住宅を購入する上で、住宅選びと同じくらい重要なのが住宅ローンの審査です。
いくら理想的な住まいを見つけられたとしても、住宅ローンの審査に落ちてしまっては何の意味もありません。
住宅ローンの審査に合格するのは決して簡単なことではありません。
住宅ローンは通常のカードローンやキャッシング、カーローンなどと比べて債務額が大きくなりやすいため、どこの金融機関も貸出は極力慎重に行います。
しかし、きちんと対策を練ったうえで挑めば、平凡な属性でも十分に合格できます。
本記事では住宅ローンの審査項目の中でも、特に重要度の高い10項目について解説を行います。
住宅ローン審査のポイントは「年齢」「返済負担率」など
住宅ローン審査の際に、金融機関がチェックするポイントについて、国土交通省がまとめた資料があります。
この資料によれば、住宅ローン審査時に金融機関がチェックするポイントトップ10は以下のようになっています。
順位 | 重視するポイント | 重要度 |
---|---|---|
1位 | ①完済時年齢 | 99.3% |
2位 | ②借入時年齢 | 97.6% |
3位 | ③返済負担率 | 96.6% |
4位 | ④担保評価 | 96.3% |
5位 | ⑤健康状態 | 96.3% |
6位 | ⑥勤続年数 | 95.3% |
7位 | ⑦年収 | 94.8% |
8位 | ⑧金融機関の営業エリア | 91.9% |
9位 | ⑨連帯保証 | 90.3% |
10位 | ⑩カードローンなどの他の債務の状況や返済履歴 | 85.6% |
①完済時年齢は80歳までのところが多いが、できれば定年前に返済したい
住宅ローンの審査項目の中で最もチェックされやすいのが完済時年齢です。
完済時年齢の上限は80歳までと定められている住宅ローンが多いですが、だからといって50歳で30年ローンが組めるのかというと、現実的にはそれは難しいと言わざるを得ません。
金融機関が最も恐れるのは、債務者が債務整理をすることです。特に怖いのが自己破産です。仮に債務者が自己破産してしまった場合、金融機関は貸したお金を回収することができません。
金融機関としては、なるべく収入が安定している、自己破産をしなそうな人に貸したいのです。
しかし、一般的なサラリーマンや公務員の場合、60歳を迎えたあとは大幅に収入が減少します。収入が大幅に減ったあとも住宅ローンを払い続けるというのはかなり厳しいですし、老後の生活なども考えると、なるべく完済時年齢は定年前に設定しておきたいところです。
それが難しいという場合は、住宅のランクを下げるなどして、借入額を減らしたほうが良いでしょう。
②借入時年齢は若い方が良いが、あまりにも早過ぎると逆にまずい
一般的な住宅ローンの場合、借入時年齢の上限はは65歳~69歳と定められています。なぜこの年齢になっているかというと、71歳以上の人は団体信用生命保険に入ることができないからです。
団体信用生命保険とは、住宅ローンを組む人に対して加入が義務付けられている(フラット35など一部の住宅ローンを除く)保険のことです。
住宅ローンを組んだ債務者が高度障害を負ったり、死亡したりした時に住宅ローン残高に相当する保険金が債権者に支払われる(住宅ローンがチャラになる)仕組みになっています。
金融機関としては、債務者に万が一のことがあってもしっかり溶かしたお金を回収できるように、債務者にはなんとしても団体信用生命保険に入ってほしいものです。
しかし、前述のとおり71歳以上の人は団体信用生命保険に入ることができません。だから殆どの金融機関は住宅ローンの借入時年齢の上限を60台後半に定めているのです。
もちろん、60代後半より下ならばなんでも良いというわけではありません。借入時年齢が高くなれば、当然完済時年齢も高くなります。金融機関は完済時年齢があまりにも高くなるような借り入れは嫌うので、借入時年齢は若いほうが基本的には有利です。
ただし、あまりにも若すぎる(20代前半)場合、信用が足りずに審査に落ちてしまうことがあります。最低でも社会人としてのキャリアを数年は積んでから申し込んだほうが良いでしょう。
③返済負担率は年収によって変化する
返済負担率とは、1年間の返済額を年収で割ったものです。例えば、年収が500万円、毎年の返済額が100万円だという場合、返済負担率は100万円÷500万円=0.2=20%となります。
返済負担率の上限はほとんどの金融機関で非公開となっていますが、年収が300万円未満の場合は25%以下、年収が300万円以上400万円未満の場合は30%、年収が400万円以上の場合は35%が基準と考えておけば、だいたい間違いはないでしょう。
年収が低いほど返済負担率が少ないのは、年収が少ない人ほど住宅ローン返済に回せるお金が少ないためです。
もちろん、これは金融機関が定めた基準であり、この基準を守れば絶対に返済が滞らないわけではありません。より慎重になるのならば、この数値よりもさらに返済負担率が低くなるようにした方がいいでしょう。
なお、一般的に金融機関が返済負担率を計算するときは、額面上の年収で計算をします。
例えば、フラット35の場合年収が400万円未満ならば返済負担率の上限は30%、400万円以上ならば返済負担率の上限は35%となっています。
額面上の年収が400万円の人ならば、毎年の返済額はその35%、140万円まで設定できるというわけです。
一方、実際に我々が使える手取り収入は、額面上の収入よりも低いです。額面上の年収が400万円だという場合、手取り収入はおそらく330万円程度になるはずです。
なので、実質的な返済負担率は140万円÷330万円=0.42=42%ということになります。これはかなり厳しい数字です。実質返済負担率を35%に抑えたい場合は、毎年の返済額を115万円程度にする必要があります。
金融機関は額面収入を元に審査を行いますが、それとは別に自分で手取り収入で返済負担率を計算しておいたほうが良いでしょう。
④担保評価は当然、高いに越したことはない
住宅ローンは借り入れを行う本人はもちろん、その物件(担保)も審査の対象となります。住宅ローンを組むと、金融機関はその物件に抵当権を設定します。
抵当権とは、物件を借金の担保として確保する権利のことです。住宅ローンの返済ができなくなった場合、金融機関は抵当権を行使し、その物件を売却してそのお金を住宅ローンに充当します。
住宅ローン審査の際には、金融機関は担保評価を行います。その物件が万が一の際にどのくらいの価格で売れるのか、査定するわけですね。
通常、借入金額はこの担保評価額までとなります。新築の住宅の場合は基本的に購入価額がそのまま担保価格になります。
中古物件の場合は購入価額が担保価格になることもありますが、物件が古くて建物にあまり価値が無い場合は土地だけの評価額となることもあります。
いずれにせよ、金融機関からしてみれば物件は万が一の際に売ってお金に変えるものなので、担保評価は高いに越したことはありません。
⑤健康状態が悪いと、住宅ローンを組めないことも
住宅ローンの審査で意外と見落とされがちなのが、健康状態です。金融機関は将来返済ができなくなりそうな人に対してはお金を貸したくありません。
健康状態に問題がある人は将来返済ができなくなる可能性が高い人なので、金融機関としてはなるべくお金を貸したくないのです。
住宅ローンを組む場合は、基本的に団体信用生命保険に加入する必要があります。中には団体信用生命保険の加入を義務付けてない住宅ローンもありますが、その場合も民間の生命保険に入るなどして、万が一に備えなければなりません。
では、健康状態に問題があるとは、具体的にはどのような状態を指すのでしょうか。団体信用生命保険の審査項目は保険会社によって多少異なりますが、一般的には以下のような質問をされます。
一般的な団体信用生命保険の審査項目 |
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1.最近3ヵ月以内に医師の治療(診察・検査・指示・指導を含みます。)・投薬を受けたことがありますか。(はい・いいえ) |
2.過去3年以内に下記の病気で、手術を受けたことまたは2週間以上にわたり医師の治療(診察・検査・指示・指導を含みます。)・投薬を受けたことがありますか。(はい・いいえ) ・(心臓・血圧)狭心症、心筋こうそく、心臓弁膜症、先天性心疾患、心筋症、高血圧症、 不整脈、心不全 ・(脳・精神・神経)脳卒中(脳出血・脳こうそく・くも膜下出血)、脳動脈硬化症、精神病、うつ病、神経症、てんかん、 自律神経失調症、アルコール依存症、薬物中毒 、知的障害、認知症 ・(肺・気管支)ぜんそく、慢性気管支炎、肺結核、肺気腫、 気管支拡張症、慢性へいそく性肺疾患、肺せんい症 ・(胃・腸)胃かいよう、十二指腸かいよう、 かいよう性大腸炎、腸へいそく 、クローン病 ・(肝臓・胆のう・すい臓)肝炎(肝炎ウイルス感染を含む)、肝硬変、肝機能障害 、胆石、胆のう炎、すい炎 ・(腎臓・尿管)腎炎、ネフローゼ、腎不全、のう胞腎、腎臓結石、尿路結石 ・(目)緑内障、白内障、網膜の病気、角膜の病気 ・(がん・しゅよう)がん、肉腫、白血病、しゅよう、ポリープ ・(その他)糖尿病、リウマチ、こうげん病、貧血症、 紫斑病、甲状腺の病気 ・(女性のみ)子宮筋腫、 子宮内膜症、 乳腺症、 卵巣のう腫 |
3.手・足の欠損または機能に障害がありますか。または、背骨(脊柱)・視力・聴力・言語・そしゃく機能に障害がありますか。(はい・いいえ) |
これらの項目に対する回答がすべて「いいえ」だった場合、健康状態には問題なしと判断されます。
また、たとえ「はい」があったとしても、それだけで審査に落ちるわけではありません。
軽いけがや病気などの場合は、問題なく入れます。ここで嘘をつくと、万が一の際に保険金が支払われないので、必ず正直に回答しましょう。
なお、最近はワイド団信という、通常の団体信用生命保険には入れない人向けのタイプの団体信用生命保険も登場してきています。通常の金利に0.3%程度上乗せされますが、病気の人でも借りることが可能です。
⑥勤続年数は3年以上が目安
住宅ローンを組むためには、ある程度勤続年数を重ねる必要があります。金融機関によっては最低勤続年数を定めているところもあります。
そうでない場合も、なるべく3年以上勤めてから審査を受けたほうが合格しやすいです。
ただし,勤続年数が短いと必ず審査に落ちるわけではありません。例えば転職直後で勤続年数が1年未満でも、年収が以前と比べて安定して高く、なおかつ転職先の企業が優良企業であると判断されれば、問題なく住宅ローンを組める企業が多いです。
最近は以前と比べて勤続年数をあまり重視しない金融機関も増えています。ただし、就職したばかりの人は難しいでしょう。この場合は焦らず、まずはキャリアを積み重ねることが大切です。
自営業の人の場合は、勤続年数ではなく営業年数が審査の対象となります。最低でも3年は確保したいところです。
審査は総じて会社員や公務員よりも厳しく、安定的な所得がなければ住宅ローンを組むのは難しいでしょう。
⑦年収は高さよりも安定性が重視される
年収は高さも大切ですが、それ以上に安定性が大切です。
年収が3000万円のプロスポーツ選手よりも、年収が600万円の地方公務員のほうが審査では有利になると思ってくれてまず間違いないでしょう。
ただし、もちろん年収があまりにも低すぎるのは問題です。最低でも150万円以上は必要です。
年収が安定している公務員、あるいは中堅企業以上の正社員は総じて高く評価されます。逆に零細企業の会社員、契約社員、派遣社員、自営業者、パート、アルバイトなどは評価が低くなりがちです。
住宅ローンを組みたいと考えているのならば、まずは安定した就職先を探すことからはじめましょう。
⑧金融機関の営業エリアに住んでいなくても借りられることがある
地方銀行や信用金庫の場合は営業エリアが限られています。
基本的には物件のある場所が営業エリアに含まれている金融機関で借りることになりますが、営業エリア内に物件がなくても、営業エリア内に勤務していれば借りられることがあります。
なお、都市銀行の場合は基本的に全国どこでも借りることができます。
⑨連帯保証人は不要だが、保証会社の保証は原則必要
連帯保証人が必要な住宅ローンはほとんどありません。夫婦で収入合算をしたり、親子リレーローンを組んだりしたりなど、特別な事情がある場合は別ですが、そうでないならば基本的に連帯保証人は不要です。
ただし、その代わりに信用保証会社から保証を受けなければなりません。信用保証会社は信用保証料を支払うことによって連帯保証人になってくれる会社です。
保証料は申込者の属性や、担保の評価によって変動しますが、借入額が2000万円の場合、保証料だけで150万円を超えるようなケースもあります。金利が安くても保証料が高いと大変ですので気をつけてください。
保証会社は系列保証会社の利用を勧められることが多いですが、外部の保証会社でもOKとしている金融機関も少なくありません。
⑩返済事故を起こしている場合は、その情報が消えてから申し込みを
住宅ローン以外のローン(消費者金融からのローン、自動車ローンなど)があっても、それだけですぐに審査に落ちるというわけではありません。
ただし、やはり審査を受ける上で不利になることは間違いありません。
特に消費者金融からの債務が複数ある場合、審査に合格するのは至難の業と言っても過言ではないでしょう。
金融機関は消費者金融からの借金を非常に嫌います。場合によっては過去の取引がチェックされることもあるので、今までに消費者金融から一度もお金を借りたことがないという人は、今後も借りないようにしましょう。
現在借り入れがあるという場合は、極力完済してから審査を受けるようにしてください。もちろん、それ以外の借金もないに越したことはありません。返せるものなら返してから審査を受けましょう。
なお、過去に返済事故(返済遅れや債務整理など)を起こしていて、なおかつそのことが信用情報機関に残っている場合、審査にはほぼ100%落ちます。
その場合は、信用情報機関から返済事故情報が削除されるまで(通常5年~10年)待ってください。
住宅ローンの審査に落ちたら
住宅ローンの審査に落ちても、その理由を教えてもらうことはできません。その場合は、以上の条件を改善して(例えば、借入額を減らして返済負担率を下げるなどして)再び審査に臨みましょう。
審査の厳しさは金融機関によっても異なる(ネット銀行や都市銀行は厳しく、地方銀行や信用金庫は比較的緩い)ので、より審査のゆるい金融機関に切り替えるのも手です。たたし、審査のゆるい金融機関はその分金利も高いので注意しましょう。