小学生でもわかるブックメーカー(ギャンブル)の期待値と還元率と標準偏差の意味

ブックメーカーについて学んでいると、期待値還元率標準偏差という言葉に遭遇します。これらの言葉の意味がわからずにブックメーカーの利用を躊躇している方がいるとしたら、それは非常にもったいないことです。

期待値も還元率も、小学生の算数が理解できていればおおむね簡単にわかるものだからです。標準偏差は少し難しいですが、それでも中学生1年レベルです。今回は期待値と還元率の計算方法と、予想の際の活かし方を説明しますので、気負わず聞いていただければと思います。

期待値は掛け金に対して期待できる配当金の金額

期待値とは、ある賭けをしたときに期待できる配当金の金額のことです。もう少し噛み砕いていうと、ある金額をかけたときに帰ってくる平均額のことです。それぞれの事象の配当金額と確率を掛け、それを合計したものが期待値となります。言葉だけではわかりづらいかと思うので、具体的な例を見ていきましょう。

ケース1:くじの期待値を求めてみよう

今、あなたの目の前に12個のくじが入った箱があります。あなたはこの箱の中から1つだけくじを選んで引けます。そして、くじに応じた配当金を受け取れます。くじには大当たり、中当たり、小当たり、外れ、の4つがあり、それぞれのくじを引いた時の配当金額と本数は以下のとおりです。

  • 大当たり:1000円・1本
  • 中当たり:500円・2本
  • 少当たり:100円・3本
  • 外れ:0円・6本

このくじを1本引く場合、期待値はいくらになるでしょうか。

まず、大当たりの配当金額は1000円、確率は1/12です。中当たりの配当金額は500円、確率は2/12です。少当たりの配当金額は100円、確率は3/12です。外れの配当金額は0円、確率は6/12です。したがって、期待値は

1000円×1/12+500円×2/12+100円×3/12+0円×6/12=2300/12≒191.67円となります。

つまり、このくじを1回引いた場合、平均で191.67円もらえるわけです。箱の中に191.67円もらえるくじはありませんが、十分な回数を繰り返すと、1回あたりの配当金額は191.67円に近づいていきます。

ケース2:配当金額がマイナスのくじが入っている場合の期待値を求めてみよう

今度は、以下のくじを引くとします。

  • 大当たり:1000円・1本
  • 中当たり:500円・2本
  • 少当たり:100円・3本
  • 外れ:-300円・6本

この場合、期待値は

1000円×1/12+500円×2/12+100円×3/12+-300円×6/12=500/12≒41.67円となります。

つまり、このくじを1回引いた場合、平均で41.67円もらえるわけです。

還元率は賭け金に対する期待値の割合

期待値から何を判断するべきか

期待値がわかると、そのギャンブルはどれくらい割の良いものなのか、そもそも参加スべきものなのかどうかの判断を下すことができます。例えば、ケース1のくじを300円で引けるとします。この場合、期待値が191.67円なのですから、1回引くたびに約108.33円を失うことになります。引けば引くほど損をするわけです。

一方で、ケース1のくじには1000円や500円のくじもあるので必ず損するとはいえません。短期的には勝つ可能性もありえます。しかし、長期的に繰り返せば1回あたりの配当金額は191.67円に近づいていくため、長くやればやるほど負けるのは間違いありません。

還元率は賭け金に対する期待値の割合

還元率とは、賭け金に対する期待値の割合です。そのギャンブルがどの程度割のいいものなのかを計算する際に使います。例えば、期待値が191.67円のくじを、1回300円で引くとします。この場合、還元率は191.67÷300≒63.9%となります。つまり、このギャンブルは賭けた金額の63.9%が戻ってくるギャンブルであるということです。

仮にこのくじが1回200円で引けた場合、還元率は191.67÷200≒95.8%となります。つまり、このギャンブルは賭けた金額の95.8%が戻ってくるギャンブルであるということです。

還元率が高ければ高いほど、参加者にとって有利なギャンブルであるということになります。ギャンブルには胴元がいるため、還元率が100%を超えることは通常ありませんが、戦術や配られたカードによってはまれに100%を超えることもあります。

ブラックジャックやスタッドポーカー(カードの交換ができるポーカー)などのプレイヤーに戦術が決められるギャンブルは、戦い方によって還元率が変化します。

なお、100%から還元率を引いたものを控除率といいます。例えば還元率が63.9%の場合、控除率は36.1%となります。控除率が胴元の取り分となり、還元率と控除率を足すと必ず100%になります。

主なギャンブルの還元率

日本で遊べる主なギャンブルの還元率は以下のとおりです。

ギャンブル 還元率 控除率
宝くじ 45.7% 54.3%
競艇 74.8% 25.2%
競輪 75.0% 25.0%
オートレース 74.8% 25.2%
競馬 74.1% 25.9%
パチンコ 85%前後 15%前後

見ての通り、全体的に還元率はかなり低めです。特に宝くじは還元率が50%を割っており、大変参加者にとって不利なゲームとなっています。

もちろん、全員が全員負けているわけではありませんが、参加するのが馬鹿らしいギャンブルであることは間違いないでしょう。

一方、オンラインカジノで遊べる主なギャンブルの還元率は以下のとおりです。

ギャンブル 還元率 控除率
スロットマシン 90~95%前後 5~10%前後
ヨーロピアンルーレット 97.29% 2.71%
バカラ 98.64~98.8% 1.2~1.36%
クラップス 99.54~99.986% 0.014~0.046%
ブラックジャック 96~102% -2~4%

カジノで遊べるギャンブルの還元率はご覧のように、どのゲームでも90%を越えています。特にブラックジャックは状況によっては100%を超えることもあり、参加者の不利が殆どないゲームであるといえます。

しかし、この還元率を達成するためには、その時その時に応じて最適な戦術を取らなければなりません。間違った判断をしてしまった場合、その分だけ還元率は下がってしまいます。

ブラックジャックは還元率が高いギャンブルとして有名ですが、戦術が複雑であり、相手のカードと自分のカードから素早く状況を判断する技術が求められ、理論通りの還元率を実現することが難しいギャンブルであるといえます。

一方、スロットマシンやヨーロピアンルーレットは、カジノで遊べるギャンブルとしては還元率がやや低いものの、プレイヤーに戦術の余地がなく、間違った判断で還元率を下げてしまう心配はありません。そういった意味では、これらのギャンブルは初心者向けであるといえます。

標準偏差は平均値からのばらつき(ブレ)を表す指標

標準偏差とは、平均値と実際の数値のバラ付き大きさを示す指標です。ギャンブルにおける平均値とは期待値のことであり、「あるギャンブルを1回行った場合にもらえる配当金額が、期待値とどれくらい離れやすいか」を示すものです。

例えば、以下の2つのギャンブルがあるとします。

  • ギャンブル1:コインを1回振り、表が出れば1000円もらえるが、裏が出れば何ももらえない。
  • ギャンブル2:コインを1回振り、表が出れば600円もらえるが、裏が出ると400円もらえる。

この場合の2つのギャンブルの期待値は以下のようになります。

  • ギャンブル1の期待値は、1000円×1/2+0円×1/2=500円。
  • ギャンブル2の期待値は、600円×1/2+400円×1/2=500円。

期待値だけ見ればどちらも同じです。しかし、ギャンブル1は実際に貰える配当金額が期待値と大きく離れている(標準偏差が大きい)のに対して、ギャンブル2は実際に貰える配当金額が期待値と余り離れていない(標準偏差が小さい)という違いがあります。標準偏差が小さければ小さいほど、実際にもらえる金額と期待値のブレは小さくなります。

標準偏差はそのギャンブルの当たりやすさを理解するのに役立ちます。標準偏差が大きいギャンブルは、参加者から集めたお金を少人数にまとめて配当する、「当たれば大きいが、当たりづらい」ギャンブルであるといえます。宝くじやJackpot付きのスロットマシンが代表格です。

一方、標準偏差が小さいギャンブルは、参加者から集めたお金を広く薄く配当する、「大勝ちはしづらいが、当たりやすい」ギャンブルであるといえます。どちらも一長一短であり、プレイヤーの好みに応じて選ぶべきギャンブルは変わります。

標準偏差を計算してみよう

標準偏差を求めるためには、平均値(期待値)、偏差分散、そして標準偏差という順番で求めていく必要があります。平均値(期待値)の計算方法は皆さんすでにご存知でしょうから、ここでは偏差と標準偏差の求め方をお話します。

標準偏差を求めるための例として、以下のようなギャンブルを用意しました。

ギャンブル1:サイコロを1つ振り、出た目の数×100倍だけ配当を受け取れる。

まず、このギャンブルの期待値は350円です(計算は省略します)。

次に、偏差を求めます。偏差は、各データと平均値の差です。ここでいう各データとは、それぞれの目が出た時の配当金額、つまり100円、200円、300円、400円、500円、600円という6つのデータのことです。それぞれのデータと平均値の差は以下の通りになります。

 出目 1 2  3 4 5 6
 データ(配当金額) 100 200 300 400 500 600
偏差 -250 -150 -50 50 150 250

次に、分散を求めます。分散は偏差をそれぞれ2乗したものを合計し、データの数で割る事によって求められます。

分散={(-250)2+(-150)2+(-50)2+502+1502+2502÷}6=29166.6666……

最後に、標準偏差を求めます。計算方法はとても簡単で、分散にルートを掛けるだけです。

√29166.6666…=170.78……

よって、このギャンブルの標準偏差は170.78となります。

期待値が同じでも標準偏差は変わる

次に、以下のギャンブルの標準偏差を求めてみましょう。

ギャンブル2:サイコロを1つ振り、4以上の目が出れば700円もらえるが、3イカの目が出た場合は何ももらえない。

この場合、期待値は350円で、ギャンブル1と全く変わりありません。しかし、標準偏差は大きく変わります。

このギャンブルの偏差は以下のようになります。

出目 1 2 3 4 5 6
配当金 0 0 0 700 700 700
偏差 -350 -350 -350 350 350 350

分散は以下のようになります。

分散={(-350)2+(-350)2+(-350)2+3502+3502+3502÷}6=122500

標準偏差は以下のようになります。

標準偏差=√122500=350

よって、このギャンブルの標準偏差は350となります。

ギャンブル3:サイコロを1つ振り、3以下の目が出れば300円、4以上の目が出れば400円もらえる。

この場合、期待値は350円で、ギャンブル1、ギャンブル2と全く変わりありません。しかし、標準偏差は大きく変わります。

このギャンブルの偏差は以下のようになります。

出目 1 2 3 4 5 6
配当金額 300 300 300 400 400 400
偏差 -50 -50 -50 50 50 50

分散は以下のようになります。

分散={(-50)2+(-50)2+(-50)2+502+502+502÷}6=2500

標準偏差は以下のようになります。

標準偏差=√2500=50

よって、このギャンブルの標準偏差は50となります。

  • ギャンブル1の標準偏差:170.78…
  • ギャンブル2の標準偏差:350
  • ギャンブル3の標準偏差:50

期待値が全く同じギャンブルでも、標準偏差値は大きく異なります。損するリスクをとっても当たればでかいギャンブルがやりたいのならばギャンブル2、ばらつきが少なく長く遊べるギャンブルが遊びたいのならばギャンブル3、その中間がいいのならばギャンブル1を選んで遊ぶのがいいでしょう。

還元率が100%以下のギャンブルで勝ち越すためには

長期的にやらないということは、言い換えれば1回あたりの賭け金を引き上げるということです。極端な話、ヨーロピアンルーレットでいきなり全資金を赤もしくは黒に賭ければ、ほぼ50%の確率(正確には18/37の確率)で全資金を2倍にすることができます。

そして、1回勝ったら即勝ち逃げするのが最適な戦術です。長期的にやれば必ず全財産を失うはずのギャンブルで、ほぼ50%の確率で資金を2倍にできるというのは、破格の条件です。

逆にいつまでも少ない金額を賭け続けていくと、ペースは遅いものの大抵の場合は徐々に負けていきます。負けている状態から一発逆転を狙おうにも、その頃には資金がかなり減っていて大きな賭けができない事が多いです。

しかし、だからといってギャンブルでは一度に大金をかけて短期的に大勝ちを狙うのが正しいかというと、必ずしもそうとはいえません。ギャンブルの成否というのは、必ずしもお金の増減だけでは測れないものがあるからです。

そもそも、お金の増減だけで考えれば、ギャンブルに限らずすべてのレジャーは個人にとっては無意味ということになります。必ずお金が減るからです。しかし、実際にはギャンブル、あるいは全てのレジャーに取り組む人は後を絶ちません。

ギャンブルを遊んだことによる効用

経済学では、ある財を消費をした事によって得られる満足度を効用と言います。ちょっとわかりづらいですが、要するに何かを食べたり、使ったり、あるいは何かで遊んだりしたことにより得られる満足度のことです。

効用は主観的なものであり、同じ財を同じように消費しても人によって得られる効用は異なります。例えばお酒が大好きな人がお酒を消費すれば大きな効用を得られますが、お酒が余り好きではない人が同じ量だけお酒を消費しても小さな効用しか得られません。

ギャンブルで遊んでいる最中は、「時間を潰すことができ」「楽しい気分になり」「お金が増える可能性を手に入れられ」ています。これらの効用がギャンブルで失うお金よりも大きいと考えるのならば、効用を増やすために小額で長い時間遊ぶというのも決して間違いではありません。

実際、ギャンブルで遊ぶ人の多くは小額で長く遊ぶものです。長期的にやれば必ず負けるギャンブルの勝率を少しでも上げることに腐心するよりは、長く楽しく遊べたほうがいいという気持ちが無意識のうちに働いているからかもしれません。これは全く非合理的ではなく、むしろ合理的なことです。

辞めたくても辞められない場合は

ギャンブルが辞めたくても辞められない場合、ギャンブル依存症にかかっている可能性が非常に高いです。ギャンブル依存症を自力で脱却するのは非常に難しく、医療機関にかかることをおすすめします。(参考:ギャンブル依存症で借金に陥る人の心理と治療方法

まとめ

  • 期待値は1回のギャンブルで得られる配当金の平均値
  • 還元率は1回の賭け金に対する配当金の割合
  • 標準偏差は期待値のばらつきの大きさを示す数値
  • ギャンブルで少しでも勝率を上げるコツは、試行回数が「長期的」になる前に
  • 勝って辞めること

ギャンブルは不確実性が大きいものですが、このように計算と確率で動いている一面もあります。これらを理解することができれば、勝率はより高くなることでしょう。