よくテレビドラマなどで借金を返せない人が恐い人に取り立てられているシーンを観ますよね。もちろん、現実では真っ当な金融会社からお金を借りている限りあんなことは起こりませんし、もしあったとしても法的に解決する手段が用意されています。
だからといって借金を返さなくてもなんとかなる、というわけではありません。お金を貸している側もそれを商売にしているのですから、合法的とはいえ、あらゆる手を使って貸したお金を回収しようとします。
今回は借金の取り立てはどのように行われるのかを例を交え、時系列に沿って解説します。
目次
返せる見込みのない借金を作ってしまったAさん
Aさんはギャンブルが大好きで、パチンコに1か月の給料を全部つぎこんでしまうほどのめりこんでいました。
さらには、消費者金融で借りたお金すらギャンブルに使ってしまい、気づけば300万円もの借金をしていました。
こうなると月々の返済額も馬鹿になりません。こんなに毎月払っていては生活ができない、と考えたAさんは借金を踏み倒してしまおうと考えました。
最初の支払いが延滞すると、まず電話での催促が来る
Aさんはもう借金を返すつもりがありませんから、最初の支払い期日になっても1円もお金を口座に振り込みませんでした。
すると、数日後経った後、金融会社から電話がかかってくるようになります。それすら無視していると、金融会社から催促状が送られてきます。内容は「借金の支払いが遅れていますよ、早急に支払ってくださいね」というものです。
なんだ、借金の催促なんてこんなもんか、と甘く見ていたAさん。しかし、本当の取り立てはここから始まるのです。
電話を無視し続けていると家に業者が!
その後も電話を無視し続けたAさん。そんなある日、家に誰かが訪ねてきました。窓から見てみるとスーツを着た銀行マン風の男のようです。すぐにピンときたAさんは居留守を使うことにしました。まさか家にまで取り立てに来るなんて・・・。
そうです、家にまで取り立てにくるのはドラマの世界だけではありません。常識的な時間、回数なら貸し手が滞納者の家に取り立てに行くことは法律的に認められているのです。
とはいえ、脅迫や暴力などは当然犯罪なので、そのようなことは行いません。では何をするかというと、借金の支払いの計画などを相談しに来るのです。
月々の給料はいくらか?借金の総額はいくらか?などを考慮して、無理のない返済プランを一緒に考えましょう、というわけですね。もちろん、これらは法的に強制力のあるものではないので、無視することも可能です。
ただ、お金を借りているという立場上、こちらも強く出れないので、相手の言われるがままになってしまう人も多いでしょう。そういう心理を分かったうえでこのような手間のかかる回収法を行っているのですね。
3か月滞納すると信用情報機関のブラックリストに載ってしまう
さらに支払いを延滞し続けたAさん。2か月目に送られてきた通告状にはこんな一文が書いてありました。
「これ以上、支払いが遅延した場合、貴殿の氏名、延滞情報等を弊社が加盟する信用情報機関へ登録します」
最初はなんのことか分からなかったAさんですが、調べていくうちに非常にマズいことだと分かってきました。
信用情報機関とは?
クレジットカード会社や金融機関などは信用情報機関を介して顧客の情報を共有しています。例えば、〇〇さんがある金融機関で借金をすると、その情報は信用情報機関に渡り、他の金融機関にも〇〇さんはいくら借金をした、というデータが回っていくのです。
現在、信用情報機関は3社あり、ほぼ全ての金融機関がいずれかの信用情報機関に加盟しています。また、各信用情報機関も情報を交換しているので、実質的に全ての会社に情報が共有されていることになります。これには銀行も含まれます。
信用情報機関のブラックリストに載ることがなぜマズいのか?
ブラックリストに載ることは、この顧客はお金を返してくれないから注意したほうがいいよ、という意味になります。
お金を返さない客になんて誰もお金を貸さないですよね?つまり、ブラックリストに載っている間は基本的に借金ができず、ローンも組めなくなります。またクレジットカードやカードローンの使用もできません。
それだけでなく、賃貸契約などの際に第三者機関の保証人制度なども使えなくなります。最悪、引っ越すこともできなくなるわけですね。
また、借金を全て払い終わったらすぐにブラックリストから逃れられるわけではありません。借金を払い終わってから1年間はブラックリストに載り続けてしまうのです。一度失った信頼を取り戻すのには相応の時間がかかるというわけです。
それでも借金を返さないと給料や財産が差し押さえられる
もはや意地でも借金を返さないと決めたAさん。しかし、そんな意地だけで借金を踏み倒せるわけがありません。貸し手側も次の一手を打ってきます。
その一手が「差し押さえ」です。あなたも聞いたことがあるでしょうし、その意味もなんとなく知っていますよね?
とはいえ、貸し手側が「今からあなたの財産を差し押さえます」と言って急に差し押さえができるわけではありません。(契約時に公正証書を作っていた場合は例外です)
差し押さえは法的な措置です。そのため、貸し手が裁判を起こす必要があります。この裁判で差し押さえが認められた場合、実際に実行できるようになります。
裁判を起こされると、法的に認められている金利で借金をしていた場合、ほぼ確実に借り手側が敗訴します。こうなると差し押さえが現実的になってきます。
差し押さえされるとどうなる?
まず最初に差し押さえの対象になるのは、月々の給料です。基本的に会社員として働いている限り決まった額が毎月支払われますから、借金の返済元にするには絶好です。
とはいえ、全額を持っていかれるわけではありません。給料が手取りで44万円未満だった場合、4分の1まで差し押さえができると決められています。そのため、24万円の給料が支払われるとしたら、6万円が借金の返済にあてられるわけですね。
44万円以上の場合は計算が少し複雑になるのですが、33万円を超える分にいたっては全額差し押さえができます。
つまり、給料が50万円だった場合、その4分の1の12万5千円ではなく、17万円が差し押さえられます。44万円以上の給料は手取りが一律33万円になるよう差し押さえられると考えると分かりやすいですね。
また借り手が毎月の安定した収入がなく、給料から返済が見込めない場合は、お金以外の財産が差し押さえの対象になります。代表的なものは、家や車ですね。
上述したように差し押さえは法的措置であり、強制執行されます。そのため、拒否することはできません。借金を完済するまで給料から延々と決まった額が引かれていくことになります。
差し押さえは会社にバレる
差し押さえは個人の問題と思いがちですが、実際に差し押さえの対象になっているのは会社です。法的な話はややこしいのですが、債務者(借り手)が借金の返済をしない場合、債務者に給与を支払う会社が差し押さえの対象になるのです。
そのため、差し押さえや借金をしている状況が勤め先の会社にバレる、バレないの話ではありません。差し押さえの手続きは会社にいっているのですから。100%バレます。
とはいえ、差し押さえを理由に解雇になったりはしません。これは解雇権の濫用に当たりますから違法行為です。
ただ、借金の状況などが周りにバレている状態では働きにくいでしょう。しかし、借金の返済がある以上、仕事を辞めるわけにはいきません。
借金を滞納するとこんな地獄が待っているのです。
借金にも時効はあるけれど・・・
意外なことに借金にも時効援用が存在します。ちなみに借金の時効成立の期間は5年です。(信用金庫や信用組合から借りた場合は10年になります)
5年ならなんとか・・・?と思うかもしれません。しかし、そんな簡単に時効は成立しません。
まず、裁判を起こされた時点でそれまでの経過年数はリセットされます。時効までたとえあと
1日であったとしても、全てノーカウントです。
また、催促状を内容証明郵便で送られた場合も時効は一旦ストップです。この場合は、最大6か月、時効の経過年数を止めることができます。
このため、5年もの間、借金の返済から逃げ切るのはほぼ不可能なのです。
借金を返済しないと警察に捕まる?
これは借金をしている人の大きな不安の1つでしょう。一度警察に捕まってしまうと、前科が残り、社会的に死んでしまう恐れがありますから。
ただ、借金が原因で警察に捕まることはほぼありません。警察は民事不介入といって個人の財産の問題などには基本的に介入しないのです。代わりに司法がこの件について強い力を持っています。財産差し押さえなどはその1例ですね。
とはいえ、悪質な事例の場合、詐欺罪で捕まることがあります。例えば、お金を返すつもりがないのに借金をし、踏み倒そうとした、などの場合ですね。
しかし、借金を返済するつもりがあったかどうかは当人だけが知ることなので、上述した民事不介入の原則も合わせて、詐欺罪で起訴されることは滅多にありません。
借金の返済に困ったらどうすればいいの?
ここまで、借金を延滞するとどうなるのかについて解説してきました。本来なら自分が返せない額の借金はするべきではありません。しかし、現時点で多額の借金をしてしまっている人もいるでしょう。
もう自己破産しかないのか・・・、その前にまだまだできることはあります。その1つが債務整理です。債務整理を行うと借金の催促が一時的に止まったり、借金の額を減らすことができたりします。
債務整理には3種類の方法があります。それぞれ、任意整理、民事再生、自己破産です。
任意整理とは?
裁判所を通さず、弁護士や司法書士の先生に債権者と交渉してもらい、借金の返済額を減らしてもらう方法です。裁判所は関与しないので、官報に載ることはありません。官報とは国の機関紙で、民事再生や自己破産を行った場合は実名が記載されます。
民事再生とは?
裁判所を通して借金の額を減らしてもらう方法です。官報に実名が載るデメリットのほか、裁判所に借金の返済能力があると認められない場合、行えない可能性があります。例えば、無職などで安定した収入が見込めない場合は民事再生が認められない可能性があるのです。
自己破産とは?
裁判所を通して借金を帳消しにしてもらう手続きです。ただし、財産が没収されたり、半年程度、一部の職業に就けなくなったりとデメリットもあります。
困ったら弁護士や司法書士に相談してみよう
もう借金でどうしようもない・・・、そんな状況になってしまったら一度弁護士や司法書士に相談することをおすすめします。
上述した債務整理も含め、今のあなたに合った一番の解決法を提示してくれます。
また、最近は1回目の相談は無料の弁護士事務所なども増えているので、費用のことは気にしなくて構いません。
さらに実際に債務整理を依頼する場合も、法テラスの制度を使えばより安く依頼することができます。
まとめ
現在、借金を踏み倒すのはほぼ不可能です。そのため、自分の返済能力を超えた借金をしないことが非常に重要です。
また、多額の借金を背負ってしまっている人にもしっかり救済措置が用意されています。手遅れになる前に弁護士に相談するなど行動に移りましょう。