ピンチはチャンスという言葉がありますが、これは借金についても言うことができます。借金地獄に陥っているときこそ、人生をやり直すチャンスなのです。
借金で首が回らなくなって困っているという人は、その苦しさをチャンスに変えてやる!ぐらいの気概を持って借金の対処に臨まなければなりません。借金と真剣に向き合ってこそ、借金から解放されることができるのです。
なぜ、ピンチはチャンスなのか
人間には火事場の馬鹿力というものがあります。火事の時に普段寝たきりだった人が自力で歩いて逃げたり、普段はとても持ち上げられないような思い金庫を担いで外まで逃げたり……といった事例は少なくありません。
こうした出来事は漫画の中の話ではありません。火事場の馬鹿力は科学的に実証されているものなのです。
私たちの体にはたくさんの筋肉、骨、神経が存在しています。これらの組織には普段はリミッターが掛けられていますが、火事などの緊急時にはそのリミッターが外れ、人間が本来持っている100%の力を発揮することができます。
もちろん、100%の力を発揮すればそれだけ人体に大きな負担がかかり、怪我をしたり骨折したりすることもありますが、不思議と火事場の馬鹿力が発揮されている最中は痛みも感じないことがほとんどです。極端に集中力が高まっていると、痛みは消えるのです。
そしてピンチを脱出し、一息ついた瞬間にものすごい体が痛むのです。
債務整理についても同じことが言えます。本気で取り組まないと火事場の馬鹿力は発揮されず、いい結果を得ることはできません。
後ろ向きな態度で臨んではダメなんです。そんなことでは借金地獄からは抜け出せません。必死になって、必死になって、必死になってこそ、初めて借金地獄から脱出することができるのです。
借金から立ち直るための完全マニュアル
では、具体的にどのようなことに必死になれば、借金地獄から立ち直ることができるのでしょうか。もちろん方法はいろいろありますが、個人的には以下の手順を踏んでいくことをお勧めします。
まずは借金と向き合う
借金をしていることをそもそもピンチだと認識していない人がいます。ピンチだと認識していなければ、当然それをチャンスに変えることはできません。
たしかに、自分がこさえてしまった借金と向き合い、それを真摯に受け止めてピンチだと認識するのは簡単なことではありません。
しかし、そうやって借金から目をそらしているだけでは人生は何も変わりません。つらいことに立ち向かわなければ、幸せを手に入れることはできません。幸せは辛さと等価交換なのです。逃げ続けるだけの人生は無味乾燥です。
はっきりと申し上げますが、住宅ローンやカーローンなどの前向きな借金ならともかく、クレジットカードやキャッシングのような浪費目的の借金がある人は、人生の負け組予備軍です。
周囲の同世代の人間が家庭を持つために貯蓄に励んでいる中、一人だけ浪費癖が抜けきらずに、適切な浪費や貯蓄の仕方を知らないままずるずると借金を重ねている。みっともないですし、そんな人に魅力を感じる人はめったにいません。
ですが、負け組予備軍から抜け出すことはできます。ちょっと立ち止まって、借金の存在を真摯に受け止めればいいのです。雪だるま式に増えていく借金と向き合い、このままではいけないと気付くことこそが、人生大逆転の第一歩といえます。
借金がいくらあるのか確認する
危機感を持つのは大切なことですが、それだけでは不十分です。借金がいけないことだと気が付いたら、次に借金が総額でいくらあるのかを確認しましょう。
「借金がある」だけだと漠然としすぎていて不安だけが募りますが、「借金が100万円ある」といったような具体的な数字が出てくれば、それだけ身も引き締まりますし、それに見合った対処法も探しやすくなります。
借金がいくらあるかわからない場合は確認しよう
借入先はわかっているけれど、いくら借金があるのかわからなくなってしまったという場合は、過去の支払から発生した請求書や領収書を確認してみましょう。請求書や領収書には残高が記載されているので、最新のものを見れば一発で確認することができます。
領収書や請求書を処分してしまったという場合は、取引履歴の開示請求を行ってください。まず、金融機関に電話をかけて「いくら借金があるのかわからなくなってしまったので残高を教えてください」と申し出てください。
その後、開示請求用の請求書を郵送かFAX、もしくは店舗への持ち込みで提出すれば、残高を教えてもらうことができます。
なお、一部の金融機関はいろいろと難癖をつけて情報を開示しないことがありますが、取引履歴の開示は金融機関の義務とされています。債務者から請求があった場合、金融機関は早急に取引履歴を開示しなければならないと法律で定められているのです。
この法律を守らない金融機関に出くわした場合は、管轄内の財務局、もしくは日本貸金業協会などに相談して、指示を仰ぎましょう。
どこから借りているのかわからない場合は信用情報機関に開示請求をしよう
信用情報機関とは、信用情報(個人の金融機関利用情報)を蓄積している機関のことです。金融機関は融資の審査を行う際に、この信用情報機関の情報にアクセスして申込者の経歴をチェックしています。
この信用情報は金融機関だけでなく個人も開示請求を行うことができます。信用情報機関に連絡を入れて、情報を開示してほしいと頼むだけです。
なお、現在の日本には3つの信用情報機関があります。すなわち、銀行や信金、労金、農協などが加盟する「全国銀行個人信用情報センター (KSC)」、貸金業者や一部の地方銀行などが加盟する「株式会社 日本信用情報機構 (JICC)」、クレジットカード会社や一部の地方銀行、消費者金融などが加盟する「株式会社シー・アイ・シー(CIC)」です。
どこから借りているのか全く分からない場合は、全部の機関に開示請求を行うといいでしょう。開示請求には費用が掛かりますが、大体1件につき500円~1000円程度なので大した額ではありません。それよりも借金の残高が把握できるメリットの方が大きいです。
いくら借金があるのかわかったら、専門家と一緒に対処方法を考えよう
借金の残高がいくらか判明したら、次は適切な対処法を考えます。借金の対処法はおおむね以下の3つに分類することができます。
債務整理をして借金を減額する
借金の整理と聞いて皆さんが最も思い浮かべられるのはこれかと思います。債務整理には任意整理、個人再生、自己破産などがあります。どれも一長一短ですが、現在の日本では任意整理を活用する方が多いようです。
任意整理は借金の減額幅が少ないものの、デメリットもほとんどないありません。一方、自己破産は借金が完全にチャラになるものの、一定の期間中一部の資格が制限されるほか、高額な財産は処分しなければいけないためハイリスク・ハイリターンな選択肢といえます。
個人再生は任意整理と自己破産の中間的な存在です。いずれの方法を選んでも、そのことは信用情報機関に登録され、一定の期間借り入れができなくなってしまうことについては注意が必要といえます。
おまとめローンを活用する
おまとめローンとは、複数の債務がある場合にそれを一本化して返済していく金融商品です。複数の金利の高い借金を、一つの金利の低い借金にまとめることによって、将来の利息返済額をカットします。
債務整理と違っておまとめローンの利用は信用情報に傷をつけることはありません。おまとめローンを利用した後でも、充分な信頼さえあれば住宅ローンや自動車ローンを組むことは可能です。
ただし、債務整理と違い借金そのものを減額する制度ではないため、借金で本当に首が回らなくなっているという時にはあまり効果を発揮しません。比較的余裕がある人向けの方法といえます。
債務整理やおまとめローンは利用せず、生活を改善して借金を返していく
何も借金がある人全員が債務整理をする必要はありませんし、そもそも全員債務整理ができるわけではありません。そんなことをされてしまっては金融機関の商売が成り立たなくなってしまいます。
債務整理やおまとめローンを利用するほどでもないという人は、今までの生活態度を見直して毎月の経済状態に余裕を持たせて、借金を返済していくことになります。
借金を減らすことができないのでしばらくは苦しいことになるかと思いますが、その分返済が終わった時の達成感はひとしおですし、なにより信用情報に傷がつきません。
どの選択肢を選ぶかは必ず専門家と相談して決める
債務整理、おまとめローン、生活改善、どれにもそれぞれメリットとデメリットがあります。借金がある人はこの苦境から早く逃れたいあまりについ反射的に債務整理を選んでしまいがちですが、それが常に最善の選択であるとは限りません。
前述の通り債務整理をするとそのことが信用情報機関に登録され、一定の期間借り入れができなくなってしまいます。将来的に住宅ローンやカーローンを利用しようと考えている人は要注意です。
どの選択肢を選べばいいのかわからなくなってしまったという場合は、専門家に相談しましょう。
何の専門家に相談すればいいのかわからないという方もいらっしゃるかと思いますが、生活改善を考えている場合はフィナンシャルプランナー、債務整理やおまとめローンを考えている場合は弁護士がおすすめです。
フィナンシャルプランナーはお金の専門家です。彼らに相談すれば、適切な生活改善の方法、毎月の資金繰りに余裕を持たせる方法などを教えてもらうことができるでしょう。一度生活改善をしてしまえば、あとはそれをこなすだけで自然と毎月の生活に余裕ができます。
弁護士は債務整理のプロです。彼らに任せておけば何の心配もありません。どの債務整理を選べばいいのかわからないという場合は、そのことを伝えれば最適な方法を提案してもらうことができます。
場合によっては債務整理ではなくおまとめローンの利用を勧められることがあるかもしれません。
借金がなくなったらその生活を維持しよう
債務整理や生活改善の結果、借金がなくなるのはめでたいことですが、そこで安心して生活がだらけきってしまって再び借金生活に舞い戻る人は少なくありません。
水は低きに流れる、といいますが、とにかく人間は楽な方、楽な方へと転んでしまう生き物なのです。しかし、その楽の先にはその何倍もの苦しみが待っています。
借金がなくなったら、借金をしなくて済むような生活を維持することを目標にしましょう。余裕があれば貯蓄にもチャレンジしてみてください。毎月少しずつ増えていく預金残高は励みになりますし、万が一の備えにもなります。
借金をする手段も絶ってしまいましょう。債務整理をした場合は信用情報機関に登録されているので借金はできませんが、おまとめローンや生活再建を選んだ場合はまだ借金ができてしまいます。
そんな場合は二度と借金ができないように、クレジットカードの類はすべて処分していきましょう。現金一括払いで生活していけば、少なくとも借金を背負うことはくなります。
こうした生活を数年も続けていけば、自然と健康的になっていくはずです。借金がない生活は素晴らしく、気持ちも前向きになります。
借金生活時代に感じていたようなうしろめたさ、自己否定感は微塵もありません。誰からも責められません。そんな素晴らしい生活を一刻も早く手に入れてください。
とにかく動き出してみよう
これを読んでも尚「自分の借金は額が少ないからまだ大丈夫」と思っている方。かなり危険です。借金で問題となるのは借金の額の大小よりもむしろ債務者のメンタルです。
まだ大丈夫だと思っている人ほど無意味に借り入れを繰り返し、生活が成り立たなくなるものです。少しでも借金があるのならば、すぐに動き出してください。それが自分と家族の未来を守ることにもつながるのです。