借金があるのにガチャがやめられない…なぜ廃課金はやめられない?

近年、スマートフォンなどの端末で遊べるソーシャルゲーム(ソシャゲ)が人気を集めています。多くのタイトルが基本プレイ無料、より楽しみたい場合は課金も可能という料金体系になっています。コンシューマゲームのように、面白くないゲームを引かされても金銭的な損失がなく、時間的な損失だけで済むという点は優れています。

しかし、買い切りのコンシューマゲームと違ってソーシャルゲームの課金上限は実質的には青天井であり、ゲームで勝つために明らかに自身の経済力を超えた課金をしてしまう人が後を絶ちません。

興味のない人は、たかがゲームになんでそこまで課金するのか、と思われるかもしれませんが、ソーシャルゲームには課金を誘導する導線がアチラコチラに散りばめられており、気づくとハマってしまうものなのです。

もちろん殆どの人は自身の経済力の範囲内で楽しめていますが、一部のユーザーは課金のしすぎが原因で借金を作ったり、債務整理に追い込まれたりしています。

そこで初めて目が冷めても後の祭り、手元には何も残りません。現時点で課金をしすぎているという自覚がある方は、この記事を読んでソーシャルゲームとの正しい距離のとり方を学んでいただければと思います。

ソーシャルゲームをしたいがために犯罪に走るケースも

2015年2月、群馬県前橋市で93歳の女性が殺害され、同市内に住む土屋和也容疑者が逮捕されました。加害者は被害者に全く面識はなく、生活苦に陥ったというのが理由でしたが、一方で土屋容疑者は働かず、消費者金融への借金が150万円ほどあり、月に4万円~5万円ほど課金をしていたそうです。

もちろん、これはかなり極端な例であり、実際にこのような破滅的な最後を迎えるユーザーはめったにいません。

マーケティング会社Swrveの調査によれば、基本プレイ無料のゲームの売上の64%は、0.23%の高額課金者が支払ったお金から成り立っていることが明らかになっています。殆どのユーザーは少額課金、もしくは無課金で遊んでいるのです。

逆に考えれば、その1%未満の少数の高額課金者の中には、ソーシャルゲームへの嵌りすぎが原因で借金を背負ったり、財産を失ったり、人間関係を壊したりする人もいるといえます。一方で高額課金者であっても生活に影響を与えない人もいます。

実際に課金しているのはこんな人達

元大手ゲーム会社ディレクターの鈴屋二代目氏によれば、ソーシャルゲームに最も多くの金額を注ぎ込んでいるのは比較的お金に余裕がある30代なかばから40代前半ぐらいの人たち、ゲームで言えばファミコン世代に相当する人たちなのだそうです。

ソーシャルゲームはこうした課金勢と、経済力の差を時間である程度埋められる10代~20代の無課金勢で成り立っており、その対立がソーシャルゲームの「華」なのだとか。

具体的な職業は弁護士、医者、マンションのオーナーなどの高所得者で、なおかつ自営業者で仕事中のスキマ時間がある人が多く、他にはタクシー運転手やキャバクラ嬢など、一般的な会社員と休みが合わない人も少なくないそうです。

高額課金勢と破滅する人は別の層?

一方で、課金のし過ぎで破滅する人は、低所得者に多いようです。前述の弁護士や医者などの高額所得者は普段仕事を通じて他者に認められているので今更ゲーム内で承認欲求を満たす必要がなく、自分の生活に支障がない範囲で高額課金を行えます。

一方、低所得者層は普段周囲から認められない暮らしをしているので、現実世界で満たされません。しかし、ゲーム内ではお金を払えば強者になれるので周りから褒め称えられ、承認欲求が満たされます。その魔力に取り憑かれ、生活に支障が出るほど課金してしまう(廃課金)人は少なくありません。

もちろんそんなやり方で一時的に気持ちよくなっても何の意味もないですし、本来は現実で認められるために能力を身につけるべきなのですが、低所得者層は「自分が貧しいのは人のせいである」と逃げ続けます。

かくしてただでさえ少ない所得の多くを課金に回すようになり、結果として人生がどんどん貧しくなっていきます。人生の浮上のきっかけを自ら手放しているようなものですが、本人はそれに気が付かないことがほとんどです。

承認を与えると儲かる

承認欲求を持つこと自体は悪いことではありません。他人に認められたいという気持ちが昇華されて世界で活躍する人材になれた、などという例はごまんとあります。

しかし、承認欲求は本来自身の能力で勝ち取るべきものであって、お金を払って手に入れるものではありません。そんなことは本来誰もがわかっているはずですが、認められたいけれど認められるための努力はしたくない層と言うのが一定数存在します。

そんな人間(カモ)に、お金と引き換えに承認欲求を満たして挙げるような言葉を投げかけるのはビジネスモデルとしては非常に優秀です。

世の中には金を払ってでも褒めてほしい人がたくさんいますし、褒めるのにかかるコストはほぼ0です。ソーシャルゲームが流行する理由は、一言で言えば儲かるからなのです。

ソーシャルゲームが儲かる秘密は「ガチャ」にあり

ソーシャルゲームは基本無料ですが、ユーザーが全員無料で遊べば当然ゲーム会社は赤字になります。そのため、ゲーム会社はあの手この手を使って、ユーザーに課金させようとします。

ユーザーにお金を払わせようとするのは一企業として当然のことであり、それ自体は批判の対象に当たりません。しかし、一方でソーシャルゲームは法律には違反しておらずともかなりアコギなことを破っているのもまた事実です。

ソーシャルゲームの収益の根底を支えているのが「ガチャ」です。このガチャは言ってみれば街中のスーパーなどで見つける、お金を入れてレバーを回すと小さな玩具が出てくる「ガチャガチャ」のオンライン版です。

ゲーム会社にお金を払うとガチャが引けて、強力なアイテムやキャラクターが手に入るので、ゲームに勝ちやすくなる、という仕組みになっています。

ガチャを引きたくなる仕掛け

ソーシャルゲームのガチャには、課金をしたくなる様々な仕掛けがあります。代表的なものをいくつか紹介します。

ゲーム内通貨

ガチャを引く際には一般的に、石というアイテムが必要になります。石とは簡単に言えばゲーム内通貨のことです。

「ガチャは1回300円」と明示されるとなんだか割高に感じてしまいますが、「ガチャは1回石30個(ただし、石1個を買うためには10円必要)」というような、ゲーム内通貨を介する仕組みになっていると、金銭感覚が麻痺してついつい払ってしまうものです。

極端に出る確率が低いレアアイテム

ガチャの中には、他のアイテムと比べて極端に出る確率が低い(例えば0.1%)ものが用意されていることがあります。普通に考えれば、こんなガチャを1回や2回回したところで目的のアイテムに出会えるわけがありません。

しかし、それだけにレアアイテムを所有している人は極端に少なく、持っているとそれだけで自慢できます。

別に興味がない人からすればただの絵にすぎないアイテムも、そのゲームの熱心なファンにとっては重要なものです。

ゲームコミュニティなどで自慢したい、他人よりも優位に立ちたいがためにガチャを何回も回したり、あるいはその自慢を見てこいつには負けられないという競争意識を持つようになってガチャを回したりする人は少なくないのです。

しかも、ガチャは確率に基づいていますから、ユーザーから「たくさん課金したのにお目当てのアイテムが出なかった」と批判されても「それはあなたの運が悪かったからだ」で済ませられます。

実は確率操作をしていたとしても、それがユーザーにバレることはほとんどありません。あまりにもあからさまなやり方は流石に感づかれるでしょうが、例えば実際には0.8%しか出ないキャラを1.0%と表記しても、多分バレないでしょう。

期間限定イベントや追加イベント

人気のソーシャルゲームともなれば、期間限定イベントや追加イベントが頻繁に行われます。あるイベントが終わったら次のイベントがすぐに開始、なんてのもざらです。

イベントは手軽に遊べるものも多いですが、それゆえにやめるタイミングがなかなかつかめず、ズルズルとゲームを続けてそれにつられて課金してしまうユーザーは少なくありません。

無課金勢では決して課金勢に勝てないゲームバランス

ソーシャルゲームの殆どは基本無料を歌っています。無料で遊ぼうと思えば遊べるのでそれは間違いではありませんが、実際にはどのゲームも課金しなければ課金している他のプレイヤーには勝てない仕組みになっています。

プレイ時間を長くしたり、技術を磨いたりすることによって多少さが縮まることがあっても、長くやれば必ず課金している方、しかもたくさんの額を課金している方が勝てる仕組みになっているのです。

そうしたゲームに出会った時に多くの人は「これはつまらないゲームなのでやめる」という判断をしますが、一方で課金勢に対する怒りや嫉妬から、自身も課金をしてしまう人も少なくありません。そして課金をすると無課金勢に勝てるようになるのでますます課金の頻度が加速し、辞められなくなってしまうのです。

なぜつまらないゲームをやり続ける人がいるのか

プレイヤーの技術、努力、才能ではなく、課金した金額でゲームの勝敗が決まるというのはゲームデザインとしては最悪で、全く面白いものではありません。

例えば将棋に「1000円払ったら飛車を1枚持ち駒にプレゼント」というようなルールを採用したり、麻雀で「500円払ったら配牌で必ずドラ対子プレゼント」なんてルールを採用したりしたら、誰もが興ざめしてゲームをやらなくなることでしょう。全員が同じ条件で戦うからこそゲームは面白いものなのです。

しかし、ソーシャルゲームではそのような興ざめなルールが成り立ってしまうのです。一体なぜ、こんなユーザーはゲームから離れていかないのでしょうか。

理由は色々ありますが、特に大きいのは「今更降りられない」という心理ではないでしょうか。始めたてでほとんど課金をしていないゲームを辞めるのは別に痛くも痒くもありませんが、たくさん課金したゲームを辞めるのには大変な思い切りが必要です。

それは今まで課金してきたお金や、かけてきた時間を無駄にする行為になるからです。そしてゲーム内での順位を落とさないためにも課金を続けていくのです。

ただ、それでも長期的見れば、そのような面白みのないゲームは段々とユーザーが減っていくものです。ユーザーが減れば当然サービスは終了になります。

あとに残るのは何にもならない電子データのみです。そうなった時に「課金はたくさんしたけれど、その分楽しめたからOK」と胸を張って言える人はいいのですが、そこまで強靭な精神力を持っている人はそう多くはありません。

コンプガチャとパッケージガチャの仕組み

現在は違法となり廃止されてしまいましたが、以前はソーシャルゲームではコンプガチャと呼ばれる仕組みが当たり前のように採用されていました。

これは特定のアイテムを幾つか揃えると、そのアイテムでレアイテムを作れるというものです。レアアイテムを作るためには、そのもととなるアイテムをすべて揃えなければなりません。

それには何回もガチャを引く必要があります。極端な話、ゲーム外車が必要なアイテムの内一つの出る確率を極端に低くしてしまえば、ユーザーはほぼ無限にガチャを回すことになります。

このような仕組みは外部から批判を招き、それを受けて2012年春に消費者庁はコンプガチャは景品表示法に抵触する可能性があるとの見解を発表。これを受けて業界団体はコンプガチャを寄生する方針を取りまとめ、結局廃止されました。

このような恐ろしいガチャが当たり前に成り立っていたのですから、闇が深いと言わざるを得ません。

一方、パッケージガチャとは、重複がないタイプのガチャのことです。同じアイテムが出ないという点では良心的ですが、アイテムの総数が数百あればやはりレアアイテムを引くのは難しくなります。

ガチャを引き続ければいずれはレアアイテムも引ける仕組みであるため、却って途中でやめづらく、高額課金を招くもとであるとすら言われています。このような仕組みはコンプガチャが規制された後に生まれたものであり、現在も様々なゲームで見られます。

課金から抜け出せない人のための引退術

本人が好きで課金をしているのならばそれは他人が止めるべきものではないのかもしれませんが、もし心の奥底で課金をやめたいと思っているにも関わらず行動に移せない場合は、以下のことを試してみてください。

スッパリとアンインストールする

課金をやめる最も効果的な方法はズバリ、ゲームのアンインストールです。ゲームそのものを捨ててしまえば、課金することは一切なくなります。

ただ、現実問題、今まで散々お金をかけてきたゲームをアンインストールするというのは結構な勇気がいります。もしかしたら一人ではできないかもしれません。

その場合は同じゲームを遊んでいて、なおかつゲームをやめたいと思っている「同志」を募り、せーので一斉にアンインストールしてしまうといいでしょう。一人ではなかなかやりづらいことも、大人数でやればできる可能性が高まります。

課金額を紙に書き出す

いきなりアンインストールをするのが難しいという方は、課金をするたびにその金額と日付をメモしていくといいでしょう。そして、月末になったらその紙を見直してみて、その金額が何日分の労働に相当するかを考えてみてください。

もし3日分の労働に相当するとしたら、あなたは今後平日の3日間をタダ働きすることになります。こう考えていくうちに自然と課金をするのが馬鹿らしくなっていき、ゲームをしたいという誘惑がなくなっていきます。

暇な時間を作らない

ソーシャルゲームのいいところはスキマ時間で遊べるところですが、それ故にプレイ時間が伸びてしまい、課金したいという気持ちも大きくなってしまいます。

忙しく動いていればそもそもゲームのことを忘れてしまうため、課金することはありません。ゲーム以外の趣味や人との時間など、何か熱中できることを探してみてください。

クレジットカードを契約解除する

課金の決済方法は色々ありますが、中でもダントツで危険なのがクレジットカード決済です。ウェブマネーやカードを買うという、財布からお金を出す仮定が抜け落ちてしまうため、お金を払って課金をしているという感覚が失われてしまいます。

課金がやめられないという方は、思い切ってクレジットカードその物を解約してしまったほうがいいかもしれません。ないものは使えないので自然と課金が辞められます。

他のプレイヤーと遊ぶゲームはダウンロードしない

他のプレイヤーとの協力や競争を全面に打ち出しているゲームは、必ず課金競争が起こります。競わせて課金させるようなゲームには最初から手を出すべきではありません。

どうしてもゲームがやりたい場合は他の誰ともつながらない、一人で遊べるものを選びましょう。

1人用ゲームの中にも課金ができるものがありますが、他者と争わない分課金したいという気持ちが芽生えにくく、またシステム自体も良心的なものが多いのでソーシャルゲームよりは安心して遊べます。

他人に認証パスワードを変えてもらう

どうしても課金しそうになってしまう人は、家族や知人に決済確認時の認証パスワードを変えてもらうというのも手です。パスワードが分からなければ課金もできなくなります。

最初は苛立つでしょうが、そのうちだんだんどうでも良くなってきて、最終的にはゲームと縁を切れます。

課金しすぎて生活が成り立たなくなった時は債務整理も視野にいれるべき

課金をしすぎて借金を作ってしまい、どうにもこうにもならなくなってしまった場合は、思い切って債務整理をした方がいいかもしれません。債務整理とは簡単に言えば、債務を様々な手続きによって減らしたり、あるいはなくしたりする手続きのことです。

支払い方法がクレジットカードの場合はクレジットカード会社、携帯料金とまとめて払う場合は携帯電話会社、消費者金融から借りていた場合はその業者が債権者となります。

債務整理には話し合いによって主に将来の利息をカットしてもらう任意整理、同じく話し合いで解決するものの裁判所を介する特定調停、借金を大幅に減額する個人再生、借金をチャラにする自己破産があります。

この内債務の圧縮額が最も大きいのは借金をチャラにできる自己破産ですが、自己破産はデメリットも多く余りおすすめできません。

そもそも浪費は免責不許可事由(自己破産が認められない自由)に当てはまるため、課金のし過ぎでは自己破産が認められない可能性があります。

実際には裁判所の裁量で免責されるケースがほとんどなのですが、デメリットとメリットのバランスを考えると、やはり避けたほうがいいでしょう。

借金の金額が少ない場合はデメリットが少ない任意整理、ある程度多い場合は大幅に借金が減額できる個人再生をおすすめしますが、実際にどれを選ぶかは弁護士と話し合って決めるべきです。

まずは弁護士に相談

ゲーム課金で借金を背負ったなんて対面で話すのは恥ずかしいかもしれません。その場合は、メールや電話、FAXなどの無料相談を利用するといいでしょう。

直接会いに行くのは、信頼できそうだと感じた後でも構いません。借金は放置すればするほど状況が悪くなるので、一刻も早く対処に乗り出しましょう。