ビットコインの価格の決まり方と価格変動が大きくなる理由

ビットコインを含む仮想通貨は株式や債券、投資信託などの他の金融商品と比べると、非常に価格変動が大きいとされています。ビットコインは最近は値段が安定していますので流石に1日で価格数倍、あるいは数分の1になることはなくなりましたが、時価総額が小さいアルトコインなどの世界ではその程度の価格変動幅は珍しいものではありません。

最近では、日本初の国産仮想通貨であるモナコインが、約2週間で約11倍(10月1日:50円→10月13日:552円)となり、話題となりました。一体仮想通貨はなぜこんなに激しく値動きするのか、そして仮想通貨の価格を決める要因は何なのかをお話したいと思います。

仮想通貨も基本的には「需要量と供給量」で価格が決まる

経済学において、価格というものは基本的に「需要量と供給量」で決まります。これは仮想通貨においても例外ではありません。

簡単にいえば、需要量は「市場に参加している人が買いたいと思う量の合計」で、供給量は「市場に参加している人が売りたいと思う量の合計」です。需要量が供給量を上回れば価格は上昇し、逆の場合は価格が下落します。

具体的に考えてみましょう。ある商品のある時点での価格が100円だとします。また、この商品は1人につき1個しか必要のないものとします。

この商品の市場には多くの買いたい人と売りたい人が集まっています。需要量は1000個(1000人)、供給量は800個(800人)だった場合、どうなるでしょうか。現在の価格のまま取引をすると、供給された800個はすべて完売しますが、一方で200人買えない人が出てきてしまいます。

初めのうちは市場参加者はそのことに気が付きませんが、次第に皆供給量が足りないことに気が付き始めます。すると、買いたい人は何としてでも商品を手に入れるため、100円よりも多い金額を出して商品を確保しようとします。

一方、売りたい人は買いたい人がまだいることを察して、その人達の足元を見て価格を上げます。

価格が上がると、市場参加者の数が変化します。例えば市場価格が120円になった場合、それを見て「100円なら買ったけど120円ならいらない」という人が一定量発生するため、需要量は減少します。一方で「100円なら売らなかったけど120円なら売る」という人も一定量発生するため、供給量は増加します。

さて、価格が120円になったところ、需要量は800個(800人)、供給量は1000個(1000人)となりました。このまま取引すると、今度は200個売れ残りが生じてしまいます。

初めのうちは市場参加者はそのことに気が付きませんが、次第に皆供給量が多いことに気が付き始めます。すると、買いたい人は足元を見て、120円よりも少ない金額しか出そうとしなくなります。

一方、売りたい人はこのままでは売れ残ることを察して、価格を下げます。

価格が下がると、市場参加者の数が変化します。例えば市場価格が110円になった場合、それを見て「120円なら買わなかったけど110円なら買う」という人が一定量発生するため、需要量は増加します。一方で「120円なら売ったけど110円なら売らない」という人も一定量発生するため、供給量は減少します。

価格が110円になったところ、需要量は900個(900人)、供給量は900個(900人)になりました。このまま取引すると、買えない人も売れ残りも発生しません。これは双方にとって最も都合がいい状態であるため、価格はそこで安定します。この時の価格を均衡価格、取引量(この場合は900個)を均衡取引量といいます。

価格が変わらなくても需要量や供給量が変化することもある

一般的に需要量や供給量は価格と均衡価格の関係によって決まります。価格が均衡価格に対して安すぎればいずれ需要量は増加し、供給量は減少して、価格は上昇します。

一方、価格が均衡価格に対して高すぎれば需要量は減少し、供給量は増加して、価格は下落します。しかし、需要量や供給量は価格が変化しなくても増減することが有ります。

需要の増加は均衡価格の上昇と均衡価格の取引量の増加を招く

例えば、前述のある商品の価格が均衡価格(110円)、均衡取引量(900個)で均衡していたとします。そして、ある日この商品が一時的にブームになったとします。ブームが起きる原因は色々有りますが、例えばこの商品がテレビで「健康にいい」として紹介されたとでも考えてください。

ブームが起きた場合、需要量は間違いなく増えます。ここでは、需要量が1300個になったものとします。一方、供給量は900個のままなので、必然的に供給不足が生じてしまいます。供給が足りない場合価格は上がり、例えば130円になります。価格が上がれば需要量は減少し、供給量は増加します。

130円で需要量と供給量が1100個で均衡した場合、この130円という価格が新たな均衡価格となり、1100個が均衡取引量となります。需要力の増加は均衡価格の上昇と、均衡取引量の増加を招きます。逆にブーム終了、代替品の登場などで需要が低下した場合、均衡価格は下落し、均衡取引量は減少します。

供給力の増加は均衡価格の下落と取引量の増加を招く

例えば、前述の商品が技術革新によって、より少ない経費で作れるようになったとします。この場合、同じ予算で作れる商品の数が増えるので、供給量は増加します。ここでは、供給量は1300個になったものとします。

一方、需要量は900個のままなので、必然的に供給過剰が生じてしまいます。供給が余っている場合は価格が下がり、例えば90円になります。価格が下がれば需要量は増加し、供給量は減少します。

90円で需要量と供給量が1100個で均衡した場合、この90円という価格が新たな均衡価格となり、1100個が均衡取引量となります。供給力の増加は均衡価格の下落と、均衡取引量の増加を招きます。逆に人件費の増大、原材料のコスト上昇などで供給力が低下した場合、均衡価格は上昇し、均衡取引量は減少します。

仮想通貨の需要と供給の関係性

通常の商品はブームなどで需要が増加した場合、供給者(生産者)は設備を増設したり、人を増やしたりしてその需要に極力対応しようとします。逆に、需要が減った場合は設備を停止したり、人を減らしたりして需要減少に合わせます。つまり、需要量の変化に合わせて供給量を変化させることができるわけです。

一方、仮想通貨は予めプログラムによって新規発行のペースが決められているため、需要量がいくら変化しようが、供給量を一時的に増やしたり減らしたりすることができません。

需要量の変化に合わせて供給量を変化させられる通常の商品の場合、需要量が増えれば供給量も増え、それにともなって価格の上昇が抑制されるため、実際の価格上昇幅は少なくなります。逆もまた然りで、需要量が減った場合は供給量も減るので価格の下落が抑制され、実際の価格上昇幅は小さくなります。

しかし、仮想通貨は需要量が増えても供給量が減らないため、価格の上昇が抑制されず、価格の上昇幅は大きくなります。逆もまた然りで、需要量が減った場合も供給量が減らないため、価格の下落が抑制されず、価格の下落幅は大きくなります。

だからこそ仮想通貨は価格の上昇幅・下落幅が大きくなるのです。価格の変動幅の大きさをボラティリティと言いますが、仮想通貨は極めてボラティリティの大きな商品であるといえます。

仮想通貨の需要を決める要因

仮想通貨の供給量を人間が勝手に増やしたり減らしたりすることはできないため、仮想通貨の価格は需要によって決まります。では、仮想通貨の需要はどのようにして決められるのでしょうか。要因は複数存在しますが、特に影響が大きいのは以下の5点です。

  • 国家の規制
  • 法定通貨の信頼性
  • 仮想通貨の信頼性
  • 大企業の仮想通貨導入
  • 半減期

国家の規制

仮想通貨の需要に最も大きな影響を与えるのが、国家の規制です。仮想通貨は世の中の仕組みをよくも悪くも大きく変える可能性がある新たな通貨です。仮想通貨は新たなビジネスを生み、格差を縮小する可能性がある一方で、ある特定の層にとっては自身の仕事を脅かす存在となりえます。

例えば、非常に安く海外への送金ができる仮想通貨は、銀行のビジネスに大きな痛手を与えるものになるであろうことは想像に難くありません。

銀行の経営者や従業員が、仮想通貨という存在を敵視するのは不思議な事ではありませんし(最近は仮想通貨の導入に前向きな銀行も多いので一概には言えませんが)、彼らが自分の立場を守るために圧力団体を通じて国会議員に圧力をかけても不思議ではありません。

また、仮想通貨は匿名性が高く、それゆえにお金の流れが追いづらく、税金の取りっぱぐれのリスクがあることから、国家にとっても余り望ましいものではありません。国民を保護するというのもと(実際にそういう意図もあるのでしょうが)、取引が規制されてもおかしくありません。

全くの無政府状態よりはある程度規制があったほうが望ましいため、規制がかかるのは一概に悪いことでもありませんが、全面禁止するような国が増えてくると、仮想通貨の需要は減るでしょう。決済に使えない通貨など持っていても仕方ないですからね。

なお、現時点で特に仮想通貨の価格に対する影響力が特に大きいのは「中国」「日本」「アメリカ」「韓国」の4つです。特に中国と日本が大きなマーケットで、この2つの国の規制の強度は今度も注視しておいたほうがいいでしょう。

法定通貨の信頼性

仮想通貨と法定通貨は、お互いに需要を食い合う関係にあります。法定通貨の需要が減少すれば、仮想通貨の需要は増加します。では法定通貨の需要が減少するのはどんなときかといいますと、通貨危機が起こったときです。通貨危機とは、財政赤字や経常赤字、政情不安などによって、国家の信用力が低下し、法定通貨の信用がなくなる現象です。

法定通貨の信用がなくなると、その国に投資していた投資家や金融機関は、資本を撤退させます。その結果通貨が大量に売られて価値が暴落します。価格が暴落すると法定通貨の価値が下がり、物価が上昇し、ハイパーインフレを引き起こします。

通貨危機まで行かずとも、法定通貨の信頼が下がることはままあります。そのような場合に、かつては株式や債券などが逃避先になることが多かったのですが、最近はそのかわりに仮想通貨を逃避先として利用する人が少なくありません。

例えば、法定通貨が約1600%のハイパーインフレを起こしたベネズエラでは(政府発表ではもっと控えめな数字になっていますが)、法定通貨よりもビットコインの方に信頼を置く国民が少なくありません。

あちらは日本と比べると電力料金が非常に安い(莫大な補助金が出ているため)ので、取引ではなくマイニングでビットコインを入手している人も少なくないとか。中国人がビットコイン投資に前向きなのも、法定通貨に対する不信感が関係しています。

日本の法定通貨は比較的信頼できる方ですが、今後はどうなるかわかりません。法定通貨に対する不信感が高まったとき、仮想通貨は更に値上がりすることでしょう。

仮想通貨の信頼性

仮想通貨の信頼性自体も、仮想通貨の需要に影響を与えます。より正確に言えば、「仮想通貨の信頼性が広まること」が需要に影響を与えます。どんなに素晴らしい性能を持った仮想通貨も、その信頼性が広まらなければ無意味です。

仮想通貨の信頼性については、まだ現時点では多くの人が「よくわからないもの」「なんだか胡散臭そうなもの」とみなしているフシが有ります。

仮想通貨を支えている技術について詳しく知れば、思ったほど危険で怪しいものではない(もちろん完全に安全なわけでもない)ことがわかるのですが、新しい技術に対して拒否反応を起こす人は一定数存在しますし、そもそも知ろうとしない人も少なくありません。

テレビや新聞、インターネットなどで仮想通貨の存在が周知されれば、それだけ信頼性が増すと考えられます。

大企業の仮想通貨導入

近年、大企業が仮想通貨マーケットに次々と参入しています。2017年9月には、大手企業として知られているGMOおよびDMM.comが仮想通貨マイニング事業への参入を表明しています。

マイニングには莫大な電気料金がかかり、諸外国と比較して電気料金が高い日本には向かないものとされてきましたが、電気代が安くマイニングが活発な中国で仮想通貨自体に厳しい規制がかかりそうな現状は日本企業にとってはチャンスであり、それだけのコストを支払っても収益が見込めると判断したものと思われます。

同時期には、みずほフィナンシャルグループと日本各地の地方銀行約70行が、合同で仮想通貨「Jコイン」を計画していることも明らかになりました。

先程、銀行にとって仮想通貨は自身の商売を脅かすものになるというお話をしましたが、自ら仮想通貨を発行することによって、送金コストを下げ、手数料を値下げし、顧客離れを防ぐ意図があるものと思われます。

日本の三代メガバンクの三菱東京UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友銀行は、大手仮想通貨取引所のbitFlyerに出資しています。リクルートホールディングス傘下のリクルートライフスタイルは、大手取引所のコインチェックと共同でモバイルペイメントサービスを提供しています。

このような取り組みを行っているのは日本の企業だけではありません。世界有数の企業として知られるマイクロソフト社は、クラウド基盤のAzureプラットフォームにイーサリアム基盤のブロックチェーンを導入することを決定しています。また、同社の表計算ソフト「Excel」は、通貨の種類にビットコインを導入することを検討しています。

Googleも仮想通貨の一種であるRippleに出資しています。

このように、大手企業が仮想通貨への出資や、仮想通貨を用いたサービスの導入を進めています。これらのサービスが世界各地で広がっていけば、自然と仮想通貨の需要は増加します。

「法定通貨でも決済できるんだからほとんど使われることはないんじゃないの?」と思われるかもしれませんが、仮想通貨のほうが送金手数料が安く、送金にかかる時間も少ないため、長期的には仮想通貨の利用は進むものと思われます。

半減期

ビットコインを始めとする多くの仮想通貨には、半減期というものが設定されています。半減期とは、マイニングによって新規発行される仮想通貨の額が半額になることです。

例えばビットコインの場合は当初は10分につき50BTCのペースで新規発行されていたのですが、その後2階の半減期を迎え、現在は10分に12.5BTCのペースで発行されています。ビットコインの半減期は約4年に1回のペースで来るように設計されており、直近の半減期が2016年7月だったので、次の半減期は2020年の春~夏頃に来るものと思われます。

半減期を一定のペースで迎えることによって、過剰な仮想通貨の新規発行に伴う価格の低下を防ぐという目的が有ります。

そして、半減期は仮想通貨の価格が上昇しやすい時期であるとされています。正確に言えば、半減期が来る直前になると一時的に価格が上昇し、その後元に戻リやすい時期であるといえます。

ビットコインの2度めの半減期である2016年7月付近を見てみると、2016年5月中旬頃から価格が上昇し始め、7月上旬にピークに達し、その後緩やかに下落して以前に近い水準まで下がっています。

まとめ

  • 物の価格は需要量と供給量によって決まる
  • 仮想通貨は供給の調整ができないため、価格変動幅(ボラティリティ)が大きい
  • 仮想通貨の価格は国家の規制、大企業の動向、半減期などに左右される

仮想通貨はボラティリティが大きく、それゆえに投資の対象としてはハイリスクハイリターンです。仮想通貨に投資する際には、国家や大企業の動向などを厳しくチェックするようにしましょう。