社会のセーフティネットの一つである生活保護。生活が立ちゆかなくなり、無収入になった時のための最終手段ですから、当然誰でももらえるというわけではありません。
生活保護を受給する上では満たさなければならない条件がいくつかあります。
ここではその条件や、受給申請の際の注意点、受給者の義務、Q&Aなどを紹介したいと思います。
生活保護の細かいルールは自治体ごとに異なる?
生活保護には様々なルールが有りますが、自治体によって多少ルールが異なることがあります。同じ境遇であってもある自治体では生活保護が支給されたのに、別の自治体では支給されなかった、というようなことは良くあります。
例えば自動車を持っていると生活保護が受給できないと書いてあるウェブサイトもありますが、就職活動のために自動車が必要な場合は例外的に所有が認められることもあります。
細かい個別の事例については自治体レベル、あるいは職員レベルが現場で判断することも多いのです。
そのため、このページでは生活保護の一般的な条件、申請の際の注意点などを述べるにとどめます。細かい条件やルールなどがわからないという場合は、お住まいの市区町村の福祉課などに相談してください。
世帯主である
生活保護を受給できるのは世帯主だけです。
世帯主とは、“年齢や所得に関わらず、世帯の中心となって物事をとりはかる者として世帯側から申告された者”と定義されています。世帯とは”居住と生計をともにする社会生活上の単位”です。
たとえ家族であっても、別の場所に居住していたり、別々に生計を立てていたりする場合は別世帯としてカウントされます。逆に血が繋がっていなくても、居住と生計をともにしていれば同一世帯と考えることが多いようです。
例えばAさんとBさんがルームシェアをしている場合、居住とともにするという条件は満たしていますが、生計をともにするという条件は満たしていないので、この二人は別世帯であり、それぞれが世帯主となります。
1人世帯の場合は、その人がかならず世帯主になります。2人以上の世帯の場合は、その中の誰かが世帯主になります。誰を世帯主にするかは世帯側が決めます。
通常は働いている人(2人以上いる場合は収入が高かったり、働いている時間が長かったりする人)が世帯主に指定されます。
生活保護は世帯単位で受給するものなので、世帯の一部の人間だけが受給することはできません。世帯の誰かが生活保護の条件を満たしていても、世帯の別の誰かに収入がある程度ある場合、生活保護を受けることはできません。
資産がない
資産をある程度持っている人は生活保護を受けられません。
ある程度の定義がわからない、という人もいらっしゃるでしょうが、この辺りは線引きが非常に曖昧なので一概に資産がいくら以下ならばOKとはいえません。
例えば前述のとおり自動車を所有していても生活保護が受けられたケースが存在する一方で、そうでないケースも有ります。
同じく、建物や土地がある場合は原則としてそれを売却しなければ生活保護を受けることができませんが、済むための建物や土地については所有が認められることもあります。
ただし、その家や土地が高額で売却できる場合はそれを売って生活費に充てるように言われることもあります。細かいところはケースバイケースなので、これも市役所の福祉課と相談するしかありません。
なお、生活保護を申請するときの貯金の上限は生活費の半分までと決められています。生活保護は申請から受給開始まで半月ぐらいかかるため、その間の生活費までなら貯金しておいてもいいよ、ということです。
市役所は申請者の預金残高を調べることができるので、隠そうとしても無駄です。
また、生活保護受給中は原則として貯金はできません。ただし、生活保護世帯の高校生は進学や就職に備え、ある程度の貯金ならばしてもいいと決められています(具体的な金額の上限は示されていません)。
また、うつ病などで入院している場合は生活費がかからないのでお金が溜まってしまうことがありますが、これはある程度までなら仕方ないこととされています。
病気や怪我などで働くことができない、もしくは収入が極端に少ない
例えば、足を骨折してしまって動けない時、精神疾患で仕事ができない時などは、生活保護を受けることができます。病気や怪我などがなく、働く気がない人は生活保護を受けることはできません。
ただし、働けて収入があっても、それが生活保護よりも少ない場合は、その差額を受給することが可能です。
さて、ここで問題が一つ生じます。世の中には病気や怪我がなく、なおかつ働く気があるのにそれなりの収入がもらえる仕事に就けない人がいます。面接が極端に下手だったり、学歴が極端に低かったりすれば、そういうこともありえます。
現代ではこうした人も生活保護を受給することができます。ただし、継続的に生活保護を受給し続けるためには、働く気があることを証明する、つまり就職活動をする必要があります。就職活動と言っても、週に1,2回程度ハローワークで仕事を探せばいいだけです。
生活保護受給者にも職業選択の自由は認められています。仮に職を選ばなければ就職できるとしても、本人が拒否しているのならば担当ケースワーカーが無理やり就職させることはありません。
「働く気はない人」は生活保護を受給できないという原則があるのですが、実際にその人が働く気がないのかあるのかを判断するのは難しいものです。働く気がないのに、生活保護受給のために働く気があるふりをする人も中にはいるのです。
なお、サラリーマンや公務員として働いていて、なおかつ突然怪我や病気になってしまって働けなくなったという場合は、生活保護ではなく傷病手当金を受給することになります。
傷病手当金は所属している健康保険組合から受給します。金額はそれ以前の1日の給料の3分の2です。傷病手当金と生活保護、両方の条件を満たしている場合は、原則として傷病手当金を先に申請します。
借金がない
法律上は借金があっても生活保護を受けることは可能です。
しかし、実際には借金がある状態で市役所に行くと「法テラスに相談して借金を整理してからもう一度来てください」とまず間違いなく言われます。
ここで言う借金の整理とは借金を完済することではなく、債務整理のことです。債務整理をして、借金をなくしてからもう一度来てくれ、というわけですね。法律上は借金が合っても借金ができると認められているのに、なぜ市役所はこのようなことを言うのでしょうか。
まず、生活保護費を借金の返済に当てることは禁止されています。
生活保護費は生活が出来る最低限度額しか支給されないため、生活保護受給者がその一部を借金の返済に当ててしまうと、生活が破綻してしまう可能性があるからです。
一方、金融機関はその人が生活保護受給者であるかどうかとかそのようなことは関係なく返済を求めてきます。催促に応じない場合、金融機関は差し押さえをしますが、生活保護費は差し押さえができません。
また、最低限の生活費や家財道具も差し押さえができません。つまり、生活保護受給者は極論を言えば借金を放置していてもいいということになります。
しかし、金融機関は生活保護受給者に対して催促を行う権利があります。
もしその催促に負けて生活保護受給者が生活保護費の中から借金を返済してしまった場合、最悪の場合生活保護受給者が餓死してしまうことだってありえます。
そうなったら市役所は困ります。
だから市役所は生活保護受給者が自分の判断で生活保護費から借金を返さないように、債務整理を強くすすめるのです。
なお、生活保護受給者は収入がないか、あっても極端に少ないので任意整理や特定調停などはまず使えません。殆どのケースにおいて、自己破産を利用することになるかと思います。
自己破産をする場合、原則として20万円以上の資産は没収となるほか、一定の期間特定の仕事につけなくなるなどのデメリットが有ります。
自己破産の詳しい内容については、以下の記事も参考にしていただければと思います。(参考:自己破産大全!メリットデメリットからチャラになる借金の統計まで)
生活保護受給の主な条件は以上のとおりです。実際には上記の条件以外にも細かな条件があったり、あるいは上記の条件を完璧に満たしていなくても受給できることがあります。繰り返しになりますが、細かいことは市役所の福祉化に相談して聞いてください。
生活保護受給時の各種扶助
現在の生活保護制度には8つの扶助制度があります。
生活扶助
これはみなさんが想像されるいわゆる生活保護制度のことです。食費、被服費、光熱費などを扶助するものです。金銭で給付されます。
住宅扶助
住居に関する費用が支給されます。家賃の他、敷金、礼金、仲介手数料、更新手数料、家屋の回収や補修に必要な費用などが金銭で支給されます。
なお、家賃には上限があり、それよりも高いところに住むことはできないので注意しましょう。なお、家賃については市役所から代理で納付してもらうこともできます。
教育扶助
子供の教育費用が支給されます。学費(学校給食費、学用品費、通学費、修学旅行費、医療費など)が金銭で普及されます。対象は義務教育である小学校、中学校です。
高校については生活保護を受けながら通うことはできますが、費用としては支給されません。ただし、高校への学費はこれとは別の「生業扶助」で支給されます。大学の学費は出ません。
医療扶助
医療費が支給されます。生活保護受給者になると病院がただになるという話を聞いたことがある方は多いかと思いますが、それはこの医療扶助制度があるためです。
診察代のほか薬代、治療代などが支給されます。原則として医療扶助は生活保護指定医療機関に委託して行われる(特定の病院でしか治療が受けられない)のですが、場合によっては指定外の医療機関でも治療が受けられることがあります。
介護扶助
介護に関する費用が支給されます。毎月の介護保険料が免除されるほか、利用する際の1割負担もなくなります。対象は要介護、もしくは要保護と認定された受給者のみです。
具体的には訪問介護や通所リハビリテーション、通所介護、短期入所療養介護などが給付の対象となっています。
出産扶助
出産に関する費用が支給されます。分娩の介助、分娩前と分娩後の処置などが支給の対象です。最近は国による出産費用貸付や入院助産補助制度などが充実してきているため、出産扶助の利用機会は減っているようです。
生業扶助
生業に必要な費用が支給されます。高校、高等専門学校、特別支援学校などで生業に必要な技能を習得する場合に扶助を受けることができます。また、資格や職業訓練などの仕事につくのに必要な費用も支給されます。
葬祭扶助
葬式に関する費用が支給されます。検案、死体の運搬、火葬や埋葬などが主な対象です。原則として金銭で給付されますが、場合によっては現物支給されることもあります。
生活保護の申請方法
生活保護は申請主義という形式が取られています。
生活保護受給の条件を満たしたからといって、役所の方から「あなた生活保護を受けませんか?」と言ってくれることはありません。
受給条件を満たしていても、申請をしなければ受給することはできないのです。
逆に、申請があった場合、国はそれを拒否することはできません。実際に生活保護が受給できるかどうかはともかく、審査を行わなければならないのです。生活保護受給の要件を満たした場合は、すぐに申請しましょう。
生活保護の申請先は「福祉事務所」
生活保護の申請先はお住まい市区町村の福祉事務所です。原則として、市区には福祉事務所が置かれています。市区によっては福祉センター、保健福祉課などと呼ばれていることもあります。福祉事務所の住所については、厚生労働省のウェブサイトで確認できます。
わからない場合は地元の役所に電話して、「生活保護の相談窓口はどこですか?」と聞いてください。福祉事務所が設置されていない自治体にお住まいの場合は、町村役場で申請の手続きができます。
友人の自宅やネットカフェなどに住んでいたり、あるいはホームレスだったりする場合は、今いる場所の自治体に申請してください。住民票がなくても問題ありません。
どのように生活が窮しているかを訴えよう
福祉事務所や町村役場に行くと、職員と面談させられます。ここではあなたがどのように生活に窮しているか、どのような仕事を今までしてきたか、健康状態はどうかなどを尋ねられます。
また、生活に窮していることを証明するためには、幾つかの書類が必要になります。
いくら窮状を訴えても、それを客観的に示す証拠がなければ何の意味もありません。
収入がある場合は直近3ヶ月分程度の給料明細を、給料以外の収入がある場合はその証明になるものを、預金がある場合は銀行の通帳を持参しましょう。
通帳については全て記帳して、現在の残高がどのくらいあるのかを証明しましょう。
書類を提出しよう
生活保護の申請に必要な書類は以下の4つです。申請書は各自治体が用意していますが、決まったフォーマットがあるわけではないため、自分で用意しても問題はありません。
たまに水際作戦で申請書がもらえないことがありますが、福祉事務所の人間に申請書を渡す渡さないを決める権利はありません。
どうしても申請書がもらえない場合は、内容証明郵便か簡易書留で郵送してしまえばOKです。
これならもみ消される心配もありません。
提出する書類は
資産状況申告書
収入・無収入申告書
一時金申請書(アパートの入居費用が必要な場合。入居費用の見積書も一緒に提出する。)
の4つです。生活保護申請書さえ出せば申請した事にはなりますが、他の書類も合わせて提出したほうが審査に通る確率が上がるので、必ず全部出すようにしましょう。
調査を受けよう
福祉事務所はその申請者が生活保護の資格を満たしているかどうかのチェックを必ず行います。
調査と一口に言っても様々なものがありますが、代表的なのは「訪問調査」「資産調査」「金融機関調査」「収入調査」の4つです。
「訪問調査」は通常、申請後1週間以内に行われます。電話だけで終わることもありますが、殆どの自治体では立ち入り調査が行われます。原則として抜き打ちで行われますが、立ち入り調査を拒否した場合、生活保護が受けられなくなります。
訪問調査ではその住所にほんとうに人が住んでいるのか、自立する気はあるのか、生活状況がおかしくないか(薬物中毒や精神障害、DVなどでないか)、高価な貴金属がないかなどのチェックなどが行われます。
「資産調査」は資産を持っていないかどうかをチェックするための調査です。主に自動車や土地家屋を所有していないかを確認します。生活保護受給時は原則として自動車を処分するように指導されます(どうしても就職活動や仕事に必要という場合は例外あり)。
また、土地家屋については高額でなければ住み続けることができますが、そうでない場合は売却、もしくは貸し出す必要があります。
「金融機関調査」は預貯金の調査です。現在無収入であっても、預貯金が多い場合は調査を受けることはできません。生活保護申請時に持っていても良い金額は生活費の50%以下(例えば生活費が20万円の場合、預貯金は10万円)と決められています。
「収入調査」はその名の通り収入の調査です。税務担当課で昨年の収入を調査し、申告された収入と実際の収入が一致しているかを調べます。収入は必ず正直に申告するようにしましょう。
これ以外にもいろいろな調査がありますので、ケースワーカーの話をよく聞いておきましょう。
審査結果を受け取ろう!
申請書を提出してしばらく経つと(通常は2週間以内)に審査結果が届きます。
生活保護が受給できる場合は、保護決定通知書が送られてきます。この場合、申請書を提出した日から起算して生活保護費を受給することができます。
それと同時に、自立に向けた指導や援助がスタートします。生活態度を改めて、なるべく生活保護から早く脱出できるようにしましょう。
生活保護が認められなかった場合は、保護申請却下通知書が送られてきます。この審査結果に不服という場合は、審査請求を行えます。また、審査を再び受けることもできます。ただし条件を変えないまま受けても当然落ちます。
生活保護の受給額は?
生活保護の金額の決まり方には細かなルールが有ります。生活保護費は地域によって多少異なることがあります。その地域によって物価や地価などが異なるからです。基本的には生活費が掛かる地域の世帯保護生活保護受給額は高くなります。
また、障害や病気の有無、介護の必要性などにも左右されます。この計算は非常に複雑で、て計算でやろうとすると骨が折れます。そこで活用したいのがシミュレーターです。
ウェブ上で公開されている生活保護費受給額をシミューレション出来るツールを使えば、面倒な計算もせずに一発でおおよその受給額を計算することができます。生活保護の計算ツールを使えば、管端に計算ができます。
使い方は簡単で、必要事項を入力フォームに従って入力していくだけです。あくまでも概算値なので実際には正確な数字と異なることがありますが、あまり大きく外れた数値は出ないようになっています。
生活保護の停止と廃止
生活保護には「停止」と「廃止」があります。停止とは一旦生活保護がなくなる(その後再開することが予測される)ことです。例えば、例えば、宝くじに当選して一時的にお金ができた場合は、一時的に生活保護が必要なくなりますので停止となります。
その当選金がなくなった場合は、簡単な手続きをすることによって生活保護を再開することができます。
一方、廃止とは継続して生活保護がなくなる(その後再開することが予測されない)ことです。正規社員として採用された場合はよほどのことがなければクビになることもないでしょうから生活保護は通常廃止となります。
また、転居をする場合、本人が死亡した場合なども廃止となります。一旦廃止となると、再び生活保護受ける場合には再度審査を受けることろから始める必要があります。
生活保護受給者のデメリット
生活保護にもそれなりのデメリットが有ります。細かく書き出せばキリがありませんが、ここでは代表的な生活保護のデメリットを幾つか紹介したいと思います。
貯金ができない
生活保護受給中は原則として貯金ができません。生活保護の中から貯金をすることもできませんし、仮に収入があったとしてもそこから貯金することもできません。生活保護は最低限の金額が支給されるものなので、貯金はできないという決まりがあるのです。
ただし、1円たりとも貯金をしてはいけないというわけではありません(役所もそこまで細かくはチェックしません)。例えば、仮に家に1000円タンス貯金が合ってもまず咎められることはありません。ただしあまりに額が大きくなると停止の対象となります。
借金ができない
生活保護費から借金を返済することはできません。生活保護受ける場合は原則として、受給前に債務整理(殆どのケースで自己破産)をして借金をなくしておく必要があります。
また、生活保護受給開始後に借金をすることも認められていません。たまに生活保護受給者にも貸している消費者金融がありますが、100%悪徳金融なのでそのようなところからは絶対に借りないでください。
自動車が所有できない
原則として、自動車は所有できません。維持費もかかりますし、万が一事故を起こした場合に賠償金が支払えないからです。どうしても通勤や通学、通院に必要な場合はなどは所有が認められることがありますが、維持費は支給されません。
海外旅行に行けない
生活保護受給者は海外旅行に行けません。ケースワーカーの判断で国内旅行に行けることはありますが、いずれにせよあまり贅沢はできません。贅沢がしたければ自分で稼いでください、ということです。
一部の生命保険に入れない
生活保護受給中でも生命保険に加入することはできますが、前述のとおり生活保護受給中は貯蓄が認められていないので、貯蓄型の生命保険には加入できません。入れるのは原則掛け捨てのみです。
そもそも保険金は返還の対象となる上、医療費は支給されるため保険に入る必要性そのものが薄いです。
家賃に上限がある
生活保護を受けると家賃の上限が定められます。自治体によって金額は違いますが、場合によっては今住んでいる所から引っ越さなければなりません。いところに住みたい、便利なところがいい、と思ってもある程度の妥協が必要になります。
公営住宅や県営住宅への引っ越しを希望される方も多いかと思いますが、競争率が高いのであまり期待はしないほうが良いでしょう。
また、生活保護受給中には原則として引っ越すことができません。転勤など止むに止まれぬ事情がある場合は別ですが、今の家に飽きたから、という理由は認められません。
収入を申告しなければならない
生活保護受給中は、収入を申告しなければなりません。収入があるにもかかわらずそれを隠したり、実際より少なく申告した場合、生活保護費の変換を求められたり、受給が廃止になったりします。必ず正直に申告してください。
ケースワーカーの指示に従わなければならない
生活保護受給中は、ケースワーカーの指示に従わなければなりません。例えば働ける場合は就職活動をするように言われますし、生活費の使い方や生活態度についても指示されることがあります。
無茶を言われることはありませんが、最低限のことをやっていないと受給の停止や廃止につながります。
親族に生活保護を申請したことがバレる
生活保護を申請した場合、三親等以内の親族に連絡が行きます。たとえ親族に内緒で申請しても連絡が行くので、隠すことはできません。
この連絡は親族が扶養できないかを確認するためのものです。たとえ扶養する能力が合っても、扶養したくない場合は断ることができます。親族と付き合いがない人間にとってはデメリットしかない制度ですが、仕方ありません。
友人知人にもバレるケースが有る
生活保護受給中はケースワーカーの人が何度も出入りする事になります。それを周囲の人に見られてしまった場合、生活保護受給が周りの人にバレてしまうことがあるかもしれません。バレたからなんだといえばそれまでですが……。
生活保護Q&A
最後に、生活保護に関するQ&Aをまとめました。なにか疑問がある際には、ここで調べてみてください。
申請のコツを教えて下さい。
生活保護申請の最大のコツは、一人で申し込みに行かないことです。違法な水際作戦が行われた場合に、それを証明する人がいなくなってしまうからです。第三者に立ち会ってもらい、トラブルが合った際にはそのことを証明してくれる味方を作りましょう。
中には弁護士などを伴って申請にする人もいるくらいですが、弁護士費用がかかリますし、通常はそこまでする必要もありません。友人や知人についてきてもらうだけでも、十分な効果があります。
どうしても一緒に来てくれる人がいないという場合は、録音機材を使うのも効果的です。
もう一つ大切なのは、申請の意思をはっきり伝えることです。何をアタリマエのことを、と思われるかもしれませんが、実はこれができていないために生活保護の申請ができない人が結構します。
福祉事務所に来るのは何も生活保護の申請者だけではありません。生活相談に訪れる人もたくさんいます。きちんと生活保護を申請したいと言わないと、ケースワーカーはその人が生活保護の申請に来ているのか、生活相談にしているのかを判断することができません。
必ず「生活保護の申請がしたい」と伝えて下さい。
生活保護の代理申請は可能?
生活保護は原則として受給者本人が申請しなければなりませんが、病気や障害でどうしても申請に行けない場合は、代理申請をすることも可能です。生活保護は世帯単位のものなので、世帯主以外が申請に行っても全く問題ありません。
また、行政書士や弁護士、親族に任せる人も実際には少なくないようです。ただし、言うまでもないことかもしれませんが、本人が生活保護を受給する気がないのに他人が勝手に申請することはできません。
同居もしていない人間が代理申請をすることは後々のトラブルに繋がるかもしれませんし、役所がいい顔をしないのは事実です。どうしても役所まで行けないという場合は、そのことを訴えればケースワーカーが家まで来てくれることもあるので、電話で相談してみましょう。
ケースワーカーって何者?
ケースワーカーとは、福祉事務所で働いている職員のことです。生活保護に関するスペシャリスト、と勘違いされる方も多いようですが、殆どは一般事務職として市役所に採用された人がほとんどです。
現業員、ソーシャルワーカーと呼ばれることもありますが、呼び名が異なるだけでやっていう仕事は一緒です。
生活保護受給者にかぎらず、病人や障害者を抱えている家族、一人暮らしの高齢者など、生活に困っている人たちの相談に乗り、適切な解決方法を提案するのがケースワーカーの主な仕事です。
ケースワーカーは医師、社会福祉主事などと緊密に連絡を取りながら、適切な回答を提供します。
なお、ケースワーカーは市役所の職員が配属されたくない部署ナンバーワンと言われるほど不人気の部署です。激務な上生活保護受給者には厄介な人間が多く、相手をしているだけで心を病みやすいからです。
自治体によっては1日300円~400円程度の手当もつくようですが、それを差し引いても不人気です。
ケースワーカーとの面接では何を聞かれるの?
面接時に聞かれることはいろいろありますが、特に仕事、資産、扶養家族については間違いなく尋ねられます。
仕事については就職している場合はどれくらい給料をもらっているのか、勤続年数はどれくらいなのか、就職していない場合はなぜ就職していないのかなどを尋ねられます。
収入があるのにしそれを隠して生活保護を受けようとすると、詐欺罪で訴えられることもあるので、必ず正直に申告するようにしましょう。
資産については預貯金のほか、有価証券、貴金属、自動車やバイク、土地や建物、生命保険などをどれくらい持っているのか、かなり細かく聞かれます。特に大切なのは預貯金です。予め銀行で記帳を行っておくといいでしょう。
扶養家族については三親等以内の直結血族について尋ねられます。これらに該当する人は、民法の家族法の規定で扶養をすることが義務付られています。
ケースワーカーの家庭訪問って何?
生活保護受給開始後は、必ずケースワーカーの家庭訪問を受けることになります。訪問頻度は1ヶ月~6ヶ月に1回程度です。要注意家庭(生活保護を不正に受給しているかもしれない家庭など)ほど訪問頻度が上がります。訪問時間帯は原則9:00~17:00です。
家庭訪問では様々な調査が行われます。本当にその家で暮らしているのか、生活は乱れていないかなどのチェックなどが行われます。
ものが散らかっていないか、部屋の中の衛生状態が保たれているかなどもある程度見られますので、普段から部屋の中は清潔に保っておくようにしましょう。
また、働けるのに働いていない場合は、就職活動の経過について尋ねられることもあります。実際に働く気があるかどうかは別として、ここで全く働く気がない素振りを見せるとケースワーカーの心象は確実に悪くなります。
たとえ働く気がなくても、働く気がある素振りぐらいは見せておいたほうが良いでしょう。
働けない病気がある場合は、その病気の治療は順調かなどを尋ねられます。子供がいる場合は子供の学力、生活態度などについて尋ねられることもあります。本人の置かれた状況によって質問の内容は異なると思っておいたほうが良いでしょう。
家庭訪問から逃げまわり続けた場合、最終的には生活保護が廃止となることもありえます。といっても、1回や2回居留守を使ったからといっていきなり廃止になることはありません。
まずは指示書という書面でいつまでに家庭訪問をさせるようにという指示がなされ、それにも従わなかった場合は手続きを踏んだ上で廃止ということになります。家庭訪問を拒みながら生活保護を受給し続けることはできないので、諦めて受け入れましょう。
ケースワーカーと上手に付き合う方法は?
ケースワーカーの対応が悪い、と嘆く生活保護受給者は少なくありません。しかし、そうした人の中にはケースワーカーに邪険にされてもしかたのないような人が少なからずいるのも事実です。
ケースワーカーといえども人の子、人の金で働きもせず、それでいて悪びれることもなく好き放題して暮らしているような人間を見れば不愉快に思うのも当然です。
また、ケースワーカーは1人あたり100世帯程度の生活保護受給世帯をまとめて担当するため非常に多忙です。一方的にこちらの要求を伝えるのではなく、ケースワーカーの立場を思いやることによって、ケースワーカーと友好的な関係を築くことができます。
まず、ケースワーカーのもとに相談に行くときは、必ず事前に連絡しておきましょう。いきなり来られてもケースワーカーだって困ります。
事前に連絡しておけばケースワーカーもある程度その相談に対する準備ができ、適切な答えをもらいやすくなります。ケースワーカーのため、そして自分のためにも、必ず事前に連絡をしておきましょう。
曜日は混みやすい月曜と金曜は避けましょう。また、午後2時頃は役所全体が最も混むので、午前中にした方がいいでしょう。相談に親身に乗ってもらったら、必ずお礼の言葉を述べるようにしましょう。謙虚な態度がケースワーカーとの関係をより良いものにします。
ケースワーカーは交代するの?
ケースワーカーが変わる理由は様々です。例えば、小さな自治体の場合だと、少数のケースワーカーが生活保護のほとんどすべての仕事を担っているため、生活保護費の横領が生まれやすいとされています。
そのような自体を防ぐため、小さな自治体でも数年に1回は担当を変更します。
また、市役所には人事異動というものがあります。役所の職員はおよそ3年~5年に1回のペースで部署を移ります。これが原因でケースワーカーが変わることもあります。
また、生活保護は地区担当制です。地域ごとに異なるケースワーカーが割り当てられるわけです。
例えばケースワーカーAの担当する地域の生活保護受給世帯が150世帯で、ケースワーカーBの担当する地域の生活保護受給世帯が50世帯と言った感じでアンバランスになってきた場合は、地域の割り当て変更を行い、両者ともに100世帯になるようにします。
この割当変更が原因でケースワーカーが変わることもあります。
どんな理由があるにせよ、ケースワーカーが変わった直後は不安なものですそのような理由から担当変更を拒む方も多いようですが、原則としてケースワーカーの変更は受け入れる以外に道はありません。
人間関係をより好みしたいのならば、生活保護から抜け出す道を探ったほうが良いでしょう。
生活保護を受給してることってばれないの?
生活保護を受給していることを回りに知られたくないという方はたくさんいらっしゃるようです。市役所から生活保護受給がバレることはほとんどありませんが、日常には様々な受給バレのリスクが潜んでいます。
中でも気をつけるべきはケースワーカーの訪問です。多くの自治体では年に2~3回ほどケースワーカーの訪問が行われます。年に2回~3回同じ人があなたの家に来たからといって不思議に思う人はまずいないでしょうが、中には勘の良い人もいます。
特に安い賃貸マンションに住んでいて、別の世帯も生活保護を受給している場合はそこから情報が漏れることもあります。訪問時間を人が少な時間帯にずらしてもらうなどして、バレないように努めましょう。
それから、病院に行く際にも注意しましょう。生活保護受給者は診察代を医療券で支払います。医療券を窓口に出しているところを見られてしまった場合、あなたが生活保護受給者であることが周りにバレてしまいます。
たとえ周りに患者がいなくても、窓口の受付担当が知り合いであった場合は確実にアウトです。もちろん向こうも仕事ですからその場では何も言わないでしょうが……。
これについてはある程度諦めるしかありません。生活保護受給中は簡単に病院を変えることもできません。そもそも病院に行かなくても住むように健康に気をつけるのが一番の対策かもしれません。
もう一つ厄介なのが就職時です。通常、企業に就職した時には社会保険に加入することになり、その際に国民健康保険証を返納する必要があるのですが、生活保護を受給していた場合国民健康保険は脱退しているので保険証がありません。
人事担当者が勘が良かった場合、「ああ、この人は生活保護を受給していたから国民健康保険証がないんだな」と気づくかもしれません。まあ、気が付かれたからといって何か不利益があるわけでもないですし、堂々としてればいいんではないでしょうか。
会社が欲しい人材は会社の利益になる人間であって、生活保護をもらっていなかった人間ではありません。
生活保護を不正に受給するとどうなる?
場合によっては告訴され、詐欺罪で懲役刑が貸せられることもあります。ただし実際にそのような事態に発展する可能性は低く、ほとんどのケースにおいて事実上無罪放免となります。
厚生労働省によれば、平成25年度の生活保護不正受給件数は4万3230万件だったそうです。金額に直すと186億9000万円、生活保護費全体の0.5%に相当します。これだけ見ると意外と少ないように見えますが、金額ベースでなく世帯ベースで見た場合その割合は2.2%です。
不正受給件数は年々増え続けており、また不正受給が発覚していないケース、不正受給を役所が立証できないケースまで考えると、実際にはもっと不正受給は多いものと考えられます。
さて、生活保護の不正受給がバレるルートは主に2通りです。役所が行っている不正受給調査からバレるか、近所や知人からの通報によりバレるかです。大抵の場合は不正受給調査によって発覚します。
仮に不正受給がバレた場合、役所で会議が開かれることになります。会議では不正受給とみなすか、不正受給とみなさないか、あるいは警察に告訴するかが話し合われます。告訴率は0.2%程度で、よっぽど悪質であると判断されないかぎり告訴されることはありません。
悪質であると判断された場合、市役所はの不正受給した分を変換するように求めますが、この返還請求には5年という事項があり、これから逃げ切った場合は不正受給者の返還義務は消滅します。
生活保護受給者の中には自分が弱者であることをたてに、不正受給したぶんを返還しない人間がゴマンといます。返還率は金額ベースで約8%、しかも不正受給があっても生活保護受給は継続できるため、事実上やった者勝ちのような世界になっています。
医療費は全額支給される?
生活保護受給中は医療券というチケットが支給されます。このチケットを使って診察を受ければ、自己負担無しで診療を受けられます。実質的に医療費は全額支給されると思っておいて間違いないでしょう。
ただし、役所から指定された医療機関以外で治療を受けた場合はその限りではありません。また、保険の対象外となる薬や治療などについては、扶助の対象外となります。
どうしても生命保険に入りたいです
生活保護を受給する際には原則として生命保険は解約しなければなりません。生命保険に加入している状態で申請すると、申請前に処分するように指導されます。
しかし、一定の条件を満たしている場合は解約する必要はないですし、また生活保護受給開始後に生命保険に加入することも可能です。
ただ、生命保険の商品というのは多種多様です。最近はいわゆる貯蓄型保険も多いですが、生活保護受給中はこうした保険に加入することはできません。税金で受給者の資産を増やすことになるからです。原則として、掛け捨て型にしか加入することができません。
ただし例外的に学資保険については加入が認められていますので、ケースワーカーと相談してください。
また、毎月の保険料にも限度額があります。限度額は自治体によって様々ですが、殆どの自治体では最低生活費の10%~15%と設定されています。もちろん限度額いっぱいまで加入する必要はありません。
また、生活保護申請時に解約返戻金が30万円以上ある保険に加入している場合は原則として解約しなければなりません。
以上のようなルールが有るため、生活保護受給中に生命保険に加入するのはあまり得策であるとはいえません。
生命保険は若いうちに入っておいたほうが将来の保険料を抑えれるので早めに加入しておきたいという方もいらっしゃるでしょうが、その場合でもなるべく保険料が安いところを選ぶに越したことはありません。
どうしても自動車が持ちたいです
生活保護を受給する際には原則として自動車は手放さなければなりません。自動車を所有している状態で申請すると、申請前に処分するように指導されます。しかし、以下の条件のいずれかを満たしている場合は、例外的に自動車の所有が認められることもあります。
自動車の運転を仕事にしている
障害者の通勤、通学に必要である
これらの条件のいずれかを満たしても、必ず自動車の所有が認められるわけではありません。結局はケースバイケースなので、ケースワーカーに相談しましょう。
生活保護受給者が死亡するとどうなる?
生活保護受給者、もしくはその世帯の誰かが死亡した場合、まずは福祉事務所に連絡が行きます。死亡確認後、福祉事務所は親族に連絡をします。
親族が葬祭の執行者となった場合、葬式代は全て親族が負担することになりますが、葬式にはお金がかかります。生活保護受給者は孤立しやすく、親族との付き合いに乏しいケースが多いため、親族が葬祭の執行者となってくれることはあまりありません。
その場合、生活保護から葬式代が支払われます。
葬儀社については残された親族が選ぶこともできますが、扶助金額は大人ならば20万1000円、子供ならば16万800円と少ない(通常の葬儀には100万円程度かかる)ため、その内容は非常にシンプルなものになることが大半です。通常は通夜や告別式なども行われません。
単身の生活保護受給者が死亡した場合、家具や家財の引き払い、部屋の清掃費用などは原則全て大家の負担となります。
生活保護受給中に臨時収入が合った場合はどうするの?
生活保護受給中に収入があった場合は、必ず報告をしなければなりません。例えば宝くじで300円当たった場合でも、そのことをケースワーカーに報告しなければなりません。
ただしこれはあくまで原則論であり、実際には300円程度の収入の報告を怠ったからといって何が起こるわけでもない(そもそもケースワーカーがそのことに気がつかない)ケースが大半です。だからといって黙っていても良い、というわけではありませんが。
非常に大きな金額の臨時収入があった場合、例えば宝くじで6億円があたった場合は、生活保護は必要ないということで廃止となります。ただし、過去にもらっていた生活保護費を変換する必要はありません。
なお、生活保護が廃止となる金額の目安は、世帯の生活保護基準額の6倍です。例えば、生活保護基準額が15万円の場合、目安の金額は90万円となります。なので例えば宝くじで300万円があたった場合は、生活保護は廃止となります。
生活保護受給中でもクレジットカードは利用できる?
クレジットカードは借金の一種であるため生活保護受給中は使えないのでは……と思っていらっしゃる方も多いようですが、厚生労働省によれば、「クレジットカードについては保有を認めない根拠がない」「リボ払いや分割払いを認めない根拠は無い」とのことです。
ただし、生活保護受給中は支出の節約を図らなければならないため、当然贅沢品を購入することはできません。また、そもそも生活保護受給中はクレジットカードの審査に合格出来ない可能性が高いです。
無理にクレジットカードを使う必要もないですし、そんなことに気をもむくらいならば生活保護からどうやれば抜け出せるのかを考えたほうがよほど良いでしょう。
生活保護と年金はどちらが多いの?
高齢者の生活保護受給率は若い人のそれと比べても高いですが、彼らはなぜ年金だけで生活していけないのでしょうか。
今の日本の年金制度は基礎部分に当たる国民年金、2階部分に当たる厚生年金や国民年金基金、3階部分に当たる企業年金や確定拠出年金に分けることができます。
仮に国民年金と厚生年金に加入していて、現役時代の収入が人並み程度で、なおかつ専業主婦/主夫の配偶者がいる場合、毎月の支給額は約22万円です。
一方、一般的な高齢者の二人世帯の場合、生活保護受給額は約12万円となります。つまり、平均程度の年収があり国民年金と厚生年金の両方を払っていれば、生活保護のお世話になることはほぼないわけです。
しかし、例えば自営業で国民年金しか支払っていなかったり、現役時代に低収入で厚生年金保険料の支払額が少なかったりすれば年金の毎月の受給額は大きく減ります。その場合は生活保護のほうが年金よりも安いという逆転現象も起こりえます。
ホームレスの人達はなぜ生活保護を受けないの?
生活保護は本来、住民票が置かれてなくても受給することができます。それならば誰の目にも貧窮していることが明らかなホームレスは一刻も早く生活保護を申請するべきなのではないかと思われるかもしれませんが、一体彼らはなぜ路上での暮らしを選んだのでしょうか。
答えはホームレス自身にしかわかりませんが、外部からは以下の様な事情があるのだと推測ができます。
①生活保護の存在を知らない?
「ホームレスの実態に関する全国調査検討会報告書」によれば、生活保護という制度を知らないホームレスは全体の6.7%でした。だいぶ多いようにも思えますが、それでも裏を返せば93.3%のホームレスは生活保護という制度を知っているということになります。
生活保護を知らないから受給しない、と言うのはちょっと違うようです。
②生活保護を受けられないと思っている?
同調査によれば、生活保護については知っていても、自分がその制度の対象であると知らないホームレスは全体の16.6%でした。
先ほどの生活保護の存在を知らないホームレスと合わせてもその率は23.3%に過ぎず、残りの76.7%のホームレスは生活保護についても、自分が生活保護を受けられることについても知っているということになります。
③生活保護を受けたくない?
同調査によれば、76.7%のホームレスの多くが「人の世話になりたくない」「「役所での手続きが面倒くさい」と回答しています。
生活保護を受給すると、一般的には自治体の更生施設や自立支援センターに入れられます。どの施設も非常に環境が悪く、雑居ビルの中に何人も押し込められることがままあります。
加えてこうした生活保護を受給しているホームレスはいわゆる貧困ビジネスの搾取の対象となりやすく、こんな劣悪な部屋をあてがわれているにもかかわらず生活保護の殆どを取られてしまうことがしばしばあります。
そんな生活に比べれば、路上で自由に暮らすほうがよっぽどマシであると考えるホームレスは少なくないようです。
生活保護の統計が知りたいです
生活保護に関しては、1952年より厚生労働省が統計を集めています。その統計によれば、1952年時点での生活保護受給世帯は約70万世帯、保護率は39.6‰(‰=パーミル、1000分率)でした。
その後受給世帯数はほぼ横ばいで推移しますが、戦後復興に伴い、保護率は急速に低下していきます。
その後も高度経済成長にともなって保護率はゆるやかに低下、1985年から1995年にかけては生活保護の福祉見直しも合って再び保護率は大きく低下しました。1996年には史上最低となる14.0‰を記録します。
しかし1990年台後半以降は景気の低迷、雇用構造の低下などによって生活保護受給率、世帯数ともに増加、保護率は1955年並みの32.4‰にまで戻ってしまいました。2015年には世帯数も初めて160万世帯を突破するなど、急激なペースで増え続けています。
また、人口1000人辺りの生活保護率を都道府県別に見た場合、大阪府が最も多く33.5人となっています。以下北海道が30.3人、高知県が27.4人と続きます。東京都は20.9人で10位です。45位は長野県で5.2人、46位は福井県で4.4人、47位は富山県で3.2人です。
一方、都道府県別の所得を見た場合、大阪府は4位、北海道は30位、高知県は36位、東京都は1位、長野県は19位、福井県は29位、富山県は25位となっています。
所得が高い都道府県ほど生活保護受給率は低くなりそうなものですが、実際にはそうでもないようです。東京や大阪などは生活コストがかかりやすいことなどが要因であると考えられます。
また、生活保護受給世帯を「高齢者」「傷病者」「障害者」「母子家庭」「その他」に分類した場合、高齢者が約45%、傷病者が約25%、障害者が約15%、母子家庭が約10%、その他が約10%となっています。
つまり、生活保護受給者の約9割が高齢者、傷病者、障害者、母子家庭のいずれかに該当するというわけですね。
特に高齢者の生活保護受給数は高く、その率も全体の62‰と全体の受給率2倍近くなっています。これについて厚生労働省は「貯金や年金だけでは暮らせない1人暮らしの高齢者が増えている」と分析しています。
一方、母子家庭の受給割合は全体の10%と一見大した事のないように見えますが、これは母子家庭の数がそもそも少ないためです。母子家庭の生活保護受給世帯は133‰と、高齢者世帯のさらに倍以上となっています。
母子家庭は生活保護の受給金額が高く、一度受給し始めてしまうとそこからなかなか抜け出せないという構造になっています。