110万円以上のお金をもらうと税金がかかる!?節税の方法は?

他人からお金をもらう際に注意しなければならないのが贈与税の発生です。贈与税も立派な税金の一つですから、払い忘れると延滞税が発生してしまいます。せっかく他人から財産を譲り受けたのに、それが無駄な延滞税の支払いに当てられてしまっては泣くに泣けません。

年間110万円以上のお金を人からもらった場合は、贈与税が発生する可能性がありますので、念のために確認しましょう。

贈与とは生きている人同士の財産やりとり

贈与とは、簡単に言えば、ある人が他の人に無償でお金や土地、建物、ゴルフ会員権、その他様々な資産をあげる手続きのことです。

相続と似ていますが、相続は亡くなった人から生きている人に財産が渡るのに対して、贈与は生きている人から生きている人に財産が渡るという違いがあります。

また、相続は相続人(あげる人)や被相続人(もらう人)の意思表明がなくても成立するのに対して、贈与は贈与人(あげる人)と被相続人(もらう人)の療法が意思表明をしなければ成り立たない、という違いもあります。

この差は結構重要です。例えば、相続人が亡くなった場合、被相続人に当たる人(配偶者や子供など)は、相続人が生きているときに意思表明をしていなくても相続できます。相続したくない場合は、相続放棄という手続きをしなければなりません(参考:借金を相続するメリットとデメリットとは?全員法放棄した場合は?)。

それに対して、贈与は被相続人が子供で意思表示ができない場合などは成立しません。繰り返しになりますが、贈与には双方の合意が必ず必要になるのです。

生活費や教育費は贈与の対象にならない

人から財産をもらうと全て贈与になるわけでありません。例えば、夫婦や親子、あるいは兄弟姉妹などの扶養義務者から生活費や教育費に当てるために貰った財産などは通常、贈与とはみなされません。

また、法人(株式会社など)から財産を取得した場合も贈与とはみなされません(かわりに所得とみなされ、所得税がかかります)。

贈与税は贈与を受けた人が払う税金で、相続税の抜け道を塞ぐためのもの

贈与を受けた人は、原則として贈与税を支払わなければなりません(贈与額が年間110万円以下の場合は税金はかかりません)。贈与税の税額は自分で計算し、確定申告を行わなければなりません。支払期日は翌年の2月1日から3月15日まで、原則として現金払いですが電子申告や電子納税も可能です。納税を逃れようとすると延滞税がかかるので、贈与を受けた場合は必ず贈与税の計算を行いましょう。

贈与に税金がかかる理由は、相続税の抜け道を防ぐためです。相続の際に相続税がかかることは皆さんも御存知かと思います。相続の際に相続税がかかる理由は、富裕層に富が集中するのを防ぐためです。

もし相続税が存在しなければ、財産をたくさん持っている富裕層の子は労せずして富裕層になり、更にその子も富裕層になっていく一方で、税収が減るので貧困層はいつまでたっても貧困層のままになるという階層の固定化を招きます。相続税にはそれを防ぎ、生まれた家の財力に左右されない公平な競争を促す効果があります。

しかし、相続税があっても贈与税がなければ、多くの富裕層は生前に贈与を行って相続税の支払いを逃れようとすることでしょう。実際、相続税しかない時代にはそのような事例もあったそうです。その抜け道を埋めるための制度が贈与税なのです。

贈与税は10~55%、基礎控除額110万円の累進課税制度

贈与税の計算式は以下のとおりです。

贈与税=基礎控除後の課税価格×税率-控除額

基礎控除後の課税価格=取得した財産の時価-110万円

1年で取得した財産が110万円以下の場合、贈与税は必ず0円となります。なので例えばおばあちゃんから1万円お小遣いをもらったぐらいでは、贈与税は発生しません。

また、1年の間に複数の人から財産を相続した場合は、その合計金額をもとに計算します。例えば父親から100万円、母親から100万円の財産の贈与を受けた場合、取得した財産は200万円となり、贈与税が発生します。

贈与税は贈与される金額が多くなるほど税率が高くなる累進課税制度を採用しています。また、贈与税の税率には20歳以上のものが直系尊属から贈与を受けた場合に適用される特例税率と、それ以外の一般税率があります。それぞれの税率は以下のようになっています。

特別税率

基礎控除後の課税価格 200万円
以下
400万円
以下
600万円
以下
1,000万円
以下
1,500万円
以下
3,000万円
以下
4,500万円
以下
4,500万円
税 率 10% 15% 20% 30% 40% 45% 50% 55%
控除額 10万円 30万円 90万円 190万円 265万円 415万円 640万円

一般税率

基礎控除後の課税価格 200万円
以下
300万円
以下
400万円
以下
600万円
以下
1,000万円
以下
1,500万円
以下
3,000万円
以下
3,000万円
税 率 10% 15% 20% 30% 40% 45% 50% 55%
控除額 10万円 25万円 65万円 125万円 175万円 250万円 400万円

例えば、父親から500万円の贈与を受けた場合について考えます。この場合、基礎控除後の課税価格は390万円なので、税率は15%、基礎控除額は10万円となります。したがって、贈与税額は以下のようになります。

贈与税=390万円×15%-10万円=48万5000円

贈与税は必ずもらった人が払います。

物の贈与を受けた場合の財産の時価の評価方法

贈与で現金を取得した場合は、その額面金額をそのまま財産の時価として計算すればいいので楽ですが、土地や建物、あるいは有価証券などを取得した場合は、財産の時価はどうやって計算すればいいのでしょうか。

不動産の場合は路線価や固定資産税評価額をもとに計算する

土地の贈与を受けた場合は、その土地の相続税評価額から計算します。相続税評価額とは相続税を計算するときに使用する土地の評価額で、通常は路線価から算出します。路線価とは特定の道路に設定された価格で、その道路に接している土地の相続税評価額は

相続税評価額=路線価×面積(m2)で計算できます。

例えば、路線価が50万円で、贈与を受けた土地の面積が100m2の場合、相続税評価額は50万×100m2=5000万円となります。路線価は通常、公示価格≒実勢価格の8割ぐらいになることが多いです。

ただし、路線価はすべての道路に設置されているわけではありません。路線価が付いていない道路に接している土地の贈与を受けた場合は、固定資産税評価額を使います。

固定資産税評価額とは、固定資産税を計算するときに使用する土地の評価額で、公示価格≒実勢価格の7割になるように設定されています。また、建物部分も固定資産税評価額をもとに計算します。

つまり、土地、建物ともに、実勢価格よりも低い価格で評価されるわけです。評価額が低くなれば、その分贈与税も安くなります。現金を不動産に変えて贈与すると有利になるとはこのような仕組みがあるからです(ただし、現金を土地や建物に変えてしまうと、それを再び現金化するのに労力と時間がかかるため注意が必要です)。

株式の場合は上場企業が非上場企業かで評価方法が変わる

株式の贈与を受けた場合は、その株式が上場企業のものなのか、そうでないのかで計算方法が変わります。上場企業の場合は株価が公開されているので、それを使います。原則として、

  • 終値
  • 当月の終値の月平均額
  • 前月の終値の月平均額
  • 前々月の終値の月平均額

の中で、最も低い金額を時価とみなします。

上場していない企業の場合は、店頭公開株の場合は上場企業とほぼ同じ方法で、公開途上にある株式は公開価格で評価します。難しいのは、これらの条件にいずれも当てはまらない株式です。何しろ相場が無いので、時価をいくらとみなせばいいのかがわかりません。

この場合、贈与を受けた株主が会社の経営支配力を保つ場合は原則的評価方式、そうでない場合は配当還元方式で計算します。計算方法は非常に複雑なので、これらの条件に当てはまる株式を取得する場合は税理士に相談した方がいいでしょう。

贈与は口約束でも成立するが、トラブルを避けるためにも証拠を残すべき

贈与は原則として口約束でも成り立ちますが、口約束だと言った言わないで揉めることが多いため、通常は契約書を作成します。贈与契約書には決まった書式はなく、各贈与契約に剃った形で作成することになります。通常は

  • 贈与者、受贈者の情報(署名、捺印)
  • 贈与の原因(方法、贈与日)
  • 贈与財産の情報(価額、所在地等)

の3つを記入します。誰が誰にぞのような財産を贈与したかをしっかりと記入しましょう。

文章はワープロソフトを利用しても構いませんが、住所や氏名などは自筆のほうが望ましいです(その筆跡から本人が書いたものかどうかの判別ができるため)。

作成した贈与契約書は、贈与人と被贈与人がそれぞれ1通ずつ保管します。

不動産を贈与する場合は、対象となる土地や建物をきちんと登記しましょう。所在地も記載し、印紙税も貼り付けてください。

贈与の証拠を残そう

現金の贈与を行う場合は、必ず手渡しではなく銀行振込で行ってください。そうすれば銀行にデータが残り、あとで財産をもらった・もらってないで揉めることがなくなります。

贈与をしていないつもりだったのに……「みなし贈与」に注意

当事者は贈与をしていないつもりでも、税務署に贈与をみなされる行為を行った場合は、贈与税がかかることがあります。このような行為をまとめてみなし贈与と言います。みなし贈与に該当する行為には以下のようなものがあります。

財産を市場価格より著しく安い価格(概ね市場価格の8割未満)で買い受けた時

贈与を行うと贈与税がかかるのならば、非常に安い価格で売買すればOKなのではないかと思われるかもしれませんが、残念ながらそれは通用しません。概ね市場価格の8割未満で売買した場合は、贈与とみなされてしまうことがあるのです。逆に言えば、8割を超えていれば贈与とはみなされないケースが多い、とも言えます。

親族に借金を免除してもらった時

例えば親から300万円借金をしていて、その借金をチャラにしてもらったとします。これは実質的には親から300万円の贈与を受けたのと同じであるとみなされ、その分贈与税がかかります。

他人が保険料を支払っていた保険の保険金を受け取った時

例えば、死亡保険に加入していた親が受取、その死亡保険金を受け取った場合は、みなし贈与とみなされ、その分贈与税がかかります。

贈与税は節税できる!様々な控除制度を賢く利用しよう

贈与する財産の時価が高くなると、それにかかる贈与税額も高くなります。贈与税には様々な節税方法があるので、それらをうまく活用して少しでも税金を安くしたいところです。

110万円の基礎控除を活用して節税

前述の通り、贈与税には110万円の基礎控除額が設定されています。つまり、毎年の贈与額が110万円以下になるように調整していけば、贈与税はかからないことになります。ただし、毎年同じ時期に同じ金額の贈与を受け続けた場合、最初からまとまった金額を贈与するつもりだったと税務署にみなされてしまうことがあります。

そのようにみなされてしまった場合、贈与税がかかります。何年間贈与し続けるとそうみなされてしまう、という明確な基準がないため対策は難しいのですが、贈与契約書を毎年作ればある程度のリスクヘッジになります。

あるいは、毎年の贈与額を基礎控除の110万円をちょっと超える額に設定して、毎年少しずつ贈与税を払っていく、という方法も考えられます。

配偶者控除を利用して節税

所得税に配偶者工場があることは皆さんも御存知かと思いますが、実は贈与税にも配偶者控除があります。配偶者から居住用の不動産、もしくはそれを購入するための資金を受け取った場合、最高で2000万円まで基礎控除後の課税価格から控除されます。ただし、控除が認められるためには以下の条件を満たす必要があります。

  • 婚姻期間が20年以上であること
  • 国内にある居住用不動産、もしくはそれを購入するための資金を贈与すること
  • 贈与を受けたあと、少なくとも1年はその不動産に住むこと
  • 過去に同じ贈与者から配偶者控除を利用した贈与を受けていないこと

この制度を利用すれば、大幅な節税が可能です。例えば、配偶者から3000万円の住宅用資金の贈与を受けるとします。配偶者控除を利用しない場合、基礎控除後の課税価格は2890万円になるため、贈与税額は以下のようになります。

贈与税=2890万円×50%-250万円=1195万円

一方、配偶者控除を利用した場合、基礎控除後の課税価格は890万円になるため、贈与税額は以下のようになります。

贈与税=890万円×40%-125万円=231万円

住宅取得資金贈与で節税

父母、もしくは祖父母から住宅資金の贈与を受ける場合は、住宅取得資金贈与の対象となり、最大で1200万円まで贈与税が非課税となります。平成33年12月31日までに住宅取得を契約した場合に限り適用されます。基礎控除110万円と合わせると、1310万円まで非課税となります。条件が複雑なので、詳しくは税理士に相談してください。

教育資金贈与で節税

祖父母から教育資金の贈与を受ける場合、子供1人につき1500万円までの贈与が非課税になります。ただし、子供が30歳までに使い切れず残ったお金がある場合、その残額分だけ贈与税がかかります。また、基礎控除110万円との併用も可能です。

例えば、祖父母から教育資金として1200万円の贈与を受けて、その後30歳までに900万円を教育資金として使った場合、残額の300万円から基礎控除額の110万円を引いた190万円が贈与税の課税対象となります。

まとめ

  • 贈与税は110万円以上の贈与を受けたときに発生する
  • 贈与税は10~55%の累進課税制度
  • 贈与税は様々な制度を利用することにより節税が可能

贈与税はしっかりと対策することによって、大幅に節税することが可能です。不安がある方は税理士にしっかりと相談し、対策を進めておきましょう。