借金を隠して結婚をしてしまう人は、実は多いです。結婚相手が借金を隠していた場合、いくらまでなら許せるでしょうか?
その基準は、人によって異なるでしょう。50万円以下ならすぐに返済をしてしまえるので、許せるという人は多いのではないでしょうか。
一方で、500万円もの借金を隠していたら、結婚生活に重大な影響を及ぼすので、許せない人は多いと思います。
借金と結婚に関する問題はたくさんありますが、ここでは借金を隠して結婚をすることの是非、さらに慰謝料を請求されるのかどうかという問題に絞って解説をしていきます。
借金を隠して結婚をすることは悪いことなの?
そもそも、借金を隠して結婚をすることは悪いことなのでしょうか?
借金の種類は?
借金の種類にも、いろいろあります。結婚前にしている借金としては、次のような借金が考えられます。
・クレジットカードのショッピング枠
・クレジットカードのキャッシング枠
・銀行カードローン
・消費者金融からの借金
・ヤミ金からの借金
自動車ローンなどはだれもがしているものなので、別段言う必要はないかもしれません。クレジットカードのショッピング枠も、同様です。
クレジットカードのキャッシング枠、消費者金融からの借金はほとんど同じものです。これは不安を感じるという人もいますが、50万円以下の小口融資なら、それほど深刻でもないでしょう。
最後のヤミ金からの借金は、結婚をするなら絶対に解決しておくべきでしょう。下手をすれば配偶者とその家族、友人なども巻き込んでしまいます。
原則!借金は個人のものなので、言う義務はない
とある人がいくらの借金をしているのかということは、個人情報です。自分の個人情報をわざわざ漏らす必要はありません。自分の個人情報を申告しなければならないのは、相手にも利害が発生するケースです。
例えば、ローンを組むときには、金融機関からお金を借りるので、自分の職業や年収などを申告しなければなりません。相手にとっては、貸したお金を返してもらえるのかという意味で、重要なことだからです。個人情報を隠したままお金を借りることはできません。
結婚をするときに借金を申告する義務はある?
それでは、結婚をすると、「自分には借金が200万円ある」といったことを結婚相手に申告する義務があるでしょうか?結論から言うと、そのような義務はありません。
なぜなら、結婚をしたからといって、借金まで共有になるわけではないからです。自分がした借金は、あくまで自分のものです。きちんと返済をしていけたら、それでいいのです。
「妻は良い女性だけど、口が軽いことだけが欠点だ。借金のことを妻に話したら、友達などにばらまかれるかもしれない。とりあえずは隠しておこう。」というような話はありますが、別段、悪いことではありません。
金融機関も協力的?
銀行や大手の消費者金融では、「WEB完結」というサービスが登場しています。これは、WEBで手続きが完結して、契約書類、明細書、カードなどが自宅に送られてくることがないというものです。
カードローンで郵送物が自宅に送られない理由
なぜ自宅に郵送物に届けられることがないサービスが人気かというと、家族にバレずに借金をしたいという人が多いからです。金融機関も、家族に内緒で借金をするという行為に協力的であると言えます。
金融機関から自宅に電話がかかってくると、必ず「山田太郎さんですか?失礼ですが生年月日は?」というように本人確認がされて、その後に金融会社の名前が名乗られます。これは、家族バレを防ぐための配慮であるとも言えます。
だけど、夫婦なら利害があるじゃない?
結婚をする前に借金をしていたなら、それは完全に個人の借金です。例えば、夫に200万円の借金があったとしても、結婚をしたからといって妻にその返済義務が発生するわけではありません。完全に、借金は夫だけのものです。
しかし、結婚をするならば、借金の有無は伝えて欲しいというのが一般的な感情です。それはなぜでしょうか?
夫婦別財産制?経済的一体?
日本では、夫婦別財産制がとられていますが、実際には夫婦は経済的一体となっていることが多いです。結婚をして生活を共にしているのだから、夫婦の財産を別々に分けるよりも、一体として考えたほうが、なにかとやりやすいからです。
離婚をすれば、夫婦の財産は平等に分割することになります。しかし、離婚をすることを考えながら生活している夫婦は少ないでしょう。多くの場合、生涯を共にする覚悟です。
夫婦の一方が死亡したとき、一方は必ず相続人となります。夫が死亡したなら妻が、妻が死亡したなら夫が、必ず財産を相続するということです。子供がいる場合には、子供も相続人となります。
借金を相続しない方法
相続放棄や限定承認など、借金を相続しない方法もありますが、どちらも相続の開始から3ヶ月以内に家庭裁判所に対して届け出をしなければなりません。借金の存在を知らなければ、3ヶ月が過ぎてしまって、知らないうちにマイナスの財産を相続してしまうかもしれません。
まとめると、経済的な一体となっており、生活を共にしていること、死亡したら財産を相続するということ、という2つの意味で、夫婦には利害があります。
借金を隠して結婚するのは良くないことだが、慰謝料までは請求されない
借金を隠して結婚をすることは、あまり良くないことであることがわかりました。次に、慰謝料を請求されるかどうかについて見ていきます。
慰謝料とは損害賠償のこと
慰謝料が問題になるケースとして代表的なのが、交通事故、不倫、DVです。これらは一見すると、まるで性質の違う事件ですが、共通しているのが、一方の不法行為によって、一方が損害を被っているという部分です。
交通事故
交通事故なら、一方の過失によって、一方が怪我を負っています。物損事故のみの場合には、精神的・肉体的な損害は負っていないので、車の修理代などは問題となるものの、慰謝料は問題になりません。
浮気・不倫
不倫では、一方の裏切り行為によって、一方の配偶者が精神的に傷ついています。不倫による慰謝料は、配偶者にだけでなく、浮気相手に対しても請求することができます。
DV・暴力
DVは、言うまでもなく、暴力によって相手に精神的・肉体的な損害を負わせています。
もちろん、これ以外の事件・トラブルでも、慰謝料が問題になることはあります。
借金を隠すことそれ自体は不法行為ではない
人にはそれぞれ、自分の個人情報を守る権利があります。借金があることを隠すのは、なんら裏切り行為ではありません。
結婚をするときには、お互いの自己責任であるという側面もあります。お互いがよくコミュニケーションをとって、相手のことを知る努力をして、信頼関係を築いていくという努力をしています。
責任感のある人なら、結婚をした後に相手が借金を抱えていることが判明しても、「自分が信頼されていなかった。信頼を得るための自分の努力が足りなかった。」と反省をします。
そこまで割り切れないという人も、相手にも事情があったのだと、許せる気持ちを持つことが、大切です。
結婚をしてから、相手の新しい一面を知ることは、決して悪いことばかりではありません。新しい発見ができたと楽しむこともできます。
離婚原因ともならない
夫婦が一方の意思で離婚ができる原因は、民法第770条で定められています。すなわち、次の5つの理由が離婚原因になります。
・配偶者から悪意で遺棄されたとき
・配偶者の生死が三年以上明らかでないとき
・配偶者が重度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
・その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき
この5つの原因のいずれかに該当する場合に限り、一方の意思で離婚ができます。もちろん、お互いの同意による離婚なら、どんな理由でもかまいません。
借金を隠していたら離婚原因となる?
借金を隠していた場合は、5つ目の「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当するかどうかが問題となりますが、ほとんどの場合、それだけでは離婚原因にはなりません。
「夫が給料のほとんどを借金の返済にあててしまって、生活費を入れてくれない。」、「妻が子供の教育費や生活費を、借金の返済にあててしまっていて、家事や子育てを放棄している。」といった事情なら、「悪意の遺棄」に該当し、離婚原因となる可能性があります。
最後の手段!債務整理をしよう
借金が離婚原因とはならない理由の1つに、債務整理(任意整理、特定調停、個人再生、自己破産)という手段があることがあげられます。
例えば、結婚をした相手の年収が300万円なのに、1000万円の借金を抱えていたら、とても普通の生活は送れないので、離婚ができないと困ると考える人は多いと思います。
場合によっては離婚ができる
相手がどれだけの借金を抱えていても、一度婚姻契約を結んでしまったらそこで諦めなければならないというほど、法律は残酷ではありません。配偶者の借金が結婚生活に大きな支障を生じさせるものなら、離婚が認められます。
借金をなくせる?
それ以前に、借金がどれだけ大きなものであっても、最後の手段として自己破産をすれば、借金をすべてゼロにすることができます。
自己破産をすると資産をすべて失いますが、失われる資産はあくまで自己破産をした本人の資産です。
例えば、妻が自己破産をしたケースなら、夫が所有している土地、貯金、その他の財産が没収されることはありません。マイホームも夫名義となっているなら、没収されない可能性が高いです。
債務整理のデメリット
もちろん、債務整理は借金を多かれ少なかれ踏み倒すのですから、それ相応のデメリットがあります。一番大きなデメリットが、ブラックリストにのってしまうということでしょう。
しかし、ブラックリストにのってしまうと、しばらくは借金ができなくなるので、借金癖のある配偶者の場合、ある意味では安心ができます。
夫婦の義務
夫婦には相互扶養義務、相互協力義務があるので、配偶者が借金を抱えているからといって、すぐに離婚の話をしたりせず、一緒に乗り越える努力をしてみましょう。
債務整理の相談先としては、弁護士、司法書士、法テラスなどがあげられます。お金のことが気になるなら、どれだけ相談をしても無料の法テラスがよいでしょう。