医療費の支払いや給与の盗難、被災などで緊急かつ一時的に生活の維持が困難になった場合は、無利子で融資がうけら得る緊急小口資金制度が便利です。緊急時には便利な制度ですが、対象者が限られており、利用にあたってはいくつか条件もあるので注意が必要です。
緊急小口資金は社会福祉協議会の貸付制度
緊急小口資金は、お住いの自治体の市区町村を管轄する社会福祉協議会が提供している短期・小口の融資制度です。社会福祉協議会は、地域福祉の増進を図るための協議会で、民間団体ではありますが、運営資金を行政機関からも受給しているため、実質的には半民半官の組織であるといえます。
基本的には都道府県、もしくは市区町村ごとに組織されますが、政令指定都市の場合は市内の行政区ごとに独立した社会福祉協議会が設置されていることが多いです。市区町村のほうがより地域の細かいニーズに即した事業を行っています。
実際に資金の貸し出しを行うのは都道府県社会福祉協議会ですが、相談は申請の手続きは市区町村社会福祉協議会で行います。市区町村によっては社会福祉協議会のウェブサイトがない場合もありますが、その場合は市区町村役所に電話で問い合わせをしましょう。
緊急小口資金の収入条件
緊急小口資金制度には収入基準があります。要するに、制度を利用できるのは低所得世帯だけ、ということです。収入基準は毎年改定されますが、平成27年度の収入基準は以下のとおりです。
世帯の構成人数 | 1人 | 2人 | 3人 | 4人 | 5人 |
---|---|---|---|---|---|
可処分所得額 | 191,000円 | 272,000円 | 335,000円 | 386,000円 | 426,000円 |
家賃、住宅ローンの返済、仕送りなどの支出がある場合は、一定金額が控除されます。
緊急小口資金制度は個人ではなく世帯の独立性を維持するための制度であるため、借り入れにあたっては世知を構成する全員の了解を得た上で、世帯全体の収入を正しく把握・申請する必要があります。
この制度は税金を原資とする公的な融資制度なので、偽の申請や不正な手段により資金を借りたことが明らかになった場合は、一括返済が求められます。
緊急小口資金の融資条件
緊急小口資金制度は緊急かつ一時的な生計維持困難を解消するためのものであるので、生計維持困難が長期的に続きそうな家庭、つまりは収入がない、もしくは極端に少ない世帯、生活保護世帯は利用できません。
また、多額の負債がある人、債務整理の予定がある人なども利用できません。あくまでも融資後は自力で生計を立てられる人が対象です。母子家庭、寡婦家庭の場合は母子寡婦福祉資金貸付制度が優先されるため、この制度は利用できません。
融資金額は最大で10万円で、連帯保証人は不要、金利は0%(無利子)です。ただし、返済が遅れた場合は金利発生しますので注意が必要です。返済期間は相談時に決定しますが、通常は資金融資から返済開始まで2ヶ月の据置期間が設定されます。
緊急小口資金の貸付対象理由
緊急小口資金は生活が一時的に行き詰まりそうならば誰でも利用できる制度ではありません。困窮の理由が以下のケースに当てはまる場合のみ、利用が可能です。
- 医療費又は介護費の支払い等臨時の生活費が必要なとき
- 給与等の盗難,紛失によって生活費が必要なとき
- 火災等の被災によって一時的な生活費が必要なとき
- その他これらと同等のやむを得ない事由によるとき
- 年金,保険,公的給付金等の支給開始までに必要な生活費
- 会社から解雇,休業等による収入減(自己都合による離職は除く)
- 滞納していた税金,国民健康保険料,年金保険料,公共料金の支払いによる支出増
- 事故等により損害を受けた場合による支出増(ただし,借受人の日常生活に支障をきたす事故等の場合に限る)
- 社会福祉施設等からの退出に伴う賃貸住宅の入居に伴う敷金,礼金等の支払による支出増
手続の方法
手続きは各市区町村の社会福祉協議会で行います。必要書類は自治体によって異なりますが、以下の書類は大抵の場合必要になります。
- 住民票(世帯全員分)
- 印鑑登録証明、実印
- 本人確認書類(世帯全員分)
- 収入証明書類(世帯全員分)
- 預金通帳のコピー
- 経済的困難を裏付ける資料(盗難届や医療費の領収書など)
細かいルールは自治体によって異なりますので、必ず事前に社会福祉協議会まで問い合わせて下さい。なお、借受人は世帯主がなるのが普通です。
「緊急」なのに審査に5日もかかる!?
窓口で申請後、審査が行われます。審査期間は最低5日、長い場合は2週間程度かかることもあります。
緊急小口と名のつく割にはずいぶん長い気もしますが、原資が税金なので審査も慎重にならざるを得ないのです。貸付決定した場合は、資金が口座に振り込まれ、据置期間を経て返済していくことになります。
緊急小口資金制度の使い所
緊急小口資金制度は民間金融機関の制度ではないため、信用情報機関に事故情報が登録されていても審査に通れば融資が受けられます。その上無利子なので、債務整理後の小口資金の調達には便利です。
反面金額も小さく、審査に時間もかかり、利用条件も厳しいため使い所は限られます。なんにせよ、生活資金を借金で賄うというのは健全な状態ではないため、収入を増やす、支出を減らすなどして生活を立て直したほうがいいでしょう。