパチンコプレイヤーは、平成8年頃から急激に減少しており、平成10年には2000万人、平成19年には1500万人を割り込みました。
なお、ここで言うパチンコプレイヤーとは、年に1回以上パチンコをプレイした人の数です。
平成24年時点でのプレイヤー数は約1100万人で、全盛期と比べると約3分の1にまで減少しています。レジャーが以前と比べて多様化したこと、パチンコの危険性がある程度周知されたことが原因と思われます。
また、警察も以前と比べればパチンコ業界に対する圧力を強めています。「ギャンブル性の強い一発逆転の機械」の設置などの規制は以前と比べて厳重であり、パチンコ業界にとって冬の時代が来ていることは間違いないようです。
それでもギャンブル依存症がなくなったわけではない
とはいえ、依然として1年に1000万人以上の人がパチンコをプレイしている人が多いのも事実です。また、最近は自分がパチンコ中毒になっていることに気がつく人も増えてきています。
なぜ増えたかというと、以前と比べて勝ちにくくなっており、自分が損をしていることに気付きやすくなったからです。
前述のとおり、パチンコ業界は全体として縮小傾向にあります。お客さんの数が減ったにも関わらず以前と同じような商売をしていれば、当然利益は少なくなってしまいます。
しかし、パチンコ業界は特殊なところで、売上が下がっても還元率を操作することによって簡単に利益をアップすることができます。お客さんが減ったら還元率を低くして、お客さんが増えたら還元率を高くすれば、いつでも利益を安定させることができます。
今のパチンコ業界は以前と比べて少数の人が強烈にお金を吸い上げられている世界であることは間違いないでしょう。
人はなぜパチンコ依存症になるのか
パチンコ依存症でない人は、人がなぜあんなものに夢中になるのか理解できないかもしれませんが、実はパチンコには依存しやすい要素が沢山入っています。パチンコは競馬や競艇、宝くじなどと比べると依存症になりやすいギャンブルなのです。
派手な演出
パチンコメーカーはパチンコ店の稼ぎが増えるようなパチンコを作ろうと日夜努力しています。パチンコ店がなくなってしまったら、パチンコメーカーはおまんまの食い上げだからです。
パチンコメーカーはいかにしてプレイヤーをパチンコにのめり込ませるか、お金を使わせるかに心血を注いでいるのです。
パチンコ屋の店内は非常にうるさく、なおかつ眩しい場所です。何故うるさくて眩しいかというと、刺激的な音と光で脳に快楽を植え付けようとしているからです。
リーチアクション、予告音、ランプなど、ありとあらゆる演出を利用して、プレイヤーをパチンコ依存症にさせようとしていると言っても過言ではありません。
また、最近は芸能人や特定のアニメがパチンコとタイアップする機会が増えています。
芸能人やアニメ製作者にとってはパチンコ化は良い儲け話なのでそれに乗っかるのは当然といえますが、パチンコメーカー側はなぜ芸能人やアニメ制作者に金を払ってまでタイアップするのでしょうか。
理由は簡単で、その芸能人やアニメを視聴者が見るたびにパチンコのことを思いださせるためです。人気芸能人ともなれば毎日のようにテレビに出ますが、その芸能人がテレビに出るたびにパチンコのことを思い出してしまうパチンコ依存症患者は少なくありません。
この誘惑に耐えれる人はなかなかいないのです。
ここからはもうちょっと専門的な話をします。人間の脳内物質に「セロトニン」というものがあります。セロトニンはノルアドレナリン、ドーパミンと並ぶ三大神経伝達物質の一つで、人間の精神面に大きな影響を与えます。
心身の安定に寄与することから、幸せホルモンと呼ばれることもあります。うつ病患者などの精神疾患を抱えている人は、慢性的にセロトニンが不足していることが明らかになっています。
セロトニンが不足すると、ストレスに弱く、切れやすくなります。無気力無関心になり、簡単に快楽を得られるもの、つまりギャンブルから抜け出せなくなってしまいます。
ストレスでパチンコ屋に向かってしまう人が多いのは、セロトニン分泌を無意識のうちに求めているためです。
部分強化
心理学用語に「部分強化」というものがあります。部分強化とは、「ある行動をした時に報酬を与えたり、与えなかったりする」ということです。
これに対して、ある行動をした時に必ず報酬を与えることを「連続強化」と言います。ギャンブルは報酬がもらえることもあればもらえないこともあるので、部分強化といえます。
普通に考えれば、必ず報酬がもらえるに越したことはないのですが、人間というのはおかしなもので、未来が不確定な方が返ってのめり込んでしまうのです。
勝ったら「次も勝てる」とのめり込んでしまい、負けたら「次は勝って取り返す」とのめり込んでしまうのです。特に負けを繰り返した後の勝ちは強烈で、それでまたのめり込んでしまいます。
また、パチンコ依存症患者は多くの場合、パチンコは実力で勝つことが出来ると考えています。そのための努力(大抵は間違った努力)をしますが、その努力が報われることはありません。
自分の実力で勝てる(ように見える)ギャンブルは、そうでない完全運任せのギャンブル(宝くじなど)と比べてのめり込みやすい傾向にあります。
そもそもパチンコは胴元、パチンコ店が儲けるためのもので、パチンコ依存症患者は99.99%損をします。パチンコを通じて実力で儲ける唯一の方法は、パチンコ店の経営者になることと言っても過言ではないでしょう。
パチンコ依存症と借金
普通の人から見れば信じられない話ですが、世の中には借金をしてまでパチンコをする人がいます。
借金の利息を支払った上にパチンコ屋にまでご奉仕するなんて何を考えているんだ……と思える人は正常で、パチンコ依存症患者はパチンコで買って借金を返すという叶わぬ夢を見続けています。
借金をしてでもパチンコを打ち続けると、当然借金が膨らんでいきます。限度額いっぱいまで言ってしまえば当然正期の消費者金融などからは借りられなくなり、違法業者に手を出してしまうことになります。
気がついた時には後の祭りで、残ったのは違法業者からの借金だけだった……と言うのは、実はよくある話なのです。
パチンコ依存症から抜け出すには?
パチンコ依存症は非常に深刻かつ厄介な病気ですが、それでも対処法がないわけではありません。
パチンコ依存症は原則として完治することはありませんが、その特徴を十分に理解し、適切な行動が取れるようになれば、一生パチンコとかかわらずに生きていくことだって不可能ではないのです。
パチンコ依存症は病院で治療するのが原則
世の中にはパチンコ依存症を独力で治そうとする人も少なくないようですが、これははっきり言ってお勧めできません。強い意志があればパチンコも断てる!と思いたい気持ちはわかりますが、実際にはそれはほぼ不可能です。
中には自分の意志だけで辞められる人もいるのかもしれませんが、病院で治療を受けたほうがずっと確実です。そもそも意思だけでパチンコを断てる人は、最初からパチンコ依存症になりません。
パチンコ依存症が病院で治せるの?と思われるかもしれませんが、最近はパチンコを含めたギャンブル依存症患者を治療するクリニックが少なくありません。
単なる心療内科でも治療は受けられますが、できればギャンブル依存症患者を専門としたクリニックで治療を受けたいところです。
ギャンブル依存症患者のための専門外来の中でも、特に有名なのが神奈川県横浜市の大石クリニックです。首都圏の方は一度相談してみてはいかがでしょうか。
ギャンブル依存症の治療方法は病院によって多少の差がありますが、基本的には集団精神療法、グループワークを行います。グループワークでは、ギャンブル依存症患者だけでグループを作り、そのグループ内の規律に従って過ごします。
症状がそれほど重くない場合は外来でも治療できますが、重度の場合は入院して治療を受けることになります。即効性はなく、非常に時間が掛かる治療法ですが、粘り強く続けていくことによって寛解への道筋が見えてきます。
ギャンブル依存症患者の家族
ギャンブル依存症患者が身内にして、なおかつなんとかして助けてあげたいと考えているのならば、家族もグループワークに参加したほうが良いかもしれません。
病院によっては、本人が受診を拒否していても、家族だけでも受診・相談することができます。家族が徐々に外堀を埋めて、受診せざるを得ない環境を作って行きましょう。
セロトニンを増やしてみよう
ギャンブル依存症患者はセロトニンが少ないです。セロトニンをギャンブル以外の方法で作り出すことができれば、自然とギャンブルから離れやすくなります。セロトニンを増やす方法はいくつかあります。以下の様な生活習慣を心がけてください。
早寝早起きを心がける
セロトニンを増やす最も基本的な方法は、規則正しい生活を送ることです。セロトニンは一般的に太陽が出ている日中に分泌されやすく、夜になるに従って分泌量が減っていくという特徴があります。
人間は本来、昼活動して夜は寝る生き物です。早寝早起きを心がけていれば、次第にセロトニンの分泌量は増えていきます。
朝になったら陽の光を浴びる
生活習慣を整えるだけでもそれなりに効果がありますが、朝日の光を浴びるとよりいっそう効果的です。太陽の光が目を通じて脳に届くと、脳が活性化されセロトニンが増えます。
毎朝日光を浴びることは、セロトニンの分泌量が増やすだけでなく、生活リズムを整えることにもつながります。時間は30分程度が目安です。
30分も太陽光を浴びている時間がないという場合は、光療法をためしてみるのが良いかもしれません。光療法は人工的な光を浴びることによって、セロトニンを増やす取り組みです。光療法は冬季うつ病の有力な治療法とされています。
運動をする
運動にはセロトニンの分泌を促す効果があります。といっても、どんな運動でもいいわけではありません。効果的なのは、一定のリズムを刻む運動です。なんだか難しそうに感じますが、一定の動きを繰り返す運動ならだいたい何でもかまいません。
例えばウォーキングや軽いジョギングでも良いのです。外に行く時間が取れないという場合は、スクワットや腹式呼吸などでもいいでしょう。体力的に無理なく続けられる運動を、1日10~30分程度続ければ、自然とセロトニンを増やすことができます。
食事を工夫する
セロトニンの分泌を増やすには、トリプトファンとビタミンB6をよく摂取する必要があります。トリプトファンはセロトニンのもととなるもの、ビタミンB6はセロトニンの合成を助けるものです。
ヨーグルト、白米、肉などはトリプトファンを、牛肉、唐辛子などはビタミンB6を豊富に含んでいます。
これらのことを長く続ける
上記のことはいずれもセロトニンを増やすのに効果がありますが、即効性はありません。1日朝日を浴びただけでセロトニンが増えてギャンブル依存症が克服できる、なんてことはありません。
大切なのは上記のことを、効果が出るまでしっかりと続けることです。継続は力なり、です。人にもよりますが、大体3ヶ月も続ければセロトニンが増えていることを実感できるはずです。
パチンコで出来た借金は債務整理しよう
パチンコで借金ができてしまっていて、なおかつそれを返済するのが難しいという場合は、債務整理をした方がいいでしょう。債務整理をすると一定の期間借金ができなくなるので、強制的にパチンコを断つことができます。
債務整理には任意整理、個人再生、自己破産などいろいろありますが、パチンコで数千万円の借金ができることはほぼないため、自己破産はしないでいい場合が大半です。殆どのケースは、任意整理で対応が可能です。
任意整理は他の債務整理と比べてデメリットが小さく、官報に載ることもなければ財産が没収されることもありません。ギャンブル依存症専門の医院の場合、債務整理の相談を受付けている事があります。まずは相談するところから始めてみましょう。