借金帳消しのために国外逃亡!それって意味あるの?

借金の返済がままならなくなってくると「このまま返済に苦しみ続けるぐらいなら、いっその事海外に逃亡しようかな……」なんて考えが心のなかに芽生えてくることがあるかもしれません。

大抵は空想で終わるかと思いますが、中には本当に借金を理由に海外に逃亡してしまう人もいます。

しかし、海外逃亡はなにも考えずに行うと大失敗します。本記事では借金で海外に逃亡するのは割に合うことなのか、様々な観点から検証してみたいと思います。

借金取りが海外まで追いかけてくることはまれ

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日本の金融機関は基本的に、海外に逃亡した人に対して取り立てを行うことはありません。居所がはっきりしている相手ならば別ですが、逃げるように海外に移住した相手の居場所を特定するのは簡単ではないからです。

借金の額がそこまで多くない相手にいちいち時間とお金をかけるのは、金融機関としても避けたいところです。居場所が特定されていれば郵便物を送付するぐらいのことはやるかもしれませんが、実際に人を取り立てに派遣することはまずありえません。

※海外へ失踪する前に、借金が減額できるかこちらで診断してみましょう。

海外に逃亡しても時効は停止しない

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海外に逃亡しても通常、時効のカウントは停止しません。刑事事件の場合は刑事訴訟法で

犯人が国外にいる場合又は犯人が逃げ隠れているため有効に起訴状の謄本の送達若しくは略式命令の告知ができなかつた場合には、時効は、その国外にいる期間又は逃げ隠れている期間その進行を停止する

と定められており、海外にいた期間中は時効のカウントが停止するのですが、借金は民事のことなのでこのルールは採用されません。

借金の時効は5年、もしくは10年であり、この期間中をどうにか凌ぎきれば時効を迎えられます。

日本で多額の借金をしていても、海外で借金をすることは可能

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日本には信用情報機関というものがあり、個人の借金に関する情報はそこにまとめられています。海外にも信用情報機関があり、やはり個人の借金に関する情報がまとめられています。

日本の信用情報機関と海外の信用情報機関は情報を共有していないので、日本で多額の借金をしていても海外の信用情報機関にはそのことは伝わりません。なので海外でも借金をすることができます。

それでも海外逃亡がおすすめできない理由

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ここまでの文章を読んで「なんだ、海外逃亡にも意外とメリットがあるんだな」と思われた方も多いかもしれませんが、当サイトでは海外逃亡はおすすめしません。海外逃亡には以下の様なデメリットがあるからです。

裁判を起こせば時効は延長する

債権者は、たとえ債務者が行方不明になっていたとしても公示送達という仕組みを使えば裁判を起こすことができます。裁判では時効を延長することができます。

単純に5年、もしくは10年海外に潜伏していれば、自動的に借金がチャラになるというわけではないのです。少額の借金ならばともかく、多額の借金の場合はまず間違いなく裁判を起こされることを覚悟しなければなりません。

担保は没収される

キャッシングやカードローン程度の借金ならばともかく、数千万円単位の借金をする場合は通常、担保が必要になります。債権者は債務者が行方不明になっていたとしても担保を没収することが可能です。

海外に逃亡すれば借金の取り立てからは逃れることができますが、担保の没収は免れないのです。また、連帯保証人がいる場合は当然そちらの方に取り立てがいきます。海外に逃亡すればすべてがチャラになる、というわけでは全く無いのです。

そもそもお金がない人間が海外で暮らしていくのは難しい

借金がある人は大抵手持ちの資金が不足しています。そうした人がいきなり海外で暮らすというのは簡単なことではありません。

飛行機代、荷物の輸送代、現地で新しい家を決めるまでにかかるホテルの滞在費用など……こうした費用をどこから捻出するのか、という問題を解決しなければなりません。

また、国によっては生活費が日本よりかさむこともあります。これらのことも念頭に置いたうえで、移住先を決めなければなりません。

海外には約200の国があるので移住先はよりどりみどりと思われるかもしれませんが、現実的に移住が出来るところはかなり限られています。

治安が悪いところ、政情が不安定なところ、物価が高いところなどを除外し、候補地を絞っていくと、移住可能な国はせいぜい数十カ国程度になってしまいます。

そしてどんな国で生きていくにしても、日本語とはお別れしなければなりません。現地の言葉を学ぶのが必要不可欠です。現時点ですでに外国語が喋れるのならば問題ありませんが、そうでない場合は一から勉強しなおさなければなりません。

借金がある人が勉強に集中するのは大変難しいものです。

仮に借金が帳消しになっても、その後日本で生活するのはかなり難しくなる

仮に金融機関が裁判を諦めて、めでたく時効を迎えたとしましょう(借金の時効が認められるためには、時間が経過したうえで時効の援用という手続きを行う必要があります。手続きの詳しい内容についてはこちらで説明しています。)。

その場合は日本に戻ってくることになるかと思いますが、再び日本で生活を立て直すのは簡単なことではありません。仕事や住む場所なども問題になりますが、もっと大きな問題は借金ができないということです。

時効援用を行った場合、そのことが信用情報機関に伝わります。信用情報機関の情報は、各金融機関にも伝わります。金融機関は時効の援用を行った人に対しては、ほぼ間違いなくお金を貸し出しません。

つまり、時効援用を行ってしまうと、二度と借金ができなくなってしまうわけです。キャッシングやカードローンはもちろん、住宅ローン、自動車ローン、あるいはクレジットカードなども利用できなくなってしまいます。

時効援用後はすべての買い物を現金で行わなければなりません。これは非常に難しいことです。持ち家はほぼ諦めなければなりませんし、クレジットカードを持つのも諦めなければなりません。まともな生活はまず送れない、と覚悟しておいたほうが良いでしょう。

借金問題は海外逃亡でなく債務整理で解決

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借金で首が回らなくなってしまった場合は、海外逃亡でなく債務整理というもっと現実的で簡単な手段で解決を図るべきです。債務整理とは、借金を合法的に整理して毎月の支払を少なくしてもらったり、あるいは借金をチャラにしてもらったりする制度のことです。

債務整理には「任意整理」「特定調停」「個人再生」「自己破産」の4つがあり、それぞれにメリットとデメリットが有ります。日本で最も多く選択されているのは任意整理で、借金の額が少なく現在でも稼ぎがある場合は基本的にこちらを選択することになります。

借金の額があまりにも多すぎる場合は、自己破産を選ぶことが多いようです。自己破産をすれば(一定額以上の財産を失うことになりますが)、借金をチャラにすることが可能です。

どの債務整理にもそれぞれメリットとデメリットが有りますが、海外逃亡を選ぶよりは債務整理を選んだほうが良いケースが大半です。債務整理の一番のメリットは、借金ができなくなる期間が限定されることです。

時効援用をしてしまうともう二度と借金ができなくなってしまいますが、債務整理の場合は5年から10年程度の期間が経てば再び借金ができるようになります。

しばらく待つ必要がありますが、生活を立て直すことができればまたクレジットカードを利用したり、住宅ローンを組んだりすることも可能なわけです。

また、債務整理は時効援用と違って逃げまわる必要もなく、堂々と行えます。借金から逃げまわっていると少なからず精神的に病んでくるものですが、債務整理ならば精神の健全を保つことができます。

弁護士を通して行えば債務者自身が行わなければならないことは少なくなるので、働きながらでも十分行えます。

任意整理と特定調停は話し合いによって債務を減額する制度なので場合によっては交渉が決裂する可能性がありますが、個人再生と自己破産は裁判所を介した強制的な手続きなので、債権者に断られる可能性もありません。こちらの移行だけでも行うことができます。

海外に逃げなければ……と追い詰められている人は、まずはその考えを一旦捨てて債務整理を検討するところから始めてみてください。

※相談前に今ある借金がどのくらい減らせるか知りたい方はこちらへ

債務整理は弁護士のもとで行おう

債務整理は独力で行うこともできますが、手続きが複雑で手間もかかるので、出来ることならば弁護士の力を借りて行ったほうが良いでしょう(借金の額が少ない場合は司法書士に頼むこともできます)。

弁護士費用が払えないからできない、という方がいらっしゃるかもしれませんが、最近は着手金0円の弁護士も増えてきています。報酬額は減額になった借金の中から払うことになるので、負担は比較的少なめです。

それでも難しいという場合は、費用の分割払いに応じてもらうことも可能です。

費用が心配でしょうがないという場合は、まずは法テラスで相談してみてください。法テラスは、一定の条件(収入が少ない)人が利用できる、無料法律相談の窓口です。

条件さえ満たしていれば、誰でも相談できます。弁護士費用は法テラスが一時的に建て替え、その後債務者が法テラスに対して支払いを行っていくので、相談の時点で相談費用が用意できなくても問題ありません。

それでも海外逃亡したい場合は

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二度と日本には戻ってこない、ぐらいの覚悟を持って望んだほうが良いでしょう。海外の暮らしは日本とは全く違い、時にはそのギャップに驚き、苦しむこともあるでしょうが、だからといって日本に戻ってしまっては何の意味もありません。

それだけの覚悟ができる人のみ、海外逃亡するようにしましょう。

※今ある借金がどのくらい減らせるか知りたい方はこちらへ